あと1年、彼の隣に

伊月 慧

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本編

20日目

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 煌夜と別れるなんて有り得ない。
 私は自分の保身のために煌夜のそばにいた。今はもうそうではないと、自分に言い聞かせていただけだった。
 きっと私は、彼に別れようと言われても別れることは出来ない。みっともなくすがり付いて、泣きつくのだと思う。
 煌夜のために側にいるんじゃない。
 私が、私のために死ぬ瞬間まで、煌夜の側にいたかったのだ。



「球技大会でさ、バスケ出るんだよ」
 煌夜はあれから毎日病室に顔を出してくれる。
「ほんと?」
 いつもこうして学校での話をしてくれるのだけれど、嬉しい。私も早く学校へ行きたい。
 それに煌夜がバスケしているところを久しぶりに見たいという気持ちもあった。
 煌夜はもうバスケなんてしないと、そう宣言した。咲良はバスケをしているときの煌夜が好きだったので、球技大会で見られるなら行きたい。きっと私はなにかに出ることは出来ないけれど。
「勝ってね、応援してるから」
「当たり前だろ?お前のために勝つよ」
「 ・ ・ ・ 」
「おい、引くな!!!」
 引いているというよりは、恥ずかしかっただけだ。自分の彼氏にこんなことを言うのもなんだけど、煌夜はイケメンだ。この顔でこんな甘い台詞を囁かれて、落ちない女なんていないと思う。
「…楽しみにしてる」
 ふと、頭に浮かぶ。
「たまには二人で出掛けたいね」
「…そりゃ、俺もそうだけど。お前が無理だろ」
「湯島先生にお願いしたら、一日くらいならどうにかなるかも」
「マジ?どこ行きたい?」
「えっとね、雑誌見てたんだけどーー」

 そんな二人の会話を、まさか弘樹が聞いていたなんて誰が思っただろう。
 盗み聞きしたその足で、弘樹は兄に会いにいった。

「兄さん!」
「うわ、弘樹!?お前まだ咲良ちゃんのストーカーやってんのか!?」
 ストーカーとは、人聞きの悪い。
「違うって。それより、お願いあるんだけど」
「なに……おい、咲良ちゃんに関することなら、聞かないぞ」
「……仲西に外出許可、出さないで」
「はぁ?そんなモン…」
「絶対、言いに来るから!可愛い弟の頼みだと思って聞いてよ!!!」
「自分で言うか?…あのなぁ、俺の仕事はお前の恋のサポートじゃねぇよ。あくまで、咲良ちゃんの身体を治すことだ」
 正論に弘樹はぐうの音も出ない。
「お前も、脈ないんだから諦めろ」
 ーー諦めれるならとっくに諦めている。
 それが出来ないから、こうして悪あがきをしているというのに。
    
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