AIと十字館の殺人

八木山

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「脱出するのであれば再度かざしてください」

無機質な音声が、黒い壁で囲まれた空間に響き渡る。
・・・おいおい、マジだったよ。

菱形の穴の開いたカードキーを手にしたタナミチは、頭が晴れ渡っていくのを感じた。
ブルブルと、体が喜びに痙攣する。

・・・うん!俺だけで脱出しちまおう!

殺人犯かもしれないヤツとここにい続けるのも危険だし、かといってここから出しても危険だ。
それに、本格的な捜査は外に出てから警察にやってもらえばいい。
ハナから俺の領分じゃないのだ。

タナミチは迷わずに、カードを再び機械にかざした。

すると、周りの壁が上へ上へとせりあがっていくではないか。
いや、逆だ。床がエレベータよろしく下がっているのだ。

ヘナヘナと座り込むタナミチ。
それで、犯人は誰だったんだろうか。

・・・ま、多分アサクラだったんだろうな。
最初に死体を見つけたのも彼女だったというし、凶器が入っていたのと同じ本がアサクラの部屋から見つかってる。

アカイタは途中まで本はすべての部屋で同じだと思っていいたはずだし、ナカガミの部屋に入ってからあの付録に気付いて殺害するのは難しいと思う。
・・・まぁ、そうじゃないのかもしれないけど。知らんけど。


パンチはあの白い部屋に置いてきてある。
賢ければきっと、脱出できるだろう。

脳みその、いつもは使ってない部分が過労死しそうだ。
安堵と達成感から、よろよろと立ち上がっり、背伸びをする。
そのまま椅子に座り肘をつくと、ゆっくりと目を閉じた。

今度の視界は、真っ黒だった。
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