お留守番(サンコイチ番外編)

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お留守番

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 志方家にはテレビが無い。
 正確には、テレビの顔をした大画面のモニターしかない。

 幸尚の両親にテレビを見る習慣が無く、子供達もゲームをしたいときは幸尚の家、テレビを見たいときは奏の家と上手く使い分けていたのもあって、結局家にはテレビを置かないまま幸尚が大きくなり。
 結婚した段階でテレビを置くかどうか3人の間で話し合いは持たれたのだが「俺らがテレビをつけていたら、あかりが気を紛らわす手段ができてしまって良くない」という奏の主張により、あっさり見送られたのだった。

 だから、今もこの家にはテレビが無い。
 あかりがPCやスマホを使えるのは、仕事と月に1度の『幼馴染みの日』だけ。
 普段は完全に世間から隔離されたあかりにとって、所謂年中行事は自分とは別世界のイベントと化していた。

 それでも、日々の生活で伝え聞く日常の話に、ちょっと心がときめくことはあるのだ。

「……奏様、幸尚様、ちょっと相談が」

 あかりが二人に話しかけてきたのは、ちらほらと雪が舞う朝だった。
 排泄を終えて気怠さの残る様子で、しかしいつものようにしっかりと股を開いてしゃがんだ姿勢を取るあかりに「どうした?」と奏が尋ねる。

「えっと……クリスマスは、記念日扱いになりませんか?」
「クリスマス」
「ほら、クリスマスって誕生日と同じで……その、ケーキが食べられるから……」
「あかりちゃん、いつもながら甘いものの誘惑に弱すぎでしょ」

 あかりの精神的依存対策として、結婚当初から3人は『幼馴染みの日』と『記念日』を定めていた。

『幼馴染みの日』はその名の通り、あかりが二人の幼馴染みとして対等に過ごせる日だ。月に1度人間として服を着ての外出が許されているこの日は、あかりの好きなところへ遊びに行くのが定番となっている。

 それとは別に定められた『記念日』は、奏や幸尚と共にテーブルを囲んで同じご飯が食べられる日。今のところは3人の誕生日がこれにあたる。
 先月はあかりの誕生日だったから、幸尚が奮発してごちそうを作り、更にお気に入りのカフェで買ってきたケーキをたらふく平らげてご満悦の様子だった。

「流石に年4回も記念日を置くのは多すぎね?」
「しかもあかりちゃんの誕生日と合わせると2ヶ月連続だし……この後年末年始もあるよね」
「そうだった、あかりの体重がヤバい」

 年末年始は「今年はマリオカート大会するから!」と先週奏の両親から連絡があったばかりだ。
 どうやらあの親たちは、子供が結婚しようがお構いなしで年末年始はここで宴会を開くつもりらしい。
 ちなみに幸尚の両親は協議の結果「日本に滞在するのは3週間だけだから」と奏の実家にやっかいになることになったそうだ。
「その家はもう3人のものだからな。僕たちが泊まるとなると、色々都合が悪いこともあるだろう?」と配慮してくれるのは本当にありがたい。

 とまあ、そういうわけで年末年始はあかりも人間らしく過ごすことになっているのだ。
 普通の人だって、この時期はごちそうを食べ過ぎて体重が増えたと悩む季節なのに、今のあかりはフルステンレスの貞操帯付きなのだ。
 以前の貞操帯ほどサイズの増減に余裕がない事は、去年の年末年始に食べ過ぎて「ちょっとお腹が苦しいかも……」と自爆したあかりが一番よく分かっている。

 分かっているけど、ケーキの誘惑は抗いがたい。
 正直下手なお仕置きより、ご褒美ケーキ禁止令の方がよっぽど精神的ダメージが大きいのだ。だからごちそうはともかく、クリスマスケーキだけでも食べたいとあかりは切々と二人に訴えかける。

「……俺はなしだと思う。既に年3回の保証はあるんだし、この後年末年始で好き放題食べられるんだから、クリスマスまで許すのは我が儘」
「ううぅ……そんなぁ…………」

 しょぼんとうなだれるが、あかりが反論することは無い。
 意見を言うことは許されていても、それを採択するかどうかはご主人様である奏と幸尚の判断次第だ。
 それに対してあかりは絶対服従だし、だからこそ二人もあかりの意見を完全に無視した理不尽な決定を下すことはまずない。

 そんな様子のあかりを見かねたのか、幸尚が「それなら」とある提案を出してくる。

「あのさ、ちょっときつめの調教を頑張ったご褒美を兼ねて、のケーキならどうだろう」
「うーん……甘くねぇかな。それに一度前例を作れば、今後もずるずるとなりそうだし」
「それは許可しない。あくまでクリスマスだから、だよ。それに食べ過ぎないような対策も兼ねた調教にすればいいかなって」
「……お前、何か思いついたな?」

 幸尚が穏やかな笑顔でこういう話をするときは、大抵何かしらエグめの調教を思いついたときなのだ。
 案の定「限界まで追い込んで、解放されて食べるケーキの味は格別だと思うから」と幸尚が奏に耳打ちした案は、床から見上げるあかりが「あ、これはまずいことを言っちゃったかも」と冷や汗をかくほど奏の顔を青ざめさせていて。

「……それ、多分めちゃくちゃ辛い」
「だよね。きっとあかりちゃんが良い声で鳴くから、奏も満足できると思うんだ」
「そりゃもう、久しぶりに絶望しきった叫び声が聞けそうだな!……よし、それでいくぞ」

 顔色が悪いながらも賛成する奏により、今日の……クリスマスイブの調教はケーキと引き換えにしては随分な調教になってしまったのである。


 …………


 昼の餌を終えて暫くまったりした後、「本当は年明けから設置するつもりだったんだけどね」と幸尚が庭の物置から鉄格子のような板を持ってきて組み立て始める。
 その様子にピンときたあかりは「あは……閉じ込められる……」と早速目を蕩かせていた。

「はい、できあがり。これからここがあかりちゃんのお家だよ」
「……!!」

 リビングの一角、外から見えない位置に置かれたのは、檻だった。
 以前プレゼントされた、ギチギチに詰め込まれる檻とは違って随分大きさにゆとりがある。
 ただ高さは膝ぐらいまでしか無い、檻と言うより格子状の棺桶とでも言った方が良さそうな代物だ。

 底面にはマットが敷かれ、その上に毛布を敷き込む。
 幸尚は「ちょっと入ってみて」と扉になっている面をスライドして上げた。

「あ、お尻から入った方がいいかも」
「はい……うわぁ、天井が低い……四つん這いがギリギリ…………」
「だよね。これだと座るのも難しいと思うよ」

 指示に従ってごろんと横になる。
 横になっている分には意外と快適で、斜めに寝れば足も完全に伸ばせるし、寝返りも何とか打てそうだ。
 いつも使っている枕を頭の下に入れれば、なるほど狭めのベッドとしても機能しそうである。

「あ、いきなり寝床にはしないからね」
「あれ、しないんですか?」
「流石に最初からはキツいだろ。しばらくは日中そこで過ごして慣れて、それから徐々にこっちで寝るようにしていく」

 時間はあるんだし半年くらいかけてゆっくりねと微笑む幸尚に、こういう慎重さと気遣いがあるからこそ全てを託せるのだと、あかりも安心した様子で「ありがとうございます」と頭を下げるのだ。

 今は使わないだろうからと枕は外され、一旦外に出る。
 奏は扉の反対側で何かを組み立てているようだ。

「よし、と。後これな、給水器」
「給水……あ、あのっ、この吸い口ってまさか」
「おう、俺のちんこの型だ。幸尚のもあるから、気分に合わせて取り替え可能」
「そこはこだわりポイントですか……?」

 ガラス製の給水ボトルから直角に曲がって伸びる吸い口は、色も相まって本物のペニスのように見える。
 良く見ると鈴口はY字型に割れていて、吸う力によって流量を調節できるようだ。
 ボトルの水が汚染されないよう、逆流防止弁付きらしい。このこだわりの強さは、間違いなく賢太が製作したものだろう。

 で、今日やる調教だけどと幸尚が説明を始める。

「奏がさ、前に言ってたんだよね。いつかあかりちゃんにアナルフィストやりたいって」
「……っ!!え、幸尚様、フィストがどういうものか知っているんですか!!?」
「そっちに驚くのかよ!いや、そもそもの言い出しっぺは尚なんだよ」
「ええええ!?」

 どうやら、超ロングティルドで愛しい伴侶の奥の奥まで愛でられることを知った幸尚は、更なる野望を抱いていたらしい。
 結婚してから数ヶ月経ったある日、いつものように胎を愛でながら「ねぇ奏……」と熱っぽい声で囁いてきたときの衝撃は絶対に忘れることは無い。

「あのさ、奏の、ここ」
「んぁっ……」
「僕の手で、愛でてあげたいんだ」
「はぁっ、んっ……んんん!!?ちょ、今なんてっあああぁっ!!」

 僕のちんちんでも届かないところ、ディルドだと寂しいって言ってたでしょ?だから、僕が愛でてあげたいんだと言いながら、下生えがくっつくほど腰を押しつけてぐりぐりされれば「勘弁してくれ」と言葉を紡ぐことすらできない。
 それでも奏は頑張った。流石にこれは止めなければならないと、必死で訴えた。

 その結果「あかりにだって入らないんだ、俺に入れるなんて無理だろう!」と叫んだ奏に「じゃ、あかりちゃんに入れば奏にも可能性が出てくるんだね……?」とキラキラした瞳で返されては、もう引っ込みが付かなくて。
 まああかりにアナルフィストするのは興味もあるし……と、結局ずるずるといつものように幸尚に押し切られ、あかりに奏の腕が入るようになったら奏も幸尚の腕を受け入れるために拡張するという話になってしまったのである。

 それを聞いたあかりの目は明らかに「無茶しやがって……」と奏に語りかけていた。
 だってあんな顔されたら、断れねぇよ……ともじもじするあたり、今回も幸尚の愛に流された自覚はあるようだ。惚気るのは結構だが、もう少し奏は自分の身体を大切にした方がいい気がする。

「まぁそういうわけでだ、フィストに向けて拡張する必要があるだろ?」

 こほん、とわざとらしく咳払いをした奏が、これからこれを使って拡張しようと思うんだとクローゼットから取りだした物体に、あかりは思わず「ええええ!?」と叫び声を上げた。

「こ、こ、これっっ……買っちゃったんですか!?」
「おう。今年のクリスマスプレゼントも兼ねてな。使うのは来年からのつもりだったんだけど、まぁ良い機会だし今日から始めような」
「あ、あはは……」

 奏が手にしていたのは、3本の黒いチューブと1本のオレンジのチューブが伸びる、重厚な雰囲気の……サンダンと呼ばれるバルーンプラグとディルドを合わせたようなものだった。

(思ったより……太い…………!!)

 余りの禍々しさに、ゴクリと喉を鳴らす。
 それは決して、恐怖では無い。
 多少の不安はあれど、散々肛虐に耽ってきたあかりにとっては、むしろ期待の方が大きくて。
 当然奏も幸尚もそれに気付いているのだろう、満足そうに頷いている。

 確かサンダンはいくつかサイズがあったはずだ。
 奏の持っている物はどう考えても最小サイズでは無い。
 恐る恐る尋ねれば「ああ、この状態で4.5センチだな」と何でも無い風な答えが返ってきて、くらりと目眩を覚える。

「5センチのディルドで遊べるんだし、余裕だろ?」
「よ、余裕ってほどじゃ……しっかり慣らしてもギチギチですし……」
「でも慣らせば入る。なら、ワンサイズ下なら楽に入るだろうと思ってな」

 これで拡張した状態で、今日は檻の中で留守番をして貰う。浣腸はしないから安心しろ。

 その宣言だけで、頭の奥がじん、と痺れてくる。

(ああ、ああっ、あんな物を入れられて……お腹の中、パンパンにされて辛い状態で、放置されるんだ……!)

 はっ、はっと息を荒げて、涎を垂らしそうな顔でサンダンを見つめるあかりに「ほんっと、この半年でますます奴隷らしくなったな」と少し上擦った声で奏が笑う。
 その顔は、これから苦悶に満ち泣き叫ぶであろうあかりの醜態を想像したのだろう、ほんのりと紅潮していて。

(……今日も奏様に満足していただける…………)

 それだけで嬉しくて、涙が出そうになる。

「これまでも貪欲だったけど、前にも増して素直になったよね」
「オナホとして使うようになってから、余計にだな。俺らを満足させることが嬉しくて仕方が無いって顔をする」
「はい……だって、私奴隷なのに…………何にもできなくて、お世話していただいて、与えられているばかりで……だから、お二人に与えることができるの、凄く嬉しいですぅ……」

 そう、今のあかりには何もできない、何も許されない。
 これまでも生活の大部分は管理されていたが、あの貫通式以降は顔を洗うことも、爪を切ることも、髪をとかしたり歯磨きをすることすらすべて奏と幸尚が世話をしている。

 特別な日以外は、餌すら口で食べることを許されない。
 今のあかりに許されているのは、二人から与えられる苦痛に泣き叫び、快楽に悶え、はしたなく身体の至る所から体液を垂れ流す事だけ。

 あの凶悪な装具を挿入するために、後ろの穴を丹念にほぐされる。
「暇だから舐めてろ」と鼻先に突きつけられた奏の怒張は、そんなあかりの様子にすっかり滾っていて、もっと気持ちよくなっていただきたくて、すかさずしゃぶりつき首を振り、良いところを吸って、舐めて。
 ピクンと反応してくれるのが、こんなに嬉しいだなんて知らなかった。

 何より直接ご奉仕できることが、使っていただけることが、これほど満たされるだなんて。

「咥えただけで昂ぶっちゃってるな、あかり」
「そのくらいの方がいいんじゃない?これ入れた後のことを考えると」
「だな。ただのバルーンプラグで十分キツかったもんな……」
「僕、お尻は一生慣れる気がしないよ……」

 遠くで不穏な言葉が聞こえるが、奏のペニスでとろとろに溶けきった頭は、その言葉を解さない。

「ん、いいぞあかり」
「んは……」
「噛んだらまずいからね。あかりちゃん、後ろ入れるからいきむようにして」
「ふぁい……んぅ……」

 べっとりとジェルを纏ったサンダンが、後孔の中に沈んでいく。
 このサイズなら少しほぐせばすんなり入っていく身体に、本当に淫らだなぁと苦笑して、その事実にすら軽い興奮を覚える。

「じゃ、膨らませるよ」
「っ、はい」

 毎朝の浣腸のお陰で、中でバルーンを膨らませる感触は覚えている。
 最初はなんともないのに、ある一点を超えた瞬間猛烈な圧迫感と便意に襲われるのだ。
 その状態で微温湯をたっぷり注ぎ込まれ、最近は10分間しっかり待たされてから排泄を許可されるから、余りの辛さに口を締めることもできず涎と涙を垂れ流しながら、股を開きしゃがんだ姿勢を保ち続けなければならない。

 それに比べれば、拡張したまま檻の中で放置されるだけならそこまでキツくは無いんじゃないか、そうどこか侮っていたことを、あかりは数分後猛烈に後悔する。

 シュッ

(んあっ、来たっ!!)

 異物によって作られた偽の便意と、圧迫感。
 思わず「はぁっ」と大きく息をつく。

 シュッ

「んっっっ……!?」

 だが、ポンプを押す手は止まらない。
 身体の中に納められた、一番先の部分が更に膨らまされていく。

 シュッ

「ぐああぁぁ……っ!!」

(やばいっ、いつもよりみっしり詰まって……出したい、全部出したいっ!あああっ幸尚様、どこまで膨らますのぉっ……!!)

 思わず潰れたような声が出る。
 目が潤み、全身の鳥肌がぶわっと立っているのが分かる。

「こんなもんかな」
「いやもう一押しいけるだろ、浣腸の時の限界まで来てねぇよあれ」
「ひいいぃぃ!!」

 シュッ……!

「かは……っ……」
「あ、良さそうだね。じゃあこれで止めて、と」

 ようやく、一番奥のバルーンの拡張が終わる。
 全身から脂汗が吹き出し、息が早く、浅くなる。
 目の前はさっきからチカチカと何かが瞬いていて、気を抜けば前後不覚になって倒れ込みそうだ。

(出したい、無理ですっ!こんなの、耐えられないっ!!)

 叫びたくても、あまりの苦痛に声が出ない。
 少しでも辛さを逃がそうと口はだらしなく開いたままで、涎がぽたりぽたりと落ちていく。
 ああ、折角幸尚様に作っていただいたセーターを汚してしまいそうだ。

 そんなあかりの様子に気付いたのだろう「着けておくか」と奏がよだれかけを持ってくる。
 その間に幸尚は「あかりちゃん、外側のバルーンを膨らませるよ」とシュコシュコと肛門の外側に出いてるバルーンを膨らませ、中に引き込まれないようにした。
 肛門括約筋が内外で挟まれて、まざまざと含まされたものの大きさを感じさせる。

 だが、これで終わりでは無い。
 朦朧とした頭で、あかりは思い出す。
 このバルーンプラグの最大のキモは、最後の……真ん中のバルーンだと。

「あかりちゃん、真ん中を膨らませるから」
「良い声で鳴けよ」

 幸尚の大きな手が、ゆっくりとポンプを潰していく。

「んはっ、あっ、あっ、はぐあぁぁ……っ!!」

 しっかり咥え込んだバルーンが、みちみちと肛門の縁を無理矢理押し広げ、まるでずっと排便しているかのような焦燥感を頭に叩き込んでくる。
 余りの苦しさに、直腸どころか身体の管を全てみっしりと塞がれているかのような感覚に陥る。

「これでどのくらい?」
「えっと3回押したからもうちょい……うん、これで5センチ。今のあかりちゃんの限界サイズ」
「うへぇ、凄いな……これでまだ5センチなのかよ」

(でてる、でてない、だしたい、もう、だしたい……!)

 その場で崩れ落ち、必死で呼吸をするあかりの頭を、ぐいっと奏が持ち上げる。
 涙と涎でぐしゃぐしゃになった、惨めなあかりの表情。

「っ、くっそ滾るわ……!あかり、噛むなよ」
「んおげぇ……っ!!}

 たまらず奏があかりの中に、その欲望を根元まで突っ込めば、あかりから蛙が潰れたような無様な音が漏れ、その音に更に煽られて。

 ぐちゅっ、ぐちゅっと音を立てて、熱い肉棒が抜き差しされる。
 程なく「ぐっ」と短い声を漏らして、どろりとした迸りが喉に叩き付けられた。

「はっ……いいぜあかり、久々にガチで苦痛しか無い顔をしてやがる」
「奏はこれで興奮するんだよね……僕、むしろ縮こまっちゃったよ」
「いーんだよ尚はそれで。あかりを作品にしたときだけ元気にしてりゃ。ほらあかり、今度は前から檻に入れ」
「はっ……はがっ……」
「返事は?」
「ひゃいぃ……っ!」」

 そのまま奏の手で、檻の方へ誘導される。
 後ろ手に拘束されたままで必死で頭を下げ、膝でにじり寄るようにしないと入れない檻は、さっきとは違って一歩膝を前に出すだけで強烈な排便衝動から来る焦燥感と圧迫感に、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
 まるで脳みそが焼けた火箸でかき回されているかのようだ。

 やっとの思いで檻に入れば、ガシャン、と後ろで扉の閉まる音がする。
 もう、扉が開いていようが閉まっていようが、正直ここから動ける気がしない。
 涎で毛布が汚れちゃうな、とこんな状態でも冷静な頭が分析していることに気づき、しかしその思考もあっという間に「出したい」で埋め尽くされる。

「あかり、前を見ろ」

 奏の命令に、ぎぎぎと音がしそうなぎこちなさで首を上げる。
 その目の前には、檻に取り付けられた給水器の先端……ご主人様の形をした、吸い口が突きつけられていた。

「喉が渇いたら自由に飲んで良いからね」
「今日のごちそうと今週分の食材の買い出しと、あとケーキも買って帰るから……そうだな、まぁ1時間くらいで帰ってこれるんじゃね?」
「あ……い…………いちじ、かん……!?」
「ああ、ちゃんとモニターは付けておくよ。二人とも片方はイヤホンを入れておくから、ちゃんと全部聞こえてるからね」

 それは、何かあればすぐに帰ってきてくれるという安心感をあかりに与えてくれる。
 それと同時に、言外に釘を刺されるのだ。

「限界でも無いのに懇願すれば、お仕置きだぞ」と――

(いや……いや、おしおきは、やだ……!)

 そう、自分に許されるのは、ただひたすら、助けすら乞うことを許されずに無様に涙を、涎を垂れ流し、そんな自分に酔って股間をひくつかせ、愛液を滴らせることだけだ。

「それじゃ、行ってくるからね」
「しっかり留守番してろよ?ま、せいぜい泣き叫んで俺を楽しませろ」

 足音が遠ざかり、パタン、バタンと扉の閉まる音がする。
 エンジン音がかかり、だんだん聞こえなくなって……

 そうして、悪夢のような『お留守番』が始まった。


 …………


 出したい。
 もう、それ以外の事が考えられない。

 浣腸はしていないから、お腹がぐるぐる鳴って辛いことはない。
 だがそれだけに、偽の排便衝動とみっしり詰め込まれた圧迫感、そして肛門を無理矢理拡げられ閉じることすらできない焦燥感が、ダイレクトに脳を直撃する。

「おああぁ……はっ、はっ、はぁっ……ぁ……はぐっ…………」

 とても、大声で叫べるほどの力は入らない。
 そんな力を入れてしまえば、余計に圧迫感が増して苦しむだけだと身体はよく知っている。

 時折身体は勝手に異物を出そうと息み始める。
 けれども、あかりの限界を超えた太さまで中で拡げられたディルドが抜け出ることは無い。
 いや、そもそも入口が咥えている場所だってこれ以上無いくらい拡げられているのだ、良く切れてないなと感心するくらいなのに、とても自分から息んで傷つけたいとは思わない。

 結果としてあかりは、必死で自分を苦しめるその凶悪な装具を内に留める努力を強いられるのだ。

(息んじゃ、だめ……力抜いて…………出したい、出したいよぉっ……!!)

 あれからどのくらいの時間が経ったのだろう。
 結婚してすぐに、あかりが見える範囲からは時計が全て外された。
 今この家で時間を知るためには、スマホやパソコンで確認するか、もしくはご主人様の寝室に入るしかない。

(辛い、出したい……紛らわすこともできない……!)

 周期的に襲いかかる波を必死でやり過ごし、止まない焦燥感に涙と涎をこぼす。
 よだれかけはもうぐっしょりと濡れて、毛布にも涎がポタポタ落ちている状態だ。

(喉、乾く……)

 ふと見上げれば、そこにはでんと凶悪な形のペニスが鎮座している。
 口を閉じることを忘れたあかりは、喉の渇きに思わずそのペニスにむしゃぶりついた。

 ちゅう、と吸えば中から冷たい液体が流れ込んでくる。
 冬だというのに煮えたぎった身体には、この冷たさが心地よい。
 それに、ほんのりと甘い。

(あ、これ……紅茶だ……!)

 そういえば少し前に、奏がお客さんから茶葉を貰ったと言っていたっけ。
 水出しで飲むのがおすすめだと言われたらしいが、確かにこんなバカになった頭でも分かるくらい、香りがしっかり立っていて美味しい。

(美味しい……美味しいし、それに)

 必死で吸い付いていると、さっきまでの奏の熱さを、硬さを思い出す。
 浮き出している血管までしっかり再現されたそれは、極限の苦痛に苛まれるあかりには不思議な安心感を与えてくれて。

(んっ……ここ、ここ舐めると奏様がぴくってする……)

 いつしかあかりは、襲いかかる排便衝動を紛らわせるために、給水器への奉仕に夢中になっていた。
 良いところを舐めて、しゃぶって、ちゅうぅっと吸えば甘い液体で満たされて、こくりと飲み込めば、まるで奏の情けを貰ったようでじんわり心が温かくなる。

(もっと……もっと、いっぱい……ご奉仕、するのぉ……)

 時間が経つにつれ、益々高まる衝動から逃れようとばかりに、あかりはただひたすら、偽のペニスに下を這わせ、喉を冒され続けるのだ。

 ……その1.5リットルもあるボトルが半分以上減っていることにも気付かずに。

(…………?)

