292 / 311
すずむし
すずむし
しおりを挟む
ジリリリリリリィと夜道に虫の鳴く音がする。
鈴虫だ。
男は帰り道にその鳴き声を聞きながらとぼとぼと歩いていた。
鈴虫、確かに鈴のような鳴き声だが実際の鈴とはどこか違う。
どっちかというと、ベル虫だ、それも機械が鳴らすような、そんなベルの音のように思える、そんなことを男は考える。
こんなに細かく鈴を振れる人間も居ないだろう、そんなことを鈴虫の鳴き声を聞きながら考えていた。
ただ鳴き声は美しいが、虫は虫だ。
その姿は余りみたくない。
子供の頃は平気だったが、大人になってから虫がダメになった。
子供の頃は平気で素手で触れていたのが信じられないほどだ。
鈴虫ほどの小さな虫でも目の前に出てこられたらうろたえてしまう自信が男にはあった。
そして、本当に鳴き声は美しいのに、とも男は思う。
細かく身を震わせるようなリーンリーンリーンという一際美しい鳴き声が聞こえてくる。
男が思わずその方向を向いてしまうほどだ。
だが、男はそっちを向いてしまったことを後悔する。
そこにあったのは地面から生えた手だった。
それが銀色に輝く鈴を持ち鳴らしているのだ。
鈴虫が鳴くような音でだ。
その地面から生えた手は、鈴を鳴らすとき、あり得ないほどの速さでその手を左右に振るのだ。
残像が見えるレベルだ。
明らかに人間がだせる速度ではない。
男はそれを見た瞬間は後ずさりはしたが、男の家はこの道を行かなければならない。
慌てて、男は前方に、自分の家に向かって走り出した。
どんどん鈴の音が遠くなっていく。
次の日、朝にその場所を通ったが無論、地面から手が生えていることなどないし、その痕跡もなにもない。
あれは何だったのか、男はわからないままだ。
ただ、鈴虫の鳴き声をもう美しいとは思えなくなった。
その鳴き声を聞くと、まさに虫唾が走り、男は逃げ出すようになった。
鈴虫だ。
男は帰り道にその鳴き声を聞きながらとぼとぼと歩いていた。
鈴虫、確かに鈴のような鳴き声だが実際の鈴とはどこか違う。
どっちかというと、ベル虫だ、それも機械が鳴らすような、そんなベルの音のように思える、そんなことを男は考える。
こんなに細かく鈴を振れる人間も居ないだろう、そんなことを鈴虫の鳴き声を聞きながら考えていた。
ただ鳴き声は美しいが、虫は虫だ。
その姿は余りみたくない。
子供の頃は平気だったが、大人になってから虫がダメになった。
子供の頃は平気で素手で触れていたのが信じられないほどだ。
鈴虫ほどの小さな虫でも目の前に出てこられたらうろたえてしまう自信が男にはあった。
そして、本当に鳴き声は美しいのに、とも男は思う。
細かく身を震わせるようなリーンリーンリーンという一際美しい鳴き声が聞こえてくる。
男が思わずその方向を向いてしまうほどだ。
だが、男はそっちを向いてしまったことを後悔する。
そこにあったのは地面から生えた手だった。
それが銀色に輝く鈴を持ち鳴らしているのだ。
鈴虫が鳴くような音でだ。
その地面から生えた手は、鈴を鳴らすとき、あり得ないほどの速さでその手を左右に振るのだ。
残像が見えるレベルだ。
明らかに人間がだせる速度ではない。
男はそれを見た瞬間は後ずさりはしたが、男の家はこの道を行かなければならない。
慌てて、男は前方に、自分の家に向かって走り出した。
どんどん鈴の音が遠くなっていく。
次の日、朝にその場所を通ったが無論、地面から手が生えていることなどないし、その痕跡もなにもない。
あれは何だったのか、男はわからないままだ。
ただ、鈴虫の鳴き声をもう美しいとは思えなくなった。
その鳴き声を聞くと、まさに虫唾が走り、男は逃げ出すようになった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ジャングルジム【意味が分かると怖い話】
怖狩村
ホラー
僕がまだ幼稚園の年少だった頃、同級生で仲良しだったOくんとよく遊んでいた。
僕の家は比較的に裕福で、Oくんの家は貧しそうで、
よく僕のおもちゃを欲しがることがあった。
そんなある日Oくんと幼稚園のジャングルジムで遊んでいた。
一番上までいくと結構な高さで、景色を眺めながら話をしていると、
ちょうど天気も良く温かかったせいか
僕は少しうとうとしてしまった。
近くで「オキロ・・」という声がしたような、、
その時「ドスン」という音が下からした。
見るとO君が下に落ちていて、
腕を押さえながら泣いていた。
O君は先生に、「あいつが押したから落ちた」と言ったらしい。
幸い普段から真面目だった僕のいうことを信じてもらえたが、
いまだにO君がなぜ落ちたのか
なぜ僕のせいにしたのか、、
まったく分からない。
解説ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
近くで「オキロ」と言われたとあるが、本当は「オチロ」だったのでは?
O君は僕を押そうとしてバランスを崩して落ちたのではないか、、、
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる