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▼【第三十八話】 愛を知ったんだ。
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「ふ、不倫ですか…… 知ってて続けていたんですか?」
その事実に目の前が真っ暗になる。頭がぐわんぐわんと痛くなる。
「はい…… 知ったときはもうどうにもなりませんでした」
「どうにもならない?」
「私は…… 前島だけじゃなくて、彼の同僚や、取引先の人とも……」
その言葉に呼吸ができなくなる。
胸が締め付けられる、息が本当にできないほどに。
とてもじゃないが、そんなこと僕には理解できない、したくない。
想像したくない、彼女のそんなところなど。脳がその言葉の理解を拒むかのように、強い痛みを発する。
「初めての飲み会の時も、遅れた理由はあいつに呼び出されていたからです…… あなたの家に行っていた時もそうです……」
それを聞いたとき、僕は笑ってしまった。自然と笑い声が出た。顔は怒り狂っているままなのに。
けど、やっと理解できたから。
僕はやっぱり遊ばれていたんだ。
「ハハ、ハハハハハハハハ…… ハハハハハハハハッハハハッハハハハハ…… やっぱり、あなたはそいつのことが好きなんですね? そうなんですよね?」
なんだ、やっぱり僕は道化じゃないか。
遊ばれて、その気になって、夢を見て、笑われる。
ただそれだけの存在でしかない。みじめも良い所だ。一人で浮かれて、一人で舞い上がって、一人で好きになって……
結局、僕はなにも変えれなかった。僕自身ですらも。
何者にもなれなかったんだ。
「はじめは…… そうだったのかもしれません…… けど、既婚者と知ってからは、関係を断とうとしましたけど、無理でした……」
「どうして?」
反射的に、怒鳴るように言葉が出る。
「わ、私の心とは別に、体はあいつに支配されてたんです……」
「あぁああああああああああああああああああぁあぁぁぁぁぁあっぁあぁぁぁーッ!!!」
僕は絶叫して勢いよく立ち上がり、そのまま、力なくソファーに崩れ落ちた。
何も考えたくない。
何も考えられない。
もう死にたい。
死んでしまいたい。
なんでこんなことになるんだ。
僕が望んだものは、僕にとってこれほどの代償を払わなければならないほどの、正気じゃいられないほどの代償を払わなければならないほど、僕には大きすぎる望みだったのか。
「だ、だからって、それを僕に見せつけて、あなたはなにがしたいんですか? あいつの命令ですか? それで僕を馬鹿にしたいんですか……」
「あいつとの関係を全て終わらせます……」
その言葉で僕は、また理解ができなくなる。
何もかもわからなくなる。
すでに僕は理解することを諦めていたのかもしれない。
「終わらせる? どうやって? 無理だったんでしょう?」
「証拠を集めてました。それを公表します…… 会社とあいつらの家に送ります……」
「どうして?」
どうしてそんなことをするんだ。
もうわからない。何も理解ができない。
「こうすることでしか、もう終わらせられないって…… こうするしかないって…… 私には…… 思いつかなくて…… あなたは心を内をすべてさらけ出してくれて、私は…… 私は何も……」
遥さんはそう言って泣き崩れた。
僕は何を信じればいい。
それもわからない、わからないけど、遥さんがこんな風に泣くのは嫌だ。それは今でも嫌なんだ。
嫉妬の炎に全身を焼かれながらも、僕はそう思えてしまった。
僕はやっぱりバカなのかもしれない。
今でも、彼女の本性を見た今でも、彼女が傷つくことは嫌なんだ。
彼女が泣くのはやっぱり嫌なんだ。
彼女の泣き顔が、泣き声が、床に落ちたその涙が、僕の頭を、嫉妬の炎を弱らせ、少しだけ冷静にさせる。
「それは…… やめてください…… あなたに、危険が及ぶかもしれません……」
「けど……」
「あなたは僕のことどう思ってるんですか?」
そうだ、それが一番大事だ。
もうそれさえわかれば、たとえそれが嘘であっても、僕はもうそれでいい。それだけでいい。
それだけを信じ続ける。
「私も聞いたんです…… 初めて、目を合わせたあのときに。私もはじめは半信半疑だったけど、知れは知るほど好きになりました。私をこの沼から助け出してくれる人、そう確信しました」
「聞いた? なにを?」
「あなたが私に振られようとして、誘ってきた朝、初めてあなたの目をちゃんと見た時、私も鐘の音を、たしかに聞いたんです……」
「そんな……こと……」
遥さんも鐘の音を聞いた? そんな事信じられるわけが、でも、確かに、僕も聞いた。あの時に聞いたんだ。
「こんな…… 私でも良ければ…… こんな汚れた私でもよかったら…… あなたのものにしてください…… 貰ってください。あなたのものになりたいんです」
彼女はそう言って頭を下げた。
今までずっと僕から目線を外さずにいたのに。
伝えなくても良い事を、言いずらいことを伝えているときでさえ、ずっと僕を見続けてくれていたのに。
泣いているときだって僕をまっすぐに見ていてくれたのに。
僕に、選択を委ねるために、視線をわざと外したんだ。
「待ってください、理解が、理解が追い付きません……」
けど、なんで、僕は笑えてしまっているんだ。なんで、その言葉が嬉しいんだ。
だめだ、やっぱり何も考えられない。
僕はどうしたらいい? 僕はどうしたい?
