十字館の犠牲

八木山

文字の大きさ
上 下
17 / 24
夜時間

死因

しおりを挟む
向日葵は息をのみ、死体に近付いた。
目を瞑った猫原の顔に、向日葵は息をのんだ。
やはり、殺されたのは猫原で間違いない。




「やっぱり・・・にゃんたそ・・・」

「死因は?」「実は毒殺だったとかないか、口元も見てくれ」

野次を飛ばしたのは、青い部屋の椅子に座りテーブルに肘をついている容疑者二人。
向日葵は、部屋から出ずに彼らに向き直った。

「うん、調べてみるわ!」
「頼んだぞ、名探偵!」「言っておくが死体が怖くて近寄れないわけではないからな」
「ごちゃごちゃうるせーな容疑者どもダーメンズ!」
「・・・すまーん!」「だが時間はないぞ!」
「わかってるよ!」

聞いてもいないことを呑気に言ってくる二人。
今のところ何の役にも立っていない・・・なくない?


容疑者である黒須と仰木の二人は、事件現場である猫原の部屋に入らずに、お互いを見張る。

まず向日葵が決めたのがそれだった。
犯人に与えられていたのは特別時間のたったの15分。
あわてんぼうの裏切り者が残した証拠を隠されるわけにはいかない。
一方、目のつかない自分の部屋で工作されてもマズい。

・・・かといって、別にボディビルの観客よろしく声援を送れとは一言も言っていないのだが。


布団を貫き、猫原の背に刺さったナイフ。
大きさはせいぜい剃刀程度だで、木製の持ち手の部分に刃の収まる折り畳み式で。
刃の形状は大きく曲線を描いており、いわゆるコンバットナイフや包丁というより鉈に近い。
指紋か何か残っているんだろうけど、向日葵はガリレオでも科捜研の女でもないので何もできない。

(大学残ってたら何かできたんかなぁ・・・)
向日葵、退学する前に通っていたのは経済学部である。
マグロマクロ経済で犯人は見つからないか・・・)

「他に傷はないか、全身くまなく探してみてよ」

青い部屋から、どこまで信用したものかわからない仰木の声援が届く。
向日葵は彼らに背を向けたまま、小さく舌打ちをした。
・・・死体の不気味さも知らないで。

『殺すのはあたしにしなね』

それでも、そう言った時の彼女のあの顔が頭から離れない。・・・猫原の犠牲には応えたいのだ。
どっちにしても、淑女の体を男にまさぐらせるわけにもいかない。
全身をわしゃわしゃと調べ終わり、「傷は背中の一つだけ!」と剣士の恥風に叫んだその時、それが目に飛び込む。

「ん?」

それは、赤い文字だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

母からの電話

naomikoryo
ミステリー
東京の静かな夜、30歳の男性ヒロシは、突然亡き母からの電話を受け取る。 母は数年前に他界したはずなのに、その声ははっきりとスマートフォンから聞こえてきた。 最初は信じられないヒロシだが、母の声が語る言葉には深い意味があり、彼は次第にその真実に引き寄せられていく。 母が命を懸けて守ろうとしていた秘密、そしてヒロシが知らなかった母の仕事。 それを追い求める中で、彼は恐ろしい陰謀と向き合わなければならない。 彼の未来を決定づける「最後の電話」に込められた母の思いとは一体何なのか? 真実と向き合うため、ヒロシはどんな犠牲を払う覚悟を決めるのか。 最後の母の電話と、選択の連続が織り成すサスペンスフルな物語。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...