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気づいたら転生悪役令嬢だったので、メイドにお仕置きしてもらいます!

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ごとごとごとっ。


目の前に並べられていく凶悪そうな板や鞭やベルトに細い木の杖。

それらは彼女が見慣れたもので、この国ではお仕置きによく使われるものだった。


「えっ、えっ…」


彼女は、アリシアはメイド仕事で少し荒れた両手で口から飛び出しそうになった困惑をどうにか堪えた。

それはそうだろう。

それを持ってきたのはこの屋敷の16歳になる令嬢で、昔からそれはそれは高慢で傲慢で冷酷な少女だったからだ。

ご主人様の娘で、将来的にも自らの主人になる少女。逆らえるはずもなく、三つほど年の離れたこの令嬢からことある事に失敗を咎められて、部屋に呼び出されては酷くお尻を鞭打たれていた。

「お、お嬢様…あの、まさか…これで…」

 何か機嫌を損なう事をしてしまったのだろうか?これだけのお仕置きが一斉に自分に降り掛かってくるのかと思うと、アリシアは足が震えた。心臓が喉までせり上がり、体全体を振動させているかのようだった。

「お仕置き」

 令嬢は怒りに震えているのか、流れる金糸のような柔らかな髪で表情を隠すように俯いたままそう呟いた。

「そ、そんな…!お、お許しを!」

アリシアはお尻を守るようにメイド服のスカートの裾を掴み、ぎゅっと力を入れた。

 1ヶ月に一度あるかないかの頻度でお嬢様の母親、女主人からは鞭を貰うことはあるが、お嬢様から貰うお仕置きはそれの比ではない。軽いものなら毎日のように、酷いものでも週に一度や二度はある。
 アリシアはそれだけの目に合いながらもこの愛らしくも美しいお嬢様を憎くは思っていなかった。お仕置きなどされた事もなく甘やかされ育ったとはいえ、忙しくしている両親の愛を真に受けているとは言えない少女。それをアリシアは敏感に感じ取り、気には掛けていた。
 結果として、お嬢様ミリィはそれが気に入らないのだろうが。

「私にしてちょうだい!」

「ふぇっ?」

びくりと顔を傾かせたせいで、何故かお嬢様に数日前に押しつけるように貰った良い細工の眼鏡がズレた。







 一週間ほど前突然、ミリィは自分が前世でハマりまくっていた「ときめきプリンセス」 の脇役、ミリィ・テイラーになっている事に気づいた。
似たような設定の小説を図書館で読んだ瞬間、彼女はそれを全て思い出したのだ。そして、その貴族の見本のような令嬢ミリィが我儘で傲慢で酷い人間だったかを。
 そうなると今まで癇癪や我儘で酷くお尻を鞭打ってきたアリシアに対しての罪悪感が消えずに何日も悩んでいたのだ。このままではいけない。
 何せアリシアは大人しく優しい性格このゲームの重要なキャラクターで、ミリィは前世で大好きだった。
それが目の前で動いて、喋っているのだ。できれば友達になりたい。嫌われキャラは嫌だ。

 それをどうにかするには…謝るしかない。それも誠心誠意。だが、あれだけ酷い事をしてきたミリィの事をいくら優しいアリシアだとしてもそんなに簡単に許すだろうか?いやいや、ありあえない。ミリィの前世で生きた二十数年間が女同士の怖さを叩きこんでいた。
 そして、思いついたのがやられたらやり返す。目には目を。歯に歯を。同じ事を気が済むまでしてもらう、という事だった。

「で、できませんよ、そんな事!」

「い、いいの!私反省したのよ。アリシアにとんでもなく酷い事してきたって。推しに許してもらいたいもん!」

「推し?」

「いや、それは良いんだけど…ともかく!私、アリシアと仲良くしたのよ!だから、ケジメつけたいのよ!お願い!」

 一歩下がって無理だと首を振るアリシアにミリィは曇りなき眼で必死に小さな拳を振り上げて熱弁する。何かの新しい企みかと怯えたアリシアもこれは本気だと思い始めていた。

「し、しかしお嬢様、本当によろしいのですか?い、痛いですよ?凄く泣いちゃいますよ?」

「いいの…酷いこと一杯しちゃったし、そうじゃないとアリシアと仲良くしちゃいけない気がするもの…む、鞭もパドルも使って、気が済むまでお尻叩きして下さい」

ミリィは生まれて初めてのセリフに首筋から耳まで真っ赤に染めながらも、勢いよく最高級品のふわふわのスカートを捲りあげ腰で止めると、恐る恐る純白のシルクのショーツをくるぶしまで落として丸く可愛いお尻を丸出しにした。
 今までのミリィなら侍女に着替えさせられるなんて当り前で貴族らしく恥ずかしがらなかっただろうが、前世でごく普通の女性だった今のミリィは相手が女性とはいえお尻を丸出しにするなんて死ぬほど恥ずかしかった。

