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完全無欠の竜と神ならぬ春の来訪神
【Proceedings.79】完全無欠の竜と神ならぬ春の来訪神.02
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とても不思議な感覚だ。
二人は階段を上がって来たはずなのだ。
だが、振り返るとそこにあるのもやはり上り階段なのだ。
階段を登っているはずなのに、階段は下へ向かっている。
まるでだまし絵の中の階段を登っている気分だ。
そんなことはどうでもいいことでもある。
二人の眼下に島がある。
緑あふれた色鮮やかな美しくも小さな島だ。
とても水底に沈んでいた物とは思えない島だ。
植物が緑に生い茂り、地には様々な色の花が咲き誇る。
鳥居があり、その先に社がある。
どこも手入れされており、まるで島そのものが庭園のような島。
ここが水底に沈んでいたとは思えない。
そんな島が、登っていく階段の下、二人の眼下にあるのだ。
「ここが…… 神のいる島ですか」
申渡月子が何とも言えない顔をして、その島を見つめる。
神秘的でありながら、どこか作られた美しさを持つ島だ。
アクアリウムの中の島、美しすぎてそんな印象を受ける。
造られた水槽の中、水の中にあるライトアップされた島を模した、ただの飾りのような、そんな感じのする島なのだ。
だが、美しいことは確かだが、どこか、それを指摘できはしないのだが違和感がある。そんな島だ。
「本当はね、月子には危険だから、ここで待っていて欲しいんだけども」
神との争いごとに申渡月子を巻き込みたくはない。
天辰葵はそう考えてはいるのだが、そう上手くいく話ではない。
「ここまで来たら最後までお供させてください。それに姉のことも確かめなくてはなりません」
だが、申渡月子も覚悟を決めてこの場にいる。
このあと、どうなろうとも姉の行方だけは確かめておかねばならない、申渡月子にはその覚悟が出来ている。
「まあ、そうだよね。それに恐らく二人一組でないと神には会えないからね」
天辰葵も申渡月子のその覚悟を尊重する。
それに、確証はないのだが神に会うには、申渡月子と一緒でなければならない。
正確には、絶対少女とそのデュエルアソーシエイト。
その両方が揃わなければ、神に会うことはできない。
儀式的に言えば、贄と巫女だ。
この場合、天辰葵が贄であり、申渡月子がその贄を神に差し出すための巫女だ。
それもこれも、用意された儀式の、この世界を取り巻くルールなのだろう。
「そうなのですか?」
と、不思議そうに申渡月子は天辰葵に聞く。
申渡月子自体は余り理解できてない。
「恐らくは…… だけれども、きっとそういうものなんだ。デュエルも、女二人で、贄と巫女が二人であの島へ行くのも。祭りの行事の一つなんだよ」
そう、これも儀式の一つの内なのだ。
神に御目通りするために、必要な行事なのだ。
そうしなければ神は現れない。
神に会うための手順。
だから、戌亥道明は、そして、未来望も、いくらデュエルで優勝しようとも、神に会う事すらできないでいた。
男では巫女にも贄にもなれない。
ただ、絶対少女議事録によれば、贄は少女、いや、人である必要すらない。
それどころか、花や酒、普通の団子と言った捧げものでも問題ない、そのはずなのだ。
いつからか、それが狂ってか、贄に少女を求めるようになったようだが。
「だから、会長は絶対少女になれなかったのですか?」
申渡月子もここへ来てやっと、そのことが理解できた。
たとえデュエルで優勝しても、神に会えないのであれば、その願いは叶えてもらえない。
絶対少女にはなれない、ということだ。
そうして、会長こと戌亥道明が優勝しても、デュエルの開始前に、記憶と時が巻き戻るだけで、この世界では何事もなかったかのようにデュエルが再び開催されるだけだ。
「そうだね」
「な、なるほど…… 納得はできませんが、葵が言うのであれば信じます」
ただ、それでも申渡月子からすると、その話は荒唐無稽な話なのだ。
デュエルも、絶対少女も、願い事が叶うという事も、申渡月子からすれば当然のことで常識の事だった。
それが非常識な事で神の御業だった、と、いきなり言われても信じ切れるものではない。
ものではない、のだけれども、今の申渡月子は天辰葵の言葉を信じているし、現状的に天辰葵が言っている言葉はより真実に思える。
それに、最愛の者となった天辰葵の言葉であれば、なによりも信じるつもりでいる。
その覚悟と決心を強く決めている。
「普通なら、池の水底から闘技場やらあんな島が浮上して来たら、驚くものなんだけどね。やはりここの強制力はかなり強い」
天辰葵も決意に満ちた申渡月子の顔に頼もしさを感じる。
また、彼女が居ればたとえ神相手でも負けない自信がある。
彼女が居れば、不可能も可能にできる、そう思えて来る。
それと同時に、この学園にかけられた強制力の力に、天辰葵は驚いてもいる。
学園の外でも大変なことになっているのに、この学園でもデュエルと言う馬鹿げた物を全校生徒が疑いなく信じている。
とてつもない強制力を持っている。
それはつまり、これから会う神はとんでもなく強い力を持った神と言うことでもある。
そんな神に勝てるのかどうか、流石の天辰葵も緊張せざる得ないほどだ。
「そう…… ですよね。よくよく考えるとおかしいですよね……」
ただ、申渡月子も天辰葵に言われ、強制力に多少なりとも抗えているところがある。
今まで常識だと信じ込んでいたいたものが、確かに変なことであると、異常な事であると、そう感じる様になってきている。
ふと天辰葵がなにかを感じ取る。
その視線の先には綺麗に並んだ柱がある。
その上に何か人影が見える。
それは石像だ。少女の像であり、それは普段、いついかなる時も逆光となりその姿を見ることはできなかったものだ。
「あっ、ほら見て、石像がある……」
「ほんとう、少女の像ですね、柱の上に…… もしかして……」
と、二人がその正体を口にしようとしたときだ。
その少女の石像から、像の口から一斉に歌が聞こえ始める。
「参拝参拝参拝参拝! その時が来たー!」
「参拝参拝参拝参拝! 今こそ願いが叶う時が来たー!」
「参拝参拝参拝参拝! 神に捧げる時が来たー」
唐突にそんな歌が、合唱が聞こえてくる。
その歌声は柱の上にある数々の少女の像から聞こえてくるのだ。
「この像が歌っていたのか」
天辰葵は逆光となり見えなかった円形闘技場少女合唱団の正体を、今、この場で二人は知る。
像の口にスピーカーを仕込んでいるのか、神がかり的なもので奇跡なのか、それはわからないが像自体は、円形闘技場少女合唱団自体は、敵ではないようだ。
ただ、神に捧げる歌を延々と歌い続けるためだの装置でしかない。
「この像が、円形闘技場少女合唱団だったのですか…… この像たちが?」
流石に申渡月子もその異常さに気づく。
今まで生徒だと、合唱団だとそう考えてた申渡月子にとって、それが、あの歌声の主が石像だったことは申渡月子にとっては衝撃的な事だ。
「祝詞と言うわけでもないし、ほんと何なんだこの歌は……」
天辰葵はいぶかしむ。
この歌自体に何か力があるわけではない。
強制力の一部と言う訳でもない。
ただの舞台装置に過ぎない、本当になんらかわらない装置でしかない。
こんなことを神がする理由は天辰葵にもわからない。
もしかすると、これらの石像たちも儀式の一部なのかもしれないが、それにしてはこの歌にはなんの力も持っていない。
そのことが、天辰葵からすると、とても不可解なのだ。
「つっ……」
申渡月子が頭痛を感じ頭を押さえる。
円形闘技場少女合唱団が石像だと知って知ったことに対する強制力が働いているのかもしれない。
いや、そうではない。
円形闘技場少女合唱団が石像だと知っていても強制力は働かない。
それがおかしなことであると、非常識な事であると、考え出して初めて強制力が働き出しているのだ。
天辰葵はそのことに気が付き、
「月子はあまり深く考えこまないで、月子にはここの強制力はまだ辛いからね」
と、優しく声をかける。
考えなければ、強制力も働きはしない。
「でも……」
と、申渡月子は、これから神と対峙するのに、その強制力と真っ向から対峙するように気高く立ち上がろうとする。
「大丈夫、私が全て解決させるから」
更に天辰葵は申渡月子に優しく声をかける。
「それでは……」
いつまでたっても天辰葵の役に立てるようにはなれない。
そう思いつつも、申渡月子は強制力により言葉を続けることはできない。
激しい頭痛が何もかもを塗りつぶしていく。
「月子は私に刀を貸してくれればいいよ。私も刀がなければ何もできないからね。月子が居なければ木刀でも探し出して、それで神と対峙するつもりだったよ」
冗談か本気なのか。
天辰葵はそう言って申渡月子に笑いかける。
それを聞いた申渡月子も、流石に木刀で神に立ち向かわせるわけにはいかないと、深く考えるのを止める。
「はっ、はい…… 協力は惜しみません。けれど、わたくしに出来ることがあれば、もっと言ってください」
申渡月子はそう言って、天辰葵の言う通り深く考えることを止めた。
「なら、神を倒してこの学園を開放したら……」
天辰葵は申渡月子と見つめ合いながら、その言葉を濁す。
いつものように気軽に、勝つよ、とは言えない。
これから戦う相手は神なのだ。
天辰葵とて、約束などできるわけはない。
「したら?」
そのことは申渡月子もわかている。
わかっていながらも、その続きの言葉を申渡月子は聞きたいのだ。
「その時にまた、改めて色々と頼むよ。一緒に色々しようよ、今度は現実の世界でね、月子」
天辰葵はその言葉を噛み締める。
今考えている妄想を、申渡月子との妄想を、めくるめく妄想を実現のものとするとために、天辰葵はやる気を漲らせる。
「はい……」
そして、その時はどんな要望でも応じるつもりで申渡月子も返事をする。
━【次回議事録予告-Proceedings.80-】━━━━━━━
神の社。
そこに待受けるものは、やはり神なのか。
それとも…… また別の何かなのか。
━次回、完全無欠の竜と神ならぬ春の来訪神.03━━━
二人は階段を上がって来たはずなのだ。
だが、振り返るとそこにあるのもやはり上り階段なのだ。
階段を登っているはずなのに、階段は下へ向かっている。
まるでだまし絵の中の階段を登っている気分だ。
そんなことはどうでもいいことでもある。
二人の眼下に島がある。
緑あふれた色鮮やかな美しくも小さな島だ。
とても水底に沈んでいた物とは思えない島だ。
植物が緑に生い茂り、地には様々な色の花が咲き誇る。
鳥居があり、その先に社がある。
どこも手入れされており、まるで島そのものが庭園のような島。
ここが水底に沈んでいたとは思えない。
そんな島が、登っていく階段の下、二人の眼下にあるのだ。
「ここが…… 神のいる島ですか」
申渡月子が何とも言えない顔をして、その島を見つめる。
神秘的でありながら、どこか作られた美しさを持つ島だ。
アクアリウムの中の島、美しすぎてそんな印象を受ける。
造られた水槽の中、水の中にあるライトアップされた島を模した、ただの飾りのような、そんな感じのする島なのだ。
だが、美しいことは確かだが、どこか、それを指摘できはしないのだが違和感がある。そんな島だ。
「本当はね、月子には危険だから、ここで待っていて欲しいんだけども」
神との争いごとに申渡月子を巻き込みたくはない。
天辰葵はそう考えてはいるのだが、そう上手くいく話ではない。
「ここまで来たら最後までお供させてください。それに姉のことも確かめなくてはなりません」
だが、申渡月子も覚悟を決めてこの場にいる。
このあと、どうなろうとも姉の行方だけは確かめておかねばならない、申渡月子にはその覚悟が出来ている。
「まあ、そうだよね。それに恐らく二人一組でないと神には会えないからね」
天辰葵も申渡月子のその覚悟を尊重する。
それに、確証はないのだが神に会うには、申渡月子と一緒でなければならない。
