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くらいへや
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少女は俗にいうところの、ひきこもりだった。
暗い部屋に引きこもり、パソコンとベッドを往復する日々を送っていた。
少女が引きこもった原因は、まあ、色々あるのだがそれはこの話とは関係がない。
少女は朝夕に関わらず、雨戸も開けることなく電気もつけることなく、暗い部屋に居続けた。
無論掃除などもしない。
部屋は時がたつにつれて荒れ果てて、ゴミに埋もれていく。
それでも、少女にとっては外の世界よりも居心地が良かった。
少なくとも自分を気づつけるものはこの暗い部屋にはいなかった。
今日までは。
少女はパソコンの前の椅子に膝を抱えて座り込んでいた。
足を降ろさないのは机の下が既にゴミで埋まっているからだ。
パソコン、とはいえ、それを使ってゲームをするわけではない。
少女はゲームが嫌いだ。
それが少女がいじめられるきっかけとなったからだ。
だから、少女がゲームにはまることはない。
パソコンでネットに繋がり、少女は暇を潰す。
少女でも読める漫画を読み、小説を読み、動画を見て時間を潰す。
ただそれだけの毎日のはずだった。
ふと少女は視線を感じる。
あるはずのない視線を感じる。
少女は暗い部屋を見回すが誰もいない。
いや、いる。
脱ぎ散らかした服の山に、もう行かなくなった学校の制服の下に、何かが潜んでいる。
それほど大きくはない。
少女ははじめそれが子犬では、と、そう思えた。
けど、子犬などがいるわけはない。
仮にいても鼠くらいだろう。
だが、それは鼠などではなかった。
それは脱ぎ散らかされた服の下から手を伸ばし始めた。
人の手だ。
あり得ない。
確かに色々な服が脱ぎ散らかされ山のようにはなっているが、人が隠れられるほど大きくはない。
だけど、そこから手が伸びてきているのだ。
人の手がだ。
長い手だ。
パソコンの画面の光に照らされた青白く、そして照らされてない部分は真っ黒な手だ。
それが少女目掛けて伸びてきている。
少女は咄嗟にベッドの上に飛ぶように移動して、布団の中に潜り込む。
少しジメジメとした分厚い布団が少女を守る。
だが、手は少女にむかい伸びて来る。
そして、布団を掴み引っ張る。
少女は悲鳴を上げようとするが声がまるでない。
しばらく誰とも喋ってなかったからだ。
少女は泣きながら布団を奪われないように強くつかんで抵抗する。
だけど、恐怖で力が上手く入らない。
布団はずりずりと引きずられ、ベッドの上から落ちていく。
布団を取られた少女は最後の力を振り絞り、部屋の外へと逃げ出そうとする。
そして、部屋の鍵を開け、部屋の外に出る。
昼間だった。
陽の光が廊下に差し込んでいる。
少女は自分の部屋を返り見る。
もう手は見えない。
少女は少し迷いはしたが、自分の部屋に戻り雨戸を何カ月ぶりかに開けた。
それだけで少女は親に褒められた。感謝された。
少女は自分の部屋に引きこもることはなくなった。
あの手がトラウマとなっているからだ。
少女は暗い部屋にはあの手が出ると思い込んでいる。
だから、今は朝夜に関わらず、寝る時でさえ電気だけは消さなくなった。
それはともかく少女の生活は少し変わった。
活動場所が自分の部屋から居間に変わっただけだが。
それでも少女の両親は娘の顔を見れるようになり、幾分安心したという。
暗い部屋に引きこもり、パソコンとベッドを往復する日々を送っていた。
少女が引きこもった原因は、まあ、色々あるのだがそれはこの話とは関係がない。
少女は朝夕に関わらず、雨戸も開けることなく電気もつけることなく、暗い部屋に居続けた。
無論掃除などもしない。
部屋は時がたつにつれて荒れ果てて、ゴミに埋もれていく。
それでも、少女にとっては外の世界よりも居心地が良かった。
少なくとも自分を気づつけるものはこの暗い部屋にはいなかった。
今日までは。
少女はパソコンの前の椅子に膝を抱えて座り込んでいた。
足を降ろさないのは机の下が既にゴミで埋まっているからだ。
パソコン、とはいえ、それを使ってゲームをするわけではない。
少女はゲームが嫌いだ。
それが少女がいじめられるきっかけとなったからだ。
だから、少女がゲームにはまることはない。
パソコンでネットに繋がり、少女は暇を潰す。
少女でも読める漫画を読み、小説を読み、動画を見て時間を潰す。
ただそれだけの毎日のはずだった。
ふと少女は視線を感じる。
あるはずのない視線を感じる。
少女は暗い部屋を見回すが誰もいない。
いや、いる。
脱ぎ散らかした服の山に、もう行かなくなった学校の制服の下に、何かが潜んでいる。
それほど大きくはない。
少女ははじめそれが子犬では、と、そう思えた。
けど、子犬などがいるわけはない。
仮にいても鼠くらいだろう。
だが、それは鼠などではなかった。
それは脱ぎ散らかされた服の下から手を伸ばし始めた。
人の手だ。
あり得ない。
確かに色々な服が脱ぎ散らかされ山のようにはなっているが、人が隠れられるほど大きくはない。
だけど、そこから手が伸びてきているのだ。
人の手がだ。
長い手だ。
パソコンの画面の光に照らされた青白く、そして照らされてない部分は真っ黒な手だ。
それが少女目掛けて伸びてきている。
少女は咄嗟にベッドの上に飛ぶように移動して、布団の中に潜り込む。
少しジメジメとした分厚い布団が少女を守る。
だが、手は少女にむかい伸びて来る。
そして、布団を掴み引っ張る。
少女は悲鳴を上げようとするが声がまるでない。
しばらく誰とも喋ってなかったからだ。
少女は泣きながら布団を奪われないように強くつかんで抵抗する。
だけど、恐怖で力が上手く入らない。
布団はずりずりと引きずられ、ベッドの上から落ちていく。
布団を取られた少女は最後の力を振り絞り、部屋の外へと逃げ出そうとする。
そして、部屋の鍵を開け、部屋の外に出る。
昼間だった。
陽の光が廊下に差し込んでいる。
少女は自分の部屋を返り見る。
もう手は見えない。
少女は少し迷いはしたが、自分の部屋に戻り雨戸を何カ月ぶりかに開けた。
それだけで少女は親に褒められた。感謝された。
少女は自分の部屋に引きこもることはなくなった。
あの手がトラウマとなっているからだ。
少女は暗い部屋にはあの手が出ると思い込んでいる。
だから、今は朝夜に関わらず、寝る時でさえ電気だけは消さなくなった。
それはともかく少女の生活は少し変わった。
活動場所が自分の部屋から居間に変わっただけだが。
それでも少女の両親は娘の顔を見れるようになり、幾分安心したという。
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