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しおりを挟むアリシアの云う曲者は、どうやらウィリアムの差し金だったらしい。
「君が怪しい行動を取るから、見張らせていただけだ。やましい事がないのなら何の問題もないだろう」
悪びれもなくそう言い放ったこの男に、ほとほと愛想が尽きた。
「私にプライバシーというものはないのですか?」
会話を聞かれていたというだけでも気持ち悪いのに、ずっと天井の上にいたなんて。この世界で当たり前でも、日本人としての感覚を持った私からすればやはり「気持ち悪い」の何物でもない。
「プライバシー?そんなものが君に与えられるとでも?」
「は…?」
「私は言ったはずだ。側室として迎える際、城では何がいて、誰が聞いているのか分からない。だから滅多な行動は起こさず、余計なことも考えなくていいとな」
「…考えなしに行動したわけではありませんが」
「なに?」
この部屋にずっといた黒ずくめの男。隠し通路のことは話したのだろうか。
「私は人形ではありません。感情だってあります。私は、…私は、リックが、好きです」
「…その言葉の意味を分かっているのか」
怖いと思った。真っ直ぐに見据える、その瞳が。冷たいほどの青が、やたらと熱くて仕方ない。
「…分からずに、言いません」
「……私に恥をかかせる気か?使節団の男に好きな女を取られた、愚か者だと」
「そんなこ、……好きな女?」
誰のことだ?何を言っている?
「…なんだ?」
「好きな女とは?」
「……は?」
「え?」
しばらく、長い沈黙が続いた。
やがてはあっとため息をついたウィリアムがやはりこちらを睨みながら話す。
「…君はそうやって、私の気持ちを無かったことにしようとするのか?」
「はい?」
「私がそう簡単に君を手放せると思ったのか?」
「いや、あの…」
「私は、君以外、誰も好きになれないのに…」
乙女ゲームみたいだな、と思った。腕を引かれ、流れるようにキスされる。王子様に。少女漫画みたいじゃない?
「…好きだよ、ミリア…」
「っ……」
どうしよう、ヤバい。リックの方がドストライクの好みだけど、ウィリアムも相当のイケメン……って私!これが乙女ゲームや少女漫画だったら相当のビッチじゃねーか!!
「あ、あの、」
「黙って」
近すぎる顔。陶器のように綺麗な肌に、ふと香るいい匂い。
「離れないで…」
ねぇ。これを拒める女がいるのなら、すごいと思うよ。
こんなにも美しい顔に迫られて、拒めるわけがないじゃないですか。
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