今、僕の前にはいろんな選択肢がある。
しかも、幸運なことに僕はそれを選ぶことができる。
今までの事、そのすべて思い出す。
そんな長い時間じゃなかった。それでも、僕の人生で最も輝いていた時間なのかもしれない。
なら、迷うことはないじゃないか。
僕が心の奥底から恋焦がれたものが、そこにあって手が届くんだ。
ただ本心に従えばいい。僕はそうしてきたんだ。
彼女の心が僕に向いているというのであれば、なにも問題はないじゃないか。
その他のことなど、些細なことでしかない。
嫉妬の炎に僕が身を焼かれ続けることなどほんの些細なことだ、そんなもの彼女を手に入れるのなら代償にすらならない。
僕は彼女と出会って、今、愛を知ったんだ。
「僕は言いました、何があってもあなたを諦めらないって。今もそう思ってます。もし、僕のものになってくれるなら、僕は絶対に手放しません。絶対に離れてやりません…… 僕はあなたの最後の男になれればそれでいいです。それでもいいんですか?」
「はい、喜んで……」
彼女が、遥さんが僕に飛び込んできた。
僕はそれをしっかりと受け止める。もう二度と離さないように力強く。
その事実に目の前が真っ暗になる。頭がぐわんぐわんと痛くなる。
「はい…… 知ったときはもうどうにもなりませんでした」
「どうにもならない?」
「私は…… 前島だけじゃなくて、彼の同僚や、取引先の人とも……」
その言葉に呼吸ができなくなる。
胸が締め付けられる、息が本当にできないほどに。
とてもじゃないが、そんなこと僕には理解できない、したくない。
想像したくない、彼女のそんなところなど。脳がその言葉の理解を拒むかのように、強い痛みを発する。
「初めての飲み会の時も、遅れた理由はあいつに呼び出されていたからです…… あなたの家に行っていた時もそうです……」
それを聞いたとき、僕は笑ってしまった。自然と笑い声が出た。顔は怒り狂っているままなのに。
けど、やっと理解できたから。
僕はやっぱり遊ばれていたんだ。
「ハハ、ハハハハハハハハ…… ハハハハハハハハッハハハッハハハハハ…… やっぱり、あなたはそいつのことが好きなんですね? そうなんですよね?」
なんだ、やっぱり僕は道化じゃないか。
遊ばれて、その気になって、夢を見て、笑われる。
ただそれだけの存在でしかない。みじめも良い所だ。一人で浮かれて、一人で舞い上がって、一人で好きになって……
結局、僕はなにも変えれなかった。僕自身ですらも。
何者にもなれなかったんだ。
「はじめは…… そうだったのかもしれません…… けど、既婚者と知ってからは、関係を断とうとしましたけど、無理でした……」
「どうして?」
反射的に、怒鳴るように言葉が出る。
「わ、私の心とは別に、体はあいつに支配されてたんです……」
「あぁああああああああああああああああああぁあぁぁぁぁぁあっぁあぁぁぁーッ!!!」
僕は絶叫して勢いよく立ち上がり、そのまま、力なくソファーに崩れ落ちた。
何も考えたくない。
何も考えられない。
もう死にたい。
死んでしまいたい。
なんでこんなことになるんだ。
僕が望んだものは、僕にとってこれほどの代償を払わなければならないほどの、正気じゃいられないほどの代償を払わなければならないほど、僕には大きすぎる望みだったのか。
「だ、だからって、それを僕に見せつけて、あなたはなにがしたいんですか? あいつの命令ですか? それで僕を馬鹿にしたいんですか……」
「あいつとの関係を全て終わらせます……」
その言葉で僕は、また理解ができなくなる。
何もかもわからなくなる。
すでに僕は理解することを諦めていたのかもしれない。
「終わらせる? どうやって? 無理だったんでしょう?」
