押しかけ皇女に絆されて

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覆われて、露わになって

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 いつもと変わらない夜の風景。
 くちくちと湿った音と、男にしては高い、甘い声が部屋に満ちている。

「んっ……ふっ、んぁ……っ……!」

 びゅくっ、と吐き出される白濁をティッシュに受け、ひとときの快楽に酔いしれる。
 そうして溜まったものを出し尽くせば、興奮も冷めたのだろう「はぁ……」と慧は小さくため息をついた。
 ティッシュは丸めてゴミ箱に……放り投げるが見事に外れて床に落ちる。アイナの投擲が成功する確率は多分5割を切っていると思う。

『ふぅ、すっきりしたかの』
「ん、おう……風呂入ろうぜ、もうお湯溜まってるだろうし」

 少しずつ秋らしくなってきたせいか、温かいお湯が心地よい。
 ちゃぽんと湯船に無理やり肩まで浸かれば、日々の疲れも湯の中に溶けていきそうだ。

(……そう、疲れは取れるけど)

 これじゃ取れないものもあるんだよなぁ……と、慧は誰に言うとも知れずぽつりと呟いた。

 ぼんやりと天井の水滴を眺める慧の内には、ずっと燻る熱がある。
 一体いつからこの熱が生じたのか、今となっては記憶も曖昧だ。
 それこそアイナとあった直後から実はあったのかもしれない、ただあの頃は特に気にかけるほどでも無かっただけで。

「体調は悪くないし……欲求不満、とは言えないよな、これだけやってて……」

 そう、身体は満足しているはずなのだ。
 大体毎日のようにアイナが「処理」してくれるか、アイナの出した道具でがっつり出しているかだから、慧は彼女がこの身体に居候し始めて半年、溜まっていると感じたことすら無い。
 毎日何かしらの形で出したいほどムラムラしてしまうのは……そりゃまぁ、週に3日は触手服で散々弄ばれているんだから仕方が無いだろう。

 この熱を強く感じ始めたのは、あのキラキラ透明な芋虫君に前立腺をこれでもかと弄ばれてからである。
 だからもしかしたらと意を決して、定期的にアイナに召喚して貰っているものの、熱は引くどころか溜まる一方だ。
 ちなみにアイナはその度に気持ちよさそうな声を上げて絶頂を繰り返している。何とも羨ましい。

 しかしあの前立腺という奴はヤバい物体だ。何故こんな恐ろしい機能を男の身体に持たせたのか、神様の正気を疑ってしまう。
 何せ、毎回入れられる度に悶絶して「二度とやらねぇ!」と固く決意しているはずなのに、数日すると腹の奥がむずむずしてきて、あの強烈な快感が恋しくなるのだから。

 ちなみに芋虫君を週末に楽しむようになった結果、平日に触手服を着る日が増えたのだが、こちらは以前のように不躾な視線に悩まされることも無くなったので結果オーライとしている。
 もちろんその陰には峰島や伊佐木ら『守る会』の奮闘があるわけだが、慧がその事情を知る由は無い。

 燻り続ける熱は、しかし今のところ生活に何かしら差し障りがあるわけでも無い。
 強いて言うなら意識の片隅にずっと漂うノイズのような物だ。
 何かに集中していれば忘れてしまうくらいの、けれどふとしたときに無視できないレベルの感覚を送り込んでくる。いっそのこと生活に支障が出るくらいならどこかに相談ができるのに、こんな中途半端な状態が一番たちが悪い。

 ともかく、この内にある熱を一体どうすればいいのかと、慧はここのところ頭を悩ませていた。

「どうやったらスッキリするんだろうなぁ……」
『……ううむ、お主まだ気付かぬのじゃな……いや、そもそもそういう概念が無ければ無理なのかのう……』
「へっ」

 パジャマを羽織りながら独りごちれば、アイナの呆れた声が頭に響く。
 待て、その言い方じゃアイナはずっと前からこの原因に気付いていたのか!?

 それなら早く言ってくれよとむくれれば『しかし話したところで今のお主では……恐らく理解は難しいと思うのじゃ……』と珍しくアイナが言葉を濁す。
 いつも慧の頭でも理解できるようにかみ砕いて説明してくれるアイナがそう言うくらいだから、相当説明が難しいのだろう。

 そういうことなら理由はいいや、とあっさり慧は引き下がる。
 俺はスッキリできればそれで十分だしな、と付け加えて。

(……やはり、知りたくないのじゃな)

 そこに潜む隠された想いにアイナが気付かないはずは無い。
 だが、できれば他者の指摘では無く自ら気付いて欲しいと思っているからこそ、アイナもそれ以上深追いはしない事にした。

「それでどうするんだ?」と慧が尋ねれば『根本的な方法ではないのじゃが』とアイナは前置きして話し始める。
 アイナにしては珍しい判断だ。大体いつも明快な対処法を思いついてはこちらの合意もそこそこに実行する癖に。
 何故今回に限って?と尋ねれば『お主のためじゃよ』とアイナはただ答えるのだ。

「俺のため?」
『うむ。最初から根本的な方法だと、きっとお主は断固拒否するからのう』
「えええ、そもそもそんな拒否されるようなものを選択肢に入れないでくれよ!」

 で、一体何をするのかと問えば、アイナは……見えなくても分かる、今彼女はとびきりの笑顔を見せているに違いない。
 もう尋ねた段階で拒否などできそうにも無いほど嬉しそうな様子で、とんでもないことを言いだしたのだ。

『慧、自慰を我慢するのじゃ』
「はぁぁぁ!?」


 …………


 今までだって、アイナの語る変態じみた……いや、変態に振り切った常識には散々困惑させられてきたし、振り回されてきた。
 けれど今回ほど訳の分からないやり方はなかった気がする。


 どうして、スッキリするために自慰を我慢をするなんて方向にぶっ飛ぶんだ!?


 こいつは何を言っているんだと言わんばかりの顔をすれば、アイナは「射精管理という物を知っておるか?」とこれまた謎の概念を持ちだしてきた。
 ……多分、謎じゃ無いな。そんな訳の分からない概念は、間違いなく地球から導入されているに違いない。

 案の定、アイナの口から語られるその概念はこの世界から召喚された情報だそうで、さらに聞いているだけで股間がキュッとしてしまう恐ろしい物だった。

『早い話が、第三者によって自慰や射精する頻度を管理されるものじゃ』
「なにそれ、チンコ取り上げられるって事?」
『まぁ概念的にはそうじゃの。じゃが今回は……まあ、お試しみたいなものじゃよ』

 アイナ曰く、ここのところの頻回な自慰と射精により、射精そのものの満足感が以前に比べて低下しているせいで余計に燻る熱を感じてしまっているのだそうだ。
 熱そのものの原因を取る方法はあるけれど、今の慧にはまだ荷が重い、それなら先に射精管理でしっかり溜めてから出すようにすることで、射精自体の満足感を上げて熱が気にならないようにすればどうかというのだった。

 確かに根本的な解決にはならなさそうだが、アイナが荷が重いというならそれは相当慧にとってハードルが高いのだろう。
 例え燻る熱が無くならなくても、普段の生活で気にならなくなれば一旦はそれでよいのでは?と提案するアイナの意見に慧も「それはそうだな」と一も二も無く頷いた。

「で、管理ってどうするんだ?単に我慢すればいいだけじゃ」
『そうできれば簡単なのじゃがな。残念ながら男というのは、溜まればシコりたくなるようにできているのじゃよ』
「……皇女様、またお下品な言葉が出てる」
『むぅ……ともかく!どんなにシコシコしたくてもできないようにして、強制的に我慢をさせる代わりに、終わればしっかりリセット……射精させる。それが射精管理じゃ』

 詳細を語るアイナの言葉は随分と熱が入っていて、きっとアイナはこの射精管理という奴が大好物なんだろうなと、慧もすぐさま理解した。
 それに『1週間我慢して出す、今の状況ならそれで十分じゃろ』という提案も、そんなに非現実的には感じない。
 元々慧はそこまでお盛んだったわけでは無い。週に1回ならちょっと我慢すれば何とかなりそうなレベルだ。

(アイナ、この射精管理って奴をめちゃくちゃやりたいんだな……まぁ無理を強いられる感じでは無いし、この位なら……)

 きっと向こうでも、数多の男の娘達を皆で管理しては楽しんできたのだろう。
 ……そう思うと、何故だが余計にやってみたくなるのだ。

 後でいつものようにアイナのうっかり誤算があったとしても、これなら身体を弄くられるわけでは無いから、被害だって少ないはずである。
 何より、あのアイナがわざわざ慧の負担が少ないやり方を考えて選んでくれたのだ。いきなり耳掃除だと言ってとんでもないASMRスライムを召喚されたときから考えれば、随分とこちらの事情を汲んでくれるようになったものだと、ちょっと嬉しかったりもする。

「そういう事なら、やってみるか」と答えれば『そうか!そうじゃな、試してみようぞ!』と返ってくる返事が、これまでで一番はしゃいでいるように感じて。

 ……ああ、そんな楽しそうな声が聞けるなら、多少のうっかりも許せてしまうじゃないか。
 だめだ俺、ほんとこのチョロさは何とかならないものなのか。

『そうと決まれば管理方法を決めねばのう!』

 そう嬉しそうに言いながら、アイナはごろんとベッドに横になってスマホを弄り始めた。

(……んん?何でそこでスマホ??)

