AIと十字館の殺人

八木山

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破章

カード

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いついかなる時も、ホウレンソウでワンチームでワンフォアオール。
そう枕草子にも書いてある。

タナミチはとりあえず二人に分かったことを伝えた。

「その注射器は皮下注射用のものだが、中でも特殊なタイプだな」

とアカイタが言った。
流石薬学部である、面目躍如と言わんばかりにペラペラと続けた。

「・・・要するにその注射器は、人の体ならどこに刺してもいい薬品専用ってことだ」
「詳しいわね、どこかで見たの?」

アサクラはあからさまにアカイタをじろりと睨むと、「専攻だからな」とプイとそっぽを向いてしまった。

「俺ならこの部屋にそんな危険物があるならさっさと処理しておく」
「殊勝にも、自分は見つけてないってことを言いたいわけだ」

アサクラに煽られた彼の表情は見えない。
タナミチはナカガミのカードもテーブルの上に置く。
残念ながら指紋の類は調べられないが、それでも彼らの反応を見ることには意味があるはずだ。

・・・ところが誰も何も言わない。
見かねたアカイタが、アサクラに声をかける。

「どうした、ソレにかざさないのか」
「え、あぁ、うん・・・」

上の空だったのかどうにも歯切れの悪いアサクラは、テーブルの上に備え付けられた機械にナカガミのカードをかざした。

「うん、ダメみたい」
「ドアは。ナカガミの部屋のドアだ」

アカイタに言われるがままにアサクラは開きっぱなしのドアを閉じるべく機械にかざす。
しかし反応はない。

「部屋の主が死んだからカードが使えなくなっているのかも」
「部屋の中にカードがある状態で死んだら二度とカードは揃わなくなる。それを避けたかったのかもな」

アサクラは「わかんないわよ、そんなの」と小さく呟きながら、カードをテーブルに戻した。
そこでタナミチも、テーブルの上に置かれたメモに初めて気づくのだった。

「ここより出るなら家より名を奪え。アルベン=ベヒルシアノン 0」

印刷された文字が書かれた、A4サイズの紙。

「ほら0って書いてあるでしょ?私たちのカードにも数字が書かれてたから、なんとなーく誰かのカードキーで開くんじゃないかって思ったんだけどね」

アサクラは恥ずかしそうに頬をポリポリと掻く。
0はアルベン。1はアサクラ。2はナカガミ。4はタナミチ。となるとアカイタは3、ってことになるのか?

「でも今のとこ全滅。あーあ、飢え死にしちゃうのかな、私たち。なーんてことを考えたから自殺した、ってことはないかな。ナカガミさんはこの毒を見つけて、この状況に絶望して自ら命を絶ったってこともあるわけでしょ?」

自殺かどうかはわからないが、死因ははっきりした。
毒殺。しかし出所が分からない。

そしてここから出るヒントもおぼろげに見えてきた。
「家より名を奪え」というメッセージ。

問題は、どちらから片付けるかだな・・・
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