 ふと、ふるりと身体を震わせる。
 頭の中を埋め尽くす「出したい」の中に強制的に混じる、小さな声。

 気のせいかな、と無視しようとするも、その朧気な声は少しずつ、しかし確実にはっきりと意味をなしてきて。

(出したい……ご奉仕……)

 また排泄衝動を紛らわそうとして吸い口を咥え、ちゅっと冷たい紅茶が喉に注ぎ込まれた瞬間、それは突如もう一つの警報をけたたましくあかりの中で鳴らし始めた。

(っ!!うそ、おしっこしたい……なんでぇっ!!?)

 突然の尿意に、頭が混乱する。
 はーっ、はーっと必死で深呼吸をして波をやり過ごし、そろそろと頭を上げた瞬間、あかりは気付いてしまった。

 目の前にあるのは、半分以上空になったボトル。
 中に入っているのは砂糖の入った紅茶。
 ……つまり、利尿効果と、身体への吸収率が高い、液体。

(そんな……まさか、これも目的で……!?)

 寒くないのにカタカタと身体が震えて歯の根が合わない。
 一度自覚してしまった尿意は、一気にその衝動を強めて、もはやどっちを出したいのか……どっちも出したいのか、区別なんて付かない。

(やだ、だしたい、だしたいいぃ……おしっこも、うんこも、ぜんぶだしたいのおおぉぉ!!)

「ぁ……ふぐあぁぁぁぁ…………っ!!」

 思わず獣のような呻き声が漏れたその時

「いやぁこうも上手く嵌まるとはなぁ」
「ただいまあかりちゃん。そろそろ余裕無くなってきたかな」

 カチャリ、という音と共に、大量の買い物袋を抱えた奏と幸尚がリビングに戻ってきた。


 …………


(何で、何でまだこのままなのっ!!?お願いしますっ!もう無理なの、出させて!!)

「じゃ、ごちそうを作ろっか」と台所に向かった幸尚を眺めつつ、奏は「ほら、出てこい」とあかりを檻から無理矢理引きずって引っ張り出す。
 その刺激で膀胱が押され「あがぁぁっ!!」と低い声で叫べば「良い感じに切羽詰まってるなー」と奏はいたくご機嫌だ。

「尚、できるまで時間かかる?」
「うん、ローストチキンが時間かかるから……2時間は見ておいて」
「了解。じゃああかり、その間は可愛がってやろう、な?」
「ひっ……あ、あ、あっ……」
「ん?返事は?」
「……ああありがとう、ごじゃい、ましゅっ……!」

 そうして奏は、いつものようにあかりで遊び始める。
「最近ケインも使うようになったんだ、練習台になってもらおうか」と手枷の鎖を前に付け替えられ、しかしサンダンは抜かれないまま無理矢理立たされてソファの背に掴まり、尻を突き出して衝撃に耐える。
 パシン、パシンと響くケインの音はそこまで派手では無いが、尻に、太ももに飛んでくる線状の打撃は思った以上で、さらに打撃が身体の奥に響き、これ以上無いくらい拡げられた肛門を、直腸を、そして膀胱を刺激するのだ。

 打撃があかりを襲う度、尻からぶら下げられたポンプが揺れる。
 それすら今のあかりには、焦燥感を叩き込まれる凶器と化してしまう。

 痛みは、気持ちいい。
 散々そう教え込まれた頭は、今や鞭の痛みくらいであれば簡単に快楽に変換する。
 けれども生命に直結する排泄衝動は、流石のあかりであっても快楽にはほど遠いらしい。

(おしっこ、だけなら……いやでも、これだけ強いと気持ちいいどころじゃないっ……!)

 ひとしきり打ち据え、あかりの涙と叫び声を堪能すればまた咥えさせられ、戯れに乳首を弄くられ。
 台所から丸鶏が焼ける良い匂いが漂ってきているのに、それに期待する隙間さえご主人様は与えてくれない。

「……ははっ、ぐっしゃぐしゃだな……ほら、よだれかけを替えてやる」
「ひぐっ、ひぐっ……ありがとうございます……辛いよう……奏様、辛いぃ……」
「辛いよなぁ?でも、あかりが望んだんだよな?今日はケーキが食べたいんだろ?……なら、どうすれば良いか分かってるよな」
「っ……!」

(ああ、こんなもんじゃ無いんだ……)

 まだ絶望の底についてないだろう?
 そう奏の瞳は物語っていて、終わらない調教にまたかくんと床が抜けたような感覚を覚えて。

「奏様、あかりをもっと、甚振って下さい……」

 震える声で、震える身体で懇願するあかりの様子に、奏は「最高のクリスマスプレゼントだな」とニヤつきながら新たな道具を出してきた。


 ――そうして、きっちり2時間後。

「奏、準備できたから配膳して。あかりちゃんは椅子に……チューブが邪魔か、なら正座しよっか」
「へっ」

 ようやくごちそうの準備ができたのだろう、幸尚から声がかかる。
 これでやっと解放されると安堵したあかりはしかし、その幸尚の口から飛び出た指示にギョッとした表情を浮かべた。

「……え、あの」

(まさか……そのまま……?)

 とまどうあかりに「当然だろ」とカトラリーを並べながら奏があかりを促す。

「あかりの排泄の時間は19時だよな?今まだ18時だからな……記念日に許されているのは、食事だけなの、覚えているよなぁ?」
「ヒッ……!!!」

 そう、確かに3人でそう決めたけれど、折角のごちそうなのに。
 こんな出したい衝動に、脳を焼かれたままで食べろだなんて……!!

 ぽたり、ぽたりと大粒の涙が落ちる。
 ああ、なんで記念日を増やして欲しいだなんて我が儘を言っちゃったんだろう。

 目の前に並ぶのは、幸尚渾身のごちそう。
 ローストチキンに野菜のゼリー寄せ、コーンスープ、近所のパン屋さんで買ってきたのだろうバゲット。

 どれもこれも美味しそうなのに、良い匂いがするのに、あかりの身体はそんなものに用はないと言わんばかりにずっと出すことばかりを全力で訴えてきていて。

「じゃ、たべよっか。いただきます」
「……いただき、ます…………ひぐっ……」

(美味しいはずなのに……味が分からないよう……そんな、こんなのひどいよう……!!)

 涙に暮れながら食べる料理は、いつもの餌よりも味気なく、情けなくて。
 もう二度とケーキのために我が儘は言わないとあかりは心に固く誓うのだった。


 …………


「どうだった、今日の調教は?」

 19時になり、床にしゃがみ込んで「おしっこ、おしっこ出させて下さい!!」と息も絶え絶えに叫ぶあかりの股下にボウルを設置しながら、幸尚が奏に尋ねれば「いやぁ良いクリスマスだわ」と実にスッキリ満足げな表情で奏は笑顔を返した。

「ここまで追い込まれて絶望を浮かべて、なのにそれが快楽にも変えられない。こういうのは久しぶりだよな」
「だね、生理的な衝動があるからそうそう快楽には浸りきれないよね」
「ひぐっ……ひぐっ…………」

 いいよ、出して、とようやく許可を貰えて、限界を迎えていた尿道から薄い尿が一気にじょろじょろとボウルの中に叩き付けられる。

「はぁっ……はぁっ…………」

 ひとつの開放感に酔いしれたくても、後ろを封じたサンダンからもたらされる焦燥感がそれを全力で阻害する。
 しかも大きなもので思い切り押されているせいか、尿の出もいつもより悪い。

「っ……おしっこ、全部出ました……ありがとうございました……」
「うん、色も綺麗だし問題なさそうだね」

 長い時間をかけて、ようやく膀胱の中が空っぽになる。
 じゃあ産もうか、と幸尚がポンプを操作すると、一気に猛烈な便意がすっと消失した。
 恐らく一番奥のバルーンが完全にしぼんだのだろう。

 もちろんその状態でもかなりの圧迫感はあるが、さっきまでの便意に比べればずっとましだ。
 と、ようやく安堵感に包まれた筈の直腸に、再び「シュッ」と音がして空気が送り込まれた。

「ヒィッ!?なん、なんでえぇ……!?」
「あ、大丈夫だよ、さっきほどは膨らまさないから」
「いやあぁぁ……もう、辛いのやだあぁぁ…………」

 流石のあかりも、一息ついた後に畳みかけられた圧迫にぐずぐずと泣きっぱなしである。
 幸尚はポンプを押す数を数えながら、慎重にバルーンを膨らませていった。

「……ん、よし。これで5.5センチ。あかりちゃん、初めての5.5センチチャレンジしようね」
「えっ……うわあああお尻広がるっ、裂けるうぅぅ!!!」

 メリメリと音がしそうな勢いで、真ん中のバルーンが更に膨らみ入口を押し広げていく。
 ずっと5センチまで拡げたままだったお陰か、あかりの後孔は切れることも無くその凶悪な太さを受け入れてしまった。

「うわぁっ、無理っ、これ、きついっ無理いぃぃ!!」
「大丈夫、ここまで時間をかけて拡げたんだから出せるよ。しっかり息んで、うんちするみたいに、ね」
「え、まって、幸尚様が抜くんじゃ……」
「んなわけねーじゃん。ほらしっかり息んでぶっといのひり出しちまえ。スッキリするぞ?」
「いやあぁぁぁぁ!!!」

 これまで排便するところは、トイレは開けられていたけれど見られたことは無かったのに。
 いくらディルドだと分かっていても、お尻をまじまじと見られながら排便するように息むところを見られてしまうだなんて。

(でも)

