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★0★ パーティー追放された俺と眠りから覚めた賢者
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「シキ、悪いがパーティーから抜けてくれ」
俺は唐突にパーティーリーダーから追放宣言をされた。
思わず「どうして?」と訊ねると、リーダーが申し訳なさそうな顔をしてこう答えてくれる。
「実は、俺達の後見人であるリヒト様からの命令だ」
「ハァ!? またあいつか?」
リヒトはこのダンジョン王国の上位階層にいる人間だ。
リンベル家という貴族の一人であり、あまりいい噂がないお偉いさんだ。
なんでそんな人間の命令を聞かなければならないのかというと、まあちょっと面倒な事情が絡んでいるためでもある。
いろいろ掻い摘んで説明するならば、リンベル家に世代交代が起き、パーティーの後見人がリヒトになってしまった。
そしてパーティーの存続させるために命令を聞かざるを得ないという状況なのだ。
「すまない。お前は盾役だし失いたくない。本当なら駆けあって命令の取り下げを申し立てたいところなんだが――」
「そこまでしなくていいよ。下手したらパーティー解散させられるだろ?」
「せめてだ。俺の知り合いがリーダーをやっているパーティーがある。紹介をするからそこで――」
「いいって。自力でどうにかするよ」
そういって俺はパーティー追放を受け入れた。
しかし、リヒトの奴はなんで俺をこうも目の敵にするんだ?
まあ、気に入らない奴だし、公の場でぶん殴ったこともあったけど。
それがいけなかったかな?
思えばよくそんなことをして死刑にされなかったもんだ。いくらあの時、先代の意向が強かったとはいえ生きていられたな。
でもまあ、今はそんなこといいか。
明日からどうやって生きていけばいいだろう。
ソロで活動という手もあるけど、さすがにそんな実力は持ち合わせていない。
とはいえ、新しいパーティーに入るのもなぁー。
あのリヒトが後見人だった、というだけでもパーティーに所属しにくいのに。
いっそのこと作るか?
だが、俺は全くパーティー運営の実績はないからロクな奴が来なさそうだけど。
「困ったもんだ」
俺は頭を抱えながらギルドへ訪れた。
いつもなら他のメンバーがいるが、今はソロだ。
だからなのか、俺が一人で入ってきた瞬間に何人かが怪訝な目を向けた。
もしかしたらパーティーを追放されたことが話として出回っているかもな。
そんなこと思いながら受付嬢に相談してみることにした。
「はいはーい、どうしましたか?」
「ネルさん、おはよう。ちょっと相談があるんだけどいいかな?」
「相談ですか?」
「実は今日からフリーになりましてね。もしよかったらいいパーティーを紹介してほしいんですよ」
「あー、ちょっと待ってくださいね」
受付嬢のネルさんがパタパタと走りながら奥へ消えていく。
何か書類やら周りから話を聞いたりやらをして情報を集めている姿が健気でかわいい。
ふと、何気にカウンターの隅に古びた本が置かれているのを発見した。
もしかしてダンジョンで発見されたアイテムか?
鑑定品ならこんな所に置いていちゃいけないだろ。
誰かに盗まれるといけないし、移動させるか。
そう思い、俺は本に触れた。
「うおっ!!!」
その瞬間、本がひとりでに開き、とんでもない光と風が巻き起こる。
積まれていた書類が飛び、さらに設置されていた木のオブジェやらが倒れていく。
な、何が起きたんだ!?
そう思っていると本が閉じる。
そしてゆっくりと浮かび上がり、俺の手に収まった。
思わず視線を落とし、俺は本を見つめるとその表紙に顔が浮かんだ。
〈全く、ワシの封印を解くのはかわいい女の子だと思っておったのにのぉー〉
「うわっ!」
な、なんだこれ!
本が喋ったぞ!
