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 俺は相変わらず、香織ともう一度会える理由を探している。
 もしも偶然会うことがあったなら運命だと思うだろう。自分でもドン引きだ。


 けれどその運命とやらは、本当に起こった。


「和樹!?」


 駅の階段を下りる時だった。
 という女の声がして、それと共に背中に鈍痛が走った。耐えきれず階段を転げ落ちた俺に周りの悲鳴。その中で聞こえた、彼女の声。

「ーー香織…?」
「和樹!」

 駆け寄ってきた彼女が、俺のすぐ側に座る。

「…幸せだな」

 意識がシャットアウトする前に見えたのは、真っ青になった香織の顔だった。


***


「広瀬」

 病室に入ってきた男に、ドクンと心臓が鳴った。

「ーー笹野さん」

 もう会いたくなかった人と、ずっと会いたかった人が寄り添っている。

「…明海ちゃん、周りの人が取り押さえて警察に引き渡されたって。もうすぐお前の両親が来てくれるハズだ」
「そう…ですか、ありがとうございます…」

 お大事に、と小さく呟いた香織が病室を出ようとした。

「香織!」
「…なに?」

 しまった。名前で、とっさに。

「ありがとう」

 とにかくお礼を言う。なんとか意識を強く持てたのも、香織が駆け寄ってくれたからだ。

「…いいえ。お大事に、広瀬さん」

 それからはもう、振り向くこともなく病室を出ていった。それに連れられるようにして、笹野も病室を出ていく。

「…運命、か…」


***


 和樹を偶々見かけた。それは病院へ行った帰りのことだ。駅の階段を転がり落ちる和樹に、顔が真っ青になってしまった。

「和樹!」

 確かにその男は和樹で、背中にはナイフが刺さっていた。階段の上には高笑いする、…見たことのある、確か…和樹の会社の女。

「幸せだな…」

 そう言って意識を失った和樹に、どうしても最後まで付き添わなければならない気がした。


「…陽一?」
「ん?」
「ごめんね」

 念のために謝ると、陽一が笑った。

「いいよ。香織も驚いただろ?ちゃんと俺に連絡くれたんだし、怒ってない」
「ありがとう」

 それより、と陽一が続ける。

「病院って、どこか悪かったのか?ごめんな、朝に気付かなくて…」
「あ、それはね、」

 理由を言おうとした時だ。


「ーー香織さん?」

 廊下の向こうに、元義母がいた。
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