 不思議に思えば『今後のことを考えるとな』とアイナの声が返ってくる。
 そこには舞い上がっている雰囲気と、けれどそれと相反する……ほんの少しの寂しさが含まれていた。

『できればこの世界のやり方を使いたいのじゃ。そもそも原案はこちらじゃしな』
「そりゃそうだけど、この世界はサイファみたいな魔法も無いからそもそも実現化しているかも分かんないぞ?」
『うむ、じゃが愛好家は多いと妾の召喚したホンには書いてあったのじゃ。そこには道具の情報も詳細に書かれておってな、設計図があるのなら既に現実に存在するやもしれぬ』

 とは言えどうやって探せば良いのかのう、と頭を捻りつつアイナはスマホをタップする。
 これは相当時間がかかりそうだ。俺、今日寝られるんだろうか。
 いやまぁ、俺の魂だけ寝るって事は可能だけど、この検索結果に自分の運命が委ねられているかと思うととても眠れる気がしない。

 アイナの調べ物を、不安半分、期待半分で静かに待つ。
 静かな部屋に、冷蔵庫のブーンという低音だけが響いている。
 その静寂にどうにも居心地が悪くなって、慧は思わず「あのさ」とアイナに話しかけた。

「その、作業を邪魔したらごめん。……サイファじゃどうやってるんだ、その射精管理ってやつ」
『ん?なに構わぬぞ。そうじゃな、妾たちは魔法でちんちんを小さくするのが基本なのじゃ』
「へぇ、意外と普通……でも小さくするだけじゃ触れるんじゃ」
『もちろん触れるがの、お主が思っているよりずっと小さくするし、そもそも部分的に感覚を剥奪するからどれだけ触っても気持ちよくはない上、大きくもならぬのう』
「げっ」

 このくらいが基本じゃの、とアイナが示してきたのは慧の親指の第一関節。
 どう見ても3センチくらいしか無いよな……と慧の口から乾いた笑いが漏れる。
 自分のペニスがこんな惨めなサイズになったらと思うだけで、涙が出てきそうだ。

 ……ちょっとだけ、心臓が高鳴ったのは、見て見ぬ振りをする。

 そこまで徹底するのにペニスを残すのは『残さなければ男の娘の意味が無い』からだという。
 女では無い、性転換した男でも無い、男の娘からしか得られない栄養があるとか何とかアイナはひたすら語ってくれたが、残念ながらその説明は3割も理解できなかった。

 また一口に男の娘といってもこれまた細かいこだわりは個人差があるそうなのだが、フリデール王国では完全にペニスや睾丸を不可逆的に排除することは禁じられている。理由は扱く単純で、繁殖に問題が出るからだ。
 ……確かに『性癖:男の娘』が集まった国じゃ、いくら一夫一婦制じゃなくても、そして男が全員男の娘になりたい派じゃなくても大問題だろう。

 ちなみに、射精管理の魔法をかけられた男の娘本人が魔法を解くことはできず『男の娘ならほぼ全員が愛用している』というサイファ版プロステチップの芋虫型魔法生物と合わせて、男の娘たちは周囲の男の娘を弄りたい皆様によって完全に自慰と射精をコントロールされている。

『繁殖の時にはちゃんと元の大きさと感度に戻すぞ?繁殖でも管理自体は変わらぬから、大抵は女性側が好きなタイミングで射精させて終わりじゃが』
「思った以上に酷い世界だった……」
『ちゃんと合意じゃぞ?』
「当然だろ!合意じゃなかったら大問題なんてもんじゃない」

 よかった、俺地球人で。いや、ここも大概変態だらけの国だけど。
 そう変なところで安堵していれば、アイナが突然『見つけたぞ!』と声を上げ、喜び勇んで起き上がった。
 その足の向かう先は……何で俺の財布を手にしているのかな……?

「ちょ、アイナさん何を、ってこらあぁぁまた勝手にカード使おうとしてるうぅ!!」
『案ずるな!お主が「ミズギイベ」とやらで使った数字よりは小さいぞ!!よし、これでポチッと押せば』
「水着イベの話は禁句!!2天井とか俺ホント呪われてる、そうじゃなくて俺がブツと値段を確認する前に買うなああぁぁ!」

『注文が確定しました』の画面を嬉しそうに見せるアイナに「買い物は!ちゃんと俺の許可を取ってから!!」と思わず突っ込むも、やっぱりいつもとは明らかに違うはしゃぎっぷりに(……ま、こんなに喜んでくれるならいいか……いいのか……?)と相変わらずチョロい感じで流されてしまう慧なのだった。


 …………


 それから5日後。
 いつぞやのように海外から届いた箱の前で、慧は緊張気味に開封の瞬間を待っていた。
 ちなみに買ったのはこの箱だけかと思いきや『他にも準備がいるのじゃ』と謎のチューブやらヤスリらしきものやらをアイナはこっそり購入していたらしい。箱より先に届いたその荷物を見た慧が、眉間に皺を寄せつつ即座に小松菜1ヶ月禁止令を出したのも想像に難くない。

「全く……人の金だと思って……」
『むぅ、どうにも慣れぬのじゃ……欲しいものはどこからか恵まれるものじゃったしのう……』

 しょんぼりしつつも梱包を開けるアイナの手(いや俺の手!)は、心なしか弾んでいるように見える。
 小さな箱を開ければ、そこにはビニール袋に乱雑に詰め込まれた銀色の器具が光っていた。

「……アイナが教えてくれたサイトで見たけど、思ったよりでかい……って重いな、これ」
『これが……これが夢にまで見た、異世界の射精管理のからくり……!ふおぉぉぉっ……!!』
「皇女様、興奮しすぎて変な声出てますぜ」

 震える手でアイナが部品を一つずつ取りだし、一度バラバラにしていく。
 カチャリ、と音を立てて鍵の刺さった細長いパーツを引き抜くと、銀色のパーツが二つに分かれた。

 前方にあるのは、円盤状の部品だ。真ん中に細めのストローくらいの穴が、その周りに6個、それよりも小さい穴が開いている。
 上部には1.5センチくらいの長さの爪が二つと細長いパーツを通すリング。この爪を後方にあるパーツの穴に嵌め込み、細長いパーツを横から差し込んで固定する形のようだ。
 ひっくり返して裏を見れば、真ん中の穴には溝が彫ってある。ここに付属で付いていたチューブを取り付けて使うのだろう。

 後方のパーツは鉛筆くらいの太さがあるリングだ。と言っても正円では無く、少しだけ後方に湾曲した形になっている。
『エルゴミックがなんちゃららしい』とアイナが言っていたから、恐らく股間のカーブに合わせた形状なのだろう。
 パーツを組み合わせて施錠すれば、前後のパーツの間には5ミリ超の隙間ができそうだ。

『ほうほう……なるほど、この金具をチューブに着ければ良いのじゃな』

 アイナが付属のチューブの両端から金具を外し、別に購入していたチューブに段差ができないようきっちりと取り付けている。
 さらに丁寧に部品を指で擦っては、ちょっとした引っかかりも徹底的にヤスリで磨き、表面をつるつるに馴らしていた。

「地味な作業だなぁ……」
『確かに地味じゃが、この世界の道具は魔法具と違って勝手に装着者の身体にフィットするわけではないからのう。とにかく少しのささくれも許さぬのがコツらしいぞ』
「皇女様が職人になってら……いや、チンコ周りにささくれは怖すぎるけどさ、俺の腕の耐久度も考慮に入れてくれると嬉しいな、って聞いてないな……?」

 そうして延々と磨き続けること3時間。
 そろそろ腕が死にそうになってきた頃『こんなもんじゃの』と満足げな表情のアイナは額の汗を拭いつつ、磨き上げた部品を全てお湯を沸かした鍋の中に放り込んだ。
 ……鍵までは放り込む必要は無かったんじゃないかな、とそっと心の中でツッコめば『ほら、気分じゃ、気分!』といささか慌てたような口ぶりで反論するから、多分うっかり入れちゃったんだろう。
 このくらいのうっかりならまあ、許そう。まさかお湯に入れただけで、変形するような事もあるまいし。

 さらに消毒薬で満たされた容器にに冷ましがてら浸して『まずは装着してみるかの』とやおら召喚魔法を展開させた。
 何を出すのかと思いきや、どでん!と床に現れたのは、あの土塊……もとい、芸術作品だ。

「……いつ見ても斬新…………」
『ぐぬぬ、向こうに帰ったらもっと素敵な触媒を作りなおすからのう……』
「あのなアイナ、多分地球人同様クロリクにも持って生まれた素質ってのがあって」
『それ以上は言うでない』

 いつものように、アイナの魂が土塊に宿る。
 すっと魂を半分だけ抜いて分けるこの感覚にはどうにも慣れない。
 というか何故装着するのにわざわざ幻影?と思案している内にアイナは桃色の髪をなびかせたいつもの幻影を完成させていた。

 じっ、と見つめるガーネットのような瞳は、いつ見ても吸い込まれそうな魅力を放っている。これで120歳なんてホント反則、と独りごちれば「ふむ、妾を美人と称したのはお主くらいじゃし、妾もまんざらでは無い、無いのじゃがな……」とちょっと困ったような顔で慧の股間を眺めた。

 そこには、いつも以上に主張の激しい屹立が、時折ぴくんと跳ねつつ早速先端に丸い滴を作っている。

「……あの、えっと、これは」
「正直なのは良い事じゃよ。なのじゃが、これを着けるには少々問題があるのう……」
「無茶言うなって……アイナが見てたら息子さんはいつだって元気満タンだよ……」
「ふむ……ふふ、そうか、それはそれで悪くは無い気分じゃ」

 まあ通せば縮むかも知れぬ。
 何故か上機嫌になりにこやかに言い放ったアイナは、リング状のパーツを手に取る。
 そして「通せばって?」と首をかしげる慧のふぐりをふにっとつまんだかと思うと

「えい」
「ちょおおぉぉぉアイナさまあぁぁぁ!!?」

 無意気に片方の睾丸をリングに通そうと押しつけた。

 途端にドバッと全身に汗が噴き出し、哀れ先ほどまで元気だった息子さんもすっかりビビってしおしおになっている。
 大体アイナはもうちょっとしっかり観察して欲しい。玉をリングに通すと言うだけでも、このパーツの内径はかなり無理そうな狭さなのに、どうしてよりによって睾丸の最も長い部分を縦にしたままリングに押し込もうなどと考えたのか。
 いくら何でも股間周りでうっかりの発動はダメ、ゼッタイ。

「んぐぅ…………いだい…………」
「当たり前だろ!!っ……もうちょっと大事に扱えよぉ…………」

 二人で股間を押さえて悶絶しつつ、気を取り直してアイナは慧の睾丸を再びつまみ、今度はちゃんと短い径が通るようにリングにぎゅうぎゅうと押しつけている。

 ……いや、短い方でも大概だった。
 そもそも睾丸を少し押しつぶさなければ入らない径なのに、押しつぶそうとすればつるつるふわふわのふぐりの中で、玉はつるんつるんと逃げていってしまう。

「あ、また逃げたではないか……もうちょっと気合い入れて押し込む必要が……」
「やめてまじでやめてっ…………ぅぐ…………ぅぅ……っ…………!」
「ぬぅぅ……ほんと、玉は痛いのじゃな…………もう二度と戯れに男の娘のふぐりをぺちぺちはせぬ……」
「それは止めてあげて、というか無邪気なのに悪辣な皇女様だな!!」
「じゃがのう……っ、あんな愛らしいもの、ついついぺちぺちぷるんぷるんしたくなるではないか……!」
「怖ぇよ皇女様の発想!!」

(……でも、感覚は切らないんだな)

 いつもながら慧は不思議に思う。
 初めて会ったとき、確かアイナは『慧の感覚は妾の裁量で共有したり切り離したりできる』と話していた。
 なのにアイナががっつり堪能したい快楽はともかくかくとして、どうして彼女は痛みもそのまま共有しているのだろうかと。

 思い起こせば、尿道で遊んだときもそうだった。
 あの激痛は、アイナが味わう必要なんて無かったのに。
 それも一緒に共有したお陰で、魔法生物が地球人の体液に依存してしまうことまで忘れるほどテンパってえらい目に遭ったというのに……

(痛みも味わいたい?……まさか、アイナは別にドMって訳じゃなさそうなのになぁ)

 紅葉とは全然違うのにな……と、押し込まれる痛みを紛らわせたくて脂汗を流しながら必死で思考を巡らせる。
 と、ぷるん!と音がする勢いでようやく睾丸が狭いリングを通過した。
 思わず二人の口から「「やったぁぁぁ……!!」」と気の抜けた声が漏れる。

「よし、あと一つじゃ!!頑張るのじゃ、慧!」
「おう、ここまで来たら気合いだ気合い!!」

 ……何だろう、さっきから痛いことの繰り返しのせいか、だんだんおかしなテンションになってきたぞ。

 どうやら二つ目を通すのは、一つ目以上に難しいらしい。
「おぬしのふぐりはどうしてこんなに自由自在に動くのじゃ」と文句を言われても、こっちにはどうしようも無い。こんなところに全自動伸び縮み機能を実装した地球の神様に言ってくれ。

「……あ、通ってた玉が抜けた」
「うっそだろおぉぉぉ!!俺の頑張りを返せえぇ!!」

 そうして二人でひぃこら格闘すること、実に30分。
 ようやっと両方の睾丸をリングに通し終え「終わったあぁぁ……!!」と思わずアイナが手を離したお陰で重たい金具が一気にふぐりを引き延ばし「いででででで!!アイナ、手!手っ!!」「いだいぃぃ、ほれ手じゃ!!」「そうじゃなくって手で金具を持てえぇぇぇ、だれが俺の手を握れと言った!!」とくっそ痛いコントをかました挙げ句、ようやく睾丸は痛みから解放されたのだった。

「ほ、ほら、ちんちんもちっちゃくなって通しやすくなって、良かったということで」
「全っ然良くないわ!!!」

 一度身体の中にしょんぼりした息子さんを押し込み、リングを根本まで通す。
 そうしてアイナは消毒液に浸けておいた円盤状の部品をそっと手で取りだした。
 既に裏側にはつるりとした金具付きのチューブが取り付けられている。
「ここには触れないように、じゃな……」と慎重に取りだしたチューブの先端に潤滑剤を垂らし、これまたあらかじめたっぷり潤滑剤を塗っておいた鈴口に当てた。

 最初見たときには金具の太さに、そしてアイナが用意したチューブが明らかに付属のチューブより太い事ににビビっていたが、こうやって見ると何てことは無い。
 あの透明な棒状の魔道具に比べれば一回り細いのだ、これなら痛みもそんなに無いかな……と分かってしまうのがちょっと悲しい。

 それよりも、気になるのはその長さだ。
 付属のチューブも通常時の長さはゆうにありそうなのに、アイナが用意したチューブは明らかにそれより長い。多分、全力で元気になった息子さんくらいの長さはある。

(……これ、まさか、前立腺に……?)

 太い金属の先端が、前立腺の部分にめり込む……想像しただけでぞわっと走ったのは、明らかに快楽を期待した反応だ。
 ぴくん、と揺れた先端に「お主の期待には沿えそうに無いがの」とアイナが言いながらつぷ、とその先端を沈めていく。

「ん…………っ……」
「この長さじゃと、ちょうど尿道が曲がる部分に落ち着くそうじゃ。どうもその部分は少し広くなっておるようでな、日常の動作でも違和感が出にくいらしい」
「ひぅ……それ、ホントかよ……」
「分からぬ」
「分からないのかよ!!」

 仕方ないであろう、と言いつつもアイナの手は止まらない。
 尿道をずるずると逆流される感じが気持ちいいだなんて、全く何て感覚を教えやがったのだ、このウサギは。

「そんな知識はサイファには無かったしのう……地球の知識は間違えた物も多いから、実際に試して見ねばなんとも言えぬのじゃ」

 知識が当てにならないなんて、良く不安にならないものじゃ、とアイナはため息をつきつつも奥までぐっとチューブを押し込む。
 ぴと、と切っ先がプレートに触れる頃には、確かにチューブ先端の違和感は無くなっていて「どうやら本当だったみたいだな」とホッと表情を緩めれば、アイナも釣られて「良かった」と微笑んだ。

 ……その笑顔は本当に、反則だと思う。

「ぬ?ちょっと待つのじゃ慧、まだ鍵もしてないのに大きく、ぬうぅ押し込みにくいいのう!おりゃぁぁっ!!」
「いだいいだいいだいっ!!今のは俺のせいじゃないアイナが悪いっ!!」

 うっかり元気になりかけた屹立を、アイナは慌てて全力でプレートごと押し込み、無理矢理鍵をかけてしまうのだった。

「……ちなみに気付いておるか、慧よ」
「何だよ」
「この貞操具というやつ、ふぐりを潰しながら通す作業が毎回必要じゃぞ」
「マジかよ、それは気付きたくなかった……」


 …………


 鍵をかけられて次は1週間後、となるのかと思っていたら、次の日の夜には一旦外されていた。
 アイナ曰く、身体に馴染まないこの世界の道具を敏感な場所に扱うのだから、念には念を入れたいのだそうだ。

『……うむ、傷にはなってなさそうじゃ。妾は特に感じぬが、慧は痛いところはあるか?』
「朝が痛い」
『それは仕方が無いのう』

 そうしていつものように「処理」されて、また装着される。
『いつも幻影が使えるわけでは無いしの』と、時には慧の手を使って装着することもあった。
 やはり反対側から装着するとなると少々勝手が違うのか、特に睾丸に悪戦苦闘しながらである。ホント、固定するためには仕方が無いとは言え、もうちょっとふぐりに優しい構造にはできなかったものか。

 淡々と1-2日着けては外して、射精させて、また着ける。
 朝はもちろん、排尿したときの状態や洗浄の具合などを事細かに調べられるのは非常に恥ずかしいが、アイナは真剣そのものだ。
 ……自分のために(変態極まりない行動であろうが)真剣になってくれている姿は、悪いものでは無い。

 アイナが調べたところによると、調整段階ではあちこちに痛みが生じたり傷ができたりすることも多く、それを繰り返しながらどんな状態でも快適に過ごせるように細かくフィッティングをしていくものなのだそうだ。
 ただ、最初の段階でしっかりバリを取って磨いてくれたのが良かったのか、慧が装着で不快に感じたことはほとんど無かったし、わずかな違和感もアイナに伝えればすぐに調整してくれるお陰で、数日経てば日常生活はおろか運動をしても寝っ転がっても平気なレベルにはなっていた。

 痛みも朝の生理現象で悶絶するくらいで、昼間に不意に元気になるくらいならまぁ、我慢できなくは無いという感じだ。
 確かにトイレは個室限定になってしまったが、そもそも触手服を着ているときはトイレすら使わないし、休日に至っては椅子に座ったまま漏らしていたくらいだから、そこまで精神的な抵抗もない。

 それに、意外な利点もあって。

「……姫里、今日は控えめか?」
「あ、うん。まぁそんなところ、かな」

 そう、水曜日の、触手服を着たまま講義を受ける日の負担がぐっと減ったのである。

 全身はあのヌルヌルした触手たちによって、今まで通りくまなく愛撫されている。
 最近じゃ乳首に加えて会陰部への刺激も随分激しくなってきて「ほんと特訓の意味って……」と遠い目をしつつ時折快楽に浸っては「いかんいかん」と慌てて我に返る始末だ。

 それでも、一番肝心な触手たちの大好物が出てくる場所を金属でガードできるのは非常に大きい。
 プレートとリングの隙間から入り込む不心得者はいるとは言え、歩く度に屹立を舐めしゃぶるように扱かれ、先端をやわやわと食まれ、鈴口から顔を突っ込んで出てきた透明な液を啜られないだけで、こんなにも楽に生活できるものなのかと最初は大層驚いたものだ。

(……射精管理って言ったけど、これならそこまで大変じゃなさそうだ)

 どう考えてもペニスに触らせる気が無い形状かと思いきや、風呂場であれば中まで洗うことができるのもポイントが大きかった。
 確かに尿はチューブが入っているからそこから出てくるけれど完璧に漏れないとまではとは行かなくて、ビデでしっかり洗浄しても何となく臭うような気がしていたから、洗浄性の高さはとてもありがたい。
 隙間から指を突っ込んで洗う姿は実に奇妙だし、とてもこの刺激では気持ちよくなれないなと実感できるものだったけど、この際しっかり洗えていれば文句は言うまい。そもそも、自分で気持ちよくさせないための道具なのだから。
 正直、アイナが見せてくれた筒の中に閉じ込めてしまうような厳つい貞操帯に比べれば、快適そのものだろう。よくぞこの形を選んでくれた、とアイナを褒めたくなる。

 下着が濡れたり汚れたりする問題も、初日にコンビニでいきなり『慧よ、これを買うのじゃ!これがあれば下着が汚れぬと書いてあった!!』とアイナが叫んで指さしたライナーのお陰であっさり解決した。
 ……いや、流石にコンビニで明らかに女性ものと分かるデザインのライナーをレジに持って行くのは、心が死にそうになったけど。次回からはネットで注文する、もしくは遠方のドラッグストアまで車で遠征する方が良さそうだ。

 ……そうして、今日も着けて、外して、射精させて貰って。
 また着けて、日常を過ごして、その終わりにご褒美と言わんばかりにアイナの手で逝かされて。

 何が解決したわけでも無い。相変わらず腹の奥に燻る熱は、時折慧を苛んでいる。
 けれども貞操具を着けたところで状況は特に悪化していない。悪化していないならまずは良し、だ。

(うん、何の問題も無い)

 そう慧が安心するのを見透かしたかのように『そろそろやってみるかの』とアイナが言いだしたのは、初めての装着から10日ほど経った頃だった。


 …………


「……アイナ、お前また勝手に何か買ったな……」
「ぬぅ……これが無いと管理ができぬのじゃよ……」
「で、お値段は」
「っ、たったの5千じゃ!な?これならコマツナを没収せずともよいじゃろ!?」

 いつものように「アイナ」の幻影を作り出した皇女様は、仁王立ちになる慧の前で床に正座して大好きな小松菜のために必死で言い訳を並べていた。
 その前に置かれているのは、白い蓋の付いた透明なコンテナだ。
 これは何度か見たことがある。紅葉が『外遊び』をするときに、鍵を指定した時間まで入れておくためのロックボックスとして使っているものだろう。

「何でそんな物が必要なんだよ」と呆れながら尋ねれば「鍵の管理が必要じゃろ?」とアイナはチャリン、と貞操具の鍵を指に引っかけて回す。

「……机にしまっておくだけじゃだめなのかよ」
「そうじゃな、こればかりはやってみた方が早いのう。きっとこのボックスがあることに早晩感謝するはずじゃ」
「ふうん、そういうものなのか……」

(……本当に素直というかチョロいというか……慧よ、お主それで本当に生きていけるのか?)

 まぁアイナがそう言うなら、とあっさり信用して委ねてしまうこの素直さは、サイファとは比べものにならないほど苛烈なこの世界で生きていくには少々問題があるのでは無いだろうかと、要らぬ心配をしてしまう。

(毎度ながら妾の言うことを鵜呑みにするのは困ったものじゃが、今回ばかりは仕方が無いかの……)

 当然ながら、アイナに慧を騙そうとする意図は無い。
 魔法で射精管理するのと異なり、この世界で、しかも(肉体としては)一人で管理するとなればこのような道具は間違いなく必要になる。
 それほどに男の射精欲というのが強いことは、向こうで何十人もの男の娘と関わってきたからよく知っているのだ。

 その一方で慧は、射精管理という概念すら最近知ったばかりの言わばど素人である。
 聞いたところによれば、これまでの人生で一度だけ……それもほんの1週間だけ自慰を我慢した経験はあるらしく「正直あのくらいなら余裕、何なら2週間でもできるんじゃね」と高をくくっているようだ。
 その上この10日間の調整ですっかり「貞操具って意外と快適だな」なんて早合点してしまった彼には、その快適さは日常生活の側面しか反映していない事など、気付ける訳がなくて。

(まぁ、己の快楽を管理されるという本当の意味は、経験が無いとなかなか理解し辛いじゃろうな。妾とて『こちら側』は初めてじゃし……いやはやどうなることやら)

「ほら、ちゃっちゃと着けちまおうぜ」と風呂上がりで湯気がほこほこしている股間を晒しつつ、慧がアイナを急かす。
 睾丸を通すのも随分コツを掴んできて、痛い時間はかなり短くなった。いやもう、ここまで手際が良くなるまでに何度二人で悶絶したことか。

 そうして慎重にプレートに装着した尿道チューブを通しつつ、アイナは「のう、慧」と慧を見上げながら囁く。
 ……どうも自分は慧に甘い。わざわざ心づもりをさせずとも良い気はするのに、慧が想定外の状況に慌てふためく姿を見てみたいと思う反面、あまり泣かせたくは無いと思ってしまうのだ。

 しかしこの体勢はちょっと失敗だったかも知れない。
 案の定、アイナの呼びかけでこちらを向いた慧は……己が欲望を串刺しにし、ぴったりと蓋を被せようとしているその絹のようなすべすべした白い手と、自分をじっと見上げる深い紅色の輝きに、ゾクッとした興奮を覚えてしまう。

「……大きくなっては蓋がしづらいんじゃが」
「誰の!せいだと!!思ってんだよ!!!」
「ぬぅ、お主本当に妾の顔が好きじゃのう……」
「ちょっ!そっそんなんじゃ無くて、ふぐうぅぅ!?」

「ほれ、小さくするのじゃ」とアイナが不意に双球をぐっと握りしめる。
 そして「うごっ……」と固まったままの慧の股間を見つめ「ふむ、これで良いかの」と更に手を進め始めた。

「……鬼……悪魔ぁ…………」
「仕方ないじゃろう、こうでもしないと収まらぬし、そのままではリングで根本を締め付けて大変なことになるしのう」

 ほれ、分かっておるのか?もうお主はこやつを触れなくなるのじゃぞ?と、チューブが根本まで挿入された雄芯の先端をアイナはプレートでぐりぐりする。
 そうしてその言葉に「当たり前では」と言わんばかりの締まらない顔をする慧をチラリと見つつ「折角じゃからその意味を教えてやるかのう」とにっこり微笑むのだ。

「その意味……?」
「うむ、お主は我慢するだけならなんともないと思っているようじゃが」

 怪訝そうな顔の慧を見やりつつ、ぐっとアイナがプレートを押しつける。

「自分の意思で自由に我慢することと、我慢を強いられることの違いを本当に分かっておるのかのう?」
「…………え」

 ポカンとして、アイナを見つめる。
 皇女様は今日も実に端正な顔に笑みを浮かべて、慧の大切な中心を閉じ込めていく。


(……我慢を、強いられる…………?)


