Cocktail Story

夜代 朔

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#015 フローズンマルガリータ

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   声劇台本です。
   バーにやって来た女性と話しているバーテンダー視点で書きました。

_____________________________________________

   ·····ん。涙、止まった?

   そっか。ならよかった。

   大丈夫。今日はもう誰も来ないよ。店の表は閉めてあるからね。
   
   それにしても、急に店に来たと思ったら、大泣きしてるんだもん。ビックリしたよ·····

   あぁいや、責めてる訳じゃないんだ。ただ、すごく心配したってだけ。

   ·····それで、何かあった?

   教えてくれないの?なんで?

   ·····それも教えてくれない?

   んー·····気にしないでって言われてもなぁ·····。今の君をほっといてまで閉店作業をする気にはなれないよ。

   そんな顔で大丈夫。なんて言われても、全然説得力ないからね。

   ·····(ため息) そんなに、僕が頼りない?

   うん、そうだね。わかってるよ。君は、ただ僕に心配をかけたくないだけなんだよね。

   でも、僕は君がそうやって無理をして辛そうにしている方がよっぽど心配するって知ってた?

    まぁ、無理矢理言わせようって訳じゃないけどね。ただ、話してくれるならゆっくり聞くよ?

   迷惑だなんて思わなくていいって。僕が話して欲しいって言ったんだから。

   それに明日は店も休みだし、君も仕事休みだろ? たまには2人でゆっくり飲むのもいいかなって。

   そう? よかった。

   何飲みたい? 今日は僕の奢りで、なんでも作るよ

   おまかせ·····。それでいいの?

   わかった。ちょっと待ってね。

   (カクテルを作りながら)

   さっきの話だけど、ほんと、君が話したくないなら無理しなくていいんだ。

   でも、君はすぐ一人で無理する所があるから·····心配なんだよ。
   何でも一人でやろうとするし、辛いことがあっても、我慢しようとするし·····

   不安なんだ。君は強い人だけど、その分弱い人だから。いつか限界が来てしまうんじゃないかって。

   なんの前触れもなく、いなくなってしまうんじゃないかって、考えてしまうこともあるんだよ。

   考えすぎなんだろうけど·····、でも、僕は君のことが大切だから。そう、考えてしまうんだ。

   でも君は、そんな僕のことをわかっているからこそ、僕に心配をかけまいとしてるんだよね。

   ほんと、君には敵わないよ。

   (完成したカクテルを差し出す)

   僕は、君の笑顔が好きだ。でも、無理して笑って欲しくない。

    だから、泣きたい時には泣いていいし、愚痴を吐きたくなったら、沢山吐いていい。

   僕がいるんだから、一人で無理する必要なんかないんだ。

   だから·····、だからさ、もう、一人で泣かないで欲しい。

   迷惑なんて思わないから。今日みたいに、店に来るでもいい。たった一言、連絡してくれるだけでもいい。

   君が元気になってくれるなら、笑顔になってくれるなら、僕は何だって出来るんだから。

   って、何で笑うのさ。いや、笑顔になって欲しいとは言ったけど、今のはなんか·····、ちょっとバカにされてる気分なんだけど。

   そんなことないって? どうだか·····

   元気出た? ふーん·····そっか·····。それならよかったよ。

   あーほらほら。せっかく作ったんだから。飲んでみてよ。

   これ?「フローズン・マルガリータ」だよ。フローズン状のカクテルなんだ。まだ少し暑いからね、少しでも涼しくなれたらと思って。

   ん?僕も飲むよ? 僕は普通にテキーラだけどね。

   うん。今日は沢山飲もう。最後まで付き合うよ。

   ·····まぁ、君お酒弱いから、すぐ潰れちゃうだろうけどね。

   なーんて。冗談だよ。

   うん。乾杯。今日も一日お疲れ様。


ー完ー








   今回のカクテル 「フローズン・マルガリータ」

   テキーラ、ホワイトキュラソー、レモンジュースでつくられる。シェイカーの中でフローズン状にするので、口当たりが柔らかくなり、飲みやすい。

   意味は「元気を出して」

    

   

   

   
    
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