255 / 321
つきがあおいよる
つきがあおいよる
しおりを挟む
少女が部活帰りにもう暗くなった夜空を見上げる。
月が青い。
嫌に青い。
気のせいではなく、しっかりと青く見える。
ブルームーンという奴だ、少女はそう思った。
だが、実際のブルームーンは、それほど青くは見えない。
少女はそのことを知らない。
そんな青ざめた月は夜空に浮かんでいる。
少女が見た月がブルームーンなのかどうかは置いておいて、近年ではブルームーンを見ると幸運が訪れる、そんなことが言われている。
だけれども、昔はブルームーンと言えば不吉なことへの前兆だったのだ。
これから、あり得ないことが起きる、その前兆だと言われていたのだ。
少女はそのことも知らない。
少女は青い月を綺麗だな、と見上げつつ、帰路につく。
田んぼのあぜ道というわけではないが、道の片側には田んぼが広がっている。
その反対側には民家があるのだが、農家の家で家屋までは遠い。
家の光が少女が歩いている道にまで届くことはない。
道自体に電灯はあるが、少し心もとない。
だからこそ、月はよく見える。
青い月が良く見えるのだ。
そんな暗い夜道を少女は一人、帰路についている。
少女にとっては慣れた物だ。
それに今日は月明かりもある。
少女が帰り道を歩いていると、不意に声を掛けられる。
もし、もし、もし、と。「もし」という言葉だけを繰り返し声を暗闇の中、うっすらと浮き上がる人影にかけられる。
少女は声をかけられた方を向き、返事をする。
なんでしょうか、と、明るい声で。
声を掛けて来た人影は、○○という家で今日お通夜があるのだが道がわからない、と、少女に聞いた。
○○という家の名を少女は知らない。
なので、少女は、すいません、わかりません、と、きっぱりと返事をして足を動かす。
人影はその場を動かずに、もし、もし、もし、と声を掛け続けていたが、少女は特に気にしない。
変な人もいるのだと、そう思ったくらいだ。
少女はさっさとその場所から去る。
少女が自分の家を目指して道を歩いていると、また、もし、もし、もし、と声を掛けられる。
声色も先ほど声を掛けて来た人物のようだ。
少女は、あれ、また会いましたか? と、人影に問う。
そうすると人影は答える、はい、先ほど道を尋ねました、と。
少女はその答えに納得する。
迷子であれば再び出会うこともあるのだろうと。
だが、少女は○○の家を知らない。その道を教えることはできない。
自分に出来ることはない、と、再び足を動かそうとする。
だが、人影は、○○という家で今日お通夜があるのだが道がわからない、と再び少女に聞いた。
少女は、わからないです、と答える。
その答えを聞いていないかのように、人影は同じ言葉を繰り返す。
少女は暗くてよく見えないが、お年寄りなのかもしれない。
こんな辺りが暗くなる時間に出歩くのは危険だと、田んぼにはまりでもしたら大変だと、そう考えた。
そして、スマホを出し警察に電話しようとする。
その時だ、
スマホの明かりで人影が見える。
それは案山子だ。
案山子が声を出していたのだ。
少女は理解する。
音声を発する喋れる案山子なのだと。
ハイテク案山子なのだと。
だから、同じ言葉しかしゃべらないのだと。
お年寄りではない、それが分かった少女は安心して帰路につく。
しゃべる案山子を残し、その場をさっさと去る。
何度か人影に声を掛けられても、もう答えることなく少女は夜道を行く。
それらはただの案山子なのだから。
半時ほど歩いて少女は家に無事に着く。
そして、親に最近の案山子は喋るんだね、と少し自慢げに話したそうだ。
不吉の予兆ではあったが、予兆は予兆で確定ではない。
ただそれだけの話だ。
月が青い。
嫌に青い。
気のせいではなく、しっかりと青く見える。
ブルームーンという奴だ、少女はそう思った。
だが、実際のブルームーンは、それほど青くは見えない。
少女はそのことを知らない。
そんな青ざめた月は夜空に浮かんでいる。
少女が見た月がブルームーンなのかどうかは置いておいて、近年ではブルームーンを見ると幸運が訪れる、そんなことが言われている。
だけれども、昔はブルームーンと言えば不吉なことへの前兆だったのだ。
これから、あり得ないことが起きる、その前兆だと言われていたのだ。
少女はそのことも知らない。
少女は青い月を綺麗だな、と見上げつつ、帰路につく。
田んぼのあぜ道というわけではないが、道の片側には田んぼが広がっている。
その反対側には民家があるのだが、農家の家で家屋までは遠い。
家の光が少女が歩いている道にまで届くことはない。
道自体に電灯はあるが、少し心もとない。
だからこそ、月はよく見える。
青い月が良く見えるのだ。
そんな暗い夜道を少女は一人、帰路についている。
少女にとっては慣れた物だ。
それに今日は月明かりもある。
少女が帰り道を歩いていると、不意に声を掛けられる。
もし、もし、もし、と。「もし」という言葉だけを繰り返し声を暗闇の中、うっすらと浮き上がる人影にかけられる。
少女は声をかけられた方を向き、返事をする。
なんでしょうか、と、明るい声で。
声を掛けて来た人影は、○○という家で今日お通夜があるのだが道がわからない、と、少女に聞いた。
○○という家の名を少女は知らない。
なので、少女は、すいません、わかりません、と、きっぱりと返事をして足を動かす。
人影はその場を動かずに、もし、もし、もし、と声を掛け続けていたが、少女は特に気にしない。
変な人もいるのだと、そう思ったくらいだ。
少女はさっさとその場所から去る。
少女が自分の家を目指して道を歩いていると、また、もし、もし、もし、と声を掛けられる。
声色も先ほど声を掛けて来た人物のようだ。
少女は、あれ、また会いましたか? と、人影に問う。
そうすると人影は答える、はい、先ほど道を尋ねました、と。
少女はその答えに納得する。
迷子であれば再び出会うこともあるのだろうと。
だが、少女は○○の家を知らない。その道を教えることはできない。
自分に出来ることはない、と、再び足を動かそうとする。
だが、人影は、○○という家で今日お通夜があるのだが道がわからない、と再び少女に聞いた。
少女は、わからないです、と答える。
その答えを聞いていないかのように、人影は同じ言葉を繰り返す。
少女は暗くてよく見えないが、お年寄りなのかもしれない。
こんな辺りが暗くなる時間に出歩くのは危険だと、田んぼにはまりでもしたら大変だと、そう考えた。
そして、スマホを出し警察に電話しようとする。
その時だ、
スマホの明かりで人影が見える。
それは案山子だ。
案山子が声を出していたのだ。
少女は理解する。
音声を発する喋れる案山子なのだと。
ハイテク案山子なのだと。
だから、同じ言葉しかしゃべらないのだと。
お年寄りではない、それが分かった少女は安心して帰路につく。
しゃべる案山子を残し、その場をさっさと去る。
何度か人影に声を掛けられても、もう答えることなく少女は夜道を行く。
それらはただの案山子なのだから。
半時ほど歩いて少女は家に無事に着く。
そして、親に最近の案山子は喋るんだね、と少し自慢げに話したそうだ。
不吉の予兆ではあったが、予兆は予兆で確定ではない。
ただそれだけの話だ。
1
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
追っかけ
山吹
ホラー
小説を書いてみよう!という流れになって友達にどんなジャンルにしたらいいか聞いたらホラーがいいと言われたので生まれた作品です。ご愛読ありがとうございました。先生の次回作にご期待ください。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
【実体験アリ】怖い話まとめ
スキマ
ホラー
自身の体験や友人から聞いた怖い話のまとめになります。修学旅行後の怖い体験、お墓参り、出産前に起きた不思議な出来事、最近の怖い話など。個人や地域の特定を防ぐために名前や地名などを変更して紹介しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる