31 / 43
第八問
敗北者?取り消せよその言葉
しおりを挟む
敗北者の農場。
この部屋に対して、役者の男が抱いた印象はそれだった。
ここは、サラダや総菜の盛られた皿がたくさん置かれた、いわゆるビュッフェの会場だ。
にもかかわらず、風体の不揃いな面々は皿に盛りつけた好みのセットを手に、天井からぶら下げるように設置されたいくつかのテレビ画面の下に集まって、かじりつくような視線を向けていた。
画面には、今までいたのと同じような真っ白い部屋と、クイズの画面が映し出されている。
耳に入る話し声から、この期に及んで彼らは誰が勝つのかを賭けているらしい。
・・・くだらないな。
男はすでに対戦相手に100万で情報を売りつける契約を取りつけている。
同じ敗北者でも、ここで小銭稼ぎに奔走する凡夫とは全く違う。
「お姉さんは俺に賭けてたクチ?」
「いや?あの対戦相手の男に賭けてますよ」
「それは、今も?」
「ええ、今も。10億も現実味を帯びてきてると思うんス」
男は皿を一枚とり、大きな銀のトレイから溶けたチーズをまとったハンバーグを二、三個よそう。
フォークで突き刺しては無造作にそれを口に放り込みながら、自分に勝った男が映し出されている画面を眺めるのだった。
ついに問題文も表示されなくなったのか。
なら5問目でドロップアウトして正解だった。
短髪の女性が耳打ちする。
「それで、このオッサンは正解できると思います?」
「まあ、大丈夫じゃない?」
「呑気かましてますけど、その心は?」
「だってあの人、多分もう解答のルールに気付いてると思うから」
この部屋に対して、役者の男が抱いた印象はそれだった。
ここは、サラダや総菜の盛られた皿がたくさん置かれた、いわゆるビュッフェの会場だ。
にもかかわらず、風体の不揃いな面々は皿に盛りつけた好みのセットを手に、天井からぶら下げるように設置されたいくつかのテレビ画面の下に集まって、かじりつくような視線を向けていた。
画面には、今までいたのと同じような真っ白い部屋と、クイズの画面が映し出されている。
耳に入る話し声から、この期に及んで彼らは誰が勝つのかを賭けているらしい。
・・・くだらないな。
男はすでに対戦相手に100万で情報を売りつける契約を取りつけている。
同じ敗北者でも、ここで小銭稼ぎに奔走する凡夫とは全く違う。
「お姉さんは俺に賭けてたクチ?」
「いや?あの対戦相手の男に賭けてますよ」
「それは、今も?」
「ええ、今も。10億も現実味を帯びてきてると思うんス」
男は皿を一枚とり、大きな銀のトレイから溶けたチーズをまとったハンバーグを二、三個よそう。
フォークで突き刺しては無造作にそれを口に放り込みながら、自分に勝った男が映し出されている画面を眺めるのだった。
ついに問題文も表示されなくなったのか。
なら5問目でドロップアウトして正解だった。
短髪の女性が耳打ちする。
「それで、このオッサンは正解できると思います?」
「まあ、大丈夫じゃない?」
「呑気かましてますけど、その心は?」
「だってあの人、多分もう解答のルールに気付いてると思うから」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。
総務の黒川さんは袖をまくらない
八木山
ミステリー
僕は、総務の黒川さんが好きだ。
話も合うし、お酒の趣味も合う。
彼女のことを、もっと知りたい。
・・・どうして、いつも長袖なんだ?
・僕(北野)
昏寧堂出版の中途社員。
経営企画室のサブリーダー。
30代、うかうかしていられないなと思っている
・黒川さん
昏寧堂出版の中途社員。
総務部のアイドル。
ギリギリ20代だが、思うところはある。
・水樹
昏寧堂出版のプロパー社員。
社内をちょこまか動き回っており、何をするのが仕事なのかわからない。
僕と同い年だが、女性社員の熱い視線を集めている。
・プロの人
その道のプロの人。
どこからともなく現れる有識者。
弊社のセキュリティはどうなってるんだ?
無限の迷路
葉羽
ミステリー
豪華なパーティーが開催された大邸宅で、一人の招待客が密室の中で死亡して発見される。部屋は内側から完全に施錠されており、窓も塞がれている。調査を進める中、次々と現れる証拠品や証言が事件をますます複雑にしていく。
快感☆MATTER
keino
大衆娯楽
むしゃくしゃしてヤった。
相手なら何でもよかった。
今は反省している……。
このSSは無機物を擬人化した
1㌻で完結、ミニクイズ形式の超短いお話です。
ヒマつぶしに広い心でどうぞ。
思いついたらUPの不定期更新。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は十五年ぶりに栃木県日光市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 俺の脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
若月骨董店若旦那の事件簿~水晶盤の宵~
七瀬京
ミステリー
秋。若月骨董店に、骨董鑑定の仕事が舞い込んできた。持ち込まれた品を見て、骨董屋の息子である春宵(しゅんゆう)は驚愕する。
依頼人はその依頼の品を『鬼の剥製』だという。
依頼人は高浜祥子。そして持ち主は、高浜祥子の遠縁に当たるという橿原京香(かしはらみやこ)という女だった。
橿原家は、水産業を営みそれなりの財産もあるという家だった。しかし、水産業で繁盛していると言うだけではなく、橿原京香が嫁いできてから、ろくな事がおきた事が無いという事でも、有名な家だった。
そして、春宵は、『鬼の剥製』を一目見たときから、ある事実に気が付いていた。この『鬼の剥製』が、本物の人間を使っているという事実だった………。
秋を舞台にした『鬼の剥製』と一人の女の物語。
ゆめうつつ
戸笠耕一
ミステリー
20年前、正夢は火事で家族を失った。
燃え盛る炎の中で焼け落ちる我が家を見て、火を付けた者たちに対して復讐を誓う。
しかし、正夢は復讐を続ける中で燃え盛る炎が彼を苛んでいく。
正夢を助けるなーちゃん。果たして復讐の行く末は。。
女ハッカーのコードネームは @takashi
一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか?
その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。
守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる