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天舞う完全無欠の竜と地を這う暴れ馬
【Proceedings.04】天舞う完全無欠の竜と地を這う暴れ馬.04
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悔しそうな顔を見せた月子は、意を決して口を開く。
「そう言う牛来様は天辰様相手に、初心者狩りをする気なのでしょう?」
月子がそう言い亮を強く睨む。
「月子!」
そこへ葵が少し怪訝そうに反応する。
「な、なんですか?」
葵に怪訝そうに反応され、少し驚く月子だが、
「そこは、葵と、葵と呼び捨ててくれませんか?」
と、葵に言われて、いや、乞われて、何とも言えない表情を見せる。
同時に外見は完璧な美少女なのに理解しがたい中身の葵に、月子はどう反応していいかすらわからない。
「呼ぶのはともかく捨てるのは意味が分からないのですが?」
とりあえず月子はそう言ってみせるが、葵がその言葉に反応するよりも早く亮が割り込んでくる。
いや、この話に限ればだが、元々は葵が割り込んで来ただけなのだが。
「ハハッ、この僕が初心者狩りだって? それは違うよ。僕は…… そうだね、レクチャー、そうレクチャー係さ。決闘者、デュエリストとしての厳しさのね」
そう言って亮は微笑んだ。
そして、その笑みを歪ませて、天辰葵という美少女を舐める様に見る。
その視線を受け、葵はまず鼻で笑い飛ばす。
「ああ、チュートリアルのやられ役って奴ですね」
葵は余裕の表情を見せる。
だが、葵はわかっていない。
このデュエルという決闘がいかなるものなのかを。
「ほう、この僕相手に随分と生意気な口をきくじゃぁないか?」
亮も笑みを浮かべたままではあるが、青筋を立て葵を睨む。
「天辰様もやめてください。下手に挑発に乗らないでください」
月子はこのままではまずいと判断し、話に割って入る。
だが、
「寧ろ私は月子に決闘を、愛の告白という名の決闘を申し込みたいのですが?」
葵に見つめられ、そして、そう言われて白羽の矢まで立てられてしまう。
月子は背筋に虫唾が走るのを確かに感じた。
見た目は完璧な美少女なのに中身が、なんというか素晴らしく残念だ。
下半身が好きと言っていたので、なんとなく月子はすぐに両足をピタっと閉じるくらいの嫌悪感を既に感じている。
「ほう、この牛来亮は眼中にないと言う訳か?」
そのやり取りを見て牛来亮は耐え難いような、苦悩の表情を見せる。
自信家の亮としては、葵のその対応は許せるものではない。
「つまり、亮のデュエルアソーシエイトは、この我、丑久保修というわけだな!?」
唐突に。
本当に唐突に筋肉の塊のような大男が牛来亮の背後にぬるりと現れた。
その男は腕を組み牛来亮の席の真後ろに仁王立ちしている。
そして、その大男も当然とばかりに左手の薬指にデュエルリングがはめられている。
「誰? そしてなに?」
急な男の登場に葵が怪訝そうにそう月子に聞いた。
月子が次から次へと起こる訳も分からない出来事に、ちょっとした癇癪を起してからも葵に答えてやる。
「えっと、ああっ、もう! 彼は名乗っていた通りの丑久保様で、寅の威を借る寅の団のもう一人の副団長です。そして、生徒会執行部の体育団長でもあります」
「紹介ご苦労、申渡」
丑久保修は、亮とは違う本当に良いさわやかな笑顔でそう言った。
その笑顔はただの感謝であり、牛来亮のような何か企んでいる含みを全く感じない。
ある意味、申渡月子に全く興味がないと言った感じさえする。
「で、デュエルアソーシエイトというのは?」
葵がそう聞くと、
「決闘を、決闘者の手助けをするパートナーのようなものです」
と、月子が答えるが、何とも言えない顔をしている。
このままでは葵は、牛来亮によりひどい目にあうことは目に見えている。
少しばかり、いや、かなり残念な中身の美少女ではあるが、助けられた恩が月子にはある。
このまま見過ぎすわけにもいかない。
「なら私のデュエルアソーシエイトとやらは月子だね」
月子はもし葵が決闘に挑むであるのであれば、初めからそのつもりでいたが面と向かって言われると逆に悩むところではある。
ただ月子としては、葵に決闘をして欲しくはないし、自分も決闘には関わりたくない。
「本当に決闘するつもりですか? わたくしは止めましたよ?」
最後にも一度確認する。
恐らく葵という少女は…… と考えて、暴れ馬に襲われた時のことを月子は思い出す。
どうやってあの暴れ馬を止めたかわからないが、それができるのであれば、チャンスくらいあるのかもしれない、と思い返す。
だが、それで勝てるほど牛来亮は甘くはない。彼とて歴戦のデュエリストだ。
それに月子は今まで決闘を徹底的に避けて来た。
それは徹底され、デュエルアソーシエイトという立場すら、すべて断って来ている。
それだけにデュエルアソーシエイトとして自分にどんな力が眠っているのか、本当に葵の力になれるのか、それすらわからないでいる。
「だって、負ける気しないもの」
そう言って、葵は月子の気持ちも知らずに亮を見下すように仰け反っている。
亮は自信家として有名だが、葵もそれに負けてはいないようだ。
「だから、僕を……」
亮が葵に言い返そうとしたその時、修が、筋肉に覆われた大男である丑久保修がすべてをかき消す大声で割って入る。
「オイ! 新入生! 貴様! 我の牛来を! 我の亮を! 小馬鹿にぃ、するなぁ!!」
その大声をまともに受けた亮はその場で耳を抑える。
「小馬鹿にしたつもりはないよ。ただ事実を述べただけさ」
葵はそう言って、修も相手にもしない。
決闘のことを喧嘩かなにかと葵は思っているのかもしれないが、この学園の決闘はそんなものではない。
そういった次元のものではないのだ。
「フン、亮よ、見せてやろうではないか、我らが筋肉と友情パワーを!」
そう言って修は自慢の筋肉を学ランの上からミシミシと収縮させ葵を威嚇する。
「勝手に話を薦めないでくれ、修。まあ、いいが。そうだな…… 僕が勝ったら天辰さんには飽きるまで僕の彼女になってもらおうかな?」
亮はそう言って嫌な笑みを浮かべる。
が、
「ハァ? 何を言っている! 亮よ! お前には我がいるじぁあないかぁ!」
と、真っ先に修が、服越しの筋肉を見せつけながら丑久保修が反応する。
「おまえは男だろ。修よ」
それに慣れているかのように、動揺せずに亮は答える。
「ぬぅ……」
と、修は唸り黙り込む。
「え? 何この人達」
と、葵が奇異な目で亮と修に向ける。
「貴女には人のことを言えないでしょう……」
と、疲れたように月子が独り言ののようにつぶやく。
━【次回議事録予告-Proceedings.05-】━━━━━━━
ついに運命の決闘が始まる。
それにより時は動き出し、太陽と月が運命の出会いを果たす。
そして、運命が蠢動し、水底より円形闘技場が浮き上がる。
━次回、天舞う完全無欠の竜と地を這う暴れ馬.05━━
「そう言う牛来様は天辰様相手に、初心者狩りをする気なのでしょう?」
月子がそう言い亮を強く睨む。
「月子!」
そこへ葵が少し怪訝そうに反応する。
「な、なんですか?」
葵に怪訝そうに反応され、少し驚く月子だが、
「そこは、葵と、葵と呼び捨ててくれませんか?」
と、葵に言われて、いや、乞われて、何とも言えない表情を見せる。
同時に外見は完璧な美少女なのに理解しがたい中身の葵に、月子はどう反応していいかすらわからない。
「呼ぶのはともかく捨てるのは意味が分からないのですが?」
とりあえず月子はそう言ってみせるが、葵がその言葉に反応するよりも早く亮が割り込んでくる。
いや、この話に限ればだが、元々は葵が割り込んで来ただけなのだが。
「ハハッ、この僕が初心者狩りだって? それは違うよ。僕は…… そうだね、レクチャー、そうレクチャー係さ。決闘者、デュエリストとしての厳しさのね」
そう言って亮は微笑んだ。
