10問解くと10億もらえるクイズだけど、君たちには解けないと思います＾＾

第九問

拮抗勝負、真向勝負

『馬鹿言え、今更引き下がれるか』


男は、目の前の筋骨隆々な男に強い剣幕で、確かにそう言い返した。
その目には確かに強い意志が宿っている。
揺るぎようのない、10億への強い執着が。

チコは内心で笑っていた。
そうだ、勝負とはそうこなくちゃあいけねぇ。
追撃と言わんばかりに、ジャブを放つ。


『わかった。ならこうしよう。お前がここで引き下がるなら賞金を山分けにしてやる。全員がハッピーになれるぜ？』
『何ぃ！？』
『悪くない条件だろ？』
『馬鹿おめぇ、脳髄までプロテイン漬けなのか？お前みたいなノータリンじゃ10問目を解けるか怪しいじゃねえか』
『交渉は決裂ってことか』
『そらぁな』


これでよし。勝っても負けても文句なしだ。
チコは男の目の闘志がゆるぎないことを確認すると、悠々とテーブルに着いた。


チコはまるで日本語が理解できない。
が、出題の法則に4問目で気付いてからは余裕だった。
問題文も選択肢もわからなかったとて問題はない、何せ押すボタンが決まっているのだから。
ズブの素人と【早撃ち勝負】したところで結果は目に見えている。


だがこの問題からは別だ。
青の扉を最初に選んだチコにとって、9問目以降には【答え繰り返し】のルールは当てはまらない。
だからこの問題も、きちんと翻訳してもらう必要がある。


『運営さん、いつもの通り頼むぜ』
『ええ、セニョール・ヴァレンティーノ、喜んで。いいですか、問題文は【正しい図形はどちら？】です』


流暢なスペイン語がスピーカーから流れる。
図形なら選択肢を日本語に翻訳させる必要はない。

何度か交渉してみたが、運営は決してスペイン語表記を合わせて表示することはさせようとしなかった。
かといって、相手の押すボタンを見て先に押すのも、もしそのボタンが間違った方だったらと思うと躊躇われた。
その結果、最初の2回の早押しは「選択肢が表示され、翻訳を聞いた状態からカウントダウンを始める」という条件を相手にも同意させる必要があったのだ。


だが、その煩わしさはコイツとの勝負には必要ない。
いや、むしろ交渉は絶望的だろう。そう来なくては！


しかし男はヴァレンティーノと言う名前を聞いて、初めてぎょっとした顔を見せた。


『あんたもしかして、チコ・ヴァレンティーノ？』


チコはにやりと笑う。
それ以上の受け答えは必要ないだろ？
カウントダウンの後、画面に図形が表示される。

チコは視界に情報が入ったと同時に、ボタンを押していた。
相手が押そうとするのが赤青どちらなのかなど見るまでもなく、答えは明白だったのだ。