正確には、絶対少女とそのデュエルアソーシエイト。
その両方が揃わなければ、神に会うことはできない。
儀式的に言えば、贄と巫女だ。
この場合、天辰葵が贄であり、申渡月子がその贄を神に差し出すための巫女だ。
それもこれも、用意された儀式の、この世界を取り巻くルールなのだろう。
「そうなのですか?」
と、不思議そうに申渡月子は天辰葵に聞く。
申渡月子自体は余り理解できてない。
「恐らくは…… だけれども、きっとそういうものなんだ。デュエルも、女二人で、贄と巫女が二人であの島へ行くのも。祭りの行事の一つなんだよ」
そう、これも儀式の一つの内なのだ。
神に御目通りするために、必要な行事なのだ。
そうしなければ神は現れない。
神に会うための手順。
だから、戌亥道明は、そして、未来望も、いくらデュエルで優勝しようとも、神に会う事すらできないでいた。
男では巫女にも贄にもなれない。
ただ、絶対少女議事録によれば、贄は少女、いや、人である必要すらない。
それどころか、花や酒、普通の団子と言った捧げものでも問題ない、そのはずなのだ。
いつからか、それが狂ってか、贄に少女を求めるようになったようだが。
「だから、会長は絶対少女になれなかったのですか?」
申渡月子もここへ来てやっと、そのことが理解できた。
たとえデュエルで優勝しても、神に会えないのであれば、その願いは叶えてもらえない。
絶対少女にはなれない、ということだ。
そうして、会長こと戌亥道明が優勝しても、デュエルの開始前に、記憶と時が巻き戻るだけで、この世界では何事もなかったかのようにデュエルが再び開催されるだけだ。
「そうだね」
「な、なるほど…… 納得はできませんが、葵が言うのであれば信じます」
ただ、それでも申渡月子からすると、その話は荒唐無稽な話なのだ。
デュエルも、絶対少女も、願い事が叶うという事も、申渡月子からすれば当然のことで常識の事だった。
それが非常識な事で神の御業だった、と、いきなり言われても信じ切れるものではない。
ものではない、のだけれども、今の申渡月子は天辰葵の言葉を信じているし、現状的に天辰葵が言っている言葉はより真実に思える。
それに、最愛の者となった天辰葵の言葉であれば、なによりも信じるつもりでいる。
その覚悟と決心を強く決めている。
「普通なら、池の水底から闘技場やらあんな島が浮上して来たら、驚くものなんだけどね。やはりここの強制力はかなり強い」
天辰葵も決意に満ちた申渡月子の顔に頼もしさを感じる。
また、彼女が居ればたとえ神相手でも負けない自信がある。
彼女が居れば、不可能も可能にできる、そう思えて来る。
それと同時に、この学園にかけられた強制力の力に、天辰葵は驚いてもいる。
学園の外でも大変なことになっているのに、この学園でもデュエルと言う馬鹿げた物を全校生徒が疑いなく信じている。
とてつもない強制力を持っている。
それはつまり、これから会う神はとんでもなく強い力を持った神と言うことでもある。
そんな神に勝てるのかどうか、流石の天辰葵も緊張せざる得ないほどだ。
「そう…… ですよね。よくよく考えるとおかしいですよね……」
ただ、申渡月子も天辰葵に言われ、強制力に多少なりとも抗えているところがある。
今まで常識だと信じ込んでいたいたものが、確かに変なことであると、異常な事であると、そう感じる様になってきている。
ふと天辰葵がなにかを感じ取る。
その視線の先には綺麗に並んだ柱がある。
その上に何か人影が見える。
それは石像だ。少女の像であり、それは普段、いついかなる時も逆光となりその姿を見ることはできなかったものだ。
「あっ、ほら見て、石像がある……」
「ほんとう、少女の像ですね、柱の上に…… もしかして……」
と、二人がその正体を口にしようとしたときだ。
その少女の石像から、像の口から一斉に歌が聞こえ始める。
「参拝参拝参拝参拝! その時が来たー!」
「参拝参拝参拝参拝! 今こそ願いが叶う時が来たー!」
