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劇薬

会議3 前編

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毒。
事件に付きまとう、不可視の凶器。
それが再び牙をむいた。
間違いないなくこの中の誰かが悪意を以て罠を張ったのだ。
最初に口を開いたのは・・・


紫野(脇見せ巫女):
最初に言っておくけど、私じゃない。
私が茶凛さんを巻き込むはずがない。

鳩羽(眼鏡スレンダー巫女):
そうは言いますが、この状況で疑うなと言う方がどうかしています。
覚えてないんですか?
トリカブトの空瓶はあなたの部屋から見つかったんですよ?
あなたは自分の部屋をこれ以上探られるわけにはいかない理由があった。
だから罠を張り、口を封じた。
自分の部屋なら、思いがけず画びょうを手に刺しかねない場所も見当がついている。
これ以上ない動機と犯行、

山吹(女を殴ってそうな顔):
正直、紫野さんが怪しいとしか・・・思えないです。

紫野(脇見せ巫女):
そんな・・・!

月白(ババアIS撲殺犯):
必ずしもそうとは限らないじゃない。
だって、犯人が自分の部屋に罠を張ったなんて、隠ぺいのイの字もないじゃない。

鳩羽(眼鏡スレンダー巫女):
なら他にどう説明するんです。

月白(ババアIS撲殺犯):
紫野さんに罪を擦り付けようとしている、とか。

彩芽(ジェラピケ巫女):
その前にさ、黒おじはどーすんの?
いきなり医者だって言われて解毒されてもマージで意味わかんないんだが?

黒木(ヒョロガリ社会人):
え、自分ですか。

老竹(若者IS放火犯):
実際、自作自演ってことはねぇの?
自分で罠を張って、自分で治した。

黒木(ヒョロガリ社会人):
いや、自分が何のためにそんなことをするんですか・・・

老竹(若者IS放火犯):
医者だと信用させるために?

黒木(ヒョロガリ社会人):
そこまで言うなら免許見せましょうか?

彩芽(ジェラピケ巫女):
だとしてもなんで黙ってたん?

黒木(ヒョロガリ社会人):
藍丈さんが毒で死んだからですよ。
あの場で医者で名乗り出てても疑われるだけじゃないですか。

鳩羽(眼鏡スレンダー巫女):
事実まだ疑いは残っています。
白黒はっきりつけましょう。
カバンの中身の開示をお願いします。

黒木(ヒョロガリ社会人):
持ち物を全て晒せってことですか?

鳩羽(眼鏡スレンダー巫女):
潔白なら問題ないでしょう。

黒木(ヒョロガリ社会人):
まあ、そうですね。


諦めたように小さく息をつくと、黒木は柳の処置に使ったカバンの中身を、再び食堂の机の上に広げた。
現れたのは注射器や薬瓶、計量用の匙。
ラベルのない瓶2つが空になっていた。
それらを手に取り、鳩羽は黒木に詰め寄る。


■調査結果 黒木の部屋①
黒木のカバンからは注射器や匙、薬瓶と言った器具が見つかる。
瓶にラベルはないが、そのうちの一つは既に空だ。


鳩羽(眼鏡スレンダー巫女):
先ほどの応急処置に使って1つが空になっている。
これならわかりますが、何故目の前には空瓶が2つあるのか。
それは、今までに使ったに他ならないのでは。

黒木(ヒョロガリ社会人):
ええ、その通りです。
でも、中身はただの栄養剤ですよ。

鳩羽(眼鏡スレンダー巫女):
なら、証明できますか?

黒木(ヒョロガリ社会人):
・・・中身がないのに?
逆の立場ならどうするんですか、眼鏡の巫女さん?

鳩羽(眼鏡スレンダー巫女):
質問を変えましょうか。
なら、何故あなたはここに来たんですか。

黒木(ヒョロガリ社会人):
何故って、神社に妻の安産祈願のお参りに来たんですよ。

彩芽(ジェラピケ巫女):
この神社、子宝祈願だけど。

黒木(ヒョロガリ社会人):
・・・細かいことはどうでもいいでしょう。

山吹(女を殴ってそうな顔):
ならこれはどう説明するんですか。


山吹はそう言いながら、ロケットを取り出した。


■調査結果 黒木の部屋②
黒木の持ち物には、首から下げるロケットが見つかる。
蓋を開けると、黒木とよく似た顔の女性の写真が入っていた。
彼女は、生後間もないと思われる皺だらけの赤ん坊を抱えている。
刻印を見るに、イニシャルはA.Kurokiとある。


黒木の表情は、予期していたかのようにピクリとも動かない。
しかし、この事件において見つかるの意味を、既に全員が気付いていた。
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