11 / 31
破章
殺人
しおりを挟む
「その、殺人って本当なんですか」
タナミチは二人に問いかけた。
「見ればわかる」
アカイタの言う通りだ。
タナミチはゆっくりと開けっぱなしのドアに近付いた。
脱出に向けてジタバタするよりも殺人煩瑣足の方が有意義だと思ったのだ。
俺が犯人じゃない以上この二人のどちらかが殺人犯である。
そんなやつと一緒にいられないし、脱出させていいのかとすら思う。
それに、ナカガミなる人物が死んだ背景には、この空間と何か関係があるのかもしれない。
開いたドアを見て初めて気づく。
この建物の壁は、相当に頑丈で分厚いコンクリートでできている、ということだ。
「ドアが閉まると部屋の外の音は何も聞こえない。だから私たちもナカガミさんが死んでるのに気付けなかったの。それにカードキーを使うほかにドアを開ける方法もないみたい」
ゆっくりと部屋を覗き込む。
間取りは、タナミチがいた部屋と全く同じだ。
パッと見て違うのは2つだけ。
一つ目は、真正面の本棚には本が入っているが、真ん中の青い段には何冊か本が収まっていること。
二つ目は、ベッドの上に寝ているのが金髪の女性だということ。
予想していたほど、血生臭さは感じない。
というか、現場には血の一滴も流れていないし、比喩ではなく本当に眠っているように見える。
この女性が、ナカガミさんか。
「ナカガミ・ミカ。漢字は中の上で美しい香り、だったかな。脈がなくなってから1時間は経ってる。間違いなく、死んでるよ」
何時の間にか後ろに立っていたアサクラは、寂しそうにそう言った。
「私もちゃんとは調べてないから、どうして死んだとかはわからない」
「俺が引き離したんだ」と、椅子に座ったままのアカイタが背中越しに声をかける。
「俺からしてみれば、アサクラが犯人だ。俺もその部屋には入っていない。言いがかりをつけられたくないからな」
一方的に言い切るとどこからか取り出した本に視線を戻す、アカイタ。
その様子に肩をすくめてアサクラは言葉をつづけた。
「・・・無理して調べてほしいとは、言わないよ。死体だからね・・・」
そうは言うが、どうすべきだろうか。
タナミチは二人に問いかけた。
「見ればわかる」
アカイタの言う通りだ。
タナミチはゆっくりと開けっぱなしのドアに近付いた。
脱出に向けてジタバタするよりも殺人煩瑣足の方が有意義だと思ったのだ。
俺が犯人じゃない以上この二人のどちらかが殺人犯である。
そんなやつと一緒にいられないし、脱出させていいのかとすら思う。
それに、ナカガミなる人物が死んだ背景には、この空間と何か関係があるのかもしれない。
開いたドアを見て初めて気づく。
この建物の壁は、相当に頑丈で分厚いコンクリートでできている、ということだ。
「ドアが閉まると部屋の外の音は何も聞こえない。だから私たちもナカガミさんが死んでるのに気付けなかったの。それにカードキーを使うほかにドアを開ける方法もないみたい」
ゆっくりと部屋を覗き込む。
間取りは、タナミチがいた部屋と全く同じだ。
パッと見て違うのは2つだけ。
一つ目は、真正面の本棚には本が入っているが、真ん中の青い段には何冊か本が収まっていること。
二つ目は、ベッドの上に寝ているのが金髪の女性だということ。
予想していたほど、血生臭さは感じない。
というか、現場には血の一滴も流れていないし、比喩ではなく本当に眠っているように見える。
この女性が、ナカガミさんか。
「ナカガミ・ミカ。漢字は中の上で美しい香り、だったかな。脈がなくなってから1時間は経ってる。間違いなく、死んでるよ」
何時の間にか後ろに立っていたアサクラは、寂しそうにそう言った。
「私もちゃんとは調べてないから、どうして死んだとかはわからない」
「俺が引き離したんだ」と、椅子に座ったままのアカイタが背中越しに声をかける。
「俺からしてみれば、アサクラが犯人だ。俺もその部屋には入っていない。言いがかりをつけられたくないからな」
一方的に言い切るとどこからか取り出した本に視線を戻す、アカイタ。
その様子に肩をすくめてアサクラは言葉をつづけた。
「・・・無理して調べてほしいとは、言わないよ。死体だからね・・・」
そうは言うが、どうすべきだろうか。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
夜の動物園の異変 ~見えない来園者~
メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。
飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。
ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた——
「そこに、"何か"がいる……。」
科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。
これは幽霊なのか、それとも——?

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
若月骨董店若旦那の事件簿~水晶盤の宵~
七瀬京
ミステリー
秋。若月骨董店に、骨董鑑定の仕事が舞い込んできた。持ち込まれた品を見て、骨董屋の息子である春宵(しゅんゆう)は驚愕する。
依頼人はその依頼の品を『鬼の剥製』だという。
依頼人は高浜祥子。そして持ち主は、高浜祥子の遠縁に当たるという橿原京香(かしはらみやこ)という女だった。
橿原家は、水産業を営みそれなりの財産もあるという家だった。しかし、水産業で繁盛していると言うだけではなく、橿原京香が嫁いできてから、ろくな事がおきた事が無いという事でも、有名な家だった。
そして、春宵は、『鬼の剥製』を一目見たときから、ある事実に気が付いていた。この『鬼の剥製』が、本物の人間を使っているという事実だった………。
秋を舞台にした『鬼の剥製』と一人の女の物語。

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生。
遠山未歩…和人とゆきの母親。
遠山昇 …和人とゆきの父親。
山部智人…【未来教】の元経理担当。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。
デアシスタントス
huyuyu
ミステリー
「― これは生死を分ける戦いです。」
それは、様々なルールで叶望達を◯えていく、残酷で絶望の時だった…
叶望達は絶望の中、彼女は…。
※鬱表現と血の表現がややあります。
苦手な方はブラウザバックをオススメします。
またこの作品へのコメントで、ネタバレ発言は厳禁です。
総務の黒川さんは袖をまくらない
八木山
ミステリー
僕は、総務の黒川さんが好きだ。
話も合うし、お酒の趣味も合う。
彼女のことを、もっと知りたい。
・・・どうして、いつも長袖なんだ?
・僕(北野)
昏寧堂出版の中途社員。
経営企画室のサブリーダー。
30代、うかうかしていられないなと思っている
・黒川さん
昏寧堂出版の中途社員。
総務部のアイドル。
ギリギリ20代だが、思うところはある。
・水樹
昏寧堂出版のプロパー社員。
社内をちょこまか動き回っており、何をするのが仕事なのかわからない。
僕と同い年だが、女性社員の熱い視線を集めている。
・プロの人
その道のプロの人。
どこからともなく現れる有識者。
弊社のセキュリティはどうなってるんだ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる