十字館の犠牲

八木山

文字の大きさ
上 下
20 / 24
夜時間

本棚

しおりを挟む
猫原が残したかったのは、指の形?

既に青い部屋に戻った仰木が、向日葵に呼び掛ける。

「4と2じゃ流石に本をそのまま指してるとも思えないし。何か他に物を数えられるものとかないかな」

「探してみるわ」と言いかけて、向日葵は考え直す。

「つか、自分を殺した相手が誰かを言い当てるんだべ?なんで毎回本が出てくるん?」
「向日葵ちゃんは気付いてない?本棚には、俺たちをぼんやりイメージできるものが混ざってるんだよ」

『112 : 動の力学』はそのまま仰木の下の名前が。
『502 : おおきな』は、その題名から猫原が。
『647 : アート教育の効果的なカリキュラム設計の10の秘訣』は、芸大に通う黒須
『804 : Secrets of the Sunflower』は英語で向日葵。

「ってな具合で。だから本棚の本は誰かを暗に指し示すのにちょうどいいんだよ」
「猫原が112番の本を抱きかかえて死んでれば、あっさりお前が犯人だとわかったってわけだ」
「うっさいよ、筆頭容疑者」

たしなめられた黒須は余裕なさげに口元を引きつらせている。
向日葵は、このまま何も証拠が出なければ黒須を犯人だと指名すると宣言したからだ。

(何か数えるもの・・・か)

テーブルの上の本をどかして、ノートを開いてみる。
だが、41ページ目にも、14ページ目にも何も書いていない。白紙だ。

(そんな簡単なわけないか)

猫原の、細くすでに硬直の始まった冷たい手を、向日葵は眺める。。
そもそもこの指の形を犯人も見たに違いない。
特別時間15分の中で、24とか42とか思いつくものは調べたはずだ。
自然と、指の先に目を滑らせた。

そこにあったのは、壁に埋められた本棚。
3段しかなく、真ん中の段が青く染め上げられている。
一部の本がテーブルに取り出されているからか、それぞれの段に隙間が目立つ。

向日葵はついさっきの仰木の言葉を思い出した。

『本棚の本は誰かを暗に指し示すのにちょうどいい』

とりあえず、メモをとって見る。

上の段 左から:
912 : 東方卍アベンジャーズ
839 : もののけと二階堂
769 : Chronicles of the Cosmos
241 : セルゲイ=ヴォリニコフの語る戦争論
114 : 壁のアート ~バンクシーは何故捕まったのか~


真ん中の段 左から:
853 : ムゲン裁判
727 : Adventures in Atlantis
538 : Uncharted Universes
647 : アート教育の効果的なカリキュラム設計の10の秘訣
111 : くりかえすこむら返り


下の段 左から:
606 : にんげん実験室
580 : 白い光線の物理学的特性の調査
516 : ひとつ屋根の下
112 : 扇動の力学
209 : わらびの生態学的研究


全~然読む気になれないんだが・・・
お、おお?

・・・おおおおおお!?


おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!スッキリ!スッキリ!スッキリ!
しおりを挟む

処理中です...