あと1年、彼の隣に

伊月 慧

文字の大きさ
上 下
13 / 38
本編

10日目~煌夜side~②

しおりを挟む



 学校から帰宅してすぐ、煌夜は居間でテレビをつけて漫画を読んでいた。
 食べていたポテチがなくなったところで、なにか食べるものを買いに行こうと家を出た時だ。
 慌ただしく隣の家から出てきた咲良の父親に声をかける。
「おじさん!こんばんは」
「あ、ぁ、煌夜くん…」
「そうだ。咲良、家にいますか?漫画の続き、借りたくて…」
「すまない、咲良はちょっと…」
「?…なんかあったんスか?」
「病院にね、ちょっと。すまない、僕も行かないといけないから」
「え、病院?」
「じゃ!」
 走って駅の方へと向かった咲良の父親を見送りながら、疑問が残る。
「…病院って、咲良のだよな?…なんで…なんかあったのか…?」
 咲良の家を見上げると、真っ暗だ。どうやら誰もいないらしい。
「………発作?」
 そんなことを考えて、やめる。
「まさかな。もう治ってるだろ」
 咲良の病気について詳しくは知らないけれど、一過性のどうちゃらこうちゃらって聞いたような気がする。
「………あとでメールしてみよっと」
 もしかしたら、咲良ではなく咲良の母親かもしれない。それに病気だと決まったわけじゃないし、救急車が来たような音もしなかった。
 大丈夫だ、と自分に言い聞かせながらコンビニへと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

悪役令嬢は毒を食べた。

桜夢 柚枝*さくらむ ゆえ
恋愛
婚約者が本当に好きだった 悪役令嬢のその後

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

勝手にしなさいよ

恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

処理中です...