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第1話 黒川さんも神頼みする
マグネのループという線も
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「はぁ」
オフィスにも関わらず、思わずため息が漏れた。
じりじりとした汗が、頬を歩く。
昏寧堂出版社の経営は思った以上に傾いていることについて、上司と熱い議論を交わしたから...ではなく。
シンプルに、弊社の会議室は一部空調が入っていないのだ。
壊れているわけではなく、入っていない。
このビル、広いフロアに自由に壁を作れる設計らしいのだが、当時の責任者が空調設備を全く考えずに間取りを考えたらしい。
おかげで僕らがさっきまでいた会議室B5は夏場は灼熱地獄と化し、この季節になると熱中症で倒れる人間が後を絶たないのだ。
なのに。
現場に聞かれてはまずい内密な話をしがちな経営企画室にいる僕は、この地獄の常連になっていた。
ウォーターサーバーで汲んだ冷たい水を飲みながら自分の席に戻る。
本当にこの時だけは、生き返る。
斜向かいに座っていたはずの黒川さんの姿はない。
パソコンもないので、きっとどこかで会議でもしているのだろう。
そんなことを考えながらデスクを回り込もうとしたその時だった。
ん?
それは、小指の爪ほどの大きさのいくつかの黒い球が、紐で一繋がりになった何かだった。
輪の直径は僕の手首に収まるくらいの大きさで、珠は疎らに散らされている。
ううむ。
悪いとは思いつつも、まじまじと見てしまった。
彼女がこんなものを身に付けているのを、僕は目にしたことがなかったからだ。
彼女の知らない一面。
そう思うと背徳心が背筋を撫で、ツンツンとつつく。
(少しだけ)
僕は心のなかでそう自分に言い聞かせ、よく観察するのだった。
どの珠にも金色で、何かの記号が書かれている。
時々お寺で見かける、のたくった蛇のような記号。
これはもしや。
「数珠?」
オフィスにも関わらず、思わずため息が漏れた。
じりじりとした汗が、頬を歩く。
昏寧堂出版社の経営は思った以上に傾いていることについて、上司と熱い議論を交わしたから...ではなく。
シンプルに、弊社の会議室は一部空調が入っていないのだ。
壊れているわけではなく、入っていない。
このビル、広いフロアに自由に壁を作れる設計らしいのだが、当時の責任者が空調設備を全く考えずに間取りを考えたらしい。
おかげで僕らがさっきまでいた会議室B5は夏場は灼熱地獄と化し、この季節になると熱中症で倒れる人間が後を絶たないのだ。
なのに。
現場に聞かれてはまずい内密な話をしがちな経営企画室にいる僕は、この地獄の常連になっていた。
ウォーターサーバーで汲んだ冷たい水を飲みながら自分の席に戻る。
本当にこの時だけは、生き返る。
斜向かいに座っていたはずの黒川さんの姿はない。
パソコンもないので、きっとどこかで会議でもしているのだろう。
そんなことを考えながらデスクを回り込もうとしたその時だった。
ん?
それは、小指の爪ほどの大きさのいくつかの黒い球が、紐で一繋がりになった何かだった。
輪の直径は僕の手首に収まるくらいの大きさで、珠は疎らに散らされている。
ううむ。
悪いとは思いつつも、まじまじと見てしまった。
彼女がこんなものを身に付けているのを、僕は目にしたことがなかったからだ。
彼女の知らない一面。
そう思うと背徳心が背筋を撫で、ツンツンとつつく。
(少しだけ)
僕は心のなかでそう自分に言い聞かせ、よく観察するのだった。
どの珠にも金色で、何かの記号が書かれている。
時々お寺で見かける、のたくった蛇のような記号。
これはもしや。
「数珠?」
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