「つまりじゃの」

 カチン、とプレートから出ている二本の爪がリングに当たる。
 意外と反発力があるのだろう、アイナは力を込めて穴の位置を調整している。

「自発的な我慢と、強制的な我慢では厳しさが全く違うのじゃよ。何せ自発的であれば、いつでも止められるという余裕がある」
「…………それ、は」

(いや、でも……そんな、たった1週間くらい、自分で我慢しようが我慢させられようが)

「同じじゃと、思っておるじゃろ?……同じであれば射精管理など成立せぬ。わざわざこんな器具まで発明してのめり込む者が現れたりせぬのじゃよ」
「っ…………!」

 慧の楽観的な思考など、アイナにかかればあっさりと看破されてしまう。

 プレートをリングの穴に合わせてきっちりと押さえ込み、上部の鍵を挿入するスロットを合わせるが否や、アイナは手早く細長い部品を差し込み、鍵をくるりと回した。


 カチャ……


 その聞き慣れた軽い音が、思った以上に重く、大きく響くのは……何故だろうか。

「ほら、これでお主はもうペニスに触れて気持ちよくなることはできぬ」

 うっそりと微笑むアイナに「それは、今までだって」と返す慧の声は、びっくりするほど掠れていて。
 そこに、「分かっておるか?この10日間はただ調整しておっただけじゃよ。そもそもお主、何にも我慢などせず毎日子種をまき散らしておったではないか」と事実を突きつけられれば、思わず喉をゴクリと鳴らしてしまう。

(つまり、この10日間は……何も始まっていなかった?)

 つぅ、と背中を嫌な汗が伝う。
 さっきから心臓の音が、やかましくて……何で、同じ我慢じゃ無いかと、理性は本能的な不安に駆られる身体を、壊れたラジオのように必死で叱咤している。

 ――慧は今更ながらに気付く。
 これから自分が堕とされる境遇は、これまでの人生では一度たりとも経験の無いもの。
 そしてこれまでの人生の経験が、何一つ役に立たない、完全に未知の領域だと。

(ここを……管理される)

 その言葉が一気に現実味を帯びて、ずしりと慧の心にのしかかる。
 うわんうわんと耳鳴りがして、震えが、止まらない……

「……あ、アイナ…………」

 縋るような目つきで、慧はアイナを見上げる。
 見上げる……?

(あれ、俺、いつの間に)

 そう。
 いつの間にか股間を封じられた慧は床にへたり込み、鍵と透明なロックボックスを持って目の前に立つアイナを見上げていたのだ。

 そのかんばせが、遠い。
 いつもの美しい顔が……まるで違う意味を持っているかのようだ。


 カンリ サレル


 それは慧が初めてアイナに感じる、上下関係。
 今この瞬間、アイナはただの居候皇女様では無い。
 慧の股間の自由を握る……圧倒的強者として、目の前に君臨している。

 目の前が、涙で滲んでくる。
 流石は皇女様といったところか、その堂々たる出で立ちが余計に慧を打ちのめす。

「……アイナ…………っ、アイナ……!」
「そこまで怯えずとも良い。……怯えさせたい訳では無いのじゃ。ただお主があまりにも脳天気じゃからのう」
「ぁ……」

 存外柔らかい声と共に、からん、と小気味よい音を立ててボックスの中に鍵が入り、白い蓋がきっちりと閉められる。
 そうして液晶画面を慧に見えるようにして、蓋に付いたディスクをくるくると回し始めた。

「…………っ…………!!」

 目の前で、数字が積み上がっていく。
 1時間……7時間……20時間……1日…………

(怖い……分からない、けど、何だかこれはヤバい気がする……怖いっ……!!)

 この数字は、慧がこれから奪われる時間だ。
 この世界に肉体の無いアイナに、己の最も大切な部分を差し出し、管理されるしかない時間。

 心臓の音が喧しくて、頭が爆発しそうで。
 恐怖は全身の感覚を鋭くし、ディスクを回す音すらはっきり聞こえて……ああ、身体に絡みついて、慧を縛り付けていくようだ。

「……無茶はさせぬ。とは言え、鍵がかかれば妾にもどうにもできぬがの」

(無茶はさせぬがそろそろ気付くのじゃ、慧、お主の希有な才に。そしてその願望に)

 くるくると回す手が、止まる。
 液晶の画面はぴったり7日間を表示していて

「ひっ……」



(ああ……『俺』が、管理されてしまう!!)



 点滅していた鍵のマークが施錠の形に変わり、カチッと鍵のかかる音がした瞬間

「うああぁぁ…………っ!!」

 部屋に響くのは、これまで聞いたことも無いような、一見悲痛な慧の叫び声。

 それは多分に、自分の権利を握られ管理される事への不安と恐怖の色を含んでいて。
 けれども決して負の感情だけでは作られていない。

 ……その証拠に、蓋をされたはずの慧の股間にある小さな穴からは、白濁した液体がたらりと滴っていたのだから。


 …………


「……もうだめだ……誰か俺を永遠に眠らせて…………」
『うむぅ、これは流石に予想外じゃったのう……』

 ボックスのロックがかかった後、呆然とその場に座り込んでいた慧を正気に戻したのは、思わぬアイナの一言だった。

「……慧、お主まさか、貞操具をロックされて子種を出してしもうたのか!?」
「へ?…………え……ちょ、嘘だろっ何でこんなこと、はっ、みっ見るなあぁぁぁっっっ!!」

 ……いや、むしろ正気に戻りたくなかったな……と慧は遠い目で独りごちる。

 目の前に広がるのは、貞操帯のプレートから床まで滴るどろりとした白濁。
 恥ずかしすぎて、穴があるなら埋もれて隠れてしまいたい。息子さんは既に身体の中に隠れちゃってるけど。くそう、その場所俺と代わりやがれ。

「なんで……出ちゃったんだよ……何も刺激してないってのに……」
「お主、本当に心当たりは無いのか?」
「んなもん何にも無いって……あれだけ毎日出してるのに、俺の息子さんちょっと我慢がきかなさすぎじゃ」
「そういう問題では無いと思うのじゃがのう……」

(……これほど分かりやすいしるしでも気付かぬのか……なんとも慧はかちんこちんじゃ……)

 幻影を解き、ともかく一度スッキリしようとアイナは慧を風呂場へと誘う。
 地球人が好む温かいシャワーでも浴びれば、少しは気分が紛れるだろうと思ったのだ。

「…………」
『………………』

 慧の指……いや、アイナが動かす指が貞操具の間から指を差し込み、優しい手つきで隠れたままの竿を洗っていく。
 それを慧は沈鬱な気分でぼんやりと眺めていた。

(何なんだよ……俺、どうなってんだよ……もう、訳わかんねぇ…………)

 たった数日前には「マジで洗えるじゃん、でもこれ絶対扱けねぇのすげぇ!」なんてちょっと興奮しながらアイナとはしゃいでいたのに。
 ああ、あの時の自分は何も分かっていなかったのだと、今更ながら痛感する。

『どうじゃ、ちょっとはスッキリしたか?』
「……ううっ…………もうやだ……」
『全然駄目みたいじゃのう……』

 涙ぐむ慧に、アイナは『まいったのう……』とため息を吐く。
 とはいえ無理も無い、射精管理の意味を……いや、あんな説明はさわりでしか無いけれど、初めて知った直後にこの醜態である。そう簡単に浮上はできないだろう。

(これは慰めてやらねば……ぬぅ、慧が悲しいと妾も落ち着かぬのじゃ……!)

 なんとも言えない感情に急かされ、アイナは『そう落ち込むでない』と優しく慧に語りかける。
 しかし流石にちょっと脅しすぎたじゃろうかと反省しつつ、咄嗟に口から出たアイナの言葉は

『のう慧よ、そもそもお主のちんちんは既に管理されておるも同然じゃし、何も変わってなぞおらぬ!ちょっとこの金属で閉じ込められただけじゃ』
『…………へっ、それどういう意味」
『ん?お主、妾がこちらに来てから一度でも自分の手で……妾が動かすのでは無くて、自分で手を動かして自慰したことはないではないか』
「……え…………」
『ずっと妾がお主の望み通りにシコシコしていただけで、いつでも自慰を取り上げられる状況じゃったから』
「アイナストップ、それ以上言うな。……それ以上は俺が立ち直れなくなる」
『あ』

 ……どうやら逆効果だったらしい。
 慧の顔色がますます悪くなるのに気づき、これはやらかしてしまったとアイナはしょんぼり肩を落とすのだった。

(全然意識して無かった……マジかよ、俺、ずっと自分で処理してなかった……!?いや、それだけじゃ無い、俺は……!)

 一方、慧はアイナの言葉からとんでもない事実に思い至るのだ。

 自慰だけでは無い、身体を洗うのだってずっとアイナがやっていた。
 慧がペニスに触れるのは昼間のトイレだけで、その昼間すら週に3日は触手服の中……実質、この手で意識してペニスに触れる機会が激減していたことに。

 そこまであっさりと自分の権利を預けていることに、どうして何の疑問も抱かなかったのだろう……?
 アイナだから、安心していた?

 本当に、それだけ?


(だって)


 心の奥底で囁く声がする。
 嫌だ、それは聞きたくない、と必死で湧き上がる声を押し込めようと、アイナに「もう寝ようぜ」と言って明かりを消して貰う。


(……だって、それが良かったからだよ)


 そんなことは無い、単にほら、夜はアイナが支配権を持っていたから、それだけだ。
 それにアイナだって俺の要望を一切否定しなかった。実質俺がやっているのと変わらないじゃないか!


(もう、気付いている癖に)


 お願いだ、もう突っ込まないでくれ。
 気付いてなんかいない、さっきのだって偶然だ、ありえない……

 何かで気を紛らわしたい。けれどもアイナは既に夢の中で、なのに身体の支配権は緩むことがない。
 今の慧は、スマホ一つ手に取ることができないのだ。


(諦めて受け入れちゃいなよ、そしたら君の望みに近づけるんだ)


 違う、俺は変態なんかじゃ無い……!

 唆す声が、頭から離れない。
 その日慧が眠りにつけたのは、そろそろ新聞配達の音が聞こえようかとする時間だった。


 …………


「ふぐぅ……痛いいぃ…………」
『全く、この世界の射精管理は少々乱暴すぎやせぬか……?ほれ慧、早うトイレに行くのじゃ!!』
「俺だって乱暴だと思うし何なら今すぐ外して」
『それはできぬ相談じゃ』

 できれば今日は休みであって欲しかった、休みならここで寝たまま漏らせたのに。
 そう心の中で嘆きつつ、慧はよたよたとトイレに向かう。

 どうやらいくら調整しても、朝の激痛だけは避けようがなさそうだ。
 プレートの下でギチギチに膨れ上がり、無理矢理プレートを押し出そうとする痛みと、尿道に通されたチューブを食い締めている痛みが絶え間なく襲ってくる。
 お陰で朝は、これを付け始めてから目覚まし要らずだ。あんまり嬉しくは無い。

『これほど道具に気を遣わねばならぬとは……この世界で射精管理を考え出した者は、随分と情熱的だったのじゃろうな……』
「そんな変なところに思いを馳せないで」
『じゃが、彼らの苦闘があってこそ、妾たちに射精管理という概念とそれを補助する魔法が生まれたのじゃ。いやいや、やはりえっちいのは世界を救うのう!』
「俺のチンコは救ってないけどな!!」

 くだらない話をしながら簡単な朝食を済ませて、駐車場へと向かう。
 すったもんだした結果、朝は慧の好みで、夜はアイナの好みで食事を取ることになっているから、今日も慧は朝からトーストとカフェオレだ。
 ……あまりにも毒々しい(と本人は嘆いている)味にグロッキーになってしまうアイナが気の毒になって、朝食を奮発してパン屋のリッチな食パンにマーマレード、甘めのカフェオレに変更したことは褒めて欲しい。アイナなんて、今でも小松菜を生で囓っているというのに。

『……それで、少しは落ち着いたのか?』
「ん?ああ、まぁ……何か考えるとさ、どんどん頭がぐっちゃぐちゃになるんだよな」

 躊躇いがちにアイナが昨日のことを尋ねれば、考えるとしんどくなるからなるべく考えないようにした、とこれまたある意味アイナの予想通りの答えが返ってくる。
 どうやら慧は、まだまだ己の素質に気付かないらしい。……もしくは、うっすら気付いていても認められないのか。

(あれだけで子種をまき散らしたのじゃから、流石に自覚するかと思ったのじゃが……まだ難しいかの。まぁ、こちらもこの段階ですんなり行くとは思っておらぬが)

 本番は、もうちょっと後の話。
 できればそれまでに、このかちんこちんの耳が少しでも柔らかくなって、己の秘めたる素質を聞き入れられることをアイナとしては祈るばかりである。

「……何だよ、何か変なとこでもあるか?」

 黙り込んでしまったアイナに慧は怪訝そうな声をかける。
 『何でもないぞ』とその問いかけを交わしつつ、アイナは慧をあまり追い込まないように話題を変えるのだった。

『にしてもこの貞操具の造形は実に素晴らしいのう。丸いプレートがこんもりしたふぐりに埋もれて顔を覗かせている姿は、何とも趣が』
「そんなところに高尚な表現はやめてくれ」
『あれじゃな、ちんちんを小さくする代わりに、平たくまぁるい形にするのも良いかも知れぬ。うむ、この形を魔法で再現できればきっと愛らしさに人気沸騰間違いなしじゃ!』
「ちょ、異世界で犠牲者を増やさないで!!」

 ほらもう、急がないと!と慧は車を降りて慌てて講義棟に走って行く。
 ――その身体にはまだ何の変化もなく、その心の呼びかけは未だ拒絶されたままである。


 …………


 たった1週間だ。
 だから何てことは無いと思っていた自分を全力で殴ってやりたい。

「ううぅ……くそっ、集中できねぇ……!」

 思わず苛立った声が漏れる。
 貞操具を施錠してわずか4日目にして、すでに慧の股間は限界を訴えていた。

 気が抜ければすぐに、自慰が頭をよぎる。
 ふとした瞬間に手が伸びて、けれど金属のプレートで阻まれて、ああ、この向こうにある筈の自分のものにすら触れられないのかと改めて気付かされる。

 それだけならきっと、思えたのだ。
 ああ、自由な状態で我慢するのと、我慢を強いられるのは確かに違うなと。
 そしてうずうずした射精欲に多少悩まされながらも、きっと1週間後の解放を迎えて「まぁこのくらいなら我慢できるよな」とうそぶけたかも知れないと。

 だが、慧はすっかり忘れていた。
 例え貞操具を着けていようが、アイナとの約束は……週に3日、触手服を着るという前提は、覆ることが無いことを。
 そして、触手服を着る前に慧の身体は数日かけてがっつり射精欲を高められ、いつも以上に敏感で火が付きやすくなっているという現実を。

「……むしろ楽だって、思ってたのにぃ…………」
『そう言えばそんなことを言っておったのう。隙間から弄られる程度で触手の猛攻が防げるから過ごしやすいと。……とんだ見込み違いじゃったな』
「お前なぁ、絶対気付いてただろ……何で教えてくれなかったんだよぉ」
『教えたところで実感できぬと理解はしがたいじゃろ?』
「そりゃそうだけどさ!」

 アイナがこんなに鬼畜だとは思わなかった、と嘆きつつ、慧は涙を浮かべながら無意識のうちに右手で下腹部をカリカリとひっかく。
 その手の動きですら触手服はまるで嘲笑うかのように、指を、手を、腕を舐めしゃぶり、必死で力を入れているはずの指は、ただすべすべした触手服の表面を撫でるだけに留まっている。

「はぁっ、はぁっ……チンコ触りたい、出したい……っ!」

 一度火が付いてしまえば、諦めが付くまで無駄なあがきを止められない。
 そんな無様な姿が情けなくて、けれど身体は言うことを聞いてくれない。

 プレートの下では必死に渇望を訴える欲望がそそり立とうとして、金属の壁に阻まれ痛みを訴えている。
 その隙間から細い触手が入り込んで、焦れったくなるだけの弱い刺激でぬちぬちと表面を食んでいるから、余計に衝動は高まるばかりだ。
 そんな遠慮しなくて良いから、思いっきり締め上げて扱いて、そう思わず叫びそうになる。

 触手服に包まれた部分はいつも通り……いや、慧の興奮に合わせてさらに激しく、ずるりと肌の上を滑り、往復し、念入りに場所に合わせた触手で嬲っている。
 すっかり敏感に――最近はちょっと大きくなった気もする――胸の飾りは特に集中的に、ねっとりと舐られて「んあぁぁ……」と思わず涎を垂らしながら気の抜けた喘ぎ声をあげてしまった。

「ううぅ……触りたいのにぃ……何にも届かないぃ…………!!」

 どんなに必死で掻き毟ったところで、ステンレスの覆いは望みの刺激を通さない。
 その上今日は触手服が覆い被さっているのだ。刃すら通さない服の上から与えた刺激など、1ミリたりとも届きやしなくて当然だ。

