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「大丈夫」
しおりを挟むその日りこはクラスの子たちに『この話を聞いた人のところに出るんだって』という怪談話を聞かされた。それまで家でそれなりの霊体験をしていたが、本質的には怖がりで出来ればその手のものに関わりたくないというのが本音だ。
(……きたら、どうしよう)
聞かされた内容が頭をぐるぐるとめぐる。
その日は一人で寝るのが嫌で、母親の布団に潜り込んだ。両親の寝室が一番安全だと体感で知っていたのもある。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
母親に宥められながらも、りこはぶるぶると震えていた。やがて、宥めてくれていた母から寝息が聞こえてくるのに気付いて、更に震えが大きくなる。
(やだ、やだ、やだ、こわい……!)
ぎゅうっと母親にしがみついて、目を瞑る。布団にもぐりこんで、顔も隠す。見つかってしまわないように、ぎゅうっと。
――すると、声が聞こえた。
『――もう来ないから、大丈夫』
瞼の裏がぱっと明るくなって、――気付けば朝だった。母は既に起きていて、父のいびきだけが部屋に響いていた。
あの声は母ではなかった。母ではない、若い女性の声。その声はもう大丈夫と言った。
(――守護霊さまだったのかな)
りこが怖がりすぎていた為、いたたまれなくて話かけてきてくれたのだろうか。
何にせよ、まだ起きるにはまだ早い。りこは布団をかぶって二度寝することにした。
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