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第1章 石ころ大好き少女の夢への第一歩
9:ギルドマスターの頼みごと
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◆◆10◆◆
迷宮探索に必要な装備やアイテムをアイザックから購入したシャーリー達は、アネットと一緒にギルドの応接間の前に立っていた。
ちょっとドキドキしながら扉を見つめているとアネットがおもむろにそれを叩き、ニコッと微笑みながら「優しい方ですよ」と安心させるように告げる。
「はーい、入って大丈夫ですよー」
扉の奥から声が放たれる。それを合図にアネットはゆっくりと開いた。
目に入ってきた部屋は、どこか質素だった。
簡易的な木のテーブルに、これまた飾り気のない椅子やソファーが置かれている。
そんなテーブルの前に、一人の幼女がちょこんと立っていた。
クリッとした大きな目に、栗色のボブヘアー。小柄なシャーリーよりも小さい女の子だが、近くには身丈よりも大きな戦斧が立てかけられている。
シャーリーは一瞬、なんでこんなところに小さい子がいるんだろと考えてしまう。しかし、すぐにその疑問に対する答えはアネットの口から放たれた。
「ギルドマスター、シャーリーさんをお連れしました」
「ありがとです、アネットちゃん!」
シャーリーは思わず目と口を大きく開く。
そう、信じられないことだが目の前にいる女の子がこのギルドをまとめ上げているギルドマスターなのだ。
自分よりも幼く見えるギルドマスターに、シャーリーは純粋に驚く。
だが、隣にいたドロシアは違う反応を示した。
『あら、あなたエルフね。まだ子どもなのによくギルド運営をしてるわね』
「あなたのことも聞いてるです。ホントに喋るんですね」
『こんな姿だけど、私は元々人間だからね。にしても、よく親に許されたわね。エルフって外との交流をひどく嫌うでしょ?』
「二百年ぐらい前まではそうだったですが、そうも言ってられなくなったですね。でも他のみんなはやりたがらないので、わたしがやってるですよー」
『長生きしてる奴ほど頭が固いからねぇ。見た感じ、あなたは若くて柔軟そうね』
「照れるですよー。こう見えても百年は生きてるですしー」
『私達の歳に換算すると十歳ね。よくやっているものねぇー』
ドロシアとギルドマスターはほのぼのと会話を交わす。
だが、耳を疑う情報がわんさかと出てきたためシャーリーは純粋に呆然と立ち尽くしていた。
シャーリーよりも年上である幼女のギルドマスターは、そんな彼女を見て身体を乗り出す。
思わずビクッと身体を震わせると、ギルドマスターはニッと笑った。
「やっぱりライザと似てるですね。もしかして彼女の子どもですか?」
「お母さんのことを知ってるんですか!?」
「彼女は手がかかりましたが、大変優秀でいい子でしたです。娘ができたと聞いてましたが、あなただったんですね」
思いもしない母親の情報に、シャーリーは声を上げて食らいつく。すぐに「今どこにいますか?」とギルドマスターに訊ねた。
しかし、ギルドマスターはちょっと申し訳なさそうな表情を浮かべ、こう告げる。
「ごめんなさいです。わたしも彼女を探してますが、今どこにいるかはわからないです」
「そう、ですか……」
「ただ、彼女は何かを探していたようでそれをわたしに教えてくれたです。具体的に何を探していたかは教えてくれなかったですが、その時は〈ヤビコ山脈の迷宮〉に行くと教えてくれたです」
「ヤビコ山脈の迷宮?」
「一つ星でも入れる迷宮です。ただその時のライザは五つ星だったですから、どうしてそこに行くのか疑問を持ったですよ」
シャーリーの母〈ライザ〉は何かを探していた。
その探しものはヤビコ山脈の迷宮にあったかもしれず、それを確認するために向かったらしい。
それを聞いたシャーリーは「よしっ」と意気込んだ。やることが決まり、すぐに行動しようとした。
「ありがとうございます、ギルドマスター! 私、ヤビコ山脈に行ってきます!」
「あ、ちょっと待つです。頼みたいことがあるのです」
シャーリーが急いでヤビコ山脈へ向かおうとするが、ギルドマスターに呼び止められる。
もう早く行きたくてウズウズしている彼女を眺めつつ、ギルドマスターはあることを頼んだ。
それはとても不思議な話でもあった。
「実は探しているものがあるですよ。もし見つけたらわたしに持ってきてほしいですが、いいですか?」
「探しものはですか。いいですよ、何を探してますか?」
「ガラスの花です」
「ガラスの花?」
シャーリーは思わずドロシアに視線を向ける。
しかし、ドロシアはキョトンとした表情を浮かべており、全体を使って知らないと彼女に伝えた。
ドロシアも知らない代物を探すギルドマスター。一体何に使うのか気になり、シャーリーは訊ねることにした。
「迷宮で採れるものなんですか?」
「はいです。とても珍しいものなんで滅多に見つけられない代物ですが、どうしてもほしいんですよ。しっかり採取できたら特別報酬を出すので、お願いしますです」
うーん、とシャーリーは考える。
断る理由はない。それに困っているなら助けになりたい。頑張れば特別報酬がもらえるなら、余計に断る理由なんてないものだ。
だからシャーリーはギルドマスターのお願いに快く返事をした。
「わかりました。見つけたら持ってきますね」
「ありがとです、シャーリーちゃん! あ、ちなみに特別報酬はアメジストの原石です!」
「ホントですか!? めちゃくちゃ頑張っちゃいます!!!」
こうしてシャーリーはガラスの花を探すことにもなる。喜ぶギルドマスターを微笑ましく思いつつ、ドロシアとヤビコ山脈へ出発するのだった。
だが、彼女は知らない。ガラスの花にどんな効力があるのかを。
そしてそれの重要性がどれほどのものなのかも――
迷宮探索に必要な装備やアイテムをアイザックから購入したシャーリー達は、アネットと一緒にギルドの応接間の前に立っていた。
ちょっとドキドキしながら扉を見つめているとアネットがおもむろにそれを叩き、ニコッと微笑みながら「優しい方ですよ」と安心させるように告げる。
「はーい、入って大丈夫ですよー」
扉の奥から声が放たれる。それを合図にアネットはゆっくりと開いた。
目に入ってきた部屋は、どこか質素だった。
簡易的な木のテーブルに、これまた飾り気のない椅子やソファーが置かれている。
そんなテーブルの前に、一人の幼女がちょこんと立っていた。
クリッとした大きな目に、栗色のボブヘアー。小柄なシャーリーよりも小さい女の子だが、近くには身丈よりも大きな戦斧が立てかけられている。
シャーリーは一瞬、なんでこんなところに小さい子がいるんだろと考えてしまう。しかし、すぐにその疑問に対する答えはアネットの口から放たれた。
「ギルドマスター、シャーリーさんをお連れしました」
「ありがとです、アネットちゃん!」
シャーリーは思わず目と口を大きく開く。
そう、信じられないことだが目の前にいる女の子がこのギルドをまとめ上げているギルドマスターなのだ。
自分よりも幼く見えるギルドマスターに、シャーリーは純粋に驚く。
だが、隣にいたドロシアは違う反応を示した。
『あら、あなたエルフね。まだ子どもなのによくギルド運営をしてるわね』
「あなたのことも聞いてるです。ホントに喋るんですね」
『こんな姿だけど、私は元々人間だからね。にしても、よく親に許されたわね。エルフって外との交流をひどく嫌うでしょ?』
「二百年ぐらい前まではそうだったですが、そうも言ってられなくなったですね。でも他のみんなはやりたがらないので、わたしがやってるですよー」
『長生きしてる奴ほど頭が固いからねぇ。見た感じ、あなたは若くて柔軟そうね』
「照れるですよー。こう見えても百年は生きてるですしー」
『私達の歳に換算すると十歳ね。よくやっているものねぇー』
ドロシアとギルドマスターはほのぼのと会話を交わす。
だが、耳を疑う情報がわんさかと出てきたためシャーリーは純粋に呆然と立ち尽くしていた。
シャーリーよりも年上である幼女のギルドマスターは、そんな彼女を見て身体を乗り出す。
思わずビクッと身体を震わせると、ギルドマスターはニッと笑った。
「やっぱりライザと似てるですね。もしかして彼女の子どもですか?」
「お母さんのことを知ってるんですか!?」
「彼女は手がかかりましたが、大変優秀でいい子でしたです。娘ができたと聞いてましたが、あなただったんですね」
思いもしない母親の情報に、シャーリーは声を上げて食らいつく。すぐに「今どこにいますか?」とギルドマスターに訊ねた。
しかし、ギルドマスターはちょっと申し訳なさそうな表情を浮かべ、こう告げる。
「ごめんなさいです。わたしも彼女を探してますが、今どこにいるかはわからないです」
「そう、ですか……」
「ただ、彼女は何かを探していたようでそれをわたしに教えてくれたです。具体的に何を探していたかは教えてくれなかったですが、その時は〈ヤビコ山脈の迷宮〉に行くと教えてくれたです」
「ヤビコ山脈の迷宮?」
「一つ星でも入れる迷宮です。ただその時のライザは五つ星だったですから、どうしてそこに行くのか疑問を持ったですよ」
シャーリーの母〈ライザ〉は何かを探していた。
その探しものはヤビコ山脈の迷宮にあったかもしれず、それを確認するために向かったらしい。
それを聞いたシャーリーは「よしっ」と意気込んだ。やることが決まり、すぐに行動しようとした。
「ありがとうございます、ギルドマスター! 私、ヤビコ山脈に行ってきます!」
「あ、ちょっと待つです。頼みたいことがあるのです」
シャーリーが急いでヤビコ山脈へ向かおうとするが、ギルドマスターに呼び止められる。
もう早く行きたくてウズウズしている彼女を眺めつつ、ギルドマスターはあることを頼んだ。
それはとても不思議な話でもあった。
「実は探しているものがあるですよ。もし見つけたらわたしに持ってきてほしいですが、いいですか?」
「探しものはですか。いいですよ、何を探してますか?」
「ガラスの花です」
「ガラスの花?」
シャーリーは思わずドロシアに視線を向ける。
しかし、ドロシアはキョトンとした表情を浮かべており、全体を使って知らないと彼女に伝えた。
ドロシアも知らない代物を探すギルドマスター。一体何に使うのか気になり、シャーリーは訊ねることにした。
「迷宮で採れるものなんですか?」
「はいです。とても珍しいものなんで滅多に見つけられない代物ですが、どうしてもほしいんですよ。しっかり採取できたら特別報酬を出すので、お願いしますです」
うーん、とシャーリーは考える。
断る理由はない。それに困っているなら助けになりたい。頑張れば特別報酬がもらえるなら、余計に断る理由なんてないものだ。
だからシャーリーはギルドマスターのお願いに快く返事をした。
「わかりました。見つけたら持ってきますね」
「ありがとです、シャーリーちゃん! あ、ちなみに特別報酬はアメジストの原石です!」
「ホントですか!? めちゃくちゃ頑張っちゃいます!!!」
こうしてシャーリーはガラスの花を探すことにもなる。喜ぶギルドマスターを微笑ましく思いつつ、ドロシアとヤビコ山脈へ出発するのだった。
だが、彼女は知らない。ガラスの花にどんな効力があるのかを。
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