それなりに怖い話。

おさななじみ

おさななじみ

　少年には幼馴染の少女がいた。
　確かにいた。
　だが、少年も少年の親もその少女の名を知らない。
　近所のどこかの子なのだろうけれども、いつの間にかに仲良くなり、よく遊ぶようになった。

　けど、住んでいる家も、少女の名すら誰も知らない。

　本当にそんな少女はいたのか？
　そう言われるが記憶には確かに残っている。
　親も小さいころよく遊びに来ていた女の子として記憶に残っている。

　だが、少女の名を知らない。

　少女はいつの間にかに少年と仲良くなり、少年が友人ら遊んでいると紛れ込んでいる。
　そして、全員と仲良くなるが、誰もその少女の名を知らない。

　その時の友人に聞いても、ああ、そんな奴いたな、と返しはするが誰も名前を知らない。
　いや、誰も何も知らない。
　ただその存在のみが記憶の中に存在している。
　いつの間にかに紛れ込み、いつの間にかに居なくなっている。
　そんな少女が、少年の幼馴染に確かにいたのだ。

　少年が大人になり、結婚して親になった。
　元少年の子が小学校に行くようになったころだ。
　少女の友人が出来た。
　礼儀正しくとても良い子だ。

　名は知らないが元少年は知っている。

　少年もその時に悟る。
　自分の幼馴染はこの土地に住む神様か何かなのだと。
　名前は気になったが聞かないほうがきっと良いのだろうと。
　やがて全てを忘れ、子供の幼馴染としてのみ記憶に残っていく。

　もしかしたら、その幼馴染も自分と同じように成長し結婚して、子供が出来ただけなのかもしれない。
　けど、そう思った方が夢があると、元少年は考えてその少女の名を聞きはしなかっし、忘れていくことを受けいれた。

　知らなければ幸せでいられる。
　そういう物は確かに存在する。