それなりに怖い話。

只野誠

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ずつう

ずつう

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 頭痛がする。
 ガンガンする様な。
 血管を血が通るだけで痛みを感じるような。
 そんな激しい頭痛がする。

 とてもじゃないが立ってられない、男はその場に倒れ込むように頭を抱えた座り込んだ。
 ここは地下鉄の駅だ。
 広く長いその連絡通路だ。

 昼間なのに陽の光も届かない、それなにに煌々と明るい地下だ。
 お昼時なのに、普段はその連絡通路はお昼時でも人が行きかっているのに、その時は頭痛で座り込んでしまった男以外誰もいない。

 だが、男はそんなことにも気づけない。
 ただ頭痛の痛みに耐え、座り込むことしかできない。
 
 ガンガンガンと血が流れる度に鈍く耐えがたい痛みを感じる。
 頭の中の血管でもきれてしまったのではないか、男はそう感じるほどだ。
 だが、今は男にできることはうずくまり痛みに耐えることだけだ。
 男にはそれ以外のことはできそうにない、それほどの痛みを感じている。

 男が痛みに耐え座り込んでいると、男の傍を何かが通る。
 黒くボロボロの服を纏ったナニカだ。
 人間ではない。
 手足が異様に細く長い。
 青白い肌と長いボサボサの髪をしたナニカだ。
 人型をしているが男か女かもわからない。
 目と口らしきものもあるが、それに該当する部分は黒い闇が渦巻いているだけで、目や口といった物を確認する事はできない。
 そんな存在が頭痛で苦しむ男のわきを歩いていく。
 男は頭痛の痛みでそれにすら気づくことはない。

 それが、黒いボロボロの衣服を纏ったナニカかが通り過ぎると、男の頭痛は徐々に収まっていく。
 そして、女性に声を掛けられる。大丈夫ですか、と。
 男は、急な頭痛で、でも収まって来たので大丈夫です、と答え立ち上がり、ふらつく。
 脂汗でびっしょりな顔をして、男はそのままその女性にお礼を言って近くの病院までなんとか歩いて行った。
 痛みが治まったとはいえ、尋常な痛みではなかった。
 一度医者に診てもらった方が良いと、そう考えたからだ。

 医者も男様子、その吹き出ている脂汗から尋常ではないと判断し、急遽、精密検査を行った。
 だが、男に異常は何もなかった。

 男からすれば、ただそれだけの話だ。
 でも、もし頭痛で座り込まなかったら、あの黒いボロボロの衣服を着たナニカに男が気づいていたら……
 男の運命はまた違っていたものだったかもしれない。



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