十字館の犠牲

プロローグ

死体

予定調和

予想可能回避不可能

知　っ　て　た


どんなに言葉を並び立てても、人の死とは直面するだけで身が竦むのだ。
それこそ、滑稽なほどに。

開けっぱなしのドアの向こうには、鮮やかな赤が広がる。
その主人公は、白いベッドに倒れている女性だ。
はみ出した長い黒髪が、まるで木の枝のように広がっていた。

掛布団に広がる真っ赤なシミの中心には、刃物の取っ手が屹立していた。
ナイフだ。あれが、女性の命を奪ったのは明白だった。

部屋に入れずにいる３人の男女に、天井から無機質な声が響いた。

「探偵のヒュウガヒマワリさんは1時間以内に裏切り者を指名するのだ」

その声は、無邪気にも、あるいは無慈悲にも聞こえただろう。
じんわりと生存者全員の視線が、彼女に集まった。

探偵は、黒ギャルだった。