絶対少女議事録 ~蟹座の私には、フェチニズムな運命を感じられずにはいられない~

只野誠

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戸惑う竜と執行団その猟犬の遠吠え

【Proceedings.08】戸惑う竜と執行団その猟犬の遠吠え.01

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 ここは永遠の学園の園、神宮寺学園。
 絶対にして完全なる学園。
 桜舞う常春の学園。
 その学び舎から、姿はどこにも見えないのだが、どこからともなく少女達の噂話が聞こえてくる。

「ねえ、ミエコ、シャベルコ、知ってる? とうとうデュエルが再び動きだしたみたいですね。生徒会執行団もこれでやっと動きだしますね」
「そうですね、これからが大変ですね」
「今期は誰が勝つと思いますか? キクコさん、シャベルコさん?」
「やっぱり道明かしらね、一応、あれでも生徒会長だし」
「あの転校生、葵ちゃんはどうかしら? 見どころがあると思いますよ」
「生徒会副会長にして、寅の威を借る寅の団の団長の喜寅さんも強いですよ」
「寅の威を借る寅の団って、要は剣道部でしょう?」
「風紀委員も今は兼ねてますよ、キクコちゃん」
「まあ、何はともあれ、面白くはなりそうですね! これで噂には事欠きませんよ」
「「「クスクスクスクス……」」」



 荘厳な雰囲気の漂う重々しくも静寂でいて神々しい、そんな部屋に黒い皮張りの椅子に深々と腰かけている者達がいる。
 仰々しく重々しく腕を組みすべてを威嚇するように椅子に腰かける者や、葵を仇のように睨む筋肉に包まれた大男もいる。
 とにかく変わった面々が、葵と月子を除いて八名ほどの男女がいる。
 だが、生徒会執行団の書記だったはずの牛来亮の姿はない。
 その中で葵の気を一番引いたのは、バニーガールの恰好をした生徒だ。

 細めではあるが均整の取れたプロポーションで明る色の長い髪と色素の薄い雪のように白い肌。
 それらの要素に黒いバニースーツがとても似合っている。
 そんな魅惑的なバニーガールがなぜか生徒会執行団の部屋にいる。
 脚を組み、惜しげもなくその網タイツごし脚を葵に見せつけている。

 葵はそのバニーガールの網タイツとハイヒールを履いた脚を舐める様に、食い入る様に、凝視している。
 その姿を隣で月子が呆れる様に見ている。
 
「つまり、月子君も葵君も生徒会執行団には入らないと?」
 戌亥道明がそれを確認する。
 葵は今、バニーガールを見ていて、文字通り釘付けとなっているので、月子がその誘いを断ったところだ。
「入る義務はないはずです」
 と、月子がきっぱりともう一度言う。
 月子からしたらこれで何度断ったか、数えるのが億劫になったほどのことだ。
 デュエルリングを持つ者は生徒会執行団に所属するのが通例ではあるが、月子の言う通り義務ではない。
 ただその代わりしつこく何度も勧誘することも禁止されていない。
「それはその通りだ。好きにするがいいさ。では、葵君はどうだい?」
 道明はそう言って深く言及はしない、その代わりに葵に話を振るが、葵は葵でそんな話どころではない。
 葵は今、この学園という学び舎の中にいる一羽の魅惑的な兎に夢中で仕方がないからだ。

「なぜ学園にこんな素敵なバァニィガァルが?」
 その言葉は葵の口から自然と、朝露のようにこぼれ落ちた。
「趣味ですよん」
 と、その魅惑のバニーガールが葵を誘うかのように、葵にウィンクして微笑みかける。
 葵はその場で生唾を飲み込み喉を鳴らす。
「大変良い、とても素晴らしい趣味をお持ちのようですね。お名前は?」
「卯月夜子です。役職はお隣の酉水ちゃんと一緒で会計ですよん」
 そう言って月子は隣に座っている酉水という少女を両手で指さす。
 酉水という少女もかなり制服を着崩しており、ずいぶんと肌色の部分が多い。
 ただ葵にも夜子にも興味はないのか何の反応も示さない。
 ただけだるそうにその場に、大きな椅子の背もたれに全体重を預けて座っているだけだ。
「夜子…… 良い名ですね。月子の次に良い名です!」
 葵が大真面目にそんなことを言う。
 酉水と言う少女も気にはなりはしたが、今はバニーガールの方が葵にとっては重要のようだ。
 隣で完全に呆れかえっている月子にも気づきはしない。

「生徒会執行団に入れば、毎日彼女のバニー姿を見ることができるが?」
 そのやりとりを見ていた道明が葵にそう提案する。
「な、なんという魅惑的な勧誘…… しかし、月子がいないのであれば私も入りません。私は月子の脚線美を観察する使命で忙しいので」
 その言葉に月子は頭痛でもするのか額に手をやるが、葵は今はバニーガールの網タイツの足に夢中で、やはりそのことに気づいていない。

