それなりに怖い話。

只野誠

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どんよりとしたくものもと

どんよりとしたくものもと

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 その日は曇りでどんよりとした雲が空に広がっていた。
 今にも雨が降りそうな、そんな空模様だ。

 少年はそんな曇り空の下の大きな道で一生懸命に自転車をこいでいた。
 友人らとの集合場所に行くために自転車をこいでいたのだ。

 集合場所に行くのに少年は大きな坂を登らなければならない。
 少年は自分だけ理不尽だ、そう思いながら大きな坂を自転車で登る。

 息が切れる。
 少年の脚に筋肉が悲鳴をあげる。
 後輪とペダルを繋ぐチェーンがはち切れんばかりに張る。

 少年は自転車を達漕ぎして坂を一気に登る。
 そうして少年は坂を登り終える。

 少年は大きく急こう配な坂を登り終えたところで、後ろを振り返る。
 良い景色だ。
 晴れていれば、より良い景色が見えたのだろうが、曇り空でもそれでもいい景色だ。

 遠くまで町が見渡せ、眼下には今まで自分が登ってきた坂を見渡せる。

 そして、どんよりとした灰色の厚い雲に覆われた空が広がっている。
 少年が息を整えながら、しばらく空を見ていると、その厚くどんよりとした雲の中を泳ぐ何かを目にする。

 最初は大きな蛇だと、少年にはそう思えた。
 次に大きな魚にそれが思えた。
 細長いニシキゴイのようなものが雲の中を泳いでいるように見てた。
 だが、少年はそれが竜だと気づく。

 少年は目を輝かせ、空を泳ぐ竜を見続ける。

 そうしていると、ポツリ、ポツリと雨が降り始める。
 少年は竜を見るのを諦め、急いで自転車を出発させる。

 雨はすぐに豪雨になる。

 集合場所の友人宅に少年は駆け込み、雨宿りをする。
 そして、少年は友人らに、竜を見た、と自慢げに伝える。
 普段なら笑い飛ばすはずの友人らも、この急な豪雨を見てその話を信じる。
 少年らは全員で窓から空を見上げる。

 もちろん、竜など見えるわけはない。

 それでも少年らはその日、憧れを込めてどんよりとした雲を見続けたのだ。


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