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破章
殺人
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「その、殺人って本当なんですか」
タナミチは二人に問いかけた。
「見ればわかる」
アカイタの言う通りだ。
タナミチはゆっくりと開けっぱなしのドアに近付いた。
脱出に向けてジタバタするよりも殺人煩瑣足の方が有意義だと思ったのだ。
俺が犯人じゃない以上この二人のどちらかが殺人犯である。
そんなやつと一緒にいられないし、脱出させていいのかとすら思う。
それに、ナカガミなる人物が死んだ背景には、この空間と何か関係があるのかもしれない。
開いたドアを見て初めて気づく。
この建物の壁は、相当に頑丈で分厚いコンクリートでできている、ということだ。
「ドアが閉まると部屋の外の音は何も聞こえない。だから私たちもナカガミさんが死んでるのに気付けなかったの。それにカードキーを使うほかにドアを開ける方法もないみたい」
ゆっくりと部屋を覗き込む。
間取りは、タナミチがいた部屋と全く同じだ。
パッと見て違うのは2つだけ。
一つ目は、真正面の本棚には本が入っているが、真ん中の青い段には何冊か本が収まっていること。
二つ目は、ベッドの上に寝ているのが金髪の女性だということ。
予想していたほど、血生臭さは感じない。
というか、現場には血の一滴も流れていないし、比喩ではなく本当に眠っているように見える。
この女性が、ナカガミさんか。
「ナカガミ・ミカ。漢字は中の上で美しい香り、だったかな。脈がなくなってから1時間は経ってる。間違いなく、死んでるよ」
何時の間にか後ろに立っていたアサクラは、寂しそうにそう言った。
「私もちゃんとは調べてないから、どうして死んだとかはわからない」
「俺が引き離したんだ」と、椅子に座ったままのアカイタが背中越しに声をかける。
「俺からしてみれば、アサクラが犯人だ。俺もその部屋には入っていない。言いがかりをつけられたくないからな」
一方的に言い切るとどこからか取り出した本に視線を戻す、アカイタ。
その様子に肩をすくめてアサクラは言葉をつづけた。
「・・・無理して調べてほしいとは、言わないよ。死体だからね・・・」
そうは言うが、どうすべきだろうか。
タナミチは二人に問いかけた。
「見ればわかる」
アカイタの言う通りだ。
タナミチはゆっくりと開けっぱなしのドアに近付いた。
脱出に向けてジタバタするよりも殺人煩瑣足の方が有意義だと思ったのだ。
俺が犯人じゃない以上この二人のどちらかが殺人犯である。
そんなやつと一緒にいられないし、脱出させていいのかとすら思う。
それに、ナカガミなる人物が死んだ背景には、この空間と何か関係があるのかもしれない。
開いたドアを見て初めて気づく。
この建物の壁は、相当に頑丈で分厚いコンクリートでできている、ということだ。
「ドアが閉まると部屋の外の音は何も聞こえない。だから私たちもナカガミさんが死んでるのに気付けなかったの。それにカードキーを使うほかにドアを開ける方法もないみたい」
ゆっくりと部屋を覗き込む。
間取りは、タナミチがいた部屋と全く同じだ。
パッと見て違うのは2つだけ。
一つ目は、真正面の本棚には本が入っているが、真ん中の青い段には何冊か本が収まっていること。
二つ目は、ベッドの上に寝ているのが金髪の女性だということ。
予想していたほど、血生臭さは感じない。
というか、現場には血の一滴も流れていないし、比喩ではなく本当に眠っているように見える。
この女性が、ナカガミさんか。
「ナカガミ・ミカ。漢字は中の上で美しい香り、だったかな。脈がなくなってから1時間は経ってる。間違いなく、死んでるよ」
何時の間にか後ろに立っていたアサクラは、寂しそうにそう言った。
「私もちゃんとは調べてないから、どうして死んだとかはわからない」
「俺が引き離したんだ」と、椅子に座ったままのアカイタが背中越しに声をかける。
「俺からしてみれば、アサクラが犯人だ。俺もその部屋には入っていない。言いがかりをつけられたくないからな」
一方的に言い切るとどこからか取り出した本に視線を戻す、アカイタ。
その様子に肩をすくめてアサクラは言葉をつづけた。
「・・・無理して調べてほしいとは、言わないよ。死体だからね・・・」
そうは言うが、どうすべきだろうか。
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