〈これこれ、落ち着け。ワシはモンスターの類ではない〉
「信じられるか! つーかなんで本が喋ってるんだよ!」
〈深い事情があるんじゃよ。まあ剣を収めよ〉
とりあえず臨戦態勢を取った俺は、周りに目を向ける。
他の冒険者は冒険者で武器を手に取り、今か今かと本に襲いかかろうとしていた。
まあ、こんな状況なら普通モンスターだと思うよな。
だが、それを止める人がいた。
「静粛に、みなさん静粛に」
それは受付嬢のネルさんだ。
彼女は乱闘になりかけた現場を抑え、冒険者達を沈め始める。
「ここをどこだと思っていますか? もし暴れたら罰則ですよ罰則!」
「いや、しかしネルさん」
「とにかく座った座った。あと、害があるならその本はとっくに処分してますよ。だから落ち着いてください」
俺はそう諭されて、仕方なく武器を収めた。
そのままカウンター席に腰を下ろし、ネルさんと向き合う。
「すみません、お騒がせしました」
「いえ。でもまさか、この本に意思が宿っているとは思いませんでしたけどね」
〈ヒューヒュー! 姉ちゃんカッコよかったぞ! よかったらお茶でもせんか?〉
「ふやけちゃいますよ。えっと――」
〈アルフレッドじゃ。アルフと呼んでくれ、レディ〉
「名前を教えてくれてありがとうございます、アルフレッドさん」
なんかサラッとこの本の言葉を巧みに躱しているな。
まあ、美人だからそういう言い寄られには慣れているんだろう。
「あ、お待たせしました。シキさん、新しいパーティーについてなんですけど」
「いいのありましたか!?」
「いえ、残念ながらシキさんに見合うパーティーはありませんでした。あるとしても駆け出しパーティーぐらいで、シキさんのレベルには見合わないかと」
うーん、やっぱりそうか。
まあ、駆け出しを育ててダンジョンを駆け上がれるようにするって方法もあるが、さすがに時間がかかりそうだ。
どうしたものか。
〈お主、パーティーに入りたいのか?〉
「うん? まあ、そうだけど」
〈なら作ればよい〉
「そう言われてもな。募集をかけても……」
〈何を言っている? ここにちょうどいい人材がいるだろ?〉
ちょうどいい人材?
そんなのどこにいるんだ?
俺は違うとして、目の前にいるネルさんは受付嬢だし、そんな都合のいい人なんていないだろ。
と、思っていたらアルフレッドがエヘンとした胸を張っているような表情を浮かべていた。
「まさか、お前のことか?」
〈そのまさかじゃ! こう見えてもワシは賢者。魔法は大得意じゃぞ!〉
「いやいやいや、それ以前の問題が山ほどあるだろ。そもそもギルドがお前を冒険者として認めるか?」
〈むっ、嫌なことを指摘するな。だが、ワシは諦めんぞ!〉
「諦めないって言ってもなぁー。ネルさん、こいつ連れていっても大丈夫ですか?」
まあ、ものは試しにという言葉があるので試しに聞いてみた。
するとネルさんは下顎に人差し指を添え、うーんと唸りながらこう答えた。
「上に聞かないとわからないところがありますが、たぶん大丈夫だと思いますよ」
「え? マジですか?」
「はい。ダンジョンに挑戦する者はたくさんいればいるほどギルドとしては嬉しいので」
来るもの拒まず、ということか。
俺は大きくため息を吐いて肩を落とすと、アルフレッドがニッコリ笑った。
〈パーティーを組むぞ、若いの!〉
なんだか面倒な奴と行動することになった。
そう感じつつも、俺はアルフレッドの押しに負けパーティーを組む。
まさか本とパーティーを組むことになるとは。
そう思いつつ、俺をリーダーとしたパーティーが新設された。
ま、いいか。
とにかく活動ができるんだからそう思うことにしよう。
だが、その考えは甘かったことを俺は知ることになる。
