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第1章
28:歪んだ正義が待つ場所へ
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ゆらゆらと揺らめくたき火を眺めつつ、休息すること一時間。楽しく騒いでいたカナエ達はすっかり眠っていた。俺とグレン二号は眺めていたたき火から目を離し、気持ちよく寝ていたカナエ達の身体を揺らして出発の時間になったことを告げる。
十分とは言えないけどいい感じに休むことができたためかあって、カナエ達は気持ちよさそうに背筋を伸ばし身体を起こしていた。俺はそんな彼女達を眺めつつアイテムや装備を確認すると、一つドローンを発見する。
こいつのおかげでいろんな窮地を乗り切ってきたんだよな。
そう思い返し、俺は感謝の意を込めてちょっとだけボディーをから拭きしてやった。ふとカナエを見ると俺よりも本格的な点検をしており、さすが持ち主だと思ってしまう。
そんなこんなで準備を整え、俺達は休んでいたテントから出ると思いもしないものを目にした。
それは歯車だらけの迷宮には似つかわしくない立派な木の根だ。おかしなことにそれは壁や床、天井にビッシリと張りついている。
「なんだ、これ?」
思わず俺は言葉をこぼしてしまう。同じものを目にしたグレン二号やカナエ達も驚いているのかただ呆然とこの景色を見つめていた。
一体何が起きているのか。その答えを知るグレン二号が告げる。
『時間がないカ。急ぐゾ!』
グレン二号が走り出し、俺達はその背中を追いかける。木の根が張りついた通路を駆け抜けながら見渡すとさらにおかしなことにキノコやシダのような植物、ツタなどがあった。
明らかにおかしい。さっきまで機械的なモンスターが闊歩していたのにここだけが全く違う世界だ。
この迷宮で何が起きているんだ、って考えているとグレン二号は走るのをやめた。
『ここダ』
グレン二号は木の根に覆われた扉を見つめた。慎重に壁を探るように触れると、グレン二号は何かを押す。
途端に扉は開き、中から青い光がこぼれると一つの影が現れる。それはグレン二号に似た青を基調とした迷宮の住民だ。
『やっと助けがきタ。遅いぞコノヤロー!』
『遅くなってすまないな、ソウエイ一号』
『おお、グレン二号カ! よく来てくれたナ!』
『わかっていると思うが時間がなイ。やってくれるよナ?』
『ああいいゾ! 最後のひと仕事ダ!』
グレン二号とソウエイ一号が中へ駆け込んでいく。俺達は追いかけるように中へ入るとそこには大きな扉と二つのくぼみがあった。
グレン二号とソウエイ一号は互いの顔を見合わせ、そのくぼみに入ると閉ざされていた大きな扉に光が灯り始める。
『グオォォォォォ!!!』
『ギギギギギギギ!!!』
くぼみに入った二体は目を点滅させ、苦しんでいた。まるで身体からエネルギーが扉に注がれているように見える。
エネルギーをたくさん注がれた扉は徐々に開いていき、ついには完全に開放される。
『いいいいけぇぇぇェェッッッ!!!!!』
『オレ達はぁぁここでぇぇまままってるぅぅぅゥゥッッッ!!!!!』
『『絶対にどうにかしてこいィィィッッッ!!!!!』』
俺達は歩き出す。
この迷宮を危機から救い出すために。奥に何が待ち受けているのかわからないまま、進んでいく。
待ってるだろう井山を救い出すために。
あるかもわからないエリクサーを手に入れるために足を踏み出す。
待っていろ、と俺は心の中で決意を固めながらあいつが待つ最深部へと向かったのだった。
◆◆Side:久瀬義久◆◆
やれやれ、師匠の真似をするのは疲れるっす。にしてもまさか、あの伝説の探索者の弟子を敵にする日がくるとは思ってもなかったっすね。
しかも監査者を人質にしちゃったし、これ結構ヤバいんじゃないっすかね? 後で事情を話すとしても恨まれること必須だし。
そういや師匠は何してんすかね? 俺っち結構苦労して演じてきたんすけど。
っと、そう考えてたらスマホががなり出してるっすね。天宮羽美って、師匠の名前っすねぇ。なんかあったのかな?
「もしもし? 今言いつけ通りにケンカを売ってきたっすよ?」
『そうか、ちょうどいい。そのまま新条明志をねじ伏せろ』
「はっ? アンタ何を言って――」
『温情をかけてやろうと思ったが必要ないそうだ。久瀬、力の限りぶっ潰せ』
「いや、それダメっしょ。だいたいこれは追加の――」
『いいからやれ。以上』
プツンッ、とという音と共に通話が終わった。
あー、何があったかわからないっすが面倒なことになったっすね。まあ、命令なら仕方ないっすかね。
「あんまり本気になりたくないっすけどねぇ」
でもやれって言われたからやるっきゃないっすね。しゃーなし、やってやりましょうか。
本気を出すのは久々っすが、まあ恨むなら師匠を恨んでくれっす。
さて、要望に応えて大暴れしちゃうっすよ。
さあ来い、新条明志。お前の力を俺っちに見せつけてくれっす!
十分とは言えないけどいい感じに休むことができたためかあって、カナエ達は気持ちよさそうに背筋を伸ばし身体を起こしていた。俺はそんな彼女達を眺めつつアイテムや装備を確認すると、一つドローンを発見する。
こいつのおかげでいろんな窮地を乗り切ってきたんだよな。
そう思い返し、俺は感謝の意を込めてちょっとだけボディーをから拭きしてやった。ふとカナエを見ると俺よりも本格的な点検をしており、さすが持ち主だと思ってしまう。
そんなこんなで準備を整え、俺達は休んでいたテントから出ると思いもしないものを目にした。
それは歯車だらけの迷宮には似つかわしくない立派な木の根だ。おかしなことにそれは壁や床、天井にビッシリと張りついている。
「なんだ、これ?」
思わず俺は言葉をこぼしてしまう。同じものを目にしたグレン二号やカナエ達も驚いているのかただ呆然とこの景色を見つめていた。
一体何が起きているのか。その答えを知るグレン二号が告げる。
『時間がないカ。急ぐゾ!』
グレン二号が走り出し、俺達はその背中を追いかける。木の根が張りついた通路を駆け抜けながら見渡すとさらにおかしなことにキノコやシダのような植物、ツタなどがあった。
明らかにおかしい。さっきまで機械的なモンスターが闊歩していたのにここだけが全く違う世界だ。
この迷宮で何が起きているんだ、って考えているとグレン二号は走るのをやめた。
『ここダ』
グレン二号は木の根に覆われた扉を見つめた。慎重に壁を探るように触れると、グレン二号は何かを押す。
途端に扉は開き、中から青い光がこぼれると一つの影が現れる。それはグレン二号に似た青を基調とした迷宮の住民だ。
『やっと助けがきタ。遅いぞコノヤロー!』
『遅くなってすまないな、ソウエイ一号』
『おお、グレン二号カ! よく来てくれたナ!』
『わかっていると思うが時間がなイ。やってくれるよナ?』
『ああいいゾ! 最後のひと仕事ダ!』
グレン二号とソウエイ一号が中へ駆け込んでいく。俺達は追いかけるように中へ入るとそこには大きな扉と二つのくぼみがあった。
グレン二号とソウエイ一号は互いの顔を見合わせ、そのくぼみに入ると閉ざされていた大きな扉に光が灯り始める。
『グオォォォォォ!!!』
『ギギギギギギギ!!!』
くぼみに入った二体は目を点滅させ、苦しんでいた。まるで身体からエネルギーが扉に注がれているように見える。
エネルギーをたくさん注がれた扉は徐々に開いていき、ついには完全に開放される。
『いいいいけぇぇぇェェッッッ!!!!!』
『オレ達はぁぁここでぇぇまままってるぅぅぅゥゥッッッ!!!!!』
『『絶対にどうにかしてこいィィィッッッ!!!!!』』
俺達は歩き出す。
この迷宮を危機から救い出すために。奥に何が待ち受けているのかわからないまま、進んでいく。
待ってるだろう井山を救い出すために。
あるかもわからないエリクサーを手に入れるために足を踏み出す。
待っていろ、と俺は心の中で決意を固めながらあいつが待つ最深部へと向かったのだった。
◆◆Side:久瀬義久◆◆
やれやれ、師匠の真似をするのは疲れるっす。にしてもまさか、あの伝説の探索者の弟子を敵にする日がくるとは思ってもなかったっすね。
しかも監査者を人質にしちゃったし、これ結構ヤバいんじゃないっすかね? 後で事情を話すとしても恨まれること必須だし。
そういや師匠は何してんすかね? 俺っち結構苦労して演じてきたんすけど。
っと、そう考えてたらスマホががなり出してるっすね。天宮羽美って、師匠の名前っすねぇ。なんかあったのかな?
「もしもし? 今言いつけ通りにケンカを売ってきたっすよ?」
『そうか、ちょうどいい。そのまま新条明志をねじ伏せろ』
「はっ? アンタ何を言って――」
『温情をかけてやろうと思ったが必要ないそうだ。久瀬、力の限りぶっ潰せ』
「いや、それダメっしょ。だいたいこれは追加の――」
『いいからやれ。以上』
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あー、何があったかわからないっすが面倒なことになったっすね。まあ、命令なら仕方ないっすかね。
「あんまり本気になりたくないっすけどねぇ」
でもやれって言われたからやるっきゃないっすね。しゃーなし、やってやりましょうか。
本気を出すのは久々っすが、まあ恨むなら師匠を恨んでくれっす。
さて、要望に応えて大暴れしちゃうっすよ。
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