 分かっている、これは命令だ。
 どれだけ幸尚が優しく言ってくれても、あかりにとっては決して拒否することができないものだ。

 それに……命令されることは、ゾクゾクして気持ちいいから。

(ほんっと変態だな、私……どんな命令でも、嬉しくなっちゃうなんて……)

 あかりは泣きじゃくりながら、それでも下腹部に力を込める。
 5年近くずっと浣腸でしか排便を許されていなかった身体は、けれど意外にも固形物を排泄することをきちんと覚えているようで、暫くいきめばずるりとあかりの中で暖められたディルドが顔を出した。

「ううんっ、んうううんっはあぁぁぁっ!!!」
「お、一気に出たな」
「随分気持ちよさそうな表情だね」

 一度勢いがつけば、ずるずるっ!!とその長い物体が排出される。
 肛門を拡げたままずりずりと擦られる原始的な快感に、思わず「んはぁ……」と顔が緩んだ。

(ああ、大きいの、出すの、気持ちいいぃ……)

 排便とはこんなに気持ちが良いものだったのだ。
 固形物が肛門を通り過ぎる快楽を忘れて久しい身体は、その刺激をじっくりと堪能する。

 そして

(……気持ちいいの……これなら、またやってもいいかも……)

 すっかり被虐の沼に落ち、絶頂を禁止され続けているあかりには、たったこれだけの快楽すら甘い、甘い飴のように感じられて。

「……ね、開放感は気持ちがいいでしょ?」
「はひぃ…………」
「落ち着いたらケーキ出してくるからな。取り敢えずそこで暫くしゃがんだまま浸ってろ」
「はひ、ありがと……ごじゃましゅ……」

 恐らく年明けから本格的に始まるであろう、フィストを目指す拡張を楽しめる種をしっかり植え付けられたのだった。


 …………


「幸尚様のごちそうがほとんど食べられなかったのは、ショックが大きいんですけど……」
「いや、あれも作戦のうちなんだってよ」
「だってあかりちゃん、いつもの状態なら絶対腹十分目までがっつり食べた上で、別腹扱いのケーキに手を出すじゃん。だから、味も分からないくらい辛い状態なら食欲を抑えられるかなって」
「…………鬼畜って、こういうことを言うんですね」
「ご主人様に向かって言う言葉かよ、俺もそう思うけど」
「酷いなぁ、奏は楽しんでたのに」

 ようやく解放されたあかりは「きっとご飯はまともに食べられ無いだろうと思って」幸尚が買ってきたホールケーキに舌鼓を打っていた。
 シンプルな生クリームとイチゴのケーキだが、久しぶりにえげつない調教だったせいだろうか、心に染み入る甘さである。

 にしても、と奏が洗浄して乾かしているサンダンをチラリと眺める。

「……アナルフィストってさ、あれの最大径が出し入れできるようにならねぇとできねぇのよな」
「だね、7センチだっけ?……僕の拳、7センチで通るかなぁ……」
「まだ心配する必要はねぇだろ、今のあかりが5.5センチだし、フィストできるところまで拡げるなら1年はかかるから」
「じゃ、来年のクリスマスにはあかりちゃんにフィストチャレンジかな……あ、奏用のサンダンがいるね!」
「どうしてそうなるんだよ!!」

 そう叫びながらも、奏は幸尚を止めない。
 どうやら奏にとって無機物で腹をかき回されるのは相当ショックが大きかったらしい。
 結婚を機に「これだけは捨てさせて貰う!!」とフラット貞操具のお仕置き原因となった超ロングディルドが廃棄された程である。

「拡張は仕方ねぇけど、またあんな怪しいディルドを買って来られたらたまらねぇからな!それくらいなら気合いで尚の手を受け入れた方がよっぽどいい」
「……奏様、強く生きて」
「へっ?何でまた急にそんなことをってうわあぁぁ」
「奏っ……そんなに僕を受け入れたいだなんて……ああっ、愛してるっ!……ね、もうここでやっちゃっていい……?」
「いやいや手は受け入れたいじゃなくてむしろ妥協案だってむぐっ」

 奏様、今のは悪手ですとあかりは心の中で手を合わせる。
 大体今日はクリスマスイブなのだ。しかも性の6時間に突入しているのだ。
 そんな状態で「ディルドより幸尚そのものが良い」なんて言葉は、幸尚にとっては完全に殺し文句であろう。

「……これ、明日は奏様が寝込むパターンかな……」

 リビングのソファでおっぱじめてしまった二人を温かい目で見つめながら、あかりは流石に過酷な調教で疲れたのだろう、いつものように腐女子モードに入ることもなくその場でうとうとと船を漕ぎ始める。

 そうして翌日、日付を超えても全く収まらない幸尚の愛を受け止めすぎた奏は予定通り足腰が立たなくなり、さらにあかりの体重はびっくりするほど増えていて「そりゃ、ホールケーキを一人でほぼ全部食べたからな」「あれで食事を抑えるだけじゃだめだったかあ……」と、体重と最近ちょっと気になる下腹部のぷにぷにが無くなるまでケーキ禁止令が出される羽目になるのであった。
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