それと同時に心の奥底にしまい込んでいた【夢】に向き合うことにもなり、突き進んでいくのだが、そのことをこの時の俺は知らない。
俺は唐突にパーティーリーダーから追放宣言をされた。
思わず「どうして?」と訊ねると、リーダーが申し訳なさそうな顔をしてこう答えてくれる。
「実は、俺達の後見人であるリヒト様からの命令だ」
「ハァ!? またあいつか?」
リヒトはこのダンジョン王国の上位階層にいる人間だ。
リンベル家という貴族の一人であり、あまりいい噂がないお偉いさんだ。
なんでそんな人間の命令を聞かなければならないのかというと、まあちょっと面倒な事情が絡んでいるためでもある。
いろいろ掻い摘んで説明するならば、リンベル家に世代交代が起き、パーティーの後見人がリヒトになってしまった。
そしてパーティーの存続させるために命令を聞かざるを得ないという状況なのだ。
「すまない。お前は盾役だし失いたくない。本当なら駆けあって命令の取り下げを申し立てたいところなんだが――」
「そこまでしなくていいよ。下手したらパーティー解散させられるだろ?」
「せめてだ。俺の知り合いがリーダーをやっているパーティーがある。紹介をするからそこで――」
「いいって。自力でどうにかするよ」
そういって俺はパーティー追放を受け入れた。
しかし、リヒトの奴はなんで俺をこうも目の敵にするんだ?
まあ、気に入らない奴だし、公の場でぶん殴ったこともあったけど。
それがいけなかったかな?
思えばよくそんなことをして死刑にされなかったもんだ。いくらあの時、先代の意向が強かったとはいえ生きていられたな。
でもまあ、今はそんなこといいか。
明日からどうやって生きていけばいいだろう。
ソロで活動という手もあるけど、さすがにそんな実力は持ち合わせていない。
とはいえ、新しいパーティーに入るのもなぁー。
あのリヒトが後見人だった、というだけでもパーティーに所属しにくいのに。
いっそのこと作るか?
だが、俺は全くパーティー運営の実績はないからロクな奴が来なさそうだけど。
「困ったもんだ」
俺は頭を抱えながらギルドへ訪れた。
いつもなら他のメンバーがいるが、今はソロだ。
だからなのか、俺が一人で入ってきた瞬間に何人かが怪訝な目を向けた。
もしかしたらパーティーを追放されたことが話として出回っているかもな。
そんなこと思いながら受付嬢に相談してみることにした。
「はいはーい、どうしましたか?」
「ネルさん、おはよう。ちょっと相談があるんだけどいいかな?」
「相談ですか?」
「実は今日からフリーになりましてね。もしよかったらいいパーティーを紹介してほしいんですよ」
「あー、ちょっと待ってくださいね」
受付嬢のネルさんがパタパタと走りながら奥へ消えていく。
何か書類やら周りから話を聞いたりやらをして情報を集めている姿が健気でかわいい。
ふと、何気にカウンターの隅に古びた本が置かれているのを発見した。
もしかしてダンジョンで発見されたアイテムか?
鑑定品ならこんな所に置いていちゃいけないだろ。
誰かに盗まれるといけないし、移動させるか。
そう思い、俺は本に触れた。
「うおっ!!!」
その瞬間、本がひとりでに開き、とんでもない光と風が巻き起こる。
積まれていた書類が飛び、さらに設置されていた木のオブジェやらが倒れていく。
な、何が起きたんだ!?
そう思っていると本が閉じる。
そしてゆっくりと浮かび上がり、俺の手に収まった。
思わず視線を落とし、俺は本を見つめるとその表紙に顔が浮かんだ。
〈全く、ワシの封印を解くのはかわいい女の子だと思っておったのにのぉー〉
「うわっ!」
な、なんだこれ!
本が喋ったぞ!