「証拠を集めてました。それを公表します…… 会社とあいつらの家に送ります……」
「どうして?」
どうしてそんなことをするんだ。
もうわからない。何も理解ができない。
「こうすることでしか、もう終わらせられないって…… こうするしかないって…… 私には…… 思いつかなくて…… あなたは心を内をすべてさらけ出してくれて、私は…… 私は何も……」
遥さんはそう言って泣き崩れた。
僕は何を信じればいい。
それもわからない、わからないけど、遥さんがこんな風に泣くのは嫌だ。それは今でも嫌なんだ。
嫉妬の炎に全身を焼かれながらも、僕はそう思えてしまった。
僕はやっぱりバカなのかもしれない。
今でも、彼女の本性を見た今でも、彼女が傷つくことは嫌なんだ。
彼女が泣くのはやっぱり嫌なんだ。
彼女の泣き顔が、泣き声が、床に落ちたその涙が、僕の頭を、嫉妬の炎を弱らせ、少しだけ冷静にさせる。
「それは…… やめてください…… あなたに、危険が及ぶかもしれません……」
「けど……」
「あなたは僕のことどう思ってるんですか?」
そうだ、それが一番大事だ。
もうそれさえわかれば、たとえそれが嘘であっても、僕はもうそれでいい。それだけでいい。
それだけを信じ続ける。
「私も聞いたんです…… 初めて、目を合わせたあのときに。私もはじめは半信半疑だったけど、知れは知るほど好きになりました。私をこの沼から助け出してくれる人、そう確信しました」
「聞いた? なにを?」
「あなたが私に振られようとして、誘ってきた朝、初めてあなたの目をちゃんと見た時、私も鐘の音を、たしかに聞いたんです……」
「そんな……こと……」
遥さんも鐘の音を聞いた? そんな事信じられるわけが、でも、確かに、僕も聞いた。あの時に聞いたんだ。
「こんな…… 私でも良ければ…… こんな汚れた私でもよかったら…… あなたのものにしてください…… 貰ってください。あなたのものになりたいんです」
彼女はそう言って頭を下げた。
今までずっと僕から目線を外さずにいたのに。
伝えなくても良い事を、言いずらいことを伝えているときでさえ、ずっと僕を見続けてくれていたのに。
泣いているときだって僕をまっすぐに見ていてくれたのに。
僕に、選択を委ねるために、視線をわざと外したんだ。
「待ってください、理解が、理解が追い付きません……」
けど、なんで、僕は笑えてしまっているんだ。なんで、その言葉が嬉しいんだ。
だめだ、やっぱり何も考えられない。
僕はどうしたらいい? 僕はどうしたい?
今、僕の前にはいろんな選択肢がある。
しかも、幸運なことに僕はそれを選ぶことができる。
今までの事、そのすべて思い出す。
そんな長い時間じゃなかった。それでも、僕の人生で最も輝いていた時間なのかもしれない。
なら、迷うことはないじゃないか。
僕が心の奥底から恋焦がれたものが、そこにあって手が届くんだ。
ただ本心に従えばいい。僕はそうしてきたんだ。
彼女の心が僕に向いているというのであれば、なにも問題はないじゃないか。
その他のことなど、些細なことでしかない。
嫉妬の炎に僕が身を焼かれ続けることなどほんの些細なことだ、そんなもの彼女を手に入れるのなら代償にすらならない。
僕は彼女と出会って、今、愛を知ったんだ。
「僕は言いました、何があってもあなたを諦めらないって。今もそう思ってます。もし、僕のものになってくれるなら、僕は絶対に手放しません。絶対に離れてやりません…… 僕はあなたの最後の男になれればそれでいいです。それでもいいんですか?」
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