「参拝参拝参拝参拝! 神に捧げる時が来たー」
唐突にそんな歌が、合唱が聞こえてくる。
その歌声は柱の上にある数々の少女の像から聞こえてくるのだ。
「この像が歌っていたのか」
天辰葵は逆光となり見えなかった円形闘技場少女合唱団の正体を、今、この場で二人は知る。
像の口にスピーカーを仕込んでいるのか、神がかり的なもので奇跡なのか、それはわからないが像自体は、円形闘技場少女合唱団自体は、敵ではないようだ。
ただ、神に捧げる歌を延々と歌い続けるためだの装置でしかない。
「この像が、円形闘技場少女合唱団だったのですか…… この像たちが?」
流石に申渡月子もその異常さに気づく。
今まで生徒だと、合唱団だとそう考えてた申渡月子にとって、それが、あの歌声の主が石像だったことは申渡月子にとっては衝撃的な事だ。
「祝詞と言うわけでもないし、ほんと何なんだこの歌は……」
天辰葵はいぶかしむ。
この歌自体に何か力があるわけではない。
強制力の一部と言う訳でもない。
ただの舞台装置に過ぎない、本当になんらかわらない装置でしかない。
こんなことを神がする理由は天辰葵にもわからない。
もしかすると、これらの石像たちも儀式の一部なのかもしれないが、それにしてはこの歌にはなんの力も持っていない。
そのことが、天辰葵からすると、とても不可解なのだ。
「つっ……」
申渡月子が頭痛を感じ頭を押さえる。
円形闘技場少女合唱団が石像だと知って知ったことに対する強制力が働いているのかもしれない。
いや、そうではない。
円形闘技場少女合唱団が石像だと知っていても強制力は働かない。
それがおかしなことであると、非常識な事であると、考え出して初めて強制力が働き出しているのだ。
天辰葵はそのことに気が付き、
「月子はあまり深く考えこまないで、月子にはここの強制力はまだ辛いからね」
と、優しく声をかける。
考えなければ、強制力も働きはしない。
「でも……」
と、申渡月子は、これから神と対峙するのに、その強制力と真っ向から対峙するように気高く立ち上がろうとする。
「大丈夫、私が全て解決させるから」
更に天辰葵は申渡月子に優しく声をかける。
「それでは……」
いつまでたっても天辰葵の役に立てるようにはなれない。
そう思いつつも、申渡月子は強制力により言葉を続けることはできない。
激しい頭痛が何もかもを塗りつぶしていく。
「月子は私に刀を貸してくれればいいよ。私も刀がなければ何もできないからね。月子が居なければ木刀でも探し出して、それで神と対峙するつもりだったよ」
冗談か本気なのか。
天辰葵はそう言って申渡月子に笑いかける。
それを聞いた申渡月子も、流石に木刀で神に立ち向かわせるわけにはいかないと、深く考えるのを止める。
「はっ、はい…… 協力は惜しみません。けれど、わたくしに出来ることがあれば、もっと言ってください」
申渡月子はそう言って、天辰葵の言う通り深く考えることを止めた。
「なら、神を倒してこの学園を開放したら……」
天辰葵は申渡月子と見つめ合いながら、その言葉を濁す。
いつものように気軽に、勝つよ、とは言えない。
これから戦う相手は神なのだ。
天辰葵とて、約束などできるわけはない。
「したら?」
そのことは申渡月子もわかている。
わかっていながらも、その続きの言葉を申渡月子は聞きたいのだ。
「その時にまた、改めて色々と頼むよ。一緒に色々しようよ、今度は現実の世界でね、月子」
天辰葵はその言葉を噛み締める。
今考えている妄想を、申渡月子との妄想を、めくるめく妄想を実現のものとするとために、天辰葵はやる気を漲らせる。
「はい……」
そして、その時はどんな要望でも応じるつもりで申渡月子も返事をする。
━【次回議事録予告-Proceedings.80-】━━━━━━━
神の社。
そこに待受けるものは、やはり神なのか。
それとも…… また別の何かなのか。
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