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【ヤクソ・ヴィースィ-要するに第五話-】シニネン・アクア VS マダムマンティス☆彡【シニネン・ルク-青の章-02-】

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 それが何かまではわからないですが、私に向けてではなくこの周辺一帯を凶悪な悪意が覆い被さるような、そんな嫌な予感を感じずにはいられません。
 日が落ちてきている誰もいなくなった自然公園から、悲鳴が、それも女性の悲鳴が唐突に聞こえて来ました。
 まるでそれが何かの合図のように。
 くしくも日常が終わりを告げる逢魔が時の時刻。非日常の始まりの時間。
 私は意を決して悲鳴の方向へと走ります。
 魔法少女は、特に私がなった魔法少女は正義の味方というわけでもないのですけれど。
 その聞こえた悲鳴が女性の物、で、あるのならば、私は私としては助けてあげなければなりません。
 別に正義のためじゃないですよ。
 女性、つまり救出対象が女だからです。
 自分の好きなもの為なら、私は労働を拒むこともありません。
 まあ、魔法少女は正体を明かせないので、それで私に何の利もないのですけれども。
 ただ、この辺りを包む嫌な気配から、ただの暴漢ということはないでしょう。
 まず間違いなく相手は怪人。
 それも私の生活圏内にです。
 相手も馬鹿ではない、ということなのでしょうかね?
 その割には、蝉怪人は…… あれはなんだったのでしょうか。
 驚かすだけで戦闘力皆無でしたし。
 そんなことを考えつつも辺りに何者の気配を感じない場所を探り出して、私も非日常の扉を開けます。
「シニネン・タイカムオトス!!」
 再度、辺りに誰もいないのを確認した後、少し恥ずかしいけれども声に出してそう言うと、体が光に包まれます。
 そして瞬時に、私の体が魔法少女のものに置き換わる。
 私と似て非となる存在。
 私に面影はあるけれども、まったく別の体。
 ある意味、他人の、他の美少女の肉体。
 しかも、非の打ちどころのない美少女で、何より魔法少女と来ている。
 これだけでも魔法少女になった意味があるって言うものです。
 しかも、本物の魔法少女なのよ、私の性癖に深く、それはもう深く突き刺さってしまうわ!
 っと、今は私の趣向の話はどうでもよかったですね。
 さてと、まずは襲われてるのは…… そう思って悲鳴の方向へと文字通り駆ける様に向かいそこで見た者は、見慣れた制服を着ていますね。
 つまりは私の高校の制服ですね。知らない娘だけど下級生かしらね?
 偶然? それともバレている?
 思考を巡らしますけども現段階では確証はない。
 なら、バレていると考えた方が良さそよね。
 ただ私、本人までは辿り着いてない。
 考えられるのは場所? もしくは制服か何かを、いつの間にかに見られた、とかですかね?
 どっちにしろ、楽観できる状況ではなさそうね。
 皆が来るまで待つべきかしら?
 いや、流石に同じ学校の生徒を見殺しにするのは寝覚めが悪し、何よりもあの娘、かわいいじゃない。
 なら、私が助けてあげないとね。
 正体を明かせれば、助けてあげたお礼に…… と言えるのだけれど残念ですね。
 で、今日のお相手は……
 蟷螂ね。しかも雌蟷螂ですか。
 と、言っても人間大の蟷螂が女性物の服を着て、口の周りに口紅塗っているだけだけど。
 もう人が襲われた後で、血が口回りに付着しているだけじゃないわよね?
 血の臭いはしませんし。
 それに一応女物の服を着てますし、蟷螂だけでオカマって線もありますけれども。