「そうか。なら、好きにするがいいさ」
 道明はそう言って笑った。
 だが、その後ろに、道明の席の後ろに直立不動で立っていた立つ学ランを着た者が前に出てくる。
「他人の脚ばかり見て、失礼だとは思わないのか?」
 学ランを着た生徒、戌亥巧観が葵に向かい鋭く言葉を発し、威嚇するかのように敵意を向けて葵にを睨む。
「キミは?」
 そう言って、葵は視線を巧観へと送る。
 中性的な声だったので葵は反応したが、学ランを来ていたので葵はすぐに興味を失う。
「ボクは戌亥巧観。生徒会執行団の書記が一人だ」
 巧観がそう言い終わるころには、葵の視線は夜子の脚へ、網目と網目の窓から見える、その白い肌という極上の雪景色を堪能する作業に戻っていた。
 苗字が生徒会長と同じで顔もそれとなく似ている。
 聞くまでもなく兄弟なのだろうと葵は一瞬だけ考え、そして、すぐに忘却の彼方へ押しやる。
 それらは葵からすればどうでもいいことだからだ。網タイツをはいた美脚の前に、網目の窓から見える純白の雪景色の前に、まったくの無意味なことでしかない。
 けれど、巧観にはまだ言いたいことがあるのか、一呼吸おいてから、
「そして、キミの隣に申渡月子の幼馴染……」
「腐れ縁です。しかも、犬猿の仲という奴です」
 と、言うが、月子が被せるように割ってはいられ、きっぱりとそう正された。
 そういう行動に出た月子の目は明らかに巧観を拒絶している。
 月子がそう強く出たので葵もやっと網タイツの窓から見る雪景色から意識を離す。

「ふられたようだね、自称幼馴染君。それに月子の脚は私の物だ。誰にも渡さないよ」
 月子の声で葵は正気を取り戻し、葵は月子の前に、月子をかばう様に巧観に対して悠々と立ちはだかる。
「わたくしの脚はわたくしのものです……」
 誰に言うでもなく月子がそう言うが、その言葉を聞いている者はここには誰もいない。

 それに対して、巧観は拳を握りわなわなと手を震わせる。
「こんな変態を野放しにしていいですか、喜寅さん!」
 そして、この中で一番の大男に向かいそう言うが、その猛獣のような大男は大きなため息を吐き出す。
「そうは言うが巧観よ。それを言ったら、お前も含めてここにいる過半数を取り締まらなければならない。そうなるぞ」
 大男、寅の威を借る寅の団の団長にして、生徒会副会長の喜寅景清はそうきっぱりと断言した。
 そして、ここにいる数人の生徒会執行団の役員達は視線をあらぬ方向へと向ける。
 何かしらの思い当たる節はあるのかもしれない。

「それは…… 否定できませんが……」
 巧観も心当たりがあるのか、そう言って目を伏せる事しかできなかった。
 その隙を月子がつく。
「では、顔合わせも済んだことでしょうし、わたくしはこれで……」
「これで」
 月子がそう言ったので、葵はそれに従い、月子を連れて、名残惜しそうに夜子のバニー姿を見ながら生徒会執行団室を出て行った。
 その様子を戊亥巧観は犬歯を見せながら唸るように見ていた。

 戊亥巧観。
 生徒会執行団、書記が一人。
 双子座で誕生日は五月二十八日。B型である。
 申渡月子とは幼馴染だが喧嘩ばかりで犬猿の仲である。
 そして、喧嘩ばかり、いや、月子に絡む理由は、巧観は月子に対し明確な恋心を抱いているからだ。

 ついでにだが、戊亥巧観は戊亥道明の妹である。



━【次回議事録予告-Proceedings.09-】━━━━━━━


 巧観は葵に敵意を向け吼える。
 巧観が月子に拒絶された訳とは?
 それとはまた別にこの学園の秘密がまた一つ明らかになる。


━次回、戸惑う竜と執行団その猟犬の遠吠え.02━━━━
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▼【作品集】

▽【連載中】
学院の魔女の日常的非日常
ミアという少女を中心に物語は徐々に進んでいくお話。
※最初のほうは読み難いかもしれません。


それなりに怖い話。
さっくり読める。


絶対少女議事録
少女と少女が出会い運命が動き出した結果、足を舐めるお話。



▽【完結済み】

一般人ですけどコスプレしてバイト感覚で魔法少女やってます
十一万字程度、三十三話
五人の魔法少女の物語。
最初から最後までコメディ。


四十二歳の冴えない男が、恋をして、愛を知る。
八万字程度、四十一話
田沼という男が恋を知り、そしてやがて愛を知る。


竜狩り奇譚
八万字程度、十六話
見どころは、最後の竜戦。


幼馴染が俺以外の奴と同棲を始めていた
タイトルの通り。
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