 理性では分かっている。
 分かっているのに、バカになった頭は理性を放り投げ、ただ求める快楽のためだけに必死で身体を動かし続けることしかできない。

 頭の中がぐらぐらに沸き立って、見える視界が狭まって、思い浮かぶのはペニスの、射精のことばかりで。

「っ、腰、押しつけたら……!」
『……んっ……お主、そろそろ諦めてはどうじゃ……?むしろ辛くなるだけじゃぞ?』
「ひぃぃっ乳首いいっ!!いいけど止めてぇぇ!チンコさらわせてくれよぉぉ!!」

 アイナの窘める声も、今の慧には届かない。
 涙混じりの声で叫びながら、慧はうつ伏せになって必死で腰をへこへこと床に押しつける。
 暫く腰を狂ったように振りたくり、疲れてぐったりと寝そべり、けれど全身を舐め続ける触手によりすぐに渇望を呼び起こされ、また腰を押しつけて……

(……これでは生活にならぬのう…………)

 まるで自慰を覚えたての若者のようじゃ、とアイナは射精欲にたやすく溺れる慧を眺めていた。
 とはいえ、アイナも決して平気では無い。
 触手服の刺激や、閉じ込められた性器の痛みくらいならさらっと流せただろうが、この射精欲という初めての渇望はアイナをしてもなかなかに強力だった。

(ただ裸の絵を見ただけでも容易に昂ぶるとはのう……男は視覚情報から興奮するとは聞いておったが、触れられた刺激や感情がなくとも興奮してしまうと言うのはいやはや……面白い体験じゃ)

 単純で可愛らしいが、難儀ではある、そうアイナは煮えたぎる頭で結論づける。
 この状態で後3日、しかも最終日は水曜日、触手服を身につける日だ。
 さしものアイナも背中に冷や汗が流れる思いがする。

『……慧よ、次回の施錠は金曜の夜にしようぞ。そうすれば多少はマシかも知れぬ』
「はぁっ、はぁっ、くそっ触りたい出したいいぃ……」
『ぬぅ……全然聞こえておらぬな……』

 陽が落ちれば、身体の支配権は交代する。
 流石にアイナは理性を手放すことも無く、時折腰を振りつつも『せめて食事くらいは摂るのじゃ』といつものようにリンゴと小松菜をむしゃむしゃと頬張り、触手服を脱いで全身を、特に汗まみれのデコルテを温かいシャワーで丹念に洗い流して行く。
 こんな状況でも触手服の覆っていた場所は清潔そのものだが、慧は温かい湯で流すことを好むようだ。本当に水浴びの好きな種族なのだなと思う。

 その間も、慧のすすり泣く声は止まらない。
 触りたい、お願いアイナ、触って、と懇願する声がずっとバスルームに響いている。

『だめじゃ。そもそも妾が触ったところで、この状態では何の刺激も得られぬぞ?』
「もうやだぁ……鍵、開けて……我慢できない……っ!!」
『それも散々朝からお主が試したじゃろ?あのロックボックスは意外と頑丈じゃし、よほどの力で壊しでもせぬと鍵は取り出せぬ。お主は5000円を無駄には』
「できる訳無いだろ……貴重な食費を削ったんだぞ……」

 食費を削ったのはガチャのほうじゃろ、と突っ込みつつ、身体を拭き上げもごもごの服を身につけてベッドに横になる。
『ならばもう諦めるのじゃ、ほれ、寝るぞ?』と電気を消せば「アイナのばかぁ……鬼、悪魔、クソババア……」と恨み言をもらしつつも、流石に一日中腰を振っていたせいだろう、慧は魘されながら眠りに落ちていった。

『ふむ……』とその寝顔をいつものように微笑みながら眺めるアイナのこめかみには……青筋が立っている気がしなくもない。

『慧よ、今は初めての体験で動揺しておるから許すがの……流石にババアは論外じゃぞ……?』

 どうやら皇女様は、ババア扱いされることをことのほか嫌がるようだ。
 許すと言いつつも高まる射精欲でやはり気が立っていたのだろう、アイナは横になったまま手のひらをかざす。

 魔法陣から現れたのは、あの耳のお手入れ用具に似たスライム状の魔法生物だ。今回は桃色らしい。

『久々にこれを使うのもよいじゃろ。ほれ、うんと乳首を気持ちよくしておくれ』
「~♪」

 パジャマをはだけ胸にスライムを押しつければ、すぐに甘美な刺激が脳を蕩かせてくれる。
 これで少しでも射精欲を紛らわせられるじゃろとアイナはゆっくり力を抜いてスライムたちに身を委ねつつ、夢の世界へと旅立って行った。

 ――翌朝、一晩中弄られたお陰で敏感になりすぎた乳首に悲鳴を上げ「ごめんなさい、二度とババアなんて言いませんだからそのスライムだけは勘弁してください」と泣きながら土下座をした慧は、すっかり赤く腫れ上がった乳首にこれでもかと絆創膏を重ね張りして大学に向かう羽目になったのだった。


 …………


「先週末はごめん米重さん、約束してたのに。ちょっと都合付かなくて行けなくて」
「それは構わないけど……姫里、また何か新しい玩具でも試しているのか?」
「え?」
「…………ここ3日ばかり、かなりヤバい顔をしている。お陰で見守る会の連中が『供給ありがとうございます!』って鼻血出しながら護衛業務に疲弊していたんだけど」
「げ、マジで……?」

 流石に今日はちょっとまずいかな、と思いつつ迎えた7日目、水曜日。
 家に籠もっているよりは大学にいる方が気が紛れて、射精欲とも上手く付き合えている様に思う。
 とはいえ最終日に触手服は刺激が強すぎるな……と頭の中で鳴り響く「射精したい」の合掌を振り払い、いつものようにコピーを取っていたら、隣に立つ紅葉からとんでもない爆弾を落とされてしまった。

(3日間?まさか月曜からずっと、ヤバかったのかよ!?)

 全然自覚が無かった。むしろ上手く隠せているつもりだったのに。
 というか、なんだその供給とか、護衛とかいうのは。

 怪訝に思う慧を察したのだろう、紅葉が親指で右側を指さす。
 そちらを見れば、ソファに座っていた男子学生たち……どこかで見覚えのある先輩たちばかりが4人、ビクッと肩を揺らしつつもチラチラこちらを眺めていた。

(ちょ、ひめにゃんがこっちを向いたぞ!)
(今日も可愛いなぁひめにゃん……あの目の潤み方、ほんのり上気した頬、第5次防衛任務の時を超える可愛さだ……)
(お前らちゃんと仕事をしろよ!紅葉殿が側に付いているとは言え、油断は禁物だ!!)

 …………なんだあれは。

 あの4人が以前紅葉が話してくれた『ひめにゃんを見守る会』の皆様なのは分かったが、ひそひそ声が全然ひそひそになっていないし、なんなら仕事をしろと諫める先輩は鼻にティッシュを突っ込んだままだし、いろんなところが残念でならない。

 というか、あの口ぶりでは紅葉も見守る会の一員なのか!?と恐る恐る尋ねようとすれば「私は無関係だから」と先に制される。
 どうも全く女っ気が無く無表情な彼女が側にいると下衆い視線が減るからか、彼らが勝手に名誉会員にしているらしいと嘆息する紅葉に、慧はちょっとだけ同情した。

「それで、今回は何を着けているんだ?昨日までは乳首を隠していたけど」
「え、バレてる」
「服の上から絆創膏の形が浮いていたから。あれは剥がされたくなるから気をつけた方がいいよ」
「そっかありがとう、って待ってどうして剥がしたくなるじゃなくて剥がされたくなるなんだよ!?」

 突っ込みつつも実は、と慧は声を潜めて最近の悩みと貞操具の話をする。流石に見守る会の皆様に聞かれるわけにはいかない。
 それに、こんな恥ずかしい話をしても紅葉なら「そっか」とあっさり流してくれそうで、つい安心して喋ってしまう。
 紅葉もどうやら懐かれている自覚があるのか「……他人をあっさり信頼しすぎるのは良くないと思う」といつもの無表情で慧を窘めた後「けど、いいなそれ」とぽつりと返した。

 ああ、相変わらず彼女の性癖への懐は広すぎる。
 顔色一つ変えず「貞操具か、きっと気持ちいいんだろうな、その顔を見る限り」とさらっと言ってのける紅葉にかかれば、こんな射精管理なんてまるでランチを食べるのと変わらない気軽さになってしまうようだ。

「……辛いよ?ずっと……その、ごめんこんなこと言って、でももうずっと出したくて頭おかしくなりそう」
「ふぅん、そんな風になるんだな。実に気持ちよさそうだ」
「…………米重さんは強すぎるよ……」

 コピーを取り終えたノートを返せば「男性ならではの楽しみじゃ無いか、羨ましいよ」といい残し、紅葉はスタスタと去って行った。
 その後ろ姿はいつもながら惚れ惚れする。

 ……秘密を知らなければ気付かないであろう、うっすらパンツのラインに響いている紙おむつは見なかったことにしよう。

「貞操具がいいとか、あんな無表情でお漏らしを決めてるとか、米重さんはホント変態を謳歌してるな……」
『お主も見習えば良いでは無いか』
「俺は変態じゃないし、なる気も無い!!アイナがいる間だけだから!」

 ほら、さっさと帰るからな!と慧は心持ち足を早めた。
 解放されるのは夜だと分かっていても、こんな浮ついた気分のまま構内を闊歩していては、変な輩に目を付けられかねない。
 実際、紅葉があそこまで言うのなら本当にまずい顔をしているのだろうし、後ろで見守っている彼らにも……いやいや、あいつらはどう考えても俺を堪能して楽しむという対価を得ているのだから、気を遣う必要は無いか。

(妾がいる間だけ、か)

 そして、そわそわしているのは慧だけでは無い。
 だからさっさと帰って待ちわびた解放の時を迎えんと、アイナも特に慧を止める事なくその意思に従う。
 本当にこの子はどこまでも甘いと、複雑な気持ちを抱きながら。

(……それはもう、無理じゃと思うぞ、慧よ)

 この半年でいくつもの新しい扉を開いてその身に刻み込んでおいて、無かったことにできるほどこの快楽は甘くは無いのじゃよ、と呟くアイナの声は、既に射精のことで頭がいっぱいになってしまっている慧には一言も届かなかった。


 …………


「なぁっ、アイナ、もうロック解除されてるか見ようってば……」
『案ずるな、妾の耳ならこのくらい離れていても解除音くらい聞こえる。それにお主、帰宅してからずーっと机の前でロックボックスを眺めておったではないか、腰をへこへこしながらのう』
「当たり前だろ!!もう限界超えてんだよこっちは!!」

 早く、早くと急かす頭の中の声が止まらない。
 この邪魔な金属を取っ払って、思い切り屹立を扱き上げて、たっぷり溜め込んだ白濁をスッカラカンになるまで吐き出したい、それしか考えられない。

 そんな慧を子供のようにあやしつつ、アイナはのんびりと夕食を摂り、後片付けを済ませてしまう。

(ふふ……楽しみじゃ)
 逸る気持ちを抑えながら、時計を見上げ先に風呂に湯を張っておく。
 と、リビングの方からカチリと小さな音がした。
 ああ、ロックが外れたなと思うが否や、慧が「アイナ!外れた!!」と叫ぶ。
 ……どうやら地球人も、本当に切羽詰まれば身体能力があがるらしい。

「お願い、早く外して、お願い……!」
『うむうむ、よく頑張ったのう。ほら良い子で待っておれ、すぐに外して綺麗にせねば……おや』

 ロックボックスを開けようとして、アイナは手が震えているのに気付く。
 きっとこれは、慧の興奮が影響しているのだろう。アイナの支配権すら突破するほどの強い情動を感じている様に(これならスッキリできそうじゃな)と当初の目的を思い出してアイナは心の中でほくそ笑んだ。

 チャリン、と鍵が奏でる音すら、今の慧には興奮材料になってしまう。
 うっかり元気になってしまった息子さんに、けれどもその痛みすらこの高揚感の前では薄れてしまうのだ。

『外すぞ、よーく見ておれよ』
「っ、早くっ……!」

 カチャッと音を立てて、鍵が外れる。
 途端にその欲望は一気にプレートを押し出し、そしてリングで締め付けられて痛みを訴えてきた。

『ぬ……慧よ、流石にちょっと落ち着くのじゃ。このままでは外すに外せぬ』
「だって、もうっ……早く、出させてぇ……!!」
『全く、困った子じゃの』

 ずるぅり、とプレートを持った指が、狭くなった尿道を傷つけないようにゆっくりチューブを引き抜いていく。
 その刺激だけでもちょっと出てしまいそうだ。いかんいかんとアイナは気を引き締める。
 慧はと言えば抜かれる刺激だけでもう「ぎもぢいぃ……」とうっとりしてしまっていて、あまりにも蕩けたその顔に思わず『可愛いのう……』と本音が漏れてしまった。

『……流石に無臭とは行かぬが、それでもこれだけ洗えておれば十分じゃろ』
「ひっ、アイナぁ!?」
『全く、そう急いてもいかぬといったじゃろう?ほれ、ふぐりを抜くから大人しくしておるのじゃ』
「くぅ……」

 装着したときより抜きづらさを感じるのは、息子さんがすっかり元気になってしまっているせいだろうか。
 無理矢理押し込んでリングから解放されたその先端からは早くもたらりと涙が零れてきていて、嫌が応にも期待感を滲ませている。

『よし、と……リングも外れたのう、さて風呂に』
「も、いいからっ!!先に出させてっ!!」
『だめじゃ、不衛生な状態でやるものではないじゃろ?その位は我慢せよ。ああ、別に身体を洗いながら出しても問題は無いからのう』
「っ、流石にそれは無い……っ!」

 いくら何でも、たった1週間我慢しただけでそこまでよわよわになっているはずは無い。
 そう思っていたのに、股間を洗う手の動きだけで――アイナに洗われているだなんて意識したのがまずかった――慧の股間は情けなくも暴発してしまうのだった。


 …………


 1週間も我慢したのだ。
 当然たった一回の放逸でなど、満足できるはずが無い。

「アイナ、もっと、もっと扱いて……足りない……もっと……!」
『うむ、よう頑張ったの。今日は満足するまで付き合うてやるでな、存分に気をやるがよい』

(気持ちいい、ゴシゴシされるのも、びゅっびゅって出すのも、全部……!)

 こんなに気持ちが良い射精は初めてかも知れない。
 以前1週間オナ禁したときも確か悪友から「オナ禁すればめちゃくちゃ気持ちよく射精できるらしい」なんて聞いたのがきっかけだったが、あの時はこんなもんかという感じで二度とやろうとは思わなかったのに。

(我慢させられて、解放されるの、全然違う……頭バカになっちゃう……)

 たった1週間溜め込んだだけなのに、何故か尿道を通り抜ける白濁の粘度まで高い気がする。
 勢いよく発射される刺激に、さっきから目の前がチカチカして、目をつぶっているのに白くて……ただただ、気持ちが良くて。
 なのに欲張りな身体は、まだ出せる、もっと扱いてとその硬さを失うこと無く、アイナに甘え続けていて。

『んっ……少し薄くなったかのう?じゃが、まだまだ出せそうじゃ。ほれ、ここが好きじゃろ?』
「そこぉっ!そこ、ずっとシコシコしたかったのおぉぉ!!」
『そうじゃろう、そうじゃろう。ふぅっ、また玉がキュッとしておる……出るっ……!』
「ひいぃっ……いい…………っ……!!」

 止まらない。
 量も減ってきたけれど、まだいける、そう頭の奥で何かが囁いている。
 自分の手なのに、自分の動きじゃ無い、けれど巧みな扱いに翻弄されて精をまき散らすのは気持ちが良い。

(そっか)

 ぼやけかけた意識の中で、慧は理解する。

(自分でするより、ずっと、ずっと気持ちが良いから…………だからいつも、アイナにしてもらってたんだ)

 自由をアイナに預けてしまうのは、気持ちがいい。
 だってアイナはいつも、慧が気持ちよくなることしかしないから。



 だからまだまだ、もっと、もっと……アイナの手で、逝かせて。



 全身汗だくになりながら譫言のようにアイナにねだるその声は、実に幸せそうだ。

(……確かにこれは、癖になるの…………)

 すっかり蕩けてしまった慧を眺めるアイナの頭に、元の世界の男の娘たちが浮かぶ。
 そう、彼女たちはいつも解放の時を待ちわびていて、けれどどこかではもっと我慢したいと望んでいて、散々焦らされた挙げ句子種を出すことを許された時にはいつもこんなグズグズの顔で喜んでいたのだ。

 今なら、彼女たちの気持ちが少し分かる。
 ……そして、その先があることも。

(たった1週間でこれじゃ……もっと長い間我慢をすれば、そして今回のようにすぐに出させず、解放の時にこれでもかと焦らせば……)

 その先にある法悦を、見てみたい。
 叶わぬ夢と諦めていた辛苦と悦楽を、もっともっと味わいたい。

『……まぁ、大丈夫じゃろ』

 急かさずとも良い。
 とうとう限界を迎えたのだろう、腹の奥に燻る熱を紛らわせてすっかり満足し気絶するように眠りについてしまった慧も、早晩同じところにたどり着くだろうから。
 だから、自分はこのまま慧に付き合いつつ、その時を待てば良いのだ。

『感謝するぞ、慧。……早う、妾とこの想いを共有しておくれ』

 どこかスッキリした様子で眠る慧に熱っぽく語るアイナの声は、隠しきれない欲情を湛えていたのだった。
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