11 / 50
11,[カイン視点]変態ではない。
しおりを挟む先程ヒューリアに婚約を申し込んだが……足音を聞こえた。
(あぁ、来たか)
「兄上、失礼します!」
政務室へ断りなく入ってきた弟に、思わず顔をしかめてしまった。
「なんだルイス、勝手に入って来るでない。無礼だぞ」
「っ…申し訳、ありません…」
先に言っておくが私は変態ではない。
だがルイスの自分に屈服するこの姿はどうもゾクゾクして仕方ない。
変態ではないぞ。別にそういう趣味があるわけでもなく、ルイスだけだ。多分この殊勝な顔付きが自分にとって歪むのがどうも気持ちよくて致し方ない。
「それで?何の用だ」
「まさか分からないわけではないでしょう!」
確かにそうだが。それにしても、楽しい。ヒューリアも面白いことを考える。
「……ヒューリアのことか」
「それ以外に心当たりでもおありですか!!」
今にも殴りかかってきそうなルイスだが、殴ればとうなるかぐらいは冷静に判断出来るらしい。
「何をそんなに怒っている。…あぁ、そうだ。確かにヒューリアはお前の婚約者だが…ヒューリアにはれっきとした兄がいる。お前がヒューリアと婚姻すれば揉めることは明らかだろう」
「私はヒューリアを愛しているのです!」
ーーやっぱり、この弟がヒューリアを裏切るなど考えられない。ヒューリアは何か誤解をしているのではないだろうか。
「兄上、婚約の申し出をお取り消し下さい!」
「そう怒るな。……決めるのはヒューリアだろう。あぁなんだ、それとも…自信がないか?」
「兄上!!」
確かにこの婚約の申し出で私が火を見ることは明らかだが。それでもヒューリアの手助けになるならば何だってしたいのだ。
誰も知らない、鈍感な彼女も気付かない自分の気持ち。愛しているからここまで出来るのだと、きっと彼女は気付いてはくれない。それでいい。
側にいられるなら、役に立てるなら何だっていいのだ。
「ヒューリアを愛しているから婚約を申し込んだ。それのなにが悪い」
今、私はルイスに気持ちを教えた。これで隣に立つことになるのだ。
「悪いが…ヒューリアは貰う」
あぁ、気持ちいい。
…変態ではない。
0
お気に入りに追加
2,180
あなたにおすすめの小説
公爵夫人の微笑※3話完結
cyaru
恋愛
侯爵令嬢のシャルロッテには婚約者がいた。公爵子息のエドワードである。
ある日偶然にエドワードの浮気現場を目撃してしまう。
浮気相手は男爵令嬢のエリザベスだった。
※作品の都合上、うわぁと思うようなシーンがございます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました
夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、
そなたとサミュエルは離縁をし
サミュエルは新しい妃を迎えて
世継ぎを作ることとする。」
陛下が夫に出すという条件を
事前に聞かされた事により
わたくしの心は粉々に砕けました。
わたくしを愛していないあなたに対して
わたくしが出来ることは〇〇だけです…
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる