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【ヤクソ・コルメクュンメンタカクスィ-要するに第三十二話-】最終決戦決着?☆彡【ヴィースィ・ヴェーリ・ルク-五色の章-12-】
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迫りくるアクアさんの唇。
凄い魔力をため込み特大のビームを放とうとしているローズピンクさん。
目を輝かせアンバーちゃんに絡みついて、自分の妄想を呪詛のように繰り返し垂れ流しているグリーナリーさん。
そんなグリーナリーさんをものともせずに「ボク、男の子になるー」と希望を語るアンバーちゃん……
そして、黒幕のヘルデスラー大総督が奥の手を放とうとしている中、私はアクアさんを押し戻そうと必死になっています。
なんですか?
この状況は。
こんな最終決戦があるんですか?
全員が全員、蚊帳の外に居ませんか?
とりあえずヘルデスラー大総督の攻撃を、魔法界から私に注がれる力でどうにか防ぐしかないですよね?
まあ、私には何の実感もないので、それよりも迫りくるアクアさんをどうにかするのが先なんですが。
「ちょ、ちょっとアクアさん、それ以上は怒りますよ? や、やめてください!」
私に蛸のように絡みついてくるアクアさんをどうにか押さえつけていると、
「ぐへ、へへへ、美咲ちゃん、すきぃ!」
と、今までのイメージも何も無いようなデレデレでドロドロにまで溶けたアクアさんがそう言ってきます。
悪い気はしないですが、それ以上に感じるのは身の危険です。恐怖です。やっぱり悪い気はしていました!
え? 待ってください、この蛸のようなアクアさん、今なんていいました?
「なんで私の本名を知っているんですか!? ちょ、離して、離してください!」
アクアさん、なんで私の名前を知ってるんですか?
正直、ちょっと、いえ、かなり怖いですけど!?
そんな人に迫られている今、物凄く怖いです! 恐怖しかないですよ?
「ちょ、ちょっと誰か助けてください! ヒーロー…… そうだ、アンバーちゃん、助けてください! ここにヒーローを求めている人がいます!」
ダメ元でそう叫ぶと、アンバーちゃんが目を輝かせてこちらを向きました。
「!? どこですか! ヒーローのボクが助けに来ましたよ!」
これは、行ける! 行けますよ!!
アンバーちゃんならアクアさんを難なく引き剥がせます!
グリーナリーさんを足に絡ませながらも私のところまで助けに来てくれます! 流石ヒーローです!
「あ、アクアさんを引き剥がしてください!」
「ボクに任せて!」
やっとの思いでアクアさんをアンバーちゃんに引き剥がして貰いました。
引き剥がされたアクアさんは今度はアンバーちゃんに絡みだしています。
二重の意味で絡みだしているけど、わ、私にはやることがあるでの、それはとりあえずおいておきます。
ごめんね、アンバーちゃん。
「へ、ヘルデスラー大総督! あなたの思い通りにはさせません! このプナイネン・ルージュがあなたの野望を阻止します!」
私はヘルデスラー大総督に向かい指を刺してポーズを取り、かっこよく決めました!
今は、たぶん、私がやらなくちゃいけない気がします!
と言うか他の魔法少女が今は役に立たなそうなので……
「ん? んんー? そういえば先ほど美咲って呼ばれていたような…… それにこの声…… ま、まさかお隣の美咲ちゃんか!?」
私が一大決心し、普通の女子高生ながらにも悪の秘密結社の大総督に挑もうと決意したときに、また私の本名を呼ばれました。
「へ? あっ、もしかしてお隣の山本さんのところのお兄さんですか……」
確かに、お隣の山本さんの所にいたお兄さんの面影がありますね。
もう数年会っていないので、確証は持てませんが……
最後にあったのは私が小学生の頃でしょうか……
「うむ、そうだ。まさか美咲ちゃんまで毒電波にやられていようとは…… 早急に毒電波を絶たないといけない!」
私は毒電波になんか影響されてません。
となると、毒電波とやらに毒されているのは……
「毒電波の出元はあなたです! 山本さんところのお兄さん!」
「な、なにを! ワシが毒電波の出どころなわけがあるはずがない。なぜならば見よ! 美咲ちゃん」
そう言って山本さんところのお兄さんは、とある場所を指さしました。
「へ?」
「ワシと敵対する魔法少女の行動を!」
私は見ました。
山本さんところのお兄さんが指さした、その先に混沌があったのを。
一人は魔法の力をただただ破壊のために溜め、今にも爆発しそうなほどのショッキングピンクに輝く球体に魔法の力を注ぎ込んでいます。
残りの三人はくんずほぐれつ絡み合っている姿。
まさに混沌とも呼べる情景がそこにはありました。
これには私も何も言い返せません。
まさに毒電波にやられちゃった人達に私ですら見えました。
「あの様子を見れば一目瞭然! ワシと敵対する魔法少女こそが毒電波の発信源であることは間違いない!」
「くそぅ、くそぅ、悔しいけど現状、何も言い返せません!」
「わかったんなら、美咲ちゃん、大人しくそこで待っているがよい、今、毒電波の発信源を葬り去ってやろう!」
「そ、そんなことはさせません!」
葬り去るって、皆をですか、そんなことさせませんし、どうにかなるとも思えませんけど。
特に友達でもなく、ただのバイト仲間で本名も素顔も知りませんが、そんなことはさせません!
「美咲ちゃん…… そうまでしてワシの前に立ちふさがるというのか!?」
「わ、私はバイトですけど、ただのコスプレですけど、こう見えて、本物の魔法少女なんです!」
「よく言ったんだゾ プナイネン・ルージュ! それでこそ魔法少女だゾ!」
ヴァルコイネンさんが私に魔法界の魔法力をグングンと注ぎ込みながら、そう言いました。
「あ、相手が怪人化してないというのであれば! ただのおじさんです! わ、私でもどうにかできるかもしれません!」
「おじ…… さん…… ワシが……?」
私の言葉に、山本さんのところのお兄さんが急に崩れ落ちます。
「え? あっ、はい、もうおじさんですよね? 私の記憶が正しければ優に四十歳は超えていますよね?」
そう確認すると、
「た、確かにぃぃぃぃぃぃぃ……」
と、そう言って、山本さんのところのお兄さんは更に崩れ落ちていきます。
「ハカセ!? どうしたっピ! 急に崩れ落ちてどうしたんだっピ!?」
今がチャンスですよね?
抱えているのも邪魔なので、ヴァルコイネンさんをその場において、山本さんところのお兄さんがいるホールの壇上の前まで駆け寄ります。
壇上はそこそこ高い位置、大体一メートルくらいの高さですかね?
それを何とか乗り越えて、私も壇上の上に立ちます。
そうすると崩れて落ちていた山本さんのところのお兄さん、もといヘルデスラー大総督がなんとか立ち上がります。
でも、目元には涙が見えます。そんなにショックだったんですか。
「勝負です、ヘルデスラー大総督!」
「いいだろう、美咲ちゃん、いいや、プナイネン・ルージュ! 決着をつけようではないか!」
そう言って山本のお兄さんは構えます。
なんとなく私も構えます。
相手は悪の秘密結社の大総督です、ただの女子高生の私がかなう訳……
あれ? 相手は怪人化してないんですよね?
「ね、ねえ? ヴァルコイネンさん! 魔法使いって強いんですか!?」
皆の元に置いて来たヴァルコイネンさんに大声で確認します。
「魔法を自力で使える以外は普通の人間だゾ!」
私の問いにヴァルコイネンさんも大声で返事してくれます。
「あれ? ただの四十代のおじさんなんですか?」
「み、美咲ちゃん! それは流石に失礼と言うものではないかな!?」
何かショックを受けながらも、ヘルデスラー大総督は私に文句を言ってきます。
「そうだっピ! ハカセは腰痛持ちだけど、強いっピよ!」
「腰痛持ち?」
これは何かに使え…… るんですか?
使えそうで使えなさそうで……
腰痛持ち? えーと、えーと、とりあえず重いものは持てないですよね?
そ、それくらいしか私には思い浮かびませんよ?
「こ、こら、マスタ・ケイジュ! ワシの弱点を言うではない!」
「し、しまったっピ!」
敵が漫才している間に私は準備を終わらせます!
ホームセンタによって買ってきた殺虫剤を袋から取り出し、それを構えます!
「むっ! 殺虫剤!? それをどうする気だ!?」
「こうです! プナイネン・ルージュ・スロー!」
そう言って買って来たばかりの殺虫剤をヘルデスラー大総督に投げつけます!
ガコン、という小気味よい音を響かせて私の投げた殺虫剤はヘルデスラー大総督の頭に当たります。
「イッた! うわ、イッた!! むむむ、美咲ちゃんとはいえ、これ以上の狼藉は許されると思わぬことだな!」
「私にあなたの魔法は通じません! そして、私にはまだ、第二第三の殺虫剤があります! 降参するなら今のうちですよ!」
ついでに第四の殺虫剤はないです。
第三までで在庫切れです。
「舐めるな、美咲ちゃん。ワシはこう見えて毒電場遮断教団の大総督! ヘルデスラー大総督なのだよ!」
「四十代にもなってヘルデスラーってなんですか! 目を覚ましてください!」
「ぐあぁぁぁあぁぁぁ!! げ、現実を突きつけるなぁ!!!!」
そう言って、ヘルデスラー大総督はなぜか泣き始めました。
た、たぶん、当たった殺虫剤が痛かったんだと思います。そう思うことにします。
けど、これはチャンスです。相手は隙を見せています!!
「いまだ! 必殺プナイネン・ルージュ・アンダースロー!」
床を滑るように殺虫剤の缶を投げます。
それは見事、ヘルデスラー大総督の足の脛に当たります!
「ぐあぁぁぁぁ!!! いってぇっぇえぇえええええええぇぇ!!」
そう言って、私は脛を抱えるヘルデスラー大総督に走り込んで、そして、飛び込みます!
ただし胸からではなく膝からです。
ヘルデスラー大総督の胸に膝から飛び込んで、そのままヘルデスラー大総督を押し倒します。
見事私の計画は成功ですね。まあ、腰痛持ちと言うのであれば、今の突撃を止めれるとも思いませんけども!
私は最後の殺虫剤を手に持ちます。
「これで終わりです! って、なんで顔を赤らめているんですか!」
「いや、その、ちょ、ちょうど、ぱ、パンツが……」
そう言って、ヘルデスラー大総督、いえ、お隣の山本さんのお兄さんは視線を私からずらしました。
あー、そうでした。
この衣装、結構スカートが短いんでした……
いや、下にはいているパンツも衣装の一つ、ようは見せパンなんで、まあ、良いと言えば良いんですけど。
とりあえずここは怒っておきましょうか。
「こ、この変態! プナイネン・ルージュ・殺虫ストライク!」
そう叫んで力の限り、殺虫剤の底の固い部分でヘルデスラー大総督を殴りました。
流石のヘルデスラー大総督もその一撃には耐えれなかったようです。
気を失ったかのようにぐったりとしました。
え? 気を失っただけですよね? 死んだりはしてないですよね?
とりあえず被っているアルミホイルの帽子を取ると、少し大きめのたんこぶができています。
すんごい痛そうです。
多分ですが、私の勝ちです!
「終わりましたよ! 皆さん!!」
私が仲間であるはずの魔法少女達の方を見ると、そこには相も変わらない混沌がありました。
そういえば、魔法少女達の暴走は山本さんのところのお兄さんとは全く無関係でした!
あれ? もしかして大量の魔法力を皆に流す意味なかったですか?
なんかそんな気もしますね。
「ヴァルコイネンさん、魔法の力の供給を止めてください!」
「だ、ダメだゾ…… 止まんないゾ! 魔法界の力を制御する制御弁が壊れたんだゾ……」
ヴァルコイネンさんから絶望的な解答が返ってきました。
「へ? え? それどうなるんですか!?」
「とりあえず…… ヴァーレアンプナイネン・ローズピンクの溜め込んだ破壊光線エネルギーが限界を迎え大爆発するゾ……」
「い、いつですか? それはいつなんですか?」
私が必死になって聞き返すと、
「今だゾ!」
と、言う無慈悲な答えが返ってきました。
私が何か言うよりも早く、ちゅどーん! と言った、そんな馬鹿らしい音がして、視界はショッキングピンクピンクに包まれました。
凄い魔力をため込み特大のビームを放とうとしているローズピンクさん。
目を輝かせアンバーちゃんに絡みついて、自分の妄想を呪詛のように繰り返し垂れ流しているグリーナリーさん。
そんなグリーナリーさんをものともせずに「ボク、男の子になるー」と希望を語るアンバーちゃん……
そして、黒幕のヘルデスラー大総督が奥の手を放とうとしている中、私はアクアさんを押し戻そうと必死になっています。
なんですか?
この状況は。
こんな最終決戦があるんですか?
全員が全員、蚊帳の外に居ませんか?
とりあえずヘルデスラー大総督の攻撃を、魔法界から私に注がれる力でどうにか防ぐしかないですよね?
まあ、私には何の実感もないので、それよりも迫りくるアクアさんをどうにかするのが先なんですが。
「ちょ、ちょっとアクアさん、それ以上は怒りますよ? や、やめてください!」
私に蛸のように絡みついてくるアクアさんをどうにか押さえつけていると、
「ぐへ、へへへ、美咲ちゃん、すきぃ!」
と、今までのイメージも何も無いようなデレデレでドロドロにまで溶けたアクアさんがそう言ってきます。
悪い気はしないですが、それ以上に感じるのは身の危険です。恐怖です。やっぱり悪い気はしていました!
え? 待ってください、この蛸のようなアクアさん、今なんていいました?
「なんで私の本名を知っているんですか!? ちょ、離して、離してください!」
アクアさん、なんで私の名前を知ってるんですか?
正直、ちょっと、いえ、かなり怖いですけど!?
そんな人に迫られている今、物凄く怖いです! 恐怖しかないですよ?
「ちょ、ちょっと誰か助けてください! ヒーロー…… そうだ、アンバーちゃん、助けてください! ここにヒーローを求めている人がいます!」
ダメ元でそう叫ぶと、アンバーちゃんが目を輝かせてこちらを向きました。
「!? どこですか! ヒーローのボクが助けに来ましたよ!」
これは、行ける! 行けますよ!!
アンバーちゃんならアクアさんを難なく引き剥がせます!
グリーナリーさんを足に絡ませながらも私のところまで助けに来てくれます! 流石ヒーローです!
「あ、アクアさんを引き剥がしてください!」
「ボクに任せて!」
やっとの思いでアクアさんをアンバーちゃんに引き剥がして貰いました。
引き剥がされたアクアさんは今度はアンバーちゃんに絡みだしています。
二重の意味で絡みだしているけど、わ、私にはやることがあるでの、それはとりあえずおいておきます。
ごめんね、アンバーちゃん。
「へ、ヘルデスラー大総督! あなたの思い通りにはさせません! このプナイネン・ルージュがあなたの野望を阻止します!」
私はヘルデスラー大総督に向かい指を刺してポーズを取り、かっこよく決めました!
今は、たぶん、私がやらなくちゃいけない気がします!
と言うか他の魔法少女が今は役に立たなそうなので……
「ん? んんー? そういえば先ほど美咲って呼ばれていたような…… それにこの声…… ま、まさかお隣の美咲ちゃんか!?」
私が一大決心し、普通の女子高生ながらにも悪の秘密結社の大総督に挑もうと決意したときに、また私の本名を呼ばれました。
「へ? あっ、もしかしてお隣の山本さんのところのお兄さんですか……」
確かに、お隣の山本さんの所にいたお兄さんの面影がありますね。
もう数年会っていないので、確証は持てませんが……
最後にあったのは私が小学生の頃でしょうか……
「うむ、そうだ。まさか美咲ちゃんまで毒電波にやられていようとは…… 早急に毒電波を絶たないといけない!」
私は毒電波になんか影響されてません。
となると、毒電波とやらに毒されているのは……
「毒電波の出元はあなたです! 山本さんところのお兄さん!」
「な、なにを! ワシが毒電波の出どころなわけがあるはずがない。なぜならば見よ! 美咲ちゃん」
そう言って山本さんところのお兄さんは、とある場所を指さしました。
「へ?」
「ワシと敵対する魔法少女の行動を!」
私は見ました。
山本さんところのお兄さんが指さした、その先に混沌があったのを。
一人は魔法の力をただただ破壊のために溜め、今にも爆発しそうなほどのショッキングピンクに輝く球体に魔法の力を注ぎ込んでいます。
残りの三人はくんずほぐれつ絡み合っている姿。
まさに混沌とも呼べる情景がそこにはありました。
これには私も何も言い返せません。
まさに毒電波にやられちゃった人達に私ですら見えました。
「あの様子を見れば一目瞭然! ワシと敵対する魔法少女こそが毒電波の発信源であることは間違いない!」
「くそぅ、くそぅ、悔しいけど現状、何も言い返せません!」
「わかったんなら、美咲ちゃん、大人しくそこで待っているがよい、今、毒電波の発信源を葬り去ってやろう!」
「そ、そんなことはさせません!」
葬り去るって、皆をですか、そんなことさせませんし、どうにかなるとも思えませんけど。
特に友達でもなく、ただのバイト仲間で本名も素顔も知りませんが、そんなことはさせません!
「美咲ちゃん…… そうまでしてワシの前に立ちふさがるというのか!?」
「わ、私はバイトですけど、ただのコスプレですけど、こう見えて、本物の魔法少女なんです!」
「よく言ったんだゾ プナイネン・ルージュ! それでこそ魔法少女だゾ!」
ヴァルコイネンさんが私に魔法界の魔法力をグングンと注ぎ込みながら、そう言いました。
「あ、相手が怪人化してないというのであれば! ただのおじさんです! わ、私でもどうにかできるかもしれません!」
「おじ…… さん…… ワシが……?」
私の言葉に、山本さんのところのお兄さんが急に崩れ落ちます。
「え? あっ、はい、もうおじさんですよね? 私の記憶が正しければ優に四十歳は超えていますよね?」
そう確認すると、
「た、確かにぃぃぃぃぃぃぃ……」
と、そう言って、山本さんのところのお兄さんは更に崩れ落ちていきます。
「ハカセ!? どうしたっピ! 急に崩れ落ちてどうしたんだっピ!?」
今がチャンスですよね?
抱えているのも邪魔なので、ヴァルコイネンさんをその場において、山本さんところのお兄さんがいるホールの壇上の前まで駆け寄ります。
壇上はそこそこ高い位置、大体一メートルくらいの高さですかね?
それを何とか乗り越えて、私も壇上の上に立ちます。
そうすると崩れて落ちていた山本さんのところのお兄さん、もといヘルデスラー大総督がなんとか立ち上がります。
でも、目元には涙が見えます。そんなにショックだったんですか。
「勝負です、ヘルデスラー大総督!」
「いいだろう、美咲ちゃん、いいや、プナイネン・ルージュ! 決着をつけようではないか!」
そう言って山本のお兄さんは構えます。
なんとなく私も構えます。
相手は悪の秘密結社の大総督です、ただの女子高生の私がかなう訳……
あれ? 相手は怪人化してないんですよね?
「ね、ねえ? ヴァルコイネンさん! 魔法使いって強いんですか!?」
皆の元に置いて来たヴァルコイネンさんに大声で確認します。
「魔法を自力で使える以外は普通の人間だゾ!」
私の問いにヴァルコイネンさんも大声で返事してくれます。
「あれ? ただの四十代のおじさんなんですか?」
「み、美咲ちゃん! それは流石に失礼と言うものではないかな!?」
何かショックを受けながらも、ヘルデスラー大総督は私に文句を言ってきます。
「そうだっピ! ハカセは腰痛持ちだけど、強いっピよ!」
「腰痛持ち?」
これは何かに使え…… るんですか?
使えそうで使えなさそうで……
腰痛持ち? えーと、えーと、とりあえず重いものは持てないですよね?
そ、それくらいしか私には思い浮かびませんよ?
「こ、こら、マスタ・ケイジュ! ワシの弱点を言うではない!」
「し、しまったっピ!」
敵が漫才している間に私は準備を終わらせます!
ホームセンタによって買ってきた殺虫剤を袋から取り出し、それを構えます!
「むっ! 殺虫剤!? それをどうする気だ!?」
「こうです! プナイネン・ルージュ・スロー!」
そう言って買って来たばかりの殺虫剤をヘルデスラー大総督に投げつけます!
ガコン、という小気味よい音を響かせて私の投げた殺虫剤はヘルデスラー大総督の頭に当たります。
「イッた! うわ、イッた!! むむむ、美咲ちゃんとはいえ、これ以上の狼藉は許されると思わぬことだな!」
「私にあなたの魔法は通じません! そして、私にはまだ、第二第三の殺虫剤があります! 降参するなら今のうちですよ!」
ついでに第四の殺虫剤はないです。
第三までで在庫切れです。
「舐めるな、美咲ちゃん。ワシはこう見えて毒電場遮断教団の大総督! ヘルデスラー大総督なのだよ!」
「四十代にもなってヘルデスラーってなんですか! 目を覚ましてください!」
「ぐあぁぁぁあぁぁぁ!! げ、現実を突きつけるなぁ!!!!」
そう言って、ヘルデスラー大総督はなぜか泣き始めました。
た、たぶん、当たった殺虫剤が痛かったんだと思います。そう思うことにします。
けど、これはチャンスです。相手は隙を見せています!!
「いまだ! 必殺プナイネン・ルージュ・アンダースロー!」
床を滑るように殺虫剤の缶を投げます。
それは見事、ヘルデスラー大総督の足の脛に当たります!
「ぐあぁぁぁぁ!!! いってぇっぇえぇえええええええぇぇ!!」
そう言って、私は脛を抱えるヘルデスラー大総督に走り込んで、そして、飛び込みます!
ただし胸からではなく膝からです。
ヘルデスラー大総督の胸に膝から飛び込んで、そのままヘルデスラー大総督を押し倒します。
見事私の計画は成功ですね。まあ、腰痛持ちと言うのであれば、今の突撃を止めれるとも思いませんけども!
私は最後の殺虫剤を手に持ちます。
「これで終わりです! って、なんで顔を赤らめているんですか!」
「いや、その、ちょ、ちょうど、ぱ、パンツが……」
そう言って、ヘルデスラー大総督、いえ、お隣の山本さんのお兄さんは視線を私からずらしました。
あー、そうでした。
この衣装、結構スカートが短いんでした……
いや、下にはいているパンツも衣装の一つ、ようは見せパンなんで、まあ、良いと言えば良いんですけど。
とりあえずここは怒っておきましょうか。
「こ、この変態! プナイネン・ルージュ・殺虫ストライク!」
そう叫んで力の限り、殺虫剤の底の固い部分でヘルデスラー大総督を殴りました。
流石のヘルデスラー大総督もその一撃には耐えれなかったようです。
気を失ったかのようにぐったりとしました。
え? 気を失っただけですよね? 死んだりはしてないですよね?
とりあえず被っているアルミホイルの帽子を取ると、少し大きめのたんこぶができています。
すんごい痛そうです。
多分ですが、私の勝ちです!
「終わりましたよ! 皆さん!!」
私が仲間であるはずの魔法少女達の方を見ると、そこには相も変わらない混沌がありました。
そういえば、魔法少女達の暴走は山本さんのところのお兄さんとは全く無関係でした!
あれ? もしかして大量の魔法力を皆に流す意味なかったですか?
なんかそんな気もしますね。
「ヴァルコイネンさん、魔法の力の供給を止めてください!」
「だ、ダメだゾ…… 止まんないゾ! 魔法界の力を制御する制御弁が壊れたんだゾ……」
ヴァルコイネンさんから絶望的な解答が返ってきました。
「へ? え? それどうなるんですか!?」
「とりあえず…… ヴァーレアンプナイネン・ローズピンクの溜め込んだ破壊光線エネルギーが限界を迎え大爆発するゾ……」
「い、いつですか? それはいつなんですか?」
私が必死になって聞き返すと、
「今だゾ!」
と、言う無慈悲な答えが返ってきました。
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