〈これこれ、落ち着け。ワシはモンスターの類ではない〉
「信じられるか! つーかなんで本が喋ってるんだよ!」
〈深い事情があるんじゃよ。まあ剣を収めよ〉
とりあえず臨戦態勢を取った俺は、周りに目を向ける。
他の冒険者は冒険者で武器を手に取り、今か今かと本に襲いかかろうとしていた。
まあ、こんな状況なら普通モンスターだと思うよな。
だが、それを止める人がいた。
「静粛に、みなさん静粛に」
それは受付嬢のネルさんだ。
彼女は乱闘になりかけた現場を抑え、冒険者達を沈め始める。
「ここをどこだと思っていますか? もし暴れたら罰則ですよ罰則!」
「いや、しかしネルさん」
「とにかく座った座った。あと、害があるならその本はとっくに処分してますよ。だから落ち着いてください」
俺はそう諭されて、仕方なく武器を収めた。
そのままカウンター席に腰を下ろし、ネルさんと向き合う。
「すみません、お騒がせしました」
「いえ。でもまさか、この本に意思が宿っているとは思いませんでしたけどね」
〈ヒューヒュー! 姉ちゃんカッコよかったぞ! よかったらお茶でもせんか?〉
「ふやけちゃいますよ。えっと――」
〈アルフレッドじゃ。アルフと呼んでくれ、レディ〉
「名前を教えてくれてありがとうございます、アルフレッドさん」
なんかサラッとこの本の言葉を巧みに躱しているな。
まあ、美人だからそういう言い寄られには慣れているんだろう。
「あ、お待たせしました。シキさん、新しいパーティーについてなんですけど」
「いいのありましたか!?」
「いえ、残念ながらシキさんに見合うパーティーはありませんでした。あるとしても駆け出しパーティーぐらいで、シキさんのレベルには見合わないかと」
うーん、やっぱりそうか。
まあ、駆け出しを育ててダンジョンを駆け上がれるようにするって方法もあるが、さすがに時間がかかりそうだ。
どうしたものか。
〈お主、パーティーに入りたいのか?〉
「うん? まあ、そうだけど」
〈なら作ればよい〉
「そう言われてもな。募集をかけても……」
〈何を言っている? ここにちょうどいい人材がいるだろ?〉
ちょうどいい人材?
そんなのどこにいるんだ?
俺は違うとして、目の前にいるネルさんは受付嬢だし、そんな都合のいい人なんていないだろ。
と、思っていたらアルフレッドがエヘンとした胸を張っているような表情を浮かべていた。
「まさか、お前のことか?」
〈そのまさかじゃ! こう見えてもワシは賢者。魔法は大得意じゃぞ!〉
「いやいやいや、それ以前の問題が山ほどあるだろ。そもそもギルドがお前を冒険者として認めるか?」
〈むっ、嫌なことを指摘するな。だが、ワシは諦めんぞ!〉
「諦めないって言ってもなぁー。ネルさん、こいつ連れていっても大丈夫ですか?」
まあ、ものは試しにという言葉があるので試しに聞いてみた。
するとネルさんは下顎に人差し指を添え、うーんと唸りながらこう答えた。
「上に聞かないとわからないところがありますが、たぶん大丈夫だと思いますよ」
「え? マジですか?」
「はい。ダンジョンに挑戦する者はたくさんいればいるほどギルドとしては嬉しいので」
来るもの拒まず、ということか。
俺は大きくため息を吐いて肩を落とすと、アルフレッドがニッコリ笑った。
〈パーティーを組むぞ、若いの!〉
なんだか面倒な奴と行動することになった。
そう感じつつも、俺はアルフレッドの押しに負けパーティーを組む。
まさか本とパーティーを組むことになるとは。
そう思いつつ、俺をリーダーとしたパーティーが新設された。
ま、いいか。
とにかく活動ができるんだからそう思うことにしよう。
だが、その考えは甘かったことを俺は知ることになる。
それと同時に心の奥底にしまい込んでいた【夢】に向き合うことにもなり、突き進んでいくのだが、そのことをこの時の俺は知らない。
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