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うざ絡む竜と絡みつく孤独の毒蛇
【Proceedings.22】うざ絡む竜と絡みつく孤独の毒蛇.01
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ここは永遠の学園の園、神宮寺学園。
絶対にして完全なる学園。
桜舞う常春の学園。
その学び舎から、姿はどこにも見えないのだが、どこからともなく少女達の噂話が聞こえてくる。
「ねえ、ミエコ、シャベルコ、前回のデュエル凄かったわね、いろんな意味で」
「凄い格好ですしたね、キクコちゃん」
「男同士の熱い友情、そして、愛…… 素晴らしいですね……」
「そう言えばこの学園、異性のカップルより同性カップルのほうが多いんですよね」
「だってこの学園、不純異性交友は禁止されてますが、同性のは禁止されてませんからね」
「そういう問題なんですか?」
「いいじゃない。男は男同士、女は女同士で」
「それはミエコの趣味でしょう?」
「そう言う意味では今回の運命ちゃんも同性を好きになりすぎちゃった困ったちゃんですね」
「でもあの子相手に、ちゃんとデュエルまで行くかしらね?」
「別の意味で楽しみですね」
「「「クスクスクスクス……」」」
「と、言うわけでそろそろ巳之口綾をどうにかしたいと思っている」
戌亥巧観は五目そばを食べる手を止め、月子と葵にそう提案した。
巳之口綾は一言で言うならば申渡月子のストーカーだ。
また巳之口綾は月子を丸呑みしたいと月子本人にも伝えている危険な人物である。
巧観の提案も最もなことだ。
「巧観、それを提案してくれることは嬉しいんですが、わたくしの問題ですので……」
月子はそれをそう言って断る。
巳之口綾の問題は、月子自身がどうにかしなければならない問題だ。
だが、その糸口が今のところない。
「月子の問題なら私の問題でもあるよ」
葵は明太子スパゲッティを食べる手を止める。
葵の唇に、葵の美しくしっとりとした唇に刻みのりを刻みつけながら、葵はそう言ったのだ。
「ああ、もう。そこまで迷惑はかけれませんので」
全く話を聞かない二人に月子は憤りを感じるが、それと共に感謝していることも事実だ。
ただ、それ以上にこれ以上迷惑をかけられない、そう言った気持ちの方が月子は強いのだ。
月子は容易く他人に頼る女ではない。
たとえ自分に手に余ることでも、やれるだけのことは自力でどうにかしようと考えている。
だからこそ、誰からのデュエルも受けない、と言うことで月子は自分の身を守って来ている。
それが月子を孤立させることだとしても、月子は望んでそうなったのだ。
「実際問題として、月子じゃ巳之口綾を捕まえられないだろ? 今のままじゃ話し合いにもならないだろ」
巳之口綾は神出鬼没だ。
物陰から月子をじっと眺め、それ気づき近づくと身を隠し逃げてしまう。
まるで珍獣のような相手だ。
巧観の言う通り、月子ではどうにもならない事もまた事実だ。
ただ最近は月子の周りには葵や巧観が常にいるので、月子も以前ほど恐怖を感じているわけではない。
その点も月子は感謝してもしきれないでいる。
だから、ちょっと変わった二人ではあるが、今も行動を共にしているし、大事な友人だとも考えている。
「それは…… そうですが……」
巧観の言う通り現状は巳之口綾との話し合いにすらならない。
目が合えば即座に逃げてしまうのだから。
何を考えているのかもわからない相手だ。月子もどうしていいかわからないでいることも、また事実なのだ。
「葵なら簡単に捕まえれるだろ? あの神速で」
そこで巧観は葵の神速で捕まえられないか、と提案する。
その言葉に月子でさえ、ハッとする。
たしかに葵の神速なら、巳之口綾を捕まえるのも容易だろう。
葵は常人には知覚できないほどの速度で動くことが出来るのだから。
葵の神速があまりにも常識外れだったため、常識人の月子には思いつかなかった発想だ。
「月子が捕まえてって言うのなら、捕まえるよ?」
葵は得意げに月子の表情を見て、月子の回答を待つ。
未だ唇に刻みのりを付けたまま笑顔で葵は待つ。
「けれど……」
しかし、それでも月子の方も踏ん切りがつかない。
もちろん、月子の中にもこの二人になら多少なら迷惑をかけてもいい、そんな気持ちはある。
それでも月子は自分の問題は自分で解決すべきだと、そう考えている。
それは月子の信念のようなものだ。
そう簡単に変えれる物ではない。
「とりあえず一旦捕まえてでも話し合うべきでは? このままではまずいでしょう? 何をしてくるかわからない相手だし」
迷っていた月子に巧観が言葉をかける。
もっともなことだ。
このままで良いわけはないし、巳之口綾もデュエリストだ。
いずれ葵と戦う運命にあることも事実だ。
「それはそうですね……」
「なら、捕まえよう」
葵がそう言ったと思ったら、月子の目の前から座っていたはずの葵が消えた。
次の瞬間には、巳之口綾の襟首を捕まえて引きずりながら葵が帰って来た。
「葵…… あいつ、なんでもありだな」
巧観が茫然とそんなことを呟いた。
それには月子も同感だった。
「で、巳之口綾! なんでお前は月子を付け狙う」
巧観は無理やり月子の前の席に着つかせ巳之口綾に聞く。
巳之口綾が今座っている席は、元々は葵の席だ。
仕方がないので、葵は明太子スパゲッティを持って月子の隣に座り直す。
「つ、つけ狙って…… なんてない…… わ、わたしは…… ただただ…… 月子様を見ていただけ…… でも、後できれば舐めたい」
綾はたどたどしくそう言った。
ただ、できれば舐めたい、の部分だけ妙に早口だった。
それだけのことだ。
ついでに舌をちょろっと出して、その後、月子を見ながら舌なめずりをした。
「舐め……」
背筋にゾワゾワっと来るものを感じ月子は綾から視線を外した。
逆に葵は綾を、巳之口綾を見る。
ぼさぼさの髪の毛。ギザギザの尖った歯。目の下の厚いクマ。
細長い印象を与えるほど華奢で背も異様に高い。
ついでに非常に猫背だ。
それでいてなお美人の類だ。
葵には綾を見てニッコリを微笑む。
綾は葵に微笑まれて顔を赤くして下を向いた。
だが、そんな葵が口にした言葉はこれだ。
「月子の脚は私のだ。誰にも譲らないよ」
葵は微笑みつつもキリっとした表情を見せてそう断言した。
月子が葵に白い眼を向けるが気にしない。
「わ、わたしは…… 脚だけじゃなくて…… 全身を…… くまなく舐めたい」
綾はそれに対して頬を染め、下を向いて恥ずかしそうにそう言った。
もちろん、くまなく舐めたいの部分だけ異様に早口でだ。
最後に下をチロっと出して素早く舌なめずりをした。
「この学園には変態しかいないんですか!?」
それらを見て月子は大きなため息を吐きだし、そう言った。
生徒会執行団のメンバーは自分の下着を盗み、同室の同居人は口を開けば、脚、脚、脚、それと尻枕を望み、更にストーカーは全身を舐めたいと言ってくる。
月子が嘆きたくなるのももっともなことで当然の権利だ。
「月子…… それは愚問だよ」
それに対して巧観が、当然だよ、という顔をしてそう言った。
月子の美しい顔が歪む。確かに歪んだ。
ここはそう言う学園だったのだと、月子は心から嘆いた。
「そうでしたね、生徒会執行団の書記からして下着を盗むような変態でしたもんね」
「グッ……」
月子がそう言うと巧観は苦しそうに顔をしかめた。
そう、この学園には美男美女しかいないのだが、どういう訳かみんな一癖も二癖もある人間ばかりが集められている。
「巧観…… 君が月子に嫌われた理由ってそれか……」
葵がそう言って納得し、
「月子様の下着を!? な、なんて、破廉恥な!」
と、綾がそう言って舌をチロっと出した。
「貴女が、いえ、貴女方が言わないでください……」
月子がため息交じりにそう言うと、
「はい……」
と、綾は以外にも、その言葉に素直にそう言った。
「あれ、意外と話ができる?」
それを見ていた巧観が少し驚く。
巧観的には話の通じない人間だと思っていたが、実際に話してみた巳之口綾は問題はあるが話は通じる感じがする。
特に月子の話には割と従順なようにすら思える。
なんなら相手を重んじ話を聞くようでまるで話を聞かない葵よりも、ましにすら思えてしまう。
「なんで今までは逃げてたの?」
と、葵が綾に微笑みかける。
「て、照れ臭かった…… ので……」
それに対して綾はそう言って頬を染め俯いた。
綾が嘘を付いているようには見えなかった。
というか、その受け答えですら、いっぱいいっぱいで嘘などつく余裕すらないように感じる。
「それだけなんですか?」
月子が驚いたようにそう聞き返す。
「はい……」
と、綾は月子に話しかけられ嬉しそうに答える。
ついでに舌を出して舌なめずりもする。
綾の舌なめずりは、もう癖のような物だろうと月子は思うことにした。
たぶん、気にしても仕方がないことだ。
