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少年更生施設のお仕置き
しおりを挟む「ねえ、アンタさ。早く出した方がいいよ?鼻とか前歯とか大事にしなよ?」
ユウリは裕福とは程遠い。家にも帰らず、学校にも通わず。今、自分が十代の半ばだという事は覚えている。学年は知らない。死んだ母親譲りのアイドルそこのけの美貌が災いして、父親に売り飛ばされそうになってから一人で街で生きている。
「お、結構持ってるね。いいね、友達になろ?」
歓楽街の近くでブランド物を身に着けているホストやお坊ちゃんを狙う。
人通りの少ない裏路地に連れ込んで脅しつける。特殊警棒で看板をへこませ、そのまま振り下ろして額スレスレで止めてやる。それで、大抵は震える手で紙幣を掴んで渡してきた。ちょろいもんである。
あまりやり過ぎるとケツモチが出てきてどんな目にあわされるか分からないからほどほどにしないといけない。
「ちょっと飽きてきたなぁ。馬鹿なホスト殴んのは楽しいけど。札束持ってるし」
カラオケボックスの一室でユウリが電子タバコを吹かしながらそういった。喧嘩も金も大好きだが、スリルが足りなくなってきていた。猫のような大きな瞳に死んだイギリス人の母親譲りのプラチナブロンドのショートカットが良く似合う口の悪い美少年。
「いや~、顔が天才な未成年の強盗がいるってちょっと有名なってっからそろそろヤバイかもだしな」
年を誤魔化してバイトはしている。だがいくら金はあっても困らない。後ろ盾がないのだ。ストレス発散と生活費の供給の一石二鳥だったがそろそろ悪い怖い大人か国家的な怖い大人に見つかりそうだった。
「んじゃ、まぁ最後の稼ぎに行きますかぁ?」
少女のような華奢な指で自分の髪を弄びながら独り言ちた。だが、ユウリの歪な自由は終わりを告げようとしている。思わぬ形で。
金持ちのお坊ちゃんを狙って、カラオケボックスを出たユウリは路地の前に立って「獲物」を物色していた。
「ふぅん、いーじゃんあれ」
いかにも金持ち風のお坊ちゃんが歩ている。ゆるやかな淡い茶色の髪に、ブランドものらしい眼鏡。それに手入れの行き届いたピカピカの制服に高級腕時計。背が高いのが気になるが如何にも大人しそうな金持ちだった。
夜の帳はとうに落ちている。塾帰りの高校生かと思ったが、大学生くらいだろうか。ぼんやりと一人で繁華街を歩いているなんて素晴らしいとユウリは思った。ニシシと笑うとお坊ちゃんの行く手を阻むように近づく。
「ごめんね、そこの人。ちょっと困ってるんだ。スマホをそこの路地で落としたんだけど暗くてさ。スマホで照らしてくれないかな」
そう言いながらもユウリは彼の腕を掴み、無害そうな困り顔で路地の方へと引っ張る。
「え?大丈夫?いいよ、どの辺?」
心底からの親切心でそうしようとしてくれているのか、彼はユウリに引っ張られるままに路地へと入っていく。ユウリは見えぬようにニヤリと口元を歪ませた。
「どこかな?」
「多分、その変なんだよね~。親切な人がいて助かったよ~」
そう言いながら徐々に腕を掴む力を強くする。ユウリは華奢だが小さなの頃から街で喧嘩に明け暮れている。生まれつきの身体能力でその辺のチンピラとは比べ物にならないくらい強い。 少女のような細い華奢な身体は柔らかだが、力の入れ方次第で恐ろしい暴力装置に変わる。
「いや、君。そんなに引っ張らなくても大丈夫だよ」
「あーっと、ごめんごめん。ところでさ、学校帰り?買い物でもしようとしてた?」
「え?ああ、そうだよ」
路地に入ると手馴れた様子でユウリは確認した。金は持っているようだとニヤリと悪い顔で笑う。
「あー、スマホないわ!どーしてもスマホ無いと困るんだよなぁ!」
「ん?」
ユウリの茶番のような演技に戸惑う青年。目を丸くしてまだちゃんと探してもいないのに急に妙なことを言い出したユウリを見ている。
「つーわけでさぁ、悪いんだけどお金貸してよ?ちなみにさ~、これ知ってる?特殊警棒。ネットショップでヨンキュッパなのに凄い威力の優れもの」
大人しそうなお坊ちゃん風の青年を路地の奥へと立たせると自分は出口の方に立った。状況が飲み込めないといった感じで困惑する彼に、さらにユウリは腰に差していた特殊警棒を取り出すと、思い切り振りぬいて収納されている二段目と三段目を引き出した。
「スマホ本当に落としたの?…お金なんて貸せないよ、帰るね」
俯いたまま足早に立ち去ろうとする彼をユウリが腕を強く掴んで引き寄せた。
「おっと、どこ行くの、無理無理。まぁ、ボクは強盗って感じ?だから早く金出しなよ?真面目なガクセーさんに怪我なんかさせたくないんだよ、ね?」
ガキッという音がして彼の顔の横のコンクリートが僅かに弾けた。ユウリが警棒を叩きつけたのだ。
「……うん、確定」
「は?早く出せって言ってるだろ?これでちょっと頭コツンと、って、痛っぁああ⁉ちょ、痛い痛い痛いぃっ!」
ぱっと見お坊ちゃん風の大人しそうな青年なのは先ほどから変わらない。立ち姿や動きはゆっくりとしているように見える。
しかし、良く見れば困惑していた顔は見惚れるほどにこやかに笑っていて、その手はユウリの持っている警棒ごと腕を強く握りしめている。和やかな空気を持つ彼のそこだけが明らかに異質、異常だった。
「これってな、家に置いておくのはいいけど、車に置いたり、持ち歩いたりしたら軽犯罪になるんだよ?知らない?はい、没収」
青年は相変わらずゆっくとした動きだが、痛みに耐えかねたユウリのてからポロリと落ちた警棒を空いている方の手で受け取った。
「何すんだよっ!つーか、アンタ何…?」
「俺はね、君の事探してたんだ。警察に捕まる前に見つけないと本当に犯罪者になっちゃうからね。悪い子を見つけて躾て上げるのがお仕事の、ん~、先生か?」
先生と名乗った彼は警棒の先を苦も無く手で中に押し込んで収納すると、近くにあったゴミ箱へと放り込んだ。
ユウリはあり得ないものを見る目でぽかんとそれを見ている。テレビアニメでも見ているのかと思った。だってあり得ない。特殊警棒の先は強力なバネで収納されている。壁や床に叩きつけて収納するのが普通だし、手なんかで押し込める分けがない。二メートルを超えるようなプロレスラーじゃあるまいし。
「は、は~?センセーかよ。どこのセンセーか知らないけど、ボクには関係ないね。ばぁ~か!」
焦りを押し殺してユウリは悪態をつく。ゴリラみたいな芸当は見ない事にした。
「まー、ちょっと違うんだけどな。先生ってのはさ、悪い子を見つけてお尻ペンペンで躾けるんだよ。さて、カツアゲなんてした罰だ。お尻を出すんだ」
挑戦的なユウリと微笑みをたたえながらお仕置きを宣言する青年。非行少年が犯罪者になってしまう前に躾け直すのが彼らの仕事だという。
「な、何がお尻ペンペンだよ!馬鹿じゃねーの!?」
何が何だか分からないが、非常にマズイ気がした。ユウリには相手がまともじゃない事だけは良く分かった。ボコって速攻逃げる。ユウリはそう決めた。
「痛い目見ても知らないからな!」
小学校以来学校には一切通っていない。ほとんど反社の父親から逃げるようにして街に出てそこで生きてきた。生まれ持った身体能力と血の気の多さで街のチンピラ共相手にその暴力は実践向きに磨かれていた。
向かってくる相手には容赦はしないが、大人しくしてくれるなら無駄な怪我はさせたくない方だ。だが今は逃げる為には多少痛い目は見てもらわなければならない。
ユウリは腰の捻りの加わったしっかりとした右ストレートを放った。当たれば鼻血くらいは出るだろう。即座に追いかけてくる事は不可能になるだろう。だが。
「ほう、中々腰が入ってる」
「うっ…くっ…マジ…?」
彼は微笑んだままそのユウリの拳を軽く受け止めた。それを見たユウリは掴まれたままびくともしない自分の手を外そうと必死に力を籠めるがまるで動くことはない。
チンピラや逆襲してくるホストが痛みで動けなくなる威力があるはずだ。実際そうしてきたし、それを何度も指を差して笑ってやった。それが、軽く止められるとは。ありえない。相手はとんでもない怪物だった。
「それじゃ、お休み。起きたらたっぷりとお尻を叩いて上げよう。ユウリ君」
手が離されると同時にすれ違うように目の前まで来た彼がそう呟くと、顔が揺れた気がした。次の瞬間テレビのスイッチを切るようにユウリはフッと目の前が暗転した。
次にユウリが気がつくとそこは何もない十畳ほどの個室だった。いや、回りを見回すと壁に掛かったディスプレイが十台ほど並んでいる。しかも、それだけではなかった。後々全てをユウリ自身がその身で味わうことになるのだが、そのディスプレイ群の横には細長い木の棒や平たい木の板のような道具が所狭しと並べられている。後に、と言っても数日以内にだがユウリはそれらの名をケインやパドルだと知った。
「うわーっ!」「痛ぁいっ!」「ごめんなさいっ!」「やめてよぉっ!」「ひぃーっ!」
モニターの向こう側で同い年くらいの少年達がお尻を真っ赤に腫れ上がらせながら泣き叫んでいる。誰かの膝の上で、台に縛られて、機械のような物に拘束されながら様々な格好で。
「何だよ、ここ…って、ちょ、アンタ⁉」
ユウリはぼんやりとしていた頭がはっきりとしだすと、ようやく自分が奇妙な体制になっている事に気付いた。
がっちりとした温かい何かに身体を預けていた。それが、人肌の温もりで彼の膝の上に腹ばいにされていると分かるのにさらに数秒必要だった。手足が柔らかな布で縛られている事も。
縛られているものの、それはいわゆるOTKと呼ばれる強制的にお尻を突き出させる典型的なお尻ペンペンをするためのスタイル。さっき言っていたお尻ペンペンのお仕置きを本気でするつもりかとユウリは焦った。
「起きたかい?それだけ元気なら頭とか痛くないかな?締め技だとほら、失禁とかしてしまうと可哀想だから。指先で軽く顎先を狙ったから大丈夫だと思うんだけどな」
診察してもらったから大丈夫だと思うと、柔らかな声色でユウリの体調を聞いてくる。その声にユウリは声を荒げてその膝から逃れようと藻掻く。
「ボクのこと殴っといて何いってんだよ!ボクの事ラチってどうしようって気なんだよ!」
「指先で軽く突いただけじゃないか。君じゃあるまいし殴ったりなんかしないさ。ああ、お尻以外はね」
ユウリは彼の膝に縛られた状態で肘を打ちつけたり、両手を膝に突っ張って降りようとしながら、矢継ぎ早に大声で怒鳴る。しかし、彼はユウリのそんな行動を苦笑いしながら巧みに躱し、抑えつけてしまう。
「放せよ!ここはなんなんだよ!」
「だからここは「施設」だよ、悪い子の為のね。さて、細かい説明は後でして上げるとして、それだけ元気ならお仕置きに耐えられそうだね。約束通りしっかりとお尻ペンペンして上げよう」
「は…?ば、馬鹿じゃねーの⁉ボクは子供じゃないぞ!お、お尻…ペンペンなんてふざけっ…って、ちょっと、オイっ!?」
彼はユウリの言葉を最後まで聞く前に、ユウリの履いていたベルトの無いカーゴパンツの前のボタンを外して、ずるずると膝のあたりまで引き下ろす。ユウリの無地の黒のボクサーパンツが露になる。
「はははっ、生意気な口利いていてもお尻はまん丸で可愛いじゃないか。さて、悪い子のお尻を出してしまおうか」
「やめっ、ちょ、やめろ!やめろってマジで!やだっての!ちょ…こら!マジやめてっ!」
彼の指がゆっくりとユウリのボクサーパンツに滑り込む。年相応に恥ずかしがるユウリの態度を微笑ましく思いながらも、恥ずかしいのもお仕置きの内だからと十分に時間を掛けて膝でカーゴパンツと重なるように下ろしてしまう。ユウリの瑞々しい中性的な小振りで形のよい丸いお尻が完全に外気に晒されてしまった。
「~~~っ!」
どれだけ意地を張っても力では叶わない。焦って肘や膝を打ち付けようにも縛られていて力は入らなかった。もっともそれらが彼に当たったところで恐らく少し痛い程度としか思わないだろう。
ユウリは「犯罪者」だという自覚はあったが、少年らしく軽く考えていた。生きていく為という言い訳もあった。しかし、それに手を染めていてもユウリはまだ十代半ばの少年だ。どんな抵抗も出来ない状況に焦り、怯え、お仕置き前にユウリの心は折れかけていた。
「どうしたんだい?自分が他人を好きに嬲るのはいいけれど、自分がやられるのは嫌だとでもいうのかな?」
彼の口調が低く冷たく突き放すように変化した。今まで、仲の良い教師が優しく窘めるような口調だったものが、言い訳は許さぬと責めるような恐ろし気な酷吏のような態度。
「わか、わかったよ…もうしないって…ボクが悪かったから…だから…」
そう言いながら手を伸ばしてお尻を隠そうとするが、その手は簡単に振り払われてしまう。ユウリは生れて初めて他人にお尻を見られる、しかも突き出すような格好で。口惜しさと恥ずかしさから顔を耳まで真っ赤に染めている。
「そうだね、悪い子だ……だから、本当に反省するまで許さないよ!」
パァーンッ!
「いっ…!」
生まれて与えられたお尻の痛み。父親には怒鳴られたり殴られたりした事はあった。だが、叱られたり…ましてやお仕置きなんてされるのは生まれて初めてのことだった。
パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!
「ちょ、ちょ、マジか!?!痛ぁっ!待っててばぁ!ガキじゃないっ!あぅっ!やめろって!このっ!ふざけんな!」
ぎゃあぎゃあと文句を言いながら、ジタバタと膝の上で身を捩り藻掻くユウリ。しかし、彼は相変わらずその細身からは信じがたい怪力でユウリの腰をしっかりと押さえつけている。お尻が痛いなんてものではなかった。当然手加減はしているのだろうが、ユウリのお尻には手の平の形が一打ごとに重なって真っ赤に張り付いていく。
バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!
「いってぇっ!!ああーっ!やめ、やめて…っ!あぅっー!痛いぃ痛ぁいっ!」
恐らく他の子達と同様に自分も、子供のようにお尻をぶたれて暴れている姿を映されているだろう。しかし、プロレスラーのような怪力から生み出される強烈な平手という鞭と、慣れないお仕置きの痛みがそんな思考をあっという間にどこかに吹き飛ばしていた。
彼は手の平を細く伸ばして鞭のように使っている。ユウリは目尻に涙を溜めて彼の膝の上で大暴れをした。
「やめて?多分君がお金奪った人達もそう言わなかったかい?まったく、人からお金とってごめんなさいでだろう、ユウリ君!」
ビシィッ!ビシィッ!ビシィッ!ビシィッ!ビシィッ!
「わか、分かったから!ああっ!むりぃっ!もうむりだってっ!いたいぃっ!ごめ、ごめんなさいぃ!あやまる!あやまるから!」
ああ、どうして自分はこんな所で子供みたいにお尻を丸出しにされて叩かれているのだろう?
「…やっとごめんなさい出来たけど、お仕置きはまだまだこれからだ。どう?無理やりいう事を聞かされるのは嫌だろう?悪い子だっ!」
バッチィーンッ!
「ひぃーっ!」
彼の今日一番の容赦のない一打。際限のないお仕置きの痛みからじっとりと汗をかいていた背中が弓なりになって、両手がその場所から逃げ出そうと空を掴もうした。
既に十分に真っ赤に腫れあがっているユウリのお尻に思い切り叩きつけられた手の平の形に更に上書きされて紅く縁取られる。
「ほら、悪い子はもっとごめんなさいしないとな!」
悪い子?そう、自分は悪い子だからこうやってお尻を叩かれているのだ。何がいけなかったのか?分からない。いや、本当は分かっていた。復讐のように酷い事ばかりしてきた。ただの八つ当たりだ。
ユウリはとても現実とは思えない自分の置かれた状況の中で、なぜこうなっているのかノイズのように頭をかすめた。
パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!
「いぃーっ!いたいいたぁいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいぃ!いたいってっ!」
ユウリは泣き叫びながら謝った。ショートカットのプラチナブロンドを振り乱しながら顔をいやいやと振る。恥も外聞もない、そんな事はもう知らなかった。痛みだけに支配された思考は、ユウリをただの子供に戻していった。
「素直になってきたかな。じゃあ、ご褒美に「今日は」後百回で許してあげよう」
バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!
「もうやだってぇっ!ゆるしてよっ!ごめんなさいごめんなさぃっ!」
今までにもう百以上は打たれている。しかし、彼は膝の上で大暴れするユウリを更に厳しくお仕置きしていく。
彼の声はもうユウリには届いていないだろう。遠くで彼の声と自分のお尻を打つ音と他の少年の泣き叫ぶ声が聞こえている気がした。
バシィッ!バシィッ!バシィッ!
両足をジタバタと振り上げ、お尻を振って逃れようとするが、彼は事もなくユウリを打ち安い位置に戻してしまう。
「ユウリ君?素直にお仕置き受けれないならもっとお尻ペンペン増やそうか?」
パァーンッ!パァーンッ!パァーンッ!パァーンッ!
「いやだぁっ!だっていたいよぉっ!いやだぁっ!もう、むりぃ!ごめんなさいぃっ!」
「ふぅん、痛いの嫌いなのかい?人に痛いことしてたのに?変な子だね」
バッチィンッ!バッチィンッ!バッチィンッ!バッチィンッ!
「あああーっ!それいやだぁっ!いたいぃっ!ゆるしてぇっ!ひぃっ!」
お尻がずるずると膝から下がる度に軽々とまたお仕置きの場に戻される。そのほんの数十秒の間だけお尻打ちが止むが、その間は打たれたお尻のズキズキとした痛みがユウリのお尻全体を苛んでとても休憩にはならない。その繰り返しが何度も何度も続けられた。
紅いお尻に赤黒い痣。しかも、息が整ったとたんにまた打たれ慣れないところにとびきりと一打から始まるのだからたまったものではなかった。
結局ユウリは彼の厳しい平手を三百回以上も受ける羽目になった。膝の上から降ろされたユウリはお尻を隠す余裕すらなく、幼子のようにぺたりと床に座り込んでしゃくり上げている。ぐにゃりと潰れた尻肉が痛くてまた涙が溢れてきたが、床の冷たさが一回りも腫れがったお尻の熱を奪ってくれて少しだけ楽だった。
「どうだい?反省できたかな?言ってみなさい、ユウリ君」
お仕置きの恐怖から泣きじゃくるユウリに彼は冷たく言い放った。返し方によっては更なるお仕置きもありえるだろう。
「ひっ…ぐすっ…ひっくっ…した…しました…もう悪い事しないから…」
聞きようによってお仕置きが嫌なだけにしか聞こえないが、とりあえず彼は、まぁいいでしょうと許してやった。今日のお仕置きについては。
「じゃあ、もう一つ。今日から三か月…アルバイトの時間は意外はここで生活する事。今日ほどはしないけど、毎日お尻ペンペンだ。わかったかい?」
「な、なんで…?やだよ!だ、だってもうお仕置きしただろ!ボクはちゃんと謝ったぞ!」
両手で腫れ上がったお尻を摩りながら、涙ながらに抗議をするユウリ。暴れすぎたせいでカーゴパンツは脱ぎ捨てられ、足首に絡まっているボクサーパンツがお仕置きの厳しさを物語っていた。
「えーっ…恐喝と過剰防衛に…強盗かな?あー、俺に対する公務執行妨害もつけてもいいけど…立派な、立派過ぎるくらいの犯罪だよ。俺達はね、そうだな。公安ってわかるかい?それの非公開の青少年更生機関なんだよ」
正式に恐喝や強盗と改めて言われると、自分のしてきたことがそんな大それたことだと今更理解した。しっとりと覆っていた苦痛からくる脂汗が、冷や汗に変わって全身が冷たくなった気がした。
「家庭や学校の教育レベルが落ちているうえに、警察の手も足りない。法律で厳罰にするのも正しいけれど、ただ愛が足りなくて何も考えずに馬鹿なことをしているだけの子たちもいる。それを「救う」のが俺たちのお仕事さ。……君の場合は家庭環境が悪すぎたし、保護されるべきだ。それも嫌ならこのまま警察に行こう。情状酌量されたとしても鑑別所どころか少年院までいくくだろうね?」
自分が捕まるなど想像すらしたことがなかった。ちょろい連中を相手に街を泳いで生きてきた。自分より金を持っている奴らを少し脅したら面白いようにお金が手に入って。
だが強盗だと言われて、言葉にされてガツンと脳に響いた。鑑別所どころか少年院など。親が悪いと開き直る気はないが、そんな目に合うのは嫌だった。
「…三か月我慢したら、ホントに…警察は許してくれんの?」
「ええ。警察に突き出したって君のこれからの人生が狂うだけだよ。それは…俺は嫌だね。絶対に」
彼は哀しげにユウリを見た。学校の先生や親ですらしない、本当に子供を心配している目だった。何故そんな目をするのか今のユウリには分からなかった。
「分かった……よ。警察だけは嫌だ…。う、ううう受けるよ!受けたらいいんだろ!お、お尻ペンペン!」
「ハハハッ、分かってくれて良かった。良い子だな」
彼は顔を再び真っ赤にしながらそう言ったユウリの頭をゆっくりと慈しむように撫でた。ユウリは幼いころですらそうされた事があったか分からない体験に恥ずかしくなったが、俯いてされるがままに任せた。お尻のズキズキとした痛みとは裏腹にその優しい手つきにユウリは少しだけこのままが続けばいいと思った。
「だが、良かった、良かった。ちゃんと明日からここに帰ってくるんだよ?」
ユウリは恥ずかしさから奇声を上げて走り出しそうになるのをぐっと堪えた。
それに先程からわざとらしくお尻ペンペンを連呼しやがってと涙の残った目で睨んだが、彼はにこやかに笑っているだけだった。
「じゃあ、もう今日は一度家に帰っていいよ。ああ、そうか。住み込みだったね。まったく、歳のごまかしなんて分かっているだろうに。そうだな、君は保護対象でもあるからちゃんとした部屋を用意しよう。三か月後も住むかどうかは君にませるよ」
その言葉にユウリは現実に戻され、ぐしぐしと涙を拭くと慌てて痛いのを我慢して強引にボクサーパンツを履いた。そのまま顔を歪ませながらお尻が擦れるのも無視してカーゴパンツも引き上げる。そして、恥ずかしさと苛立ちから扉に向かって無言で足早に歩き出す。
「ユウリくーん、返事は?もう一度お膝に来るかい?」
「え、ちょ、わ、わかったよ!な、なんだよ、バカっ!」
脅されて慌てて返事をしたが、恥ずかしさは拭えなかった。横目で彼を睨みながら悪態をついて扉力任せに開けると部屋を飛び出していった。
「くくくっ、根は悪い子じゃないんだろうけどね。でも罪は償わないとな。三ヶ月間たっぷりと泣いてもらおうかな」
ユウリは文字通り骨身に染みるほど平手や道具でお尻を叩かれ、毎日泣き叫ぶ事となる。それだけ躾けても口の悪さや生意気さは直らなかったが、ちゃんと更生して最後には素直にお仕置きをお願い出来る程になるのだがそれはまた三か月後の話。
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