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しおりを挟むリックを攻略してやると決めた私は、翌日早速使節団の方々に挨拶に行った。
「おはようございます、オーゼル殿下。お目覚めは如何でしたでしょうか?」
「これはこれは、ミリア様。ミリア様にご挨拶に向かわせてしまって申し訳ない。目覚めはとても良いですよ。それにミリア様のようなお綺麗な方に気遣いを頂いて、更に気分が良くなりました」
「ふふふ、お世辞はおやめ下さい」
そうですよね、と言いたいところだけど。それを言ったら、私がナルシストになっちゃうからね。
「そういえば、ミリア様」
「はい?」
「リックに聞きました。どうやら貴女とお知り合いだったようですね」
「え」
話したの!?そういえばリック、正直すぎて心配になるほど真面目な子供だったね。今更ながらに思い出したよ。
「実はリックの命の恩人だという女性にお会いしてみたいとは思っていたのですが。いや、まさか王城でお会い出来るとは」
ヤバい。隣国の王子に伝わったってことはウィリアム殿下にも伝わるってことだよね?
どうしよう。バレちゃったら私の駆け落ち計画に支障が出るやもしれない。
「是非、屋敷とやらを見てみたいのです。数年前からこの街のホームレス……いえ、身寄りのない者たちが餓死や野垂れ死ぬことが減ったと聞いていましたから。その屋敷の効果でしょうか」
「それは分かりませんが…」
そこまで言いかけて、ハタと考える。この世界にホームレスって言葉あるの?
「…もしも私のしたことでホームレスの方が減っているのなら、良かったですわ」
そう言い切った瞬間。オーゼル殿下が息を飲んだ。
「……」
「……」
無言の沈黙と不穏な空気に、使節団の従者達がハラハラと見ている。
「…オーゼル殿下」
「……なにかな?ミリア様」
「……お聞きしたいことがありまして」
「…それは奇遇だね、僕もだよ」
「………」
まさか、とは思う。けれど。私のような転生者がいるのなら、他にいてもおかしくない。
「…前世の記憶があったり、する?」
敬語なんて最早要らなかった。信じられないという顔でゆっくりと頷いた彼もまた、もう敬語など必要ないと感じているのではないか。
「……ミリア様も、転生者なのか」
「そういう貴方こそ…」
まさかこんなところで、しかもリックの直属の上司(だよね?)が、私と同じ転生者なんて。
…運命、偶然、どっち?
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