十字館の犠牲

八木山

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夜時間

そもそも論

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向日葵の部屋の本棚の前に立つ、三人。
本棚の本とテーブルの上の本は、猫原の部屋の状況とまるっきり合わせている。

「で?つなっしーの自己弁護って?」
「はっきり言って、向日葵の考え方は合っていると自分は思っている。が、自分は犯人ではない以上、本棚の本は動かされた、そう考えるしかない」
「嘘だろ?」仰木はため息交じりに言った。「自己中かよ」
しかし黒須は、止まらない。

「根拠は三段目の本だ。4冊目と5冊目だけは数字の大小が逆転している」

しかもその4冊目は『112 : 扇動の力学』。つまり仰木を示す本だ。

「おそらく、仰木は自分と仰木の本の場所を入れ替えた。2段目の4冊目が『112 : 扇動の力学』なら、完全に数字の並びは規則正しくなる」

黒須は、「これでどうだ?」と伺うように、向日葵を見た。
しかし腕を組み目を瞑るままの向日葵。

「じゃあ何かい」仰木は首を傾げた。「ここまで話して、本棚と指は単なる偶然だって?」
「偶然というより、これはダミーだったと思う」
「わからん!」向日葵は
「理由から。この本棚には『Secrets of the Sunflower』がない」

「いやいやw」と仰木は笑った。
「その本は、向日葵ちゃんを示す本だろ?向日葵ちゃんは探偵なんだから絶対に裏切り者じゃないんだし、その本が本棚になくても別に問題じゃないだろ」
「それは違うよ、おーぎ」向日葵が首を振った。

「流石にうちでもわかるよ。私が指名されたのはにゃんたそが死んでからだもん。だから、にゃんたそが生きていたときには、うちも裏切り者候補のはずなの」
仰木は、まるで分らないといった顔で頭を掻いた。
「つまり、どういうことだ?」
「指と本棚の仕掛けは、犯人を絶対に名指しできるわけではない」
「・・・だから意味がないって?それこそ、お前視点の言い訳でしかないな!向日葵ちゃんが犯人なら両方の指でテーブルを指してたってことも、考えられるだろ!本の並びも偶然だってこともあり得るはずだ!」

「うちはね」向日葵は話し始めた。「このままつなっしーを裏切り者っていうのはやめときたい」
「ッ・・・!」

仰木は納得いかないと歯ぎしりをしていたが、やがて青い部屋へと戻っていった。
黒須もまた、肩をすくめてその後に続くのだった。
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