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第3章
29:服のゴミは掃除機で吸うもの
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ビスケットを食べまくっていた魔王がなぜか幼女になってしまった。一体何を言っているのかわからないだろうが、これはありのまま起きたことを私は言っている。
まあ、魔王の根源となる瘴気の力が弱まったことが原因だろう。元に戻るためには見習いメイドのアリアが作る料理を食べなければならないのだが、ミィはヤケになって浄化作用がある主のビスケットを食べまくっていた。
もしかするとそのうち消滅するんじゃないか、あいつは。
「う、うぅ。なぜじゃ、なぜこんなにも愛らしい姿になってしまったんじゃ!」
「わかりません。ですけど、ミィ様とってもかわいいです。今度、私のお下げをあげますね」
「いらないのじゃ! ああ、数十年かけてやっと大きくなってきた胸が小さくなってしまったのじゃ。なぜじゃ、なぜこんなことになったんじゃ!」
「身体も小さくなっちゃったしね。ちょっと待ってて、あり合わせで服を作ってあげるわ」
「ううぅっ。このまま裸になるのは嫌なのじゃ。頼む、早く服を作ってくれー!」
魔王も大変なものだ。まあ、私はあまり関係がないことだが。ひとまず主が服を作っている間にどういう道を進むか考えておくか。
地図を見た限り、魂の神殿はここから北東の位置に存在する。魔王軍がいない今なら真正面から神殿に入ることができそうだ。わざわざ魔物と鉢合わせする道なき道を通る必要はなさそうである。
だが、瘴気があふれているなら少し考える必要があるだろう。あまりにも濃度が濃いならまとまって行動したほうがいいかもしれないしな。
「できたわよぉぉ!」
「なんじゃこの服は! 厳ついネコが腹で叫んでおる!」
「それはライオンよライオン。名付けるならライオンワンピースよ。オスライオンでもよかったけど、ミィちゃんは女の子だからメスライオンにしておいたわ」
「カッコ悪いのじゃ! 厳つすぎて逆にダサいのじゃ! ああ、こんなの嫌じゃ。アリア、お前のお下げでいいから服をくれー!」
「お城に戻らないとありませんよ。申し訳ございませんが、しばらくガマンしてください」
「なんということじゃ……ああ、誰でもいい。わしに、わしに服をくれー!」
私が進路を考えているとミィは大きな絶望を抱いていた。腹、というか胴体いっぱいに大きな厳ついネコが叫んでいるような刺繍をされており、それがかわいらしい赤いワンピースに施されているのだからだろう。今のところ服はその一着しかないため、諦めて着るしかない状態だ。
そんな状態のミィを見て主は満足げな笑顔を浮かべていた。
「うぅ、こんな姿で外に出たくないのじゃ。わし、行かなくてもいいか?」
『ダメだ。お前がいないと話にならないだろ』
「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ! こんな姿で、しかもこんな服を見られたら笑われてしまう!」
『今は部下どころか人はいないだろ?』
「アリアがおる! あとお主らもな!」
「かわいいですよ、ミィ様! 赤いワンピースのお腹で叫ぶ厳ついネコってとっても斬新ですし、もしかしたら真似されるかも!」
「そんな訳あるか! わしをバカにしとるな、アリア!」
ミィの服がダサすぎたために大騒ぎである。そのせいもあり、全然出発する気配がない。
参った、このままでは日が暮れてしまう。その前に神殿の調査をしたいんだが。
「そんなにライオンが気に入らないの?」
「当たり前じゃ! せめて服に似合うかわいいものを刺繍してくれ!」
「ワガママねぇ。そんなんじゃあお嫁さんに行けないわよ!」
「いいから早く直してくれ! わしは恥ずかしくて堪らん!」
ミィに言われ、主は渋々服を作り直し始める。まあ、とんでもなく似合っていなかったというのもあるからな。いい感じに改善されることを願う。
さて、私は出発の準備でもしておくか。相棒は私が憑依するとして、主やミィ達のためにアイテムをそろえておこう。
そんなことを考えていると、少し遠くから「うわぁっ」という声が響いた。反射的に視線を向けると、そこにはどす黒い何かをまとい赤く輝く目をした魔物がいる。
ふっくら膨らんだ体毛とステッキを持ち、どこかの冒険者から奪っただろう魔術師の帽子をかぶったそれを見て私は思わず顔を引きつらせた。
『モコモコピエロだと!?』
この地方にはいないはずの魔物が、目の前にいる。しかもなんだか危険な力を身体にまとっている。
もしやあれは、瘴気じゃないか? だとしたらマズいぞ。
『ミィ、みんなを守れ!』
私は咄嗟に叫ぶと同時にモコモコピエロはステッキを振った。直後、大きな爆発が起き、馬車ごと私をぶっ飛ばした。
あまりの爆発力に驚きつつも私は立て直し、立っていた場所に視線を向ける。すると布を巻いて身体を隠し立っているミィの姿があった。アリアや他のみんなは無事であり、どうやら彼女が守ってくれたようだ。
しかし、モコモコピエロは容赦なく攻撃を仕掛ける。ミィが展開した結界を破ろうとステッキを振り、爆発を起こし続けていた。
「ぐぅぅ、こいつめ。おい、神よ! あまり長く持たん。早くどうにかしろ!」
ミィの叫び声を聞き、私はモコモコピエロに殴りかかる。夢中に攻撃しているためか、拳はこめかみを捕らえた。
そのまま力いっぱいに殴り飛ばすと、モコモコピエロはすぐに体勢を立て直し私をにらみつける。そして持っていたステッキを振り、私に攻撃を仕掛けてきた。
身を守り、反撃しようと身構えるが、その瞬間にミィが叫んだ。
「避けろ!」
咄嗟に回避行動を取ると、再びすさまじい爆発が起きる。私は立っていた場所に目を向けるとそこは黒炎に包まれており、ありとあらゆるものが悶え苦しんでいるようにうめき声を上げていた。
「バカ、何ボサッとしておる! 攻撃が来るぞ!」
ミィに言われ、私はモコモコピエロの攻撃を回避する。この爆発、もしかすると想像以上に危険なものかもしれない。もし少しでも掠れば私とてただでは済まないかもな。
だが、このまま躱し続けていてもどうしようもない。どうにか奴の隙を見つけ出し、強烈な一撃を入れなければ。
「ちょっと何? とってもうるさいんだけど」
私が攻撃しあぐねていると、主が騒ぎを聞きつけてやってきてしまった。ああ、ただでさえ今は相手することが難しいのに。
そう思っていると、なぜか主が黄色い声を上げる。
「ちょっとちょっと、モコモコピエロじゃない! なんでここにいるの? いないって言ってたでしょ!」
「わからん! とにかくおばちゃんは下がって――」
「あれ今日のお得な魔物よ! 捕まえなきゃいけないわ!」
なんてことだ。そういえば今日のお得情報にモコモコピエロがいたな。ああ、なんてことなんだ。主が大興奮してこっちに乗り込んできたじゃないか。
頼む、これ以上面倒ごとを増やさないでくれ。
「ギギッ!」
モコモコピエロが主にステッキを振る。私は咄嗟に走るが、間に合いそうにない。このままでは主がやられる、と思った瞬間に主はあるものをポケットから取り出した。
それは不思議な形をした機器だった。
「ちょっと、ここホコリっぽいんだけど! ダメよこれ、お外だとしても綺麗にしなきゃ」
主が手にした機器を握ると、ものすごい音と共におかしなことに爆発がそこに吸い込まれていった。空気を吸い込むそれはどんどん爆発と瘴気にまみれた炎を飲み込んでいく。
なんだあれは。そう感じて見ているとミィとモコモコピエロもあんぐり口を開いていた。
主はそのまま散らかった大地を綺麗にし、満足げな笑顔を浮かべる。モコモコピエロはそんな主を見て挑発されたと勘違いしたのか、「ギギィッ!」と叫んだ。
「あら、あなたちょっと汚いわね。待ってて、吸い取ってあげるから」
そういって主はモコモコピエロに近づいていく。威勢を張っていた奴はそれを見て一目散に逃げようとした。
私はその光景を見てすぐに魔法を発動させる。モコモコピエロが移動しにくいように大地を沼化させると、そのまま奴は足が取られて倒れた。
『主よ、奴は捕らえた! 遠慮なく綺麗にしてくれ!』
「神様ないすぅー。じゃ、遠慮なく綺麗にしてあげるわねぇぇ」
「キギャアァァァ!」
