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しおりを挟む彼も私も、生まれながらに与えられて生活してきた。与えられることが当たり前で、手に入らない物など何もなかった。
だから私は安心していたのだ。
「リオナ、悪い。俺はミーシャを正妻として迎えたいんだ」
「…なんですって?」
彼の隣でプルプルと震える女に思わず顔をしかめてしまう。
「そのお方、貴方の屋敷の下働きの者でなくて?」
リオナとて、使用人の顔を全員覚えたりしない。その女だけだ。何故ならリオナは、この女に散々嫌がらせをされてきたのだから。
彼の家へ行くと、出される紅茶には必ずと言っていいほど虫が入っている。しかも私を認めないなどわめき散らした女だ。忘れるはずもない。
「…エドワード様。貴方、ご自分の身分をお分かりになって?この私と婚約破棄すると言うのですか」
「俺にはミーシャだけなんだ。…君が僕を好きなのは分かっている。だから、妾にしてやってもいい」
…妾?この私を?公爵令嬢の、この私を?
してやってもいい?
何様になったつもりでいるのかしら、この方は。
(…ふざけんな…!)
公爵令嬢らしかぬ言葉を使ったことは認めますわ、失礼。…けれど、ふざけるな。
「……分かりましたわ」
ここで婚約破棄に頷いても良かった。けれど私は知っている。この男は、自分の物が他の方に獲られることが大嫌いだと。
「そこまで仰るなら、分かりましたわ。その代わり、貴方の妾にしてくださると約束を」
「リオナ…。もちろんだ、君のこともまぁ、好きだからね」
「あぁエドワード、良かったわ!私、貴方の正妻になれるのね!」
無造作に結ばれた髪を振り回しながら、勝ち気な笑みでこちらを見る使用人。
(…よく、私をここまで馬鹿にして下さいましたね…)
絶対に許しは致しません。
貴方の家を、かんぷなきまでに叩きのめしてあげましょう。
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