 オカマキリ、ってね。

 …………

 それはそうと、あの大きな鎌はヤバそうね。接近戦は避けたほういいですね。
 何はともあれ、相手は人間じゃなさそうだし、まずは奇襲で先制攻撃ね。
「ヤーンピッキ!」
 私がそう叫ぶと、指定した場所から巨大な氷の棘が瞬時に生える。
 が、蟷螂の怪人はそれを易々とかわす。
 それは置いておいて、まずは襲われていた娘の確認です。
 転んではいるようだけれど、外傷はなさそうですね。
 乙女の柔肌に傷でもつけていたら許さない所でしたよ。
「いきなり攻撃とはやってくれるわね、青色の魔法少女よ」
 蟷螂怪人がそう言ってくるけど、相手にはしない。
 所詮、虫の戯言です。
 そう思いはしたけれども、ああも簡単に私の魔法をかわされるとは。
 今までの怪人とは一味違いそうね。
 なら、名乗ってあげてもいいんじゃないかしらね? 青色と言われるのも嫌ですし。
「シニネン・アクアよ。それが私の名前」
「私は毒電波遮断怪人・マダムマンティス」
 私の名乗りに怪人も律儀に頭を下げ、礼儀正しく名乗り返してくれました。
 それにしてもマダムですか。じゃあ、やっぱりオカマキリではなく、雌蟷螂なのですね。
「マダム、ですか。オカマキリではなかったのですね」
「オッ、オカマですって!?」
 顔はまんま蟷螂なので表情なんてわかるわけがない、怒っているかどうかもわかりませんけど、口調からして怒ってはいるようですが。
 虫も怪人になると感情というものが生まれるようですね。
 普段は話す前に倒していたので気づきませんでしたけども。
「ごめんなさいね、見た目では判断つかなくって」
 そう言って、私がほほ笑むと、マダムマンティスはさらに怒ったように足で地団駄を踏みだした。
 ついでに足は四本あり、二本の大きな鎌のついた手をしている。
 足には赤いハイヒールを各々履いているのですけれども、よくそのハイヒールで私の魔法をかわせたものですね。
 さらに鎌は捕獲するための鎌ではなく、なにかを刈り取るための鎌に置き換わっていますね。
 魔法少女の体で怪我をしたところで、私の本体は一切傷つくことはないのですが、痛いのは嫌ですね。やっぱり近接戦はなしです。
「ふん、人間無勢が!!」
「狙いは私でしょう? 相手してあげますから。そこの転んで頬けているあなたも早く逃げなさい」
 まずはあの娘の安全を確保しなくちゃね。
 けれど、その娘は何とも言えない表情を私に向けてきます。あら、かわいい。
「で、でも、この…… カマキリさん、わ、私をチカンから助けてくれたんです!」
 あら、それは予想外。
 では、さっきの悲鳴は痴漢相手に? それとも助けられた後この蟷螂怪人を見て?
 後者の可能性は高そうですね。こんなのを見てら、悲鳴の一つも上げるというものですね。
「え? そうなんですか? これは私の勘違いですか。すいません、つい怪人の方と…… って、毒電波遮断怪人と名乗られてますよね」
 やっぱり今までの怪人とは、どこか違いそうですね。
 気を引き締めていかないといけませんね。
「フッ、その娘を助けたのはただの気の迷いさ。私は雄が嫌いなだけだ!」
「その点についてだけは同意ですね」
 全くです。この世のすべての男とは言いませんが、私の周辺の男だけでも死滅してくれませんかね。
 少なくとも私の周辺にはいらないんですよ、まったく。
「フフ、なんだか気が合いそうな敵だわね」
 そう言って、恐らくですけど、マダムマンティスは笑っているようですね。
「それはどうでしょうか。いささか早計だとは思いますけれども。っと、とりあえず、あなたは早く去りなさい」
「そうよ。もうこんな暗い中を一人で歩いちゃだめよ」
「は、はい!」
 そう言って襲われていたと思った娘は立ち上がり公園の出口へと駆けて行きました。
 これで一安心ですね。
「さて、一応聞きますけれども、戦うんですよね、私達?」
 怪人は怪人らしいですけど、人助けしてくれていたようですし、確認くらいはしてあげないと失礼ですよね。
 もう不意打ちをしてしまいましたが、かわされているので問題ないですよね。
「当たり前じゃない。私はその為にここに来たのだから」
 ここ、ここですか。
 なるほど。
 やはり場所をある程度、特定されているのですか?
「ここ…… ですか」
 現場に駆けつける時間からですかね? それにしてはえらく正確に特定されたことですこと。
 特に制服目当てで襲っていたわけでもないですし、まだまだ身バレまでは遠そうですわね。
 と、安易には考えれないですが、場所だけならどうにでもなりますしね。
 もうしばらく魔法少女を、私の楽園を楽しめるというものです。
 決して私の日常生活と引き換えにできるものではないですが、それでもこの楽園は、私にとってとても甘美なものですので。
「なにぃ? 身バレが怖いのかしら?」
 この蟷螂はやっぱり挑発しているのかしらね?
「そうですわね、この歳で魔法少女趣味というものがバレたら社会的に…… というほどの年齢ではありませんけれども、いささか恥ずかしいのは恥ずかしいですので」
 まあ、そうですね。学校では優等生で通っている私が、魔法少女好きの同性愛者ってバレたら色々と学校生活に支障がありますものね。
 それでも、今までの怪人や戦闘員なら、ほぼギャグ要員でしたのでそれほど危険視してませんでしたが。
 このマダムのような怪人がこれから現れるというのであれば、少し警戒しないといけませんね。
「まあ、あなたには恨みはないですけど、倒させてもらうわ! そうすれば私は自由の身! 思う存分、雄どもを殺して回れるというものよ!」
 そう言って、マダムマンティスは鎌をやたらめったに振りまくっています。
 けど、それには私も同意ですよ。
「まあまあ、それなら、別に止めませんよ。私を通さずやってください」
 私は本気で止めませんよ?
 男が襲われるだけであるのであれば。
 今だって若い女性の声が聞こえたから駆けつけただけですし、それにまだケイジュからの依頼でもありませんしね。
 そちらはいずれ来るのでしょうけれども。
「あなた本当に魔法少女?」
「別に正義の味方でもないのですので。私は美少女の味方なだけですし」
 本当に目的がそれであるのであれば、個人的にはものすごく見逃してあげたいんですが。
 相手は私狙いのようですし、そうもいかないのかしらね。
「あなた、もしや中身、雄なのかい?」
 なんでそう言う思考になるのかしら、やはり虫は虫ですね。
「まさか! 私が男に生まれていたら、きっと狂い死んでいたことでしょうね。私はただ単に女好きな女、自分が女であることに喜びを感じ、愛する者もまた女、というだけですので」
「そう、やっぱり合うんじゃないのかしらね、私達……」
 そう言いつつもマダムは鎌を構えて臨戦態勢ですわね。
「あなたが人間で生まれてくれていたらそうかもしれませんわね。ですが、私の趣味嗜好は人間の女だけに絞られます。コスプレなんかは良いんですが獣人とか、私からすれば興が削がれるだけですので」
 別に獣人好きの方々に喧嘩を売っているわけじゃないですけどね。
 私個人の趣味で混じり物には余りときめかないんですよね。なので、蟷螂その物のこの方も論外なんですよね。
「では私は専門外ってわけね」
「そうですね。要は趣味じゃないです」
 あとついでにマダムってところもダメですね。
 人の物には、特に一度でも男の物になった女なんて興味ないですよ。
「私はあなたみたいな娘、嫌いじゃないわよ。でも、殺し合わないと駄目なようね」
「見たいですわね」
 そう言って私は構える。
 構えたところで何の意味はないけれども。牽制くらいにはなるかもしれませんわね。
 しかし、相手は不意打ちの私の魔法を易々とかわして見せた強敵です。
 その上、こちらのおおよその居場所、生活エリアとでも言いますか、それがバレているということは、他の人達の大体の場所がバレている可能性もありますわね。
 つまり援軍も期待できない、恐らくは個別撃破を狙ってきている? ということかもしれませんね。
 となると、美咲ちゃんが気になりますわね。他の方は恐らく大丈夫なのでしょうけど。



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