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被害者は、猫原にゃんこ。
「・・・なぁ、お前なんだろ、黒須」
死体の転がる部屋で立ち尽くしながら、口を開いたのは仰木だった。
「俺はもちろん人殺しなんてしてない。そして向日葵ちゃんも探偵に選ばれた以上、犯人じゃない。なら、お前が猫原さんを殺した犯人だ」
向日葵は慌てて黒須を見るが、その顔には予定調和だと言わんばかりのしたり顔が浮かんでいた。
「自分の視点だと逆もまたしかりだよ、仰木。だからこそ・・・」
まるで館の主人を召使が紹介するような仰々しい所作で、向日葵に手を向ける黒須。
「探偵、日向向日葵が自分と仰木のどちらが犯人かを言い当てる必要があるんじゃないか」
「うちが・・・?」
「そう。幸い犯人を指名する刻限まで1時間ある。どちらがこの部屋から出ていくべきかをゆっくり話し合うでも、自分は構わないが」
「誰が出ていくべきか話し合い、だって?まるで自分は出ていく価値があるみたいな言い草だよな?」
冷笑する仰木に、黒須は「違う、そうじゃない」と加えた。
「探偵が指名しなかった方は、猫原を殺したのが誰かに関わらず脱出できるんだ」
「まって、ぜんぜんわかんないけど」
向日葵にやや呆れながら、黒須は説明を続ける。
「指名されなかった人物が裏切り者なら、裏切り者は探偵を騙しきったわけだから条件を満たして出ていく。指名されなかった人物が裏切り者でないなら、指名されたのは裏切り者だからやはり裏切り者以外の全員が出ていく。よって、指名されなかった方は必ずここを出ていくことができる」
「なるほどぉ・・・?」
「裏切り者を野放しにした場合、探偵の向日葵ちゃんは出ていくことはできないけどね」
「だよね?そうだよね?」
仰木の一言で我に帰る向日葵。
「自分が言いたかったのはあくまで、探偵を度外視すれば『外に出ていく人間は合議で決められる』ということだけだ。それ以上の他意はない」
「いーや、向日葵ちゃん。こいつは君と俺を差し置いて出ていく気だぜ?」
「そうなん!?」
「・・・そうだな、『探偵から信用を買う』のも重要か。断言しよう、自分は裏切り者じゃない」
「二人ともそうなん!?」
睨みあう二人を前に、向日葵は回顧した。
ああ、そうだ。かつて少女漫画で見たことがある。
男二人が女一人をめぐって足を引っ張りあう光景。
作品の世界と現実は原稿用紙で隔たれていたから笑って見られたけど、現実に巻き込まれるとこうもややこしいとは!
しかも両方タイプでもねぇし!?
「わかった!」
「お、自らの罪の重さを理解した感じか?」
仰木はペチンと黒須の頭をはたく。
「俺たち二人はどちらも、別に金持ちでおんなければ社会の役に立つ人間じゃねえでしょ」
「まとめるな、おい。大芸術家の卵だぞ」という黒須を無視して、仰木は叫ぶように言った。
「ちゃんと、犯人探しをしよう!それ以外、納得できる方法ねーわ!」
「・・・なぁ、お前なんだろ、黒須」
死体の転がる部屋で立ち尽くしながら、口を開いたのは仰木だった。
「俺はもちろん人殺しなんてしてない。そして向日葵ちゃんも探偵に選ばれた以上、犯人じゃない。なら、お前が猫原さんを殺した犯人だ」
向日葵は慌てて黒須を見るが、その顔には予定調和だと言わんばかりのしたり顔が浮かんでいた。
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「誰が出ていくべきか話し合い、だって?まるで自分は出ていく価値があるみたいな言い草だよな?」
冷笑する仰木に、黒須は「違う、そうじゃない」と加えた。
「探偵が指名しなかった方は、猫原を殺したのが誰かに関わらず脱出できるんだ」
「まって、ぜんぜんわかんないけど」
向日葵にやや呆れながら、黒須は説明を続ける。
「指名されなかった人物が裏切り者なら、裏切り者は探偵を騙しきったわけだから条件を満たして出ていく。指名されなかった人物が裏切り者でないなら、指名されたのは裏切り者だからやはり裏切り者以外の全員が出ていく。よって、指名されなかった方は必ずここを出ていくことができる」
「なるほどぉ・・・?」
「裏切り者を野放しにした場合、探偵の向日葵ちゃんは出ていくことはできないけどね」
「だよね?そうだよね?」
仰木の一言で我に帰る向日葵。
「自分が言いたかったのはあくまで、探偵を度外視すれば『外に出ていく人間は合議で決められる』ということだけだ。それ以上の他意はない」
「いーや、向日葵ちゃん。こいつは君と俺を差し置いて出ていく気だぜ?」
「そうなん!?」
「・・・そうだな、『探偵から信用を買う』のも重要か。断言しよう、自分は裏切り者じゃない」
「二人ともそうなん!?」
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しかも両方タイプでもねぇし!?
「わかった!」
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「俺たち二人はどちらも、別に金持ちでおんなければ社会の役に立つ人間じゃねえでしょ」
「まとめるな、おい。大芸術家の卵だぞ」という黒須を無視して、仰木は叫ぶように言った。
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