こうしてモコモコピエロがまとっていたどす黒い瘴気は吸い込まれていく。奴はとても苦しんでいたが、全て吸い込まれるとそのまま気絶してしまった。
ひとまず、どうにか乗り切ることに成功したが油断ならないな。十分に用心していこう。
まあ、魔王の根源となる瘴気の力が弱まったことが原因だろう。元に戻るためには見習いメイドのアリアが作る料理を食べなければならないのだが、ミィはヤケになって浄化作用がある主のビスケットを食べまくっていた。
もしかするとそのうち消滅するんじゃないか、あいつは。
「う、うぅ。なぜじゃ、なぜこんなにも愛らしい姿になってしまったんじゃ!」
「わかりません。ですけど、ミィ様とってもかわいいです。今度、私のお下げをあげますね」
「いらないのじゃ! ああ、数十年かけてやっと大きくなってきた胸が小さくなってしまったのじゃ。なぜじゃ、なぜこんなことになったんじゃ!」
「身体も小さくなっちゃったしね。ちょっと待ってて、あり合わせで服を作ってあげるわ」
「ううぅっ。このまま裸になるのは嫌なのじゃ。頼む、早く服を作ってくれー!」
魔王も大変なものだ。まあ、私はあまり関係がないことだが。ひとまず主が服を作っている間にどういう道を進むか考えておくか。
地図を見た限り、魂の神殿はここから北東の位置に存在する。魔王軍がいない今なら真正面から神殿に入ることができそうだ。わざわざ魔物と鉢合わせする道なき道を通る必要はなさそうである。
だが、瘴気があふれているなら少し考える必要があるだろう。あまりにも濃度が濃いならまとまって行動したほうがいいかもしれないしな。
「できたわよぉぉ!」
「なんじゃこの服は! 厳ついネコが腹で叫んでおる!」
「それはライオンよライオン。名付けるならライオンワンピースよ。オスライオンでもよかったけど、ミィちゃんは女の子だからメスライオンにしておいたわ」
「カッコ悪いのじゃ! 厳つすぎて逆にダサいのじゃ! ああ、こんなの嫌じゃ。アリア、お前のお下げでいいから服をくれー!」
「お城に戻らないとありませんよ。申し訳ございませんが、しばらくガマンしてください」
「なんということじゃ……ああ、誰でもいい。わしに、わしに服をくれー!」
私が進路を考えているとミィは大きな絶望を抱いていた。腹、というか胴体いっぱいに大きな厳ついネコが叫んでいるような刺繍をされており、それがかわいらしい赤いワンピースに施されているのだからだろう。今のところ服はその一着しかないため、諦めて着るしかない状態だ。
そんな状態のミィを見て主は満足げな笑顔を浮かべていた。
「うぅ、こんな姿で外に出たくないのじゃ。わし、行かなくてもいいか?」
『ダメだ。お前がいないと話にならないだろ』
「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ! こんな姿で、しかもこんな服を見られたら笑われてしまう!」
『今は部下どころか人はいないだろ?』
「アリアがおる! あとお主らもな!」
「かわいいですよ、ミィ様! 赤いワンピースのお腹で叫ぶ厳ついネコってとっても斬新ですし、もしかしたら真似されるかも!」
「そんな訳あるか! わしをバカにしとるな、アリア!」
ミィの服がダサすぎたために大騒ぎである。そのせいもあり、全然出発する気配がない。
参った、このままでは日が暮れてしまう。その前に神殿の調査をしたいんだが。
「そんなにライオンが気に入らないの?」
「当たり前じゃ! せめて服に似合うかわいいものを刺繍してくれ!」
「ワガママねぇ。そんなんじゃあお嫁さんに行けないわよ!」
「いいから早く直してくれ! わしは恥ずかしくて堪らん!」
ミィに言われ、主は渋々服を作り直し始める。まあ、とんでもなく似合っていなかったというのもあるからな。いい感じに改善されることを願う。
さて、私は出発の準備でもしておくか。相棒は私が憑依するとして、主やミィ達のためにアイテムをそろえておこう。
そんなことを考えていると、少し遠くから「うわぁっ」という声が響いた。反射的に視線を向けると、そこにはどす黒い何かをまとい赤く輝く目をした魔物がいる。
ふっくら膨らんだ体毛とステッキを持ち、どこかの冒険者から奪っただろう魔術師の帽子をかぶったそれを見て私は思わず顔を引きつらせた。