「大丈夫よ、罠とかじゃないわよ?あ、念書とか書く?」

「ええ~…いや、そんな事おもってませんけど…う、う-ん…それでお嬢様の気が済むんですね?」

「凄い罪悪感あるの…お願いします…」

 ミリィはそういうと古ぼけた机に身体を伏せてきゅっと拳を握って恥ずかしさから死にそうになりながらお尻を突きだした。
 アリシアも優しい性格ではあるものの、小さな妹弟を躾けてきたこともあり、悪い事をした側の為にお仕置きが必要な事も理解はしていた。そして、何となく今までの数々の理不尽な事をされてきたことに対しての多少の怒りも覚えだす。

「わかりました。じゃあ、お嬢様には百回のお尻叩きをさせて頂きます。それで終わり。宜しいですね?」

「う、うん。お願い」

 ドキドキと心臓が高鳴る。記憶の中であれだけ振るっていた道具で生のお尻を打たれるのだ。とても痛いだろう。怖い。だが、それよりもアリシアに悪い事をしたという気持ちの方が強かった。
 後ろから道具を選ぶ音が聞こえる。どうやら一つ手に取ったようだった。前世では母親から平手でお尻を叩かれてお仕置きされた事はあっても道具までは使われる事は無かった。思わず立ち上がりそうになる足にどうにか力を入れてさらにぐっとお尻を突き出した。

「では、まずこの木のパドルで五十回。お嬢様が良く使われてましたよね。あんなにはしませんから大丈夫ですよ」

 そっと腰を上から押さえつけられる。その手は優しいが、もう片方に握られている木のパドルの凶悪さは使うたびにアリシアが泣き叫んでいたからミリィ本人が良く覚えていた。
 ピタピタと狙いをつけるようにミリィのお尻に硬い木のパドルが当たる。もうそれが五十回も振るわれようとしていた。

(ひ~、ミリィったらよくこんなものでアリシアのお尻力一杯叩けたわね…)

そのパドルの動きにミリィはお尻を震わせて手をしっかりと爪が食い込むほど握りしめ、身を縮めて歯を食いしばった。

「じゃあ、いきますね」

 バチンッ!

「いっ…!」

 ビリビリとした電気がお尻から身体中に走る。アリシアはそれほど強く打ってはいないが、それでもそれはすぐにミリィの白いお尻に紅い色を付けた。

 バチンッ!

「あっ…!」

 ミリィは眉を顰めて強く目を瞑る。左のお尻が乾いた音を立てて弾かれた。もっともっとミリィは叩いていた。アリシアはかなり手加減してくれている。それでも十分に痛みを感じた。

(いた~っ!?でも、でももっと酷い打ち方してたもんね…我慢しないと)

「ア、アリシア…もっと本気でやっていいわ。お、お仕置きだから…痛いけど…いいの!」

「お嬢様…ではもう少しだけ強くいきますよ」

バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!

「きゃっ!?あぅっ…!いぃっ!ああっ!?」

アリシアはミリィが本気でそう思っていると分かるとリズムよく次々とパドルをミリィのお尻へと振り下ろした。軽い風切り音とは違う重く強烈な痛み。それが丸出しになったミリィお尻で弾けて、ミリィは思わず我慢の出来ない悲鳴を上げてしまう。

「お嬢様大丈夫ですか?止めますか?」

「いっ…、大、大丈夫だから…ていうか…お仕置きだから私が暴れても止めないで百回終わるまでちゃんと叩いて…」

「そうですか。では、続けます。最後まできっちりとしますね」

 アリシアも覚悟を決めたのか思いきりとまではいかないまでもちゃんとお仕置きとしてパドルを振るい始めた。右のお尻、左のお尻、お尻の真ん中。痛みからお尻を逃がそうとしてしまうのをしっかりと腰を押さえつけて。

 バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!

「痛ぁいぃっ!ああっ!い、いたいっ!きゃあっ!」

 真っ白で傷一つなかったミリィのお尻はあっという間に真っ赤に腫れ上がり、その周りとのコントラストがはっきりと分かるほどになっている。ミリィは目に涙を浮かべ、悲鳴を上げながらもパドルを受ける為にしっかりと足に力を入れてお尻を突き出し続ける。 

(し、しぬ!しんじゃう~!お尻壊れる~!むりむりむりぃ!)

 前世では多少慣れていたお仕置きも今世のミリィは初めての事。パドルどころか平手のお仕置きでも泣き叫ぶだろう。それをどうにかこうにかよく我慢していた。

(ふふっ、あの意地悪なお嬢様があんなにお尻をぶたれて叫んでいるわ。いい気味だわ)

 バチィンッ!

「ああーっ!いたいぃいたいぃ…」

 パドル打ち五十回。時間にすればほんの数百秒。それでもミリィは早く早くと思ってどうにか耐えた。両のお尻の頂点に与えられた少しだけ強い五十打目にミリィは目の前がチカチカとした気がした。悲鳴を上げて背を弓なりにしならせた。

「パドル五十回終わりました。……お嬢様…お嬢様のお気持ちもう十分に分かりました。もう止めましょう?」

 優しくそういうアリシアにミリィは頷きたかった。前世のミリィなら母親にこう言われたら飛び上がって喜んだだろう。だが、そうはいかない。
 目の奥にアリシアの鞭打ちの痕で晒される無残なお尻の光景が消えない。少しお茶が熱い。歩き方が気に入らない。ちゃんと頭を下げなさい。こうしなさい、ああしなさい。
 逆らえないと分かっているアリシアにあれこれと文句をつけてはお尻を鞭打った。時には庭に一時間もお尻を晒したまま立たせたこともある。
 この世界の貴族の使用人は時としてそんな理不尽に目に合う事もあるのが普通と言えば普通だが、今のミリィにはそれが許容できない。

「はぁはぁ…ダ、ダメ。さっき決めたでしょ。私アリシアとお友達になりたい。それにはけじめがいるの。さ、次は何?ベルト?革鞭?」

 パンパンに腫れ上がった真っ赤なお尻をさらに差し出す。やっと半分。本当は止めたいところだが、そうもいかない。
 
「はぁ~、分かりました。ではあと五十回。お嬢様のお好きなケインにしましょう。これで本当におしまいですからね」

 一番痛くて辛い木の鞭。それで五十回。アリシアは鞭打ち百回など普通にされていたから単に一番痛いのを選んだだけだろうが、ミリィは目の前が暗くなるのを感じた。

(で、出た。鞭。木の鞭。躾の道具と言えばケインといわれるくらいだけど…ひ~、が、頑張れるかなぁ)

 ひゅんひゅんと風切音が聞こえる。アリシアや他の使用人を打った記憶はあっても打たれるなんてとんでもない。とんでもなく痛いんだろうなと思いながらもそれをしてきたのは前までものミリィだ。それだけは止めてくれとはとても言えない。

「ケイン打ち五十回です。お嬢様、お尻を出して逃がさないようにしてくださいね。他に当たると危ないですから」

 こくこくと涙を目尻浮かべながら頷く。言葉は出ない。口を開けば止めてと言いそうで。ミリィは頭の中で右往左往しながらも覚悟を決めている。

「困った方…いきますよ」

 ピシィッ!

「くぅっ…!うぅ…」

確かめるような一打。それでもパドルで十分に腫れ上がったミリィのお尻には強烈だった。一点集中の刺すような痛み。薄くミリィのお尻に線が入った。

 ピッシィッ!

「んんっ!」

 ぴしりぴしりと狭い部屋の中にお尻を打つ乾いた音が響き渡る。その度にミリィはくぐもった悲鳴を上げる。知らず知らずに溜まっていた涙は頬を伝っていた。

「あっ!ひっ!あっ、あっ!」

 徐々に慣らした打ち方からちゃんとしたお仕置きへ。もちろん、今までのミリィがしてきたような無茶はしないが、それなりのちゃんとしたお仕置きの打ち方へアリシアは変えていく。

 ビシィッ!ビシィッ!ビシィッ!ビシィッ!

「ひぃーっ!いたぁいっ!いやぁ!ああーっ!」

 ケインの数が三十を越した頃、今までのミリィからは考えられないような、もちろん前世の大人のミリィからもだが、我儘で高慢な態度が吹き飛び、幼子のように泣き叫んだ。
 アリシアはどうしようかと思ったが、今までの自分がされた鞭に比べればかなり優しい方だ。何よりミリィ自身が望んでいた。数はあと少し。アリシアは妹にお仕置きをしていると思いそのまま躾としてのお仕置きをし続けた。

(ぎゃあ~いたぁいっ!何これ鞭ってこんなに痛いの!?ひぃ~っ!いたいいたいいたいぃっ!)

 ミリィにとってはだが、あまりのケインの辛さに身悶えして黄金の髪を振り乱し、がりがりと古ぼけた机に爪を立てている。
 何度も何度もケインがミリィのお尻で弾けてじんじんとしたと灼けつく痛みがお尻全体を覆う。薄くではあるがお尻を横に何条もの蚯蚓腫れが紅く浮き上がっていて、しっかりとお仕置きを受けたお尻になっている。

 ビッシィッ!

「ひぃーっ!むりぃっ!いや、むりじゃなくて、きゃあ~っ!」

 ビシィッ!ビシッ!ビシィッ!

「いたいいたいぃっ!ああーっ!いたぁいっ!」

(あとなんかい!?しんじゃうんですけどぉ~!) 

 子供用のお仕置き程度のケイン打ち。とはいえケインはケイン。ミリィの真っ白で瑞々しかったお尻は真っ赤に腫れ上がり、蚯蚓腫れが重なりあって痛々しい。そのケイン打ちのお仕置きはそれが丁度五十回を数えるまで止む事は無かった。






 

 アリシアは複雑な気分で鼻を啜りながらケインの痕だらけになったお尻をしまうミリィの姿を見ていた。元々大人しくて優しい性格のアリシアは恐れと悲しみは持ちつつも、お仕えるするお嬢様に恨みはなかった。
 とはいえ、だ。アリシアとて人間。自分が受ける理不尽に怒りが心の奥底にあった事に今回の事で気づいた。泣いて許し乞うたお嬢様をもう今までのように恐怖の対象とは思えない。何があったかは知らないが、こうやって自分から謝りに来てくれたのだ、もうすべてを許してお仕えしていこうそう思ったのだ。

「あの、お嬢様…大丈夫ですか?お薬お持ちしましょうか?」

「ぐすっ…大丈夫よ。この何倍も酷い事アリシアにしちゃっていたんだからお尻のこの痛みでしっかりと反省しないと…」

 本当は記憶を取り戻す前の自分じゃないミリィがした事だが、それもミリィはミリィだ。これからしっかりと気をつけて周りに優しくしていかないといけない。その筆頭がアリシアだった。

「そ、そうですか?しかし、お嬢様はお仕置きなどされた事もない方。初めてでこれだけお尻を打たれら相当痛いと思いますが」

「うぅ…そうなんだけど…そうよね。やっぱり甘やかされてるように見えるわよね。うっ…ひぃ…いたたた…。ズキズキするぅ…でもアリシアはもっと痛かったもんね…そうだわ!」

 嫌な予感がする。そうアリシアは思った。ミリィが心を入れ替えたとはいえとんでもない事を言い出すのは同じなような気がした。今回だってそうだ。誠心誠意謝ってくれて、もう理不尽な事を言わなければそれでよあっただけなのだから。

「これからはアリシアが私を躾けてくれればいいのよ。お母様やお父様は私の事を死ぬほど甘やしてしまうから、私が何かしてしまったらアリシアが私のお尻を叩いてお仕置きしてちょうだい!」

「えええええええ~!?無理です!無理ですぅ!」

「良いから良いから!友達になって欲しいんだから当然今までの清算しないと!あいたたた…っ」

 ふわふわのスカートの上からお尻を押さえながら涙ながらに良い事を思いついたとばかりにそう言うミリィにアリシアは目を白黒とさせながら顔を真っ青にした。だって、ミリィは本気だと思ったからだ。

 そして、二人は少しずつ主従を超えた親友兼秘密の躾係としての関係を構築していくのだが、それはまた別の話。



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