「普通に話しかけてくれれば……」
舌なめずりには若干引きつつも月子はそう言って巳之口綾を見る。
物陰からこっそり見られているから怖いのであって、こうやって真正面から見れば、それほどは怖くはない、と理解できた。
恐らくは癖だと思われる舌なめずりのことは置いておいてだが。
理解できないから怖いのであって、普通の人間であるのであれば、月子は意味もなく邪険にするような人間でも、偏見を持つような人間でもない。
それに最近似たような人間が、自分の同居人となっているので今更感が強い。
「キミはなんで月子にそんな執着を?」
葵がやはり微笑みかけてそう聞く。
「葵様もですけどね? それは?」
と、月子がまず突っ込む。
それに葵は微笑んで返すだけだ。
月子も言わなくてもどうせ脚なんでしょう? という顔で返す。
「わ、わたしに…… 話しかけて…… くれたから……」
おずおずと綾はそう言って月子を上目遣いで見て頬を赤く染める。
そして、やはりその長い舌で舌なめずりをする。
だが、月子の記憶にそんな記憶はない。
いや、あったのかもしれないが、それは月子にとってとても些細なことだったのかもしれない。
「なら、これからは私と巧観もキミの友達だよね」
そんな綾を見て葵は微笑みかけそう言った。
「と、友達……」
という言葉に綾は嬉しそうに頬を染める。
綾の生気のない目に、希望の光がともり始める。
「おい、勝手に…… ま、まあ、いいけど」
巧観も一瞬反論しようとはしたが、よくよく考えた結果自分も友達が少ないので悪い話ではないと思い改める。
「そんなわけで月子のストーカはやめて私のストーカーになりなよ。私は責められるも求められるのも大好きだから」
葵は微笑んでそう言った。そう言い切った。
「は?」
「え?」
と巧観と月子が声を上げる。
肝心の綾は、
「うーん…… あなたに何も衝動もトキメキも感じないわ。やっぱり月子様が至高! 月子様を舐めたい」
と、少し考えてからそう結論を出した。
「それは同意見だが」
と、綾の発言に葵は大いに同意する。
「同意見だが、じゃないですよ……」
月子はそう言ってやはりため息を吐きだした。
━【次回議事録予告-Proceedings.23-】━━━━━━━
徐々に明かされる巳之口綾の生態。
謎に包まれた彼女の生態とは……
果たして天辰葵はデュエルまでたどり着くことはできるのか?
━次回、うざ絡む竜と絡みつく孤独の毒蛇.02━━━━
絶対にして完全なる学園。
桜舞う常春の学園。
その学び舎から、姿はどこにも見えないのだが、どこからともなく少女達の噂話が聞こえてくる。
「ねえ、ミエコ、シャベルコ、前回のデュエル凄かったわね、いろんな意味で」
「凄い格好ですしたね、キクコちゃん」
「男同士の熱い友情、そして、愛…… 素晴らしいですね……」
「そう言えばこの学園、異性のカップルより同性カップルのほうが多いんですよね」
「だってこの学園、不純異性交友は禁止されてますが、同性のは禁止されてませんからね」
「そういう問題なんですか?」
「いいじゃない。男は男同士、女は女同士で」
「それはミエコの趣味でしょう?」
「そう言う意味では今回の運命ちゃんも同性を好きになりすぎちゃった困ったちゃんですね」
「でもあの子相手に、ちゃんとデュエルまで行くかしらね?」
「別の意味で楽しみですね」
「「「クスクスクスクス……」」」
「と、言うわけでそろそろ巳之口綾をどうにかしたいと思っている」
戌亥巧観は五目そばを食べる手を止め、月子と葵にそう提案した。
巳之口綾は一言で言うならば申渡月子のストーカーだ。
また巳之口綾は月子を丸呑みしたいと月子本人にも伝えている危険な人物である。
巧観の提案も最もなことだ。
「巧観、それを提案してくれることは嬉しいんですが、わたくしの問題ですので……」
月子はそれをそう言って断る。
巳之口綾の問題は、月子自身がどうにかしなければならない問題だ。
だが、その糸口が今のところない。
「月子の問題なら私の問題でもあるよ」
葵は明太子スパゲッティを食べる手を止める。
葵の唇に、葵の美しくしっとりとした唇に刻みのりを刻みつけながら、葵はそう言ったのだ。
「ああ、もう。そこまで迷惑はかけれませんので」
全く話を聞かない二人に月子は憤りを感じるが、それと共に感謝していることも事実だ。
ただ、それ以上にこれ以上迷惑をかけられない、そう言った気持ちの方が月子は強いのだ。
月子は容易く他人に頼る女ではない。
