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しおりを挟む何故、一体、どこから、そんな発想?
きっと今、私の頭には沢山のハテナが浮かんでいるだろう。それこそ目に見えるくらいに。
「…あの」
「自分勝手だとは分かっている。君にも言い切れないほどに失礼なことをした」
「そう…ですね。まさか婚約者どころか、顔すら認識してもらえておりませんでしたから」
まぁ、別にいいのだけれど。おかげで寄り添うこともなければ、長年の想い人と結ばれるのだ。
「まさか私と再度婚約すれば王位に就けると?」
「違う!」
「ならどうして」
思わずジト目になってしまったことを許して欲しい。こんなに意味不明なことを言われてなお、追い返さない私を褒めて欲しいくらいだ。
「私は、王位に就くものだと思った」
「はぁ」
「当然王位に就く勉強しかしておらぬ」
「はぁ」
「だがその勉強すらもサボっていた」
「・・・」
サボっていた、そんなこと誰でも知っています。夜遊びして女の子を無理やり襲おうとしているという苦情も何十件と来ているそうですし。
「平民としての生き方を知らない」
「……まぁ、そうでしょうね」
想定外のこと。けれどそれを省いても、この王子が悪い。
「………まさかとは思いますが」
まさか。いや、あり得ないと思った。
これを口にするのはいくら何でも失礼だろう。だから言い淀んだというのに。
「お前が私と婚約してくれたら、私は侯爵という地位に就ける。お前の家を継ごう」
絶句した。絶句しか出来なかった。
頭が沸いているのか?
「…王家の血を継いだ私が、侯爵家へ婿養子に入るのだ」
(汚れた血だろうが!!)
「つまりお前の息子に尊い血が継がれるのだ!」
(お前との息子なんか考えたくもない!!)
「いいだろう!?平民になるくらいなら、侯爵になる方がマシだ!!」
マ…シ……?
何を言っているんだ、この男は。
「……お断り致します」
「なんだと!?」
まさか、まさか。
「アスラーナの家にも、そんな事を言いに行ったのですか…!?」
「そんな事、だと!?」
「馬鹿になさるのもいい加減になさいませ!!」
「っ!」
もう無理だと思ったレミーアの中で、何かがプツンと切れた。
「…我が侯爵家には養子が入ることに決まっております。それに、貴方を迎える必要もなければ、私が貴方に情をかけなければならない謂れもない」
「なっ、こ、婚約者だったのだろ!?」
「貴方が婚約破棄したというのに、都合の良い話だとは思いませんか?」
「そ、それは、そうかも……しれなくもないが、だが、お前もこの歳になって…行き遅れなど困るのだから、お互い様では、」
「私に正式に婚約の申し込みがありました」
「な、なに!?相手はどこの馬の骨だ!?」
「エルメスト公爵家の嫡男のアゼル様ですが、なにか?」
ファミールが呆然としたのは言うまでもない。
いつまでも行き遅れだと思ったら大間違いだと言いたくなったけれど、それを堪え、レミーアはにっこりと笑った。
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