そして、その笑みを歪ませて、天辰葵という美少女を舐める様に見る。
その視線を受け、葵はまず鼻で笑い飛ばす。
「ああ、チュートリアルのやられ役って奴ですね」
葵は余裕の表情を見せる。
だが、葵はわかっていない。
このデュエルという決闘がいかなるものなのかを。
「ほう、この僕相手に随分と生意気な口をきくじゃぁないか?」
亮も笑みを浮かべたままではあるが、青筋を立て葵を睨む。
「天辰様もやめてください。下手に挑発に乗らないでください」
月子はこのままではまずいと判断し、話に割って入る。
だが、
「寧ろ私は月子に決闘を、愛の告白という名の決闘を申し込みたいのですが?」
葵に見つめられ、そして、そう言われて白羽の矢まで立てられてしまう。
月子は背筋に虫唾が走るのを確かに感じた。
見た目は完璧な美少女なのに中身が、なんというか素晴らしく残念だ。
下半身が好きと言っていたので、なんとなく月子はすぐに両足をピタっと閉じるくらいの嫌悪感を既に感じている。
「ほう、この牛来亮は眼中にないと言う訳か?」
そのやり取りを見て牛来亮は耐え難いような、苦悩の表情を見せる。
自信家の亮としては、葵のその対応は許せるものではない。
「つまり、亮のデュエルアソーシエイトは、この我、丑久保修というわけだな!?」
唐突に。
本当に唐突に筋肉の塊のような大男が牛来亮の背後にぬるりと現れた。
その男は腕を組み牛来亮の席の真後ろに仁王立ちしている。
そして、その大男も当然とばかりに左手の薬指にデュエルリングがはめられている。
「誰? そしてなに?」
急な男の登場に葵が怪訝そうにそう月子に聞いた。
月子が次から次へと起こる訳も分からない出来事に、ちょっとした癇癪を起してからも葵に答えてやる。
「えっと、ああっ、もう! 彼は名乗っていた通りの丑久保様で、寅の威を借る寅の団のもう一人の副団長です。そして、生徒会執行部の体育団長でもあります」
「紹介ご苦労、申渡」
丑久保修は、亮とは違う本当に良いさわやかな笑顔でそう言った。
その笑顔はただの感謝であり、牛来亮のような何か企んでいる含みを全く感じない。
ある意味、申渡月子に全く興味がないと言った感じさえする。
「で、デュエルアソーシエイトというのは?」
葵がそう聞くと、
「決闘を、決闘者の手助けをするパートナーのようなものです」
と、月子が答えるが、何とも言えない顔をしている。
このままでは葵は、牛来亮によりひどい目にあうことは目に見えている。
少しばかり、いや、かなり残念な中身の美少女ではあるが、助けられた恩が月子にはある。
このまま見過ぎすわけにもいかない。
「なら私のデュエルアソーシエイトとやらは月子だね」
月子はもし葵が決闘に挑むであるのであれば、初めからそのつもりでいたが面と向かって言われると逆に悩むところではある。
ただ月子としては、葵に決闘をして欲しくはないし、自分も決闘には関わりたくない。
「本当に決闘するつもりですか? わたくしは止めましたよ?」
最後にも一度確認する。
恐らく葵という少女は…… と考えて、暴れ馬に襲われた時のことを月子は思い出す。
どうやってあの暴れ馬を止めたかわからないが、それができるのであれば、チャンスくらいあるのかもしれない、と思い返す。
だが、それで勝てるほど牛来亮は甘くはない。彼とて歴戦のデュエリストだ。
それに月子は今まで決闘を徹底的に避けて来た。
それは徹底され、デュエルアソーシエイトという立場すら、すべて断って来ている。
それだけにデュエルアソーシエイトとして自分にどんな力が眠っているのか、本当に葵の力になれるのか、それすらわからないでいる。
「だって、負ける気しないもの」
そう言って、葵は月子の気持ちも知らずに亮を見下すように仰け反っている。
亮は自信家として有名だが、葵もそれに負けてはいないようだ。
「だから、僕を……」
亮が葵に言い返そうとしたその時、修が、筋肉に覆われた大男である丑久保修がすべてをかき消す大声で割って入る。
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その大声をまともに受けた亮はその場で耳を抑える。
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葵はそう言って、修も相手にもしない。
決闘のことを喧嘩かなにかと葵は思っているのかもしれないが、この学園の決闘はそんなものではない。
そういった次元のものではないのだ。
「フン、亮よ、見せてやろうではないか、我らが筋肉と友情パワーを!」
そう言って修は自慢の筋肉を学ランの上からミシミシと収縮させ葵を威嚇する。
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亮はそう言って嫌な笑みを浮かべる。
が、
「ハァ? 何を言っている! 亮よ! お前には我がいるじぁあないかぁ!」
と、真っ先に修が、服越しの筋肉を見せつけながら丑久保修が反応する。
「おまえは男だろ。修よ」
それに慣れているかのように、動揺せずに亮は答える。
「ぬぅ……」
と、修は唸り黙り込む。
「え? 何この人達」
と、葵が奇異な目で亮と修に向ける。
「貴女には人のことを言えないでしょう……」
と、疲れたように月子が独り言ののようにつぶやく。
━【次回議事録予告-Proceedings.05-】━━━━━━━
ついに運命の決闘が始まる。
それにより時は動き出し、太陽と月が運命の出会いを果たす。
そして、運命が蠢動し、水底より円形闘技場が浮き上がる。
━次回、天舞う完全無欠の竜と地を這う暴れ馬.05━━
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▼【作品集】
▽【連載中】
学院の魔女の日常的非日常
ミアという少女を中心に物語は徐々に進んでいくお話。
※最初のほうは読み難いかもしれません。
それなりに怖い話。
さっくり読める。
絶対少女議事録
少女と少女が出会い運命が動き出した結果、足を舐めるお話。
▽【完結済み】
一般人ですけどコスプレしてバイト感覚で魔法少女やってます
十一万字程度、三十三話
五人の魔法少女の物語。
最初から最後までコメディ。
四十二歳の冴えない男が、恋をして、愛を知る。
八万字程度、四十一話
田沼という男が恋を知り、そしてやがて愛を知る。
竜狩り奇譚
八万字程度、十六話
見どころは、最後の竜戦。
幼馴染が俺以外の奴と同棲を始めていた
タイトルの通り。
▽【連載中】
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ミアという少女を中心に物語は徐々に進んでいくお話。
※最初のほうは読み難いかもしれません。
それなりに怖い話。
さっくり読める。
絶対少女議事録
少女と少女が出会い運命が動き出した結果、足を舐めるお話。
▽【完結済み】
一般人ですけどコスプレしてバイト感覚で魔法少女やってます
十一万字程度、三十三話
五人の魔法少女の物語。
最初から最後までコメディ。
四十二歳の冴えない男が、恋をして、愛を知る。
八万字程度、四十一話
田沼という男が恋を知り、そしてやがて愛を知る。
竜狩り奇譚
八万字程度、十六話
見どころは、最後の竜戦。
幼馴染が俺以外の奴と同棲を始めていた
タイトルの通り。
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そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
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スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
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