たとえ自分に手に余ることでも、やれるだけのことは自力でどうにかしようと考えている。
だからこそ、誰からのデュエルも受けない、と言うことで月子は自分の身を守って来ている。
それが月子を孤立させることだとしても、月子は望んでそうなったのだ。
「実際問題として、月子じゃ巳之口綾を捕まえられないだろ? 今のままじゃ話し合いにもならないだろ」
巳之口綾は神出鬼没だ。
物陰から月子をじっと眺め、それ気づき近づくと身を隠し逃げてしまう。
まるで珍獣のような相手だ。
巧観の言う通り、月子ではどうにもならない事もまた事実だ。
ただ最近は月子の周りには葵や巧観が常にいるので、月子も以前ほど恐怖を感じているわけではない。
その点も月子は感謝してもしきれないでいる。
だから、ちょっと変わった二人ではあるが、今も行動を共にしているし、大事な友人だとも考えている。
「それは…… そうですが……」
巧観の言う通り現状は巳之口綾との話し合いにすらならない。
目が合えば即座に逃げてしまうのだから。
何を考えているのかもわからない相手だ。月子もどうしていいかわからないでいることも、また事実なのだ。
「葵なら簡単に捕まえれるだろ? あの神速で」
そこで巧観は葵の神速で捕まえられないか、と提案する。
その言葉に月子でさえ、ハッとする。
たしかに葵の神速なら、巳之口綾を捕まえるのも容易だろう。
葵は常人には知覚できないほどの速度で動くことが出来るのだから。
葵の神速があまりにも常識外れだったため、常識人の月子には思いつかなかった発想だ。
「月子が捕まえてって言うのなら、捕まえるよ?」
葵は得意げに月子の表情を見て、月子の回答を待つ。
未だ唇に刻みのりを付けたまま笑顔で葵は待つ。
「けれど……」
しかし、それでも月子の方も踏ん切りがつかない。
もちろん、月子の中にもこの二人になら多少なら迷惑をかけてもいい、そんな気持ちはある。
それでも月子は自分の問題は自分で解決すべきだと、そう考えている。
それは月子の信念のようなものだ。
そう簡単に変えれる物ではない。
「とりあえず一旦捕まえてでも話し合うべきでは? このままではまずいでしょう? 何をしてくるかわからない相手だし」
迷っていた月子に巧観が言葉をかける。
もっともなことだ。
このままで良いわけはないし、巳之口綾もデュエリストだ。
いずれ葵と戦う運命にあることも事実だ。
「それはそうですね……」
「なら、捕まえよう」
葵がそう言ったと思ったら、月子の目の前から座っていたはずの葵が消えた。
次の瞬間には、巳之口綾の襟首を捕まえて引きずりながら葵が帰って来た。
「葵…… あいつ、なんでもありだな」
巧観が茫然とそんなことを呟いた。
それには月子も同感だった。
「で、巳之口綾! なんでお前は月子を付け狙う」
巧観は無理やり月子の前の席に着つかせ巳之口綾に聞く。
巳之口綾が今座っている席は、元々は葵の席だ。
仕方がないので、葵は明太子スパゲッティを持って月子の隣に座り直す。
「つ、つけ狙って…… なんてない…… わ、わたしは…… ただただ…… 月子様を見ていただけ…… でも、後できれば舐めたい」
綾はたどたどしくそう言った。
ただ、できれば舐めたい、の部分だけ妙に早口だった。
それだけのことだ。
ついでに舌をちょろっと出して、その後、月子を見ながら舌なめずりをした。
「舐め……」
背筋にゾワゾワっと来るものを感じ月子は綾から視線を外した。
逆に葵は綾を、巳之口綾を見る。
ぼさぼさの髪の毛。ギザギザの尖った歯。目の下の厚いクマ。
細長い印象を与えるほど華奢で背も異様に高い。
ついでに非常に猫背だ。
それでいてなお美人の類だ。
葵には綾を見てニッコリを微笑む。
綾は葵に微笑まれて顔を赤くして下を向いた。
だが、そんな葵が口にした言葉はこれだ。
「月子の脚は私のだ。誰にも譲らないよ」
葵は微笑みつつもキリっとした表情を見せてそう断言した。
月子が葵に白い眼を向けるが気にしない。
「わ、わたしは…… 脚だけじゃなくて…… 全身を…… くまなく舐めたい」
綾はそれに対して頬を染め、下を向いて恥ずかしそうにそう言った。
もちろん、くまなく舐めたいの部分だけ異様に早口でだ。
最後に下をチロっと出して素早く舌なめずりをした。
「この学園には変態しかいないんですか!?」
それらを見て月子は大きなため息を吐きだし、そう言った。
生徒会執行団のメンバーは自分の下着を盗み、同室の同居人は口を開けば、脚、脚、脚、それと尻枕を望み、更にストーカーは全身を舐めたいと言ってくる。
