それなりに怖い話。

只野誠

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こまどのやみ

こまどのやみ

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 少女の家には小窓がある。
 その小窓から見えるのは景色は山だけだ。
 それは、少女は田舎に住んでいるからだ。

 ただ今回の話は今見える景色は関係がない。
 なぜ何らば、陽が落ち、夜になり、その窓から何も見えなくなってから起こる話なのだから。

 その小窓は一階にある。
 だから、それほど景色が良い訳でもない。

 その小窓には金属の格子が付いていて、雨戸はない。
 だから、夜でもその小窓から外の様子を見ることができる。

 その小窓からは夜になると何も見えない。
 だから、その小窓は夜には闇しか見えない。

 そんな小窓がある。
 ちょうどトイレの前にある。
 だから、夜寝る前にトイレに行くとき、夜中目が覚め、ふとトイレに行きたくなった時、どうしてもその小窓の前を通らないといけない。



 小窓から見えるものはすべて闇だ。
 黒く暗い。
 小窓からは何も見えない。

 だが、少女は気づく。
 夜にこの窓から何も見えないのは、家の中の電気が、明かりがついているからなのでは、と。
 そのことに気づいてしまう。

 外には月明かりもあるのだ。
 家の中がより暗く成れば、夜でも窓の外の景色を見れるのではないか、少女はなんとなくそんなことを考える。
 一度考えついてしまうと、後は実行するだけだ。

 夜に電気を着けずに小窓の前に行くだけで良い。
 それだけの話だ。
 そして、少女はそれを実行してしまう。
 夜に電気を着けずにトイレの前の小窓を見に行く。

 少女の予想通り、窓から薄い月明かりが差し込んできている。
 あの暗くて黒くて闇しか見えなかった、夜の小窓から僅かながらも光が差し込んできている。
 あの窓が、青く、とは言っても深い暗い青ではあるが、闇ではないのだ。

 少女はどんな景色が見えるのだろう、と、小窓の近くまで行って窓を覗き込む。

 薄っすらと山の影が夜空に見える。
 目が慣れて来ると、小窓から見える少女の家の庭の様子がうっすらと見えて来る。

 なんの変哲もない。ただの少女のうちの庭だ。
 そこにおかしなところも何もない。

 まあ、こんなものだろう、と、少女もそう考える。
 そう簡単に何か起こる訳がないと。

 だが、少女は気づいていない。
 今、外から見るとこの窓自体が、今度は闇なのだ。
 そして、闇に潜む連中は、より深い闇を好むものだ。

 少女が夜の景色に飽きて、電気を着けようとした瞬間だ。
 小窓の下から、ヌッと黒い影が浮き上がってくる。
 それは大きな顔だった。
 楕円形の大きな顔で、淡い月明かりを反射するよに、ぎょろりとした眼だけが見える。
 そんな、大きな顔が小窓の格子に手をかけて、小窓を覗き込んでいる。
 少女の家の中を覗き込んでいる。

 少女は慌てて悲鳴を上げて、電気のスイッチを着ける。
 覗き込んでいた存在も驚いて闇に溶け込むかのように逃げていく。

 電気を着けた後の小窓には、もう黒々とした深い闇しか映し出されていない。
 あの顔がなんだったのか、少女は知ることはない。



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