ぼくの偶像 ColorS*

月見こだま

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憧憬

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 夢心地の気分で開場を後にする。後ろ髪を引かれる思いで母の手をぎゅっと握る。

「ColorS*かっこよかったね~!」

気付いた母が満面の笑顔でそう言った。それが嬉しくて、首を大きく縦に振る。

「うん! すっごくかっこよかった!! 特に真ん中の赤い人がすっごくかっこよかった!」
「茜音くんか! 歌もダンスもかっこいいもんね~。お芝居も上手なんだよ」
「すごい! あかねくん、なんでも出来るんだね!」

帰路につく車の中で、元々ColorS*は同事務所の先輩グループの後ろで踊っていたのだと教えてくれた。母はその先輩グループのファンで、後輩がデビューコンサートをするというので記念に参加することにしたのだと言った。いつもコンサートは友人と参加していたのだが、今回は申し込み時に友人の都合がつかなかった。
けれど、メンバー全員がまだ中学生の若手グループがデビューするというので、せっかくなら息子に見せたいと思ったらしい。
行きの車の中でも教えてくれたようだが、その時は退屈が勝っていて頭に入っていなかったらしい。
 はしゃぐ息子に、母は嬉しそうに笑った。席はスタンドのバックステージ側の五列目だった。まだ小学生になったばかりの息子を連れての参加ということで、スタンディング禁止のファミリー席でチケットを取っていた。毎回バックステージ側に設けられている席だが、一万人規模の会場でも席数は少ないため、抽選から漏れると一般席になってしまう。主に親子連れが優先される席だ。
女性ファンの多いグループの為、会場に居る男性はそれだけで目立つ。その上、まだ幼い息子は外周を通る時も目に入りやすかったようで、メンバー全員からファンサをして貰えたのもいい経験となっただろう。『楽しかったみたいでよかった』と笑う母に、息子も満面の笑みで返した。

――――あかねくんみたいになりたい!


 漠然とした目標が、少年の中で生まれた瞬間でもあった。

 後日、発売が決まったColorS*DebutTourDVDを彼は母にねだり、幾度も繰り返し見ることになる。

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