月子が嘆きたくなるのももっともなことで当然の権利だ。
「月子…… それは愚問だよ」
それに対して巧観が、当然だよ、という顔をしてそう言った。
月子の美しい顔が歪む。確かに歪んだ。
ここはそう言う学園だったのだと、月子は心から嘆いた。
「そうでしたね、生徒会執行団の書記からして下着を盗むような変態でしたもんね」
「グッ……」
月子がそう言うと巧観は苦しそうに顔をしかめた。
そう、この学園には美男美女しかいないのだが、どういう訳かみんな一癖も二癖もある人間ばかりが集められている。
「巧観…… 君が月子に嫌われた理由ってそれか……」
葵がそう言って納得し、
「月子様の下着を!? な、なんて、破廉恥な!」
と、綾がそう言って舌をチロっと出した。
「貴女が、いえ、貴女方が言わないでください……」
月子がため息交じりにそう言うと、
「はい……」
と、綾は以外にも、その言葉に素直にそう言った。
「あれ、意外と話ができる?」
それを見ていた巧観が少し驚く。
巧観的には話の通じない人間だと思っていたが、実際に話してみた巳之口綾は問題はあるが話は通じる感じがする。
特に月子の話には割と従順なようにすら思える。
なんなら相手を重んじ話を聞くようでまるで話を聞かない葵よりも、ましにすら思えてしまう。
「なんで今までは逃げてたの?」
と、葵が綾に微笑みかける。
「て、照れ臭かった…… ので……」
それに対して綾はそう言って頬を染め俯いた。
綾が嘘を付いているようには見えなかった。
というか、その受け答えですら、いっぱいいっぱいで嘘などつく余裕すらないように感じる。
「それだけなんですか?」
月子が驚いたようにそう聞き返す。
「はい……」
と、綾は月子に話しかけられ嬉しそうに答える。
ついでに舌を出して舌なめずりもする。
綾の舌なめずりは、もう癖のような物だろうと月子は思うことにした。
たぶん、気にしても仕方がないことだ。
「普通に話しかけてくれれば……」
舌なめずりには若干引きつつも月子はそう言って巳之口綾を見る。
物陰からこっそり見られているから怖いのであって、こうやって真正面から見れば、それほどは怖くはない、と理解できた。
恐らくは癖だと思われる舌なめずりのことは置いておいてだが。
理解できないから怖いのであって、普通の人間であるのであれば、月子は意味もなく邪険にするような人間でも、偏見を持つような人間でもない。
それに最近似たような人間が、自分の同居人となっているので今更感が強い。
「キミはなんで月子にそんな執着を?」
葵がやはり微笑みかけてそう聞く。
「葵様もですけどね? それは?」
と、月子がまず突っ込む。
それに葵は微笑んで返すだけだ。
月子も言わなくてもどうせ脚なんでしょう? という顔で返す。
「わ、わたしに…… 話しかけて…… くれたから……」
おずおずと綾はそう言って月子を上目遣いで見て頬を赤く染める。
そして、やはりその長い舌で舌なめずりをする。
だが、月子の記憶にそんな記憶はない。
いや、あったのかもしれないが、それは月子にとってとても些細なことだったのかもしれない。
「なら、これからは私と巧観もキミの友達だよね」
そんな綾を見て葵は微笑みかけそう言った。
「と、友達……」
という言葉に綾は嬉しそうに頬を染める。
綾の生気のない目に、希望の光がともり始める。
「おい、勝手に…… ま、まあ、いいけど」
巧観も一瞬反論しようとはしたが、よくよく考えた結果自分も友達が少ないので悪い話ではないと思い改める。
「そんなわけで月子のストーカはやめて私のストーカーになりなよ。私は責められるも求められるのも大好きだから」
葵は微笑んでそう言った。そう言い切った。
「は?」
「え?」
と巧観と月子が声を上げる。
肝心の綾は、
「うーん…… あなたに何も衝動もトキメキも感じないわ。やっぱり月子様が至高! 月子様を舐めたい」
と、少し考えてからそう結論を出した。
「それは同意見だが」
と、綾の発言に葵は大いに同意する。
「同意見だが、じゃないですよ……」
月子はそう言ってやはりため息を吐きだした。
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謎に包まれた彼女の生態とは……
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