『モコモコピエロだと!?』
この地方にはいないはずの魔物が、目の前にいる。しかもなんだか危険な力を身体にまとっている。
もしやあれは、瘴気じゃないか? だとしたらマズいぞ。
『ミィ、みんなを守れ!』
私は咄嗟に叫ぶと同時にモコモコピエロはステッキを振った。直後、大きな爆発が起き、馬車ごと私をぶっ飛ばした。
あまりの爆発力に驚きつつも私は立て直し、立っていた場所に視線を向ける。すると布を巻いて身体を隠し立っているミィの姿があった。アリアや他のみんなは無事であり、どうやら彼女が守ってくれたようだ。
しかし、モコモコピエロは容赦なく攻撃を仕掛ける。ミィが展開した結界を破ろうとステッキを振り、爆発を起こし続けていた。
「ぐぅぅ、こいつめ。おい、神よ! あまり長く持たん。早くどうにかしろ!」
ミィの叫び声を聞き、私はモコモコピエロに殴りかかる。夢中に攻撃しているためか、拳はこめかみを捕らえた。
そのまま力いっぱいに殴り飛ばすと、モコモコピエロはすぐに体勢を立て直し私をにらみつける。そして持っていたステッキを振り、私に攻撃を仕掛けてきた。
身を守り、反撃しようと身構えるが、その瞬間にミィが叫んだ。
「避けろ!」
咄嗟に回避行動を取ると、再びすさまじい爆発が起きる。私は立っていた場所に目を向けるとそこは黒炎に包まれており、ありとあらゆるものが悶え苦しんでいるようにうめき声を上げていた。
「バカ、何ボサッとしておる! 攻撃が来るぞ!」
ミィに言われ、私はモコモコピエロの攻撃を回避する。この爆発、もしかすると想像以上に危険なものかもしれない。もし少しでも掠れば私とてただでは済まないかもな。
だが、このまま躱し続けていてもどうしようもない。どうにか奴の隙を見つけ出し、強烈な一撃を入れなければ。
「ちょっと何? とってもうるさいんだけど」
私が攻撃しあぐねていると、主が騒ぎを聞きつけてやってきてしまった。ああ、ただでさえ今は相手することが難しいのに。
そう思っていると、なぜか主が黄色い声を上げる。
「ちょっとちょっと、モコモコピエロじゃない! なんでここにいるの? いないって言ってたでしょ!」
「わからん! とにかくおばちゃんは下がって――」
「あれ今日のお得な魔物よ! 捕まえなきゃいけないわ!」
なんてことだ。そういえば今日のお得情報にモコモコピエロがいたな。ああ、なんてことなんだ。主が大興奮してこっちに乗り込んできたじゃないか。
頼む、これ以上面倒ごとを増やさないでくれ。
「ギギッ!」
モコモコピエロが主にステッキを振る。私は咄嗟に走るが、間に合いそうにない。このままでは主がやられる、と思った瞬間に主はあるものをポケットから取り出した。
それは不思議な形をした機器だった。
「ちょっと、ここホコリっぽいんだけど! ダメよこれ、お外だとしても綺麗にしなきゃ」
主が手にした機器を握ると、ものすごい音と共におかしなことに爆発がそこに吸い込まれていった。空気を吸い込むそれはどんどん爆発と瘴気にまみれた炎を飲み込んでいく。
なんだあれは。そう感じて見ているとミィとモコモコピエロもあんぐり口を開いていた。
主はそのまま散らかった大地を綺麗にし、満足げな笑顔を浮かべる。モコモコピエロはそんな主を見て挑発されたと勘違いしたのか、「ギギィッ!」と叫んだ。
「あら、あなたちょっと汚いわね。待ってて、吸い取ってあげるから」
そういって主はモコモコピエロに近づいていく。威勢を張っていた奴はそれを見て一目散に逃げようとした。
私はその光景を見てすぐに魔法を発動させる。モコモコピエロが移動しにくいように大地を沼化させると、そのまま奴は足が取られて倒れた。
『主よ、奴は捕らえた! 遠慮なく綺麗にしてくれ!』
「神様ないすぅー。じゃ、遠慮なく綺麗にしてあげるわねぇぇ」
「キギャアァァァ!」
こうしてモコモコピエロがまとっていたどす黒い瘴気は吸い込まれていく。奴はとても苦しんでいたが、全て吸い込まれるとそのまま気絶してしまった。
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