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白状
重なる不幸
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自らが紅丸を殺害したことを認めた月白の顔は、憑き物が落ちたとはとても言えないほどに歪んでいた。
むしろ、何かに憑りつかれたような形相で乾いた笑いを漏らす。
彼女は懐から一枚の写真を取り出した。
一軒家の玄関で月白を囲んで笑う、一回り年の離れた若い男女。
月白(ババアIS撲殺犯):
恵は私の一人娘。大事な、大事な、ね。
勉強はできなかったけど、ソフトテニスが上手かったの。
大学で出会った武さんと結婚するって、まだ社会のことも何も知らないのに言い出して。
私に孫の顔を見せたいからとここに子宝祈願に来て。
あの男に手籠めにされて。
子供を降ろして、その罪悪感から自ら命を絶ったわ。
だから、娘を襲ったあの塔の、あの布団の上で殺してやった。
布団の上で瞼を閉じてピクリとも動かず寝ているあの男に、神様の罰を下してやったってわけ。
ブラボー、ハラショー。
私は警察に捕まり、正義はすべてなされたのでした。終わり。
■調査結果 月白の部屋③
月白の持ち物から、一枚の写真が見つかる。
映っているのは月白と、その面影の残る30台ほどの女性、そしてその夫と思われる男性の3人。
裏には、「20XX年、恵と武さんと私。マイホーム記念」と書かれている。
黒木(ヒョロガリ社会人):
じゃあ火を点けたのもあなたなんですか・・・?
老竹(卍女絡みいらん):
いや、それは俺だ。
黒木(ヒョロガリ社会人):
はいィ!?
鳩羽(眼鏡スレンダー巫女):
あなたが火を点けたと本当に認めるんですね?
老竹(卍女絡みいらん):
あーあ、俺があの男を火だるまにしてやろうと思ったのによ。
まさか、先に殺されてたとはな。
黒木(ヒョロガリ社会人):
でも、なんで・・・
老竹(卍女絡みいらん):
俺もそのばあさんと同じだよ。
あの野郎は美香のことも襲ったんだ。
結局子供は養子に出して、自分は実家で廃人になっちまった。
あんなにケタケタうるせえくらい笑ってたのに、今じゃうんともすんとも言わねぇ。
だから、あの塔諸共焼き殺してやろうと思った。
それが、当然の報いだろ?
肩をすくめて悲しそうに笑う老竹の目には、既に月白への怒りはなかった。
ただ、深い悲しみだけが、その黒い瞳を細かく揺らしている。
山吹(女殴ってそうな顔):
じゃあ老竹さんも蛭子様から手紙をもらってたんですか。
老竹(卍女絡みいらん):
ああ。
あの塔は外から出られないようにできるって書いてあったぜ。
■調査結果 老竹の部屋③
老竹の手荷物からは、折り畳まれた和紙に筆で「蛭子より」と書かれた手紙が見つかる。
そこには、今日の日付と、赤の塔は木造でよく燃えるということと、
通気口代わりの小窓が存在することが書かれていた。
老竹(卍女絡みいらん):
バアさんも俺も同じさ。
復讐心をくすぐられてマンマと乗っかっちまった。
だが後悔はしてないぜ。
今は秋口の澄み渡る青空みてーに、晴れやかな気持ちでいっぱいだからよ。
老竹がそう言って笑うと同時に、食堂が暗闇に包まれる。
むしろ、何かに憑りつかれたような形相で乾いた笑いを漏らす。
彼女は懐から一枚の写真を取り出した。
一軒家の玄関で月白を囲んで笑う、一回り年の離れた若い男女。
月白(ババアIS撲殺犯):
恵は私の一人娘。大事な、大事な、ね。
勉強はできなかったけど、ソフトテニスが上手かったの。
大学で出会った武さんと結婚するって、まだ社会のことも何も知らないのに言い出して。
私に孫の顔を見せたいからとここに子宝祈願に来て。
あの男に手籠めにされて。
子供を降ろして、その罪悪感から自ら命を絶ったわ。
だから、娘を襲ったあの塔の、あの布団の上で殺してやった。
布団の上で瞼を閉じてピクリとも動かず寝ているあの男に、神様の罰を下してやったってわけ。
ブラボー、ハラショー。
私は警察に捕まり、正義はすべてなされたのでした。終わり。
■調査結果 月白の部屋③
月白の持ち物から、一枚の写真が見つかる。
映っているのは月白と、その面影の残る30台ほどの女性、そしてその夫と思われる男性の3人。
裏には、「20XX年、恵と武さんと私。マイホーム記念」と書かれている。
黒木(ヒョロガリ社会人):
じゃあ火を点けたのもあなたなんですか・・・?
老竹(卍女絡みいらん):
いや、それは俺だ。
黒木(ヒョロガリ社会人):
はいィ!?
鳩羽(眼鏡スレンダー巫女):
あなたが火を点けたと本当に認めるんですね?
老竹(卍女絡みいらん):
あーあ、俺があの男を火だるまにしてやろうと思ったのによ。
まさか、先に殺されてたとはな。
黒木(ヒョロガリ社会人):
でも、なんで・・・
老竹(卍女絡みいらん):
俺もそのばあさんと同じだよ。
あの野郎は美香のことも襲ったんだ。
結局子供は養子に出して、自分は実家で廃人になっちまった。
あんなにケタケタうるせえくらい笑ってたのに、今じゃうんともすんとも言わねぇ。
だから、あの塔諸共焼き殺してやろうと思った。
それが、当然の報いだろ?
肩をすくめて悲しそうに笑う老竹の目には、既に月白への怒りはなかった。
ただ、深い悲しみだけが、その黒い瞳を細かく揺らしている。
山吹(女殴ってそうな顔):
じゃあ老竹さんも蛭子様から手紙をもらってたんですか。
老竹(卍女絡みいらん):
ああ。
あの塔は外から出られないようにできるって書いてあったぜ。
■調査結果 老竹の部屋③
老竹の手荷物からは、折り畳まれた和紙に筆で「蛭子より」と書かれた手紙が見つかる。
そこには、今日の日付と、赤の塔は木造でよく燃えるということと、
通気口代わりの小窓が存在することが書かれていた。
老竹(卍女絡みいらん):
バアさんも俺も同じさ。
復讐心をくすぐられてマンマと乗っかっちまった。
だが後悔はしてないぜ。
今は秋口の澄み渡る青空みてーに、晴れやかな気持ちでいっぱいだからよ。
老竹がそう言って笑うと同時に、食堂が暗闇に包まれる。
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