それなりに怖い話。

こうしゅうでんわ

こうしゅうでんわ

　女の帰り道に古い、もう誰が使っているか分からないような、公衆電話が今もある。
　ちょうど電灯もないような、そんな道なので良い目印や明かりにはなってはいるが。

　その場所は周りに家屋もなく、その公衆電話だけが周囲の明るく照らしている。
　だが、畑と林の間にぽつんと公衆電話があるのは少し奇妙だ。

　奇妙だが昔からあるものだ。
　女が子供の頃から、その公衆電話は存在し、誰が使っているのかもわからない、そんな存在だった。
　少し古くなった、少し黄ばんだような明かりで、今日もその公衆電話から周りを煌々と照らされている。

　女が仕事で疲れて、深夜ともいえる時間に帰って来た時だ。
　その公衆電話の前を通り過ぎると、公衆電話が急になりだした。

　女はひどく驚く。
　今までそんな事は起きなかっただけに、公衆電話が鳴った時は、本当に心臓が飛び出るかと、そう思えるほど驚いた。
　女は周りを見渡すが誰もいない。

　深夜に畑と林の間の真ん中で、公衆電話が鳴り続けている。

　女は仕方なくその電話ボックスに入る。
　そして、その受話器を恐る恐る取る
　もしもし、と返事をすると、プツッと電話が切られる。
　女が何だったのだろうと、受話器を置いて、電話ボックスから出ようと振り返る。
　
　そこには、髪がぼさぼさで長い、目のぎょろりとした女性が電話ボックスのガラスの戸に張り付いていた。

　女は短く悲鳴を上げる。
　そして、女は入られないように電話ボックスの戸を必死に抑える。

　だが、その張り付いている女は、なんであんたが出るのよ、と、そう言い残し、パッと消えた。
　本当に、パッとだ。
　まるで電灯の電源が消えるかのように、電話ボックスの戸に張り付いている女は、女の前から消えたのだ。

　女は泣きながら携帯で自分の家に電話をし、向かいに来てもらう。
　迎えが来るまで女はずっと電話ボックスの戸を抑えていた。

　そして、その間、女は理解する。
　この電話ボックスは彼女の為に残されていたのだと言うことを。