それなりに怖い話。

只野誠

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すずのねとおんな

すずのねとおんな

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 これは誰から聞いたかわからない不確かな話だ。

 物凄い雨の降る晩の事だったらしい。
 女は二階の窓から、その虚ろな目で、壁に寄りかかりながら、外の様子を見ていた。

 横振りの凄い雨だ。
 それを女は部屋の電気もつけずに、微動だせずに、ただただ外を、窓の外を見ていた。

 時折車のライトが照らすその窓を見ていた。

 そうしていると、風と雨の音に交じってチリンチリンと、鈴の音が聞こえる。
 風と雨の音がかなりうるさいのに、その鈴の音はかなり鮮明に聞こえていた。

 女はそれでも何も考えることはできずに、ただただ虚ろな目で窓の外を見ていた。
 鈴の音は少しづつ近づいてくる。

 二階の窓なのに、人の頭が見える。
 女性の頭だ。
 白黒写真でしか見たことの無いような、頭の上で髪を結っている女だ。

 それと共に、うるさいくらいの鈴の音がが聞こえる。
 このでかい女が鈴を鳴らしているのだ、と、女は思ったが何かできるわけでもない。
 
 外にいるでかい女が二階にいる女に気づき、女の方を見る。
 でかい女は牛の様な顔だった。
 いや、確かに人の顔なのだが、どこか牛を思わせる、そんな顔だった。
 目が大きく、白目が黄色く濁っているが、瞳は爛々と輝いている。
 その大きな女がニヤァと笑う。

 嫌な笑みだ、と女は思う。

 大きな牛の様な女は手を伸ばし、窓のひさしに何かを括りつける。
 鈴だ。大きな鈴だ。
 大きな牛のような女が持っていた鈴を括りつける。
 それが大きい鈴の音を響かせる。

 その後、牛の様な大きな女はニヤリと笑みを浮かべたまま、ゆっくりと女を見ながら歩き去っていった。
 その間も、女に何かできることはない。ただ壁に寄りかかり窓の外を、その虚ろな目で見ることしかできない。

 翌日、女の家に警察がやってくる。
 家の玄関の戸を無理やり開けて、家に入り込み、二階にいる女を見つける。
 見つけた警官はその顔を歪める。

 だが、女は見つけてくれた警官に感謝した。

 発見された女は強盗に襲われ、死後数日が立っていたいたそうだ。



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▼【作品集】

▽【連載中】
学院の魔女の日常的非日常
ミアという少女を中心に物語は徐々に進んでいくお話。
※最初のほうは読み難いかもしれません。


それなりに怖い話。
さっくり読める。


絶対少女議事録
少女と少女が出会い運命が動き出した結果、足を舐めるお話。



▽【完結済み】

一般人ですけどコスプレしてバイト感覚で魔法少女やってます
十一万字程度、三十三話
五人の魔法少女の物語。
最初から最後までコメディ。


四十二歳の冴えない男が、恋をして、愛を知る。
八万字程度、四十一話
田沼という男が恋を知り、そしてやがて愛を知る。


竜狩り奇譚
八万字程度、十六話
見どころは、最後の竜戦。


幼馴染が俺以外の奴と同棲を始めていた
タイトルの通り。
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