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しおりを挟むこの部屋の前の主を探すようにアリシアに頼んだミリアだったが、アリシアの表情で上手くいかなかったことが分かった。
「王室にまつわる記録は厳重に保管されていて、侍女はよっぽどの事情でもない限り、おいそれと入ることは出来ないそうです。申し訳ございません」
「あー、そっかー…」
記録が保管されている部屋にはいくら王族の端くれのミリアであろうと、一歩入ることすら許されないだろう。警備が厳重であり、忍び込もうものならば命を賭けなければならない。それほどこの国は、王室の記録の管理が厳しいのだ。
諦めるしかない。それに知ったところで何になる、とミリアはやや呆れがちにため息をついた。
翌日、やはり昨夜も訪れていたウィリアムが、ミリアの肩に顔を埋めていた。
「…殿下。そろそろお目覚めになって下さい」
少し前まで腰が痛かったけれど、毎晩のように抱かれてしまえば慣れるのも仕方ない。それに日に日に触れる手は優しくなるし、拒んで痛くなるくらいなら、受け入れてお互い気持ち良い方がいいに決まっている。そんな諦めもどこかにあった。
「……おはよう」
「おはようございます。お部屋にお戻り下さい」
「…まだ君のことを抱き締めていたい」
「……お好きにどうぞ」
拒むな。拒めばこのイケメンは意地になる。無理にでも実行しようとする。ならば初めから受け入れるのだ。
まるで人形のようだと思った。情婦のようだとも思った。拒否は聞き入れられず、都合のいいようにされて。いつからだろう、胸につっかえが出来てしまったのは。
「あぁ、そうだ。ミリア」
「はい?」
「…この部屋から出るなよ」
「…はい」
そしてウィリアムが出て行った後。
アリシアの言葉に、ミリアの心が冷たくなったのは仕方がない。
「今日はオーゼル殿下が街を見たいと仰って、殿下と正妃様も付いていくそうですよ。だからではないですか?部屋から出るなと念を押したのは」
「……へぇ。私をここに閉じ込めて、自分は正妃様とデートってわけ」
夢から覚めた気分になった。そうだ、何を勘違いしていたのだ。自分は側室ではないか。
「…アリシア」
「はい?」
「外へ出ましょうか」
きっとその言葉を待っていたのだろう。ミリアがここにいる限り、アリシアもこの狭い場所に囚われる。休暇を取っていいと言っても、ミリアを一人にするのを躊躇うような子だ。
ミリアの言葉に、アリシアは待ってましたと言わんばかりの笑顔で頷いた。
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