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第3話 人狼
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旅人を犯人として突き出そうとする村長に待ったをかけたのは、こォの男~!
陰ターネット中毒患者、若い男!
「いやいや、そんな簡単に終わらせちゃ可哀そうでしょ。死んでた人、血も涙もない殺人鬼ってわけでもなさそうだし」
スマホをいじりながら若い男は言った。
太った女は、一瞬村長と男をきょろきょろと伺う。
「そ、そうよね!私もそう思ってたのよ!」
顔のいい方を選ぶことにした彼女は、びちゃびちゃとぬかるんだ地面をけって若い男の方に駆け寄ると、なじるように村長を見た。
「殺された人が可哀そうだとは思わないの!?この人でなし!あんたみたいな命を大事に扱わない冷血漢、死んじゃえばいいわ!」
「インターネットで有名な矛盾のやつ!さてはアンタそれが言いたいだけだろ!」
睨み合う村長と太った女をよそに、若い男はスマホ引用辞されている文字をツラツラと読み上げた。
「大上玖狼丸、35歳。T県の高校生連続殺人事件の犯人として指名手配されている。元々母親がアフリカの食人族の末裔で、幼少期から父親に隠れて死んだ人間を食う文化を継承していた、と。もちろん隠し通せるわけもなく母親は逮捕。一時期は鳴りを潜めていたその慣習が、直近になって急に再発したそうだ。彼はいくつかの東京の私立高校で人当たりの良いカウンセラーとして働く裏で、相談に来た女子生徒12人を文字通り食っていたわけだ。そうだよね、オマワリさん」
巡査は一瞬違和感を感じたが、若い男の言葉を肯定する。
「・・・ええ、大上の殺人の背景には特殊な事情があったことは事実です。まさしく環境が人格を形成した事例ですから。ただそれでも、あまりにも12人という被害者の数は擁護できないほどに多すぎました」
「もごご(酌量の余地はない、結局衝動を抑えられる理性がなかった当人の責任だ)」
今や虜囚となった男、ヴェリスは、かつて共に戦った『獣人』と呼ばれた狂戦士を思い出し、猿轡越しに苦言を漏らす。
乗り越えた者がいる。ならば乗り越えられなかった者には『何か』が足りなかったのだ。
それを完全に無視して、若い男は全員を見回した。
「やっぱり、俺は誰が殺したのかははっきりさせた方がいいと思うし、この刃物が趣味の変態がそうだというならきっちり証拠を出した方がいいと思う」
その言葉に巡査も頷いた。
「まあ、誰が犯人でも証拠がどこかにあるとは思います。ただ今は、お互いの素性を明らかにすべきかなとは思いますが」
陰ターネット中毒患者、若い男!
「いやいや、そんな簡単に終わらせちゃ可哀そうでしょ。死んでた人、血も涙もない殺人鬼ってわけでもなさそうだし」
スマホをいじりながら若い男は言った。
太った女は、一瞬村長と男をきょろきょろと伺う。
「そ、そうよね!私もそう思ってたのよ!」
顔のいい方を選ぶことにした彼女は、びちゃびちゃとぬかるんだ地面をけって若い男の方に駆け寄ると、なじるように村長を見た。
「殺された人が可哀そうだとは思わないの!?この人でなし!あんたみたいな命を大事に扱わない冷血漢、死んじゃえばいいわ!」
「インターネットで有名な矛盾のやつ!さてはアンタそれが言いたいだけだろ!」
睨み合う村長と太った女をよそに、若い男はスマホ引用辞されている文字をツラツラと読み上げた。
「大上玖狼丸、35歳。T県の高校生連続殺人事件の犯人として指名手配されている。元々母親がアフリカの食人族の末裔で、幼少期から父親に隠れて死んだ人間を食う文化を継承していた、と。もちろん隠し通せるわけもなく母親は逮捕。一時期は鳴りを潜めていたその慣習が、直近になって急に再発したそうだ。彼はいくつかの東京の私立高校で人当たりの良いカウンセラーとして働く裏で、相談に来た女子生徒12人を文字通り食っていたわけだ。そうだよね、オマワリさん」
巡査は一瞬違和感を感じたが、若い男の言葉を肯定する。
「・・・ええ、大上の殺人の背景には特殊な事情があったことは事実です。まさしく環境が人格を形成した事例ですから。ただそれでも、あまりにも12人という被害者の数は擁護できないほどに多すぎました」
「もごご(酌量の余地はない、結局衝動を抑えられる理性がなかった当人の責任だ)」
今や虜囚となった男、ヴェリスは、かつて共に戦った『獣人』と呼ばれた狂戦士を思い出し、猿轡越しに苦言を漏らす。
乗り越えた者がいる。ならば乗り越えられなかった者には『何か』が足りなかったのだ。
それを完全に無視して、若い男は全員を見回した。
「やっぱり、俺は誰が殺したのかははっきりさせた方がいいと思うし、この刃物が趣味の変態がそうだというならきっちり証拠を出した方がいいと思う」
その言葉に巡査も頷いた。
「まあ、誰が犯人でも証拠がどこかにあるとは思います。ただ今は、お互いの素性を